OpenVMS Alpha
V7.3-2 リリース・ノート【翻訳版】


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4.8 外部認証

ここでは,外部認証に関する注意事項をまとめます。外部認証は OpenVMS Version 7.1 で導入されたオプションの機能であり,この機能を利用すると,OpenVMS システムは外部のユーザ ID とパスワードを使用して,指定されたユーザを認証できます。外部認証についての詳細は,『OpenVMS Guide to System Security』を参照してください。

4.8.1 DECterm 端末セッションでの SET PASSWORD の動作

V7.2

DECterm 端末セッションでは,ログインで使用する外部ユーザ名にアクセスすることができず, SET PASSWORD 操作で外部ユーザ名を入力しなければなりません。外部ユーザ名のデフォルトは,プロセスのOpenVMS ユーザ名です。デフォルトが適切でない場合 ( つまり,外部ユーザ名とマッピングされた OpenVMS ユーザ名が異なる場合 ),正しい外部ユーザ名を入力しなければなりません。

次の例に,外部ユーザ名が JOHN_DOE であるユーザが開始したSET PASSWORD 操作を示します。マッピングされた OpenVMS ユーザ名は JOHNDOE であり,これは SET PASSWORD 操作で使用されるデフォルトです。この場合,デフォルトは正しくないので,実際の外部ユーザ名がユーザによって指定されています。


$ set password 
External user name not known; Specify one (Y/N)[Y]? Y 
External user name [JOHNDOE]: JOHN_DOE 
Old password: 
New password: 
Verification: 
%SET-I-SNDEXTAUTH, Sending password request to external authenticator 
%SET-I-TRYPWDSYNCH, Attempting password synchronization 
$ 

4.8.2 ワークステーションではパスワードの有効期限切れは通知されない

V7.1

LAN Manager ドメインでは,パスワードの有効期限が切れた後,ログインすることはできません。

PC のユーザには,外部ユーザ・パスワードの有効期限が間もなく切れることが通知されるので,有効期限が切れる前にパスワードを変更できます。ところが,外部認証を使用して OpenVMS ワークステーションからログインする場合,ログイン・プロセスは外部パスワードの有効期限が間もなく切れるかどうか判断できません。したがって,パスワードの有効期限が設定されていて,ユーザの大半が PC を使用していないサイトでは,ワークステーション・ユーザに対して外部認証を使用しない方が賢明です。

4.9 INITIALIZE コマンド: 不正なメッセージの出力

V7.3-2

エラーにより, %INIT-I-LIMITCHANGED メッセージとともに,誤ったメッセージが表示されます。 %INIT-I-LIMITCHANGED メッセージは,INITIALIZE/LIMIT で指定した値が, INITIALIZE によって無効になることをユーザに知らせます。

%INIT-I-LIMITCHANGED メッセージが表示されたら, /LIMIT 修飾子に指定した値をチェックしてください。この値は,ディスクの物理サイズ以上でなくてはなりません。 INITIALIZE は,/LIMIT の値が小さすぎた場合,もっと大きな値を使用します。 INITIALIZE は正常に完了し,ディスクは適切にマウントされます。このメッセージは無視しても構いませんが,コマンドを再入力して, /LIMIT により大きな値を指定するか,値なしで /LIMIT を指定することもできます。値を指定しない場合は,ディスクの最大拡張サイズが設定されます。

/LIMIT についての詳細は,オンライン・ヘルプ,または『OpenVMS DCL ディクショナリ』の INITIALIZE/LIMIT コマンドの説明を参照してください。

4.10 ロック・マネージャ: 高速ロック再マスタリングと PE1

V7.3

OpenVMS 分散ロック・マネージャには,ロック再マスタリングという機能があります。ロック再マスタリングとは,リソース・ツリーのロック・マスタの権利をクラスタ内にある別のノードに移動することです。ロック・ツリーのマスタになるノードは,クラスタ内の別のノードとのやり取りが不要なため,ローカルなロック要求をより高速で処理することができます。ほとんどのロック処理を実行するノードにロック・ツリーがあると,システム全体の性能が向上します。

OpenVMS Version 7.3 より前のバージョンで,ロック再マスタリングを実行すると, 1 つのローカル・ロックにつき 1 つのメッセージがすべてのノードから新しいマスタに送信されていました。このため,非常に大規模なロック・ツリーの場合には,ロック再マスタリング処理を実行するために膨大な時間が必要でした。しかも,この処理中には,ロック・ツリーに対するすべてのアプリケーションのロックが停止されました。

OpenVMS Version 7.3 以降では,ロック・データの新しいマスタへの送信は,非常に大規模な転送で実行されます。これはより効率的な処理であり, 1 つのロック・ツリーを 3〜20 倍速く移動することができるようになります。

ロック再マスタリングの大規模転送を使用することができるのは, OpenVMS Version 7.3 以降のバージョンを実行しているノードだけです。 OpenVMS Version 7.3 以降のノードとそれより前のバージョンを実行しているノードとの間の再マスタリングでは,引き続き 1 つのロックにつき 1 つのメッセージを送信する必要があります。

PE1 システム・パラメータを使用して,再マスタリングの対象となりうるロック・ツリーのサイズを制限している場合には,その値を増やして大規模なロック・ツリーを移動できるようにするか,その値をゼロ (0) に設定してどのようなサイズのロック・ツリーでも移動できるようにします。

4.11 Logical Disk (LD) ユーティリティ: RMS 使用時のエラー

V7.3-2

Logical Disk (LD) ユーティリティの機能によって,論理ディスクを使用しているエンド・ユーザで問題が発生することがあります。この問題は,LD ユーティリティを使用していれば,どのバージョンの OpenVMS でも発生する可能性があります。

LD ユーティリティは,ディスクに対して操作しているときに,コンテナ・ファイルのキャッシュをバイパスします。 RMS がコンテナ・ファイルの読み取りや書き込みに使用される場合,ファイルへの接続と,その後の書き込み中の論理ディスクへの接続に LD ユーティリティが使用されると, RMS は古いデータを持つことになります。

この問題は,LD ユーティリティを使用して, CD-ROM に焼き付けるイメージを作成する場合に,主に発生します。

この問題を回避するには,次の DCL コマンドを実行して, LD ユーティリティ用のコンテナ・ファイルとして使用されるファイルのキャッシュをオフにします。


$ SET FILE/CACHING_ATTRIBUTE=NO_CACHING CONTAINER_FILE.DSK 

この DCL コマンドは,CDRECORD.COM コマンド・プロシージャの一部としては実行されません。このため, CDRECORD.COM で作成した論理ディスクのコンテナ・ファイルを再使用する場合は,このコマンドを使用してキャッシュをオフにしてください。

4.12 MAIL ユーティリティ: ドキュメントの訂正

V7.3-2

『OpenVMS システム管理者マニュアル』の「オペレーティング・システムのカスタマイズ」の章にある「MAIL のカスタマイズ」の項で, MAIL$SYSTEM_FLAGS 論理名に対する 2 つの値 (8 と 16) が,誤って VAX 専用と記載されています。これらの値は,Alpha システムにも有効です。

4.13 OpenVMS Cluster システム

ここでは,OpenVMS Cluster システムに関する注意事項をまとめます。

4.13.1 クラスタの互換性のために必要なパッチ・キット

V7.3-2

OpenVMS Version 7.3-2 システムを既存の OpenVMS Cluster システムに導入する前に,以前のバージョンの OpenVMS を実行しているシステムに,パッチ・キット (修正キットとも呼ばれます) を適用しなければなりません。 Fibre Channel,XFC,または Volume Shadowing を使用している場合は,追加のパッチ・キットも必要です。これらのキットは,各バージョンに固有のものです。

表 4-1 に,パッチ・キットが必要な機能と,そのパッチ・キット名を示します。各パッチ・キットには,同じ名前の,対応する readme ファイルがあります (ファイル拡張子は .README です)。

次の Web サイトから,パッチ・キットをダウンロードしてください (「OpenVMS」パッチ・キットを選択します)。または,弊社のサポート担当者に連絡して,ご使用のシステムに合った媒体でパッチ・キットを入手してください。


http://h18007.www1.hp.com/support/files/index.html    

注意

パッチ・キットは,必要に応じて,定期的にアップデートされます。各機能に対する最新のパッチ・キット (キットの readme ファイルにバージョン番号が示されています) を必ず使用してください。各キットの最新バージョンは,Web サイトに掲載されているバージョンです。

表 4-1 クラスタの互換性のために必要なパッチ・キット
機能 ファイル名
OpenVMS Alpha Version 7.3-1
DECnet-Plus を除く,すべてのパッチ・キットを持つアップデート・キット DEC-AXPVMS-VMS731_UPDATE-V0100
DECnet-Plus DEC-AXPVMS-DNVOSIECO02-V0703-1-4.PCSI
OpenVMS Alpha Version 7.3
DECnet-Plus を除く,すべてのパッチ・キットを持つアップデート・キット DEC-AXPVMS-VMS73_UPDATE-V0200--4.PCSI
DECnet-Plus DEC-AXPVMS-DNVOSIECO03-V0703--4.PCSI
OpenVMS VAX Version 7.3
Audit Server VAXAUDS01_073
Cluster VAXSYSL01_073
DECnet-Plus VAXVMS-DNVOSIECO02-V0703--4.PCSI
DECwindows Motif VAXDWMOTMUP01_073
Files 11 VAXF11X02_073
MAIL VAXMAIL01_073
MOUNT VAXMOUN01_073
RMS VAXRMS01_073
Shadowing VAXSHAD01_073
System VAXSYS01_073
OpenVMS Alpha Version 7.2-2
次のキットを除く,すべてのパッチ・キットを持つアップデート・キット DEC-AXPVMS-VMS722_UPDATE-V0100-4.PCSI
Cluster DEC-AXPVMS-VMS722_DRIVER-V0300--4.PCSI
DECnet-Plus DEC-AXPVMS-DNVOSIECO06-V0702--4.PCSI
OpenVMS VAX Version 7.2
次のキットを除く,すべてのパッチ・キットを持つアップデート・キット VAXUPDATE01_072
Audit Server VAXAUDS01_072
Backup Utility VAXBACK02_072
CLI Utility VAXCLIU03_072
C RTL VAXACRT02_072
DCE DEC-VAXVMS-VAX_DCEECO_015_1-V0100--4.PCSI
DECnet-Plus DEC-VAXVMS-DNVOSIECO06-V0702--4.PCSI
DECwindows Motif VAXDWMOTMUP01_072
Fibre Channel VAXDRIV02_072
Files 11 VAXF11X04_072
LAT VAXLAT01_072
LIBRTL VAXLIBR01_072
MANAGE VAXMANA01_072
MIME VAXMIME02_072
Mutex Release Error VAXDUP01_072
ODS1 VAXODS1_01_072
PCSI DEC-VAXVMS-VMS72_PCSI-V0101--4.PCSI
PThreads VAXPTHR01_072
RMS VAXRMS02_072
Volume Shadowing VAXSHAD03_072
XFC/VCC 互換性サポートと論理名 VAXSYS03_072

4.13.2 Fibre Channel および SCSI マルチパスと,サード・パーティ製品との非互換性を修正する新しい API

V7.3-2

システムと,SCSI デバイスまたは Fibre Channel デバイスの間に存在する複数のパス間でのフェールオーバをサポートするマルチパス機能は, OpenVMS Alpha Version 7.2-1 で導入されました。 OpenVMS Alpha Version 7.3-1 では, Fibre Channel マルチパス・テープ・デバイス間でのフェールオーバのサポートが導入されました。

このマルチパス機能は,サード・パーティのディスク・キャッシング,ディスク・シャドウイング,または類似の機能を持つ製品との互換性がないことがあります。この機能がソフトウェアの製造元でサポートされるようになるまでは,そのようなソフトウェアを,マルチパス・フェールオーバ用に構成された SCSI デバイスまたは Fibre Channel デバイスでは使用しないでください。

OpenVMS Alpha SCSI ディスク・クラス・ドライバ (SYS$DKDRIVER.EXE), OpenVMS Alpha SCSI テープ・クラス・ドライバ (SYS$MKDRIVER.EXE),または SCSI 汎用クラス・ドライバ (SYS$GKDRIVER) の Driver Dispatch Table (DDT) の変更に依存しているサード・パーティ製品で SCSI マルチパス機能が正常に動作するようにするには,製品を変更する必要があります。

このようなソフトウェアの作成者は,OpenVMS Alpha Version 7.3-2 で導入された新しい DDT Intercept Establisher ルーチンを使用して,ソフトウェアを変更できるようになりました。これらのルーチンの詳細は,『HP OpenVMS Alpha Version 7.3--2 新機能説明書』を参照してください。

注意

サード・パーティ製のディスク・キャッシュ製品や,ディスク・シャドウィング・アプリケーションを使用している場合は,アプリケーションがこれらの新しいルーチンを使用するように改訂されるまで, OpenVMS SCSI マルチパス構成や Fibre Channel マルチパス構成でこれらの製品を使用しないでください。

OpenVMS Alpha SCSI マルチパス機能と Fibre Channel マルチパス機能の詳細は,『OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

4.13.3 SCSI テープ・ドライブ: テープのディスマウント後の MEDOFL エラー

V7.3-2

DISMOUNT/NOUNLOAD コマンドを使用してテープをディスマウントした後, SCSI テープに対して最初に実行したコマンドで, "%SYSTEM-F-MEDOFL, medium is offline" エラーが発生することがあります。たとえば,テープをディスマウントした直後にテープを初期化またはマウントしようとすると,このエラーが発生することがあります。ディスマウント操作の一環としてテープがまだリワインドされているため,このエラーが返されます。

テープ・ユニットがマルチパス・セットのメンバの場合,マルチパス回復の一環として (MEDOFL エラーの代わりに) パス・スイッチが発生することがあります。これらの MEDOFL エラーとパス・スイッチは,一部のモデルの SCSI テープ・ドライブ (LTO-2 HP Ultrium 460 など) で発生する傾向があります。

テープに対する DISMOUNT コマンド実行後の最初のコマンドでパス・スイッチが発生した場合,テープが回復され,ユーザ・アクションが不要であることを示しています。 MEDOFL エラーが発生した場合は,テープのリワインド完了後,失敗したコマンドを再実行してください。このような手作業での再実行を不要にするために, SCSI テープ・ドライバは,将来の修正キットで変更されます。

4.13.4 CLUSTER_CONFIG.COM と,ルート・ディレクトリ名の制限

V7.3-2

この注意事項は,『OpenVMS Cluster システム』の表 8-3 (「CLUSTER_CONFIG_LAN.COM および CLUSTER_CONFIG.COM から要求されるデータ」) のアップデートに関するものです。

このドキュメントでは,システム・ディスクに直接アクセスするコンピュータで使用できる, 16 進数の桁数の制限を記載しています。この制限は,VAX コンピュータについては正しいのですが, Alpha コンピュータについては正しくありません。

このコマンド・プロシージャで,次の情報の入力が求められます。


Computer's root directory name on cluster system disk: 

このドキュメントには,次のように記載されています。

プロシージャから提供されるデフォルトをそのまま使用するときは, Return キーを押す。または SYSx という形式で名前を指定する。

システム・ディスクに直接アクセスできる 16 進値の範囲の制限は, VAX コンピュータについては正しく記載されています。システム・ディスクに直接アクセスできる Alpha コンピュータでは,この 16 進値の有効範囲はもっと広く, VAX の範囲と同じ 1 〜 9 または A 〜 D の他に, 10 〜 FFFF の範囲も含まれます。 SYSE と SYSF は,システム用に予約されています。

『OpenVMS Cluster システム』の次の版には,この情報が盛り込まれます。


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