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BACKUP 処理を行うには,DCL の BACKUP コマンドを次の形式で入力します。
BACKUP 入力指定子 出力指定子 |
BACKUP は,入力指定子と出力指定子をもとに,行うべき処理タイプを判断します。また,入力指定子によって入力対象物の記憶位置を調べ,出力指定子によって出力先を指定します。
7.3 BACKUP の入力指定子と出力指定子
BACKUP は,複数の種類の入力と出力を処理できます。入力指定子と出力指定子は処理タイプによって異なりますが,OpenVMS 標準ファイル指定, BACKUP セーブ・セット指定,そして装置指定が指定子として使用できます。装置指定では,ディスク・ボリュームや磁気テープ・ボリュームが指定できます。
有効な OpenVMS ファイル指定であれば,どれでも入力または出力指定子に使用できます。ただし,ノード名をファイル指定に使用することはできません。ワイルドカード文字を使用すれば,複数のファイル指定を単一の BACKUP 処理の入力として指定できます。
BACKUP セーブ・セット指定は,BACKUP セーブ・セットを指定するファイル指定です。BACKUP でセーブしたファイルやボリュームは,セーブ・セットに書き込まれます。セーブ・セットを他の BACKUP 処理の入力として指定できます。セーブ・セット指定については,OpenVMS ファイルの指定規則に従ってください。ディスク・ファイルの指定方法については,『OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。磁気テープ・ファイルの指定方法については,『OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。セーブ・セット指定のファイル・タイプには,省略時のファイル・タイプはありませんが,通常は BCK または SAV を使用します。
セーブ・セット名には,OpenVMS ファイル名とファイル・タイプの両方が有効であれば使用できます。ただし,磁気テープ上にセーブ・セットを作成する場合は,次の制約があります。
BACKUP の入力または出力指定子に使用する装置指定については,『OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』に記述された規則に従ってください。
省略時の BACKUP は,Files-11 ディスクを指す入力または出力指定子をファイル指定とみなします。したがって,Files-11 ボリューム上のセーブ・セットを指定するには,指定子に /SAVE_SET 修飾子を含めなければなりません。/SAVE_SET を参照してください。磁気テープを指す入力または出力指定子は,セーブ・セットとして扱われます。
BACKUP コマンドの入力指定子と出力指定子の両方にセーブ・セットを指定することはできません。このため,磁気テープ間で BACKUP 処理を行うことはできません。 |
表 7-1 に,入力指定子と出力指定子を処理タイプ別に示します。
処理 | 形式 |
---|---|
セーブ | BACKUP ファイル指定 セーブ・セット指定 |
セーブ (イメージ) | BACKUP/IMAGE 装置指定 セーブ・セット指定 |
セーブ (物理からディスクへ) | BACKUP/PHYSICAL 装置指定 装置指定 |
復元 | BACKUP セーブ・セット指定 ファイル指定 |
復元 (イメージ) | BACKUP/IMAGE セーブ・セット指定 装置指定 |
復元 (ディスクから物理へ) | BACKUP/PHYSICAL 装置指定 装置指定 |
復元 (テープから物理へ) | BACKUP/PHYSICAL セーブ・セット指定 装置指定 |
コピー | BACKUP ファイル指定 ファイル指定 |
コピー (イメージ) | BACKUP/IMAGE 装置指定 装置指定 |
コピー (物理からテープへ) | BACKUP/PHYSICAL 装置指定 セーブ・セット指定 |
比較 | BACKUP/COMPARE ファイル指定 ファイル指定
BACKUP/COMPARE セーブ・セット指定 ファイル指定 |
比較 (イメージ) | BACKUP/COMPARE/IMAGE セーブ・セット指定 装置指定
BACKUP/COMPARE/IMAGE 装置指定 装置指定 |
比較(物理) | BACKUP/COMPARE/PHYSICAL 装置指定装置指定
BACKUP/COMPARE/PHYSICAL セーブ・セット指定装置指定 |
リスト 1 | BACKUP/LIST[=ファイル指定] セーブ・セット指定
BACKUP/LIST[=ファイル指定] 装置指定 |
ジャーナルの作成 | BACKUP/JOURNAL[=ファイル指定] ファイル指定 セーブ・セット指定 |
ジャーナル・リスト | BACKUP/JOURNAL[=ファイル指定] /LIST[=ファイル指定] |
要素リストとは,コマンドや修飾子で指定する引数のリストのことです。引数すなわち要素は,コンマで区切ります。入力または出力指定子について要素リストを使用できるのは,次の場合に限定されます。
$ BACKUP _From: DUA0:[DATA]A.DAT,B.DAT,[PROGRAMS]TEST.EXE _To: MSA0:TEST.SAV/LABEL=DLY101 |
$ BACKUP _From: DUA0:[DATA]*.*,DUA0:[PROGRAMS]*.* _To: MSA0:TEST.SAV,MSA1:/LABEL=WKLY01 |
$ BACKUP/IMAGE _From: MSA0:TEST.SAV,MSA1: _To: DUA0:[DATA...],DUA1: |
BACKUP 処理には,修飾子を指定することもできます。使用できる修飾子は,次の 5 種類です。
イメージ処理では,入力または出力指定子を使用できません。 |
それぞれの修飾子の使用方法を,充分理解するようにしてください。 BACKUP コマンド行のどこに修飾子を入力するかによって,結果が異なります。コマンド修飾子は,コマンド行のどこにでも入力できますが,入力指定子と出力指定子の修飾子は,位置によって意味が決まります。入力指定子修飾子は入力指定子の直後,出力指定子修飾子は出力指定子の直後に入力してください。
また,BACKUP 修飾子には,入力指定子修飾子としても出力指定子修飾子としても使用できる修飾子がいくつかあります。正常に動作させるため,位置によって意味が決まる修飾子は,必ず正しい位置に入力してください。たとえば /SAVE_SET 修飾子は,BACKUP セーブ処理の出力セーブ・セット修飾子としても,BACKUP 復元処理の入力セーブ・セット修飾子としても使用します。
BACKUP 修飾子の組み合わせ方法の詳細については,
付録 G を参照してください。
7.3.3 BACKUP でのワイルドカード文字の使用方法
BACKUP では,ディレクトリ,ファイル名,ファイル・タイプ,およびバージョン番号を示すファイル指定で,ワイルドカード文字を使用できます。ファイル名,ファイル・タイプ,バージョン番号のいずれかを省略すると,ワイルドカード文字のアスタリスク(*)が使用されます。たとえばバージョン番号を省略すると,すべてのバージョンが処理されます。ワイルドカード文字の概要については,『OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』を参照してください。
有効な DCL ワイルドカード文字であれば,Files-11 媒体である入力指定子や /SELECT,/EXCLUDE の修飾子に使用できます。ただし,ファイルの最新バージョンを示す記号 (;) やファイルの相対バージョンを示す記号 (;-n) を /EXCLUDE,/SELECT 修飾子で使用した場合,これらの記号はワイルドカード文字のアスタリスク (;*) として処理されます。
セーブ・セットがテープ上の入力指定子でないかぎり,BACKUP セーブ・セット指定にワイルドカード文字を使用することはできません。
次の表は,Files-11 媒体である出力指定子に使用できるディレクトリ・ワイルドカード文字の種類です。
ディレクトリ・ワイルドカード文字 | 結果 |
---|---|
省略 | ディレクトリ名を省略した場合,ファイルは現在の省略時のディレクトリ [] に格納される。 |
[*...] | ファイルは,セーブ元のディレクトリに復元される。 |
[ディレクトリ] | ファイルは,指定ディレクトリに復元される。 |
[ディレクトリ...] | 入力ファイルの指定に使用したワイルドカード文字により,ファイルの復元先ディレクトリが決まる。 |
OpenVMS ディレクトリ木構造は, ODS-2 ファイルでは 8 レベルまでに限定されているため,ディレクトリに多数のサブディレクトリ・レベルがあるときにディレクトリ・ワイルドカード文字の使用方法を誤ると, BACKUP 処理中に下位レベルのサブディレクトリを失う恐れがあります。ただし,ODS-5 ファイルでは,この 8 レベルの制限はありません。 |
次は,入力指定子と出力指定子におけるディレクトリ・ワイルドカードの形式 [ディレクトリ...] の使用例です。
$ BACKUP [OSCAR...] [JOE.RECEIVED...] |
ディレクトリ [JOE.RECEIVED] (まだ存在しない場合) のほか,[OSCAR] のサブディレクトリに対応するサブディレクトリが作成されます。ディレクトリ [OSCAR] とそのサブディレクトリのすべてのファイルが [JOE.RECEIVED] とそのサブディレクトリにコピーされます。ただし, [OSCAR] に 8 レベルのディレクトリがあり,その中のファイルが ODS-2 である場合,第 9 レベルのサブディレクトリは,[JOE.RECEIVED] に作成されません。つまり,[OSCAR] の第 8 レベルのサブディレクトリは,コピーされません (この制限は ODS-5 ファイルには適用されません)。
コピー処理で,ワイルドカード文字のアスタリスク (*) を使用して入力指定子のサブディレクトリを表現すると,入力指定子のサブディレクトリに対応するサブディレクトリが,出力指定子に指定したディレクトリに対して作成されます。次に,入力指定子の最下位レベルのサブディレクトリのすべてのファイルが,出力指定子の最下位レベルのサブディレクトリにコピーされます。次の例では, MONDAY と TUESDAY というサブディレクトリをアスタリスクで表しています。
$ BACKUP [SAM.WORK.*.WEDNESDAY] [JAMES...] |
この例では,[JAMES.MONDAY.TUESDAY.WEDNESDAY] というサブディレクトリが作成されます。MONDAY.DIR ファイルが [JAMES] にコピーされ, TUESDAY.DIR ファイルが [JAMES.MONDAY] にコピーされ, WEDNESDAY.DIR ファイルが [JAMES.MONDAY.TUESDAY] にコピーされます。次に,[SAM.WORK.MONDAY.TUESDAY.WEDNESDAY] のすべてのファイルが, [JAMES.MONDAY.TUESDAY.WEDNESDAY] にコピーされます。
復元処理でセーブ・セット修飾子 /SELECT を使用しない場合,入力指定子として [*...] が使用されます。出力指定子に [ディレクトリ...] 形式を使用する場合は,この点に注意する必要があります。ワイルドカード文字 [*...] の機能は,第 1 レベルからのディレクトリ名全体を出力指定子の省略記号の前に置くことです。したがって,たとえば次の例のセーブ・セットに木構造 [SAVE...] があるとすると,復元されるディレクトリ木構造は,[WORK.SAVE...] となります。
$ BACKUP MTA0:SAVE.BCK [WORK...] |
出力指定子が入力指定子のディレクトリと同じ名前である場合も,次のように結果は同じです。
$ BACKUP MTA0:SAVE.BCK [SAVE...] |
木構造 [SAVE...] を [SAVE.SAVE...] という木構造に復元します。
次のコマンドは,木構造 [SAVE...] を [WORK...] という木構造に復元します。
$ BACKUP MTA0:SAVE.BCK/SELECT=[SAVE...] [WORK...] |
ファイルを復元するときに元のディレクトリを保持するためには,出力指定子に [*...] 形式を使用するか,または入力セーブ・セット修飾子 /SELECT を指定します。次の例では,出力指定子に [*...] を使用し,セーブ・セット SAVE.BCK の木構造 [SAVE...] を木構造 [SAVE...] に復元します。
$ BACKUP MTA0:SAVE.BCK [*...] |
入力セーブ・セット修飾子 /SELECT は,ファイル指定の省略記号部分だけを,出力指定子 [ディレクトリ...] のディレクトリ木構造に転送します。次のコマンドは,[SAVE...] を [SAVE...] に復元します。
$ BACKUP MTA0:SAVE.BCK/SELECT=[SAVE...] [SAVE...] |
BACKUP ユーティリティは,ファイルやファイル・ボリュームの複製を作成することによって,データの消失や破損を防止します。
BACKUP は,公用媒体の保護を目的としてシステム管理者やオペレータが使用することを主な目的としています。ただし,BACKUP は誰でも利用できるので,VMS システム間でファイルを個人的にコピーしたり転送したりできます。
システム・ディスクは次のいずれかの方法でバックアップをとることができます。
BACKUP 入力指定子 出力指定子
入力指定子
BACKUP 処理の入力を指定します。入力指定子には, OpenVMS 標準ファイル指定,BACKUP セーブ・セット指定,装置名のどれでも使用できます。ディスク上のセーブ・セットを入力指定子とする場合,入力セーブ・セット修飾子 /SAVE_SET を使用してください。DECnet ノード名は,セーブ・セット指定以外には使用できません。
磁気テープが媒体である場合,OpenVMS 標準ファイル指定とセーブ・セット指定にワイルドカード文字を使用できます。
出力指定子
BACKUP 処理の出力を指定します。入力指定子と同様, OpenVMS 標準ファイル指定,BACKUP セーブ・セット指定,装置名のどれでも使用できます。ディスク上のセーブ・セットを出力指定子とする場合,出力セーブ・セット修飾子 /SAVE_SET を使用してください。DECnet ノード名は,セーブ・セット指定以外には使用できません。
Files-11 ボリュームを出力指定子とする場合,ワイルドカード文字を使用できます。BACKUP セーブ・セットを出力指定子とする場合や BACKUP/PHYSICAL や BACKUP/IMAGE で作成したボリュームを出力指定子とする場合は,ワイルドカード文字を使用できません。 BACKUP コマンドでワイルドカード文字を使用する際の制約については, 第 7.3.3 項 を参照してください。
オンライン BACKUP を起動するには,使用したい BACKUP コマンドを DCL プロンプトに入力します。スタンドアロン BACKUP の起動方法については,『OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。BACKUP コマンドを入力すると,入力指定子,出力指定子,および修飾子をもとに,実行する処理のタイプが決定されます。入力指定子は,ユーティリティに入力を取り込むのに使用され,出力指定子は,出力先を決めるのに使用されます。出力指定子は,ファイル,ディスク上のセーブ・セット,磁気テープ上のセーブ・セットのいずれも指定できます。
コマンドの実行が終了すると,DCL コマンド・レベルに戻ります。 BACKUP コマンドの実行を中断するには,Ctrl/Y を押します。作成中のファイルがある場合,Ctrl/Y を押すと同時にそのファイルはクローズされ,クローズされるまでの部分だけが作成されます。
BACKUP をバッチ・モードで使用する場合,オペレータ・ターミナルにメッセージを送るには,ユーザ特権 TMPMBX が必要です。順編成ディスクで構成されるボリューム・セットに対してセーブ処理を行う場合,継続ボリュームに書き込むためには,ユーザ特権 PHY_IO または LOG_IO が必要です。BACKUP 修飾子を複数使用する場合も,特権が必要となります。どのような特権が必要であるかについては,それぞれの修飾子の項で説明します。
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