日本語 Compaq OpenVMS
フォント管理ユーティリティ
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第 2 章
日本語ターミナル・ドライバとフォント・ハンドラ

この章では,日本語ターミナル・ドライバとフォント・ハンドラの機能について説明します。

2.1 日本語ターミナル・ドライバ

漢字ターミナルのサポートのために提供されている日本語ターミナル・ドライバは, Compaq OpenVMS の標準ターミナル・ドライバの機能に加えて,次の機能を持ちます。

これらの機能は,KANJIGEN ユーティリティで漢字ターミナルに対して設定した場合にのみ作動し,その他の場合は Compaq OpenVMS の標準ターミナル・ドライバと同じ機能となります。

日本語ターミナル・ドライバには,次のものがあります。

2.1.1 日本語ターミナル・ドライバの処理

日本語ターミナル・ドライバは,標準ドライバの機能に加えて以下の処理を行います。

  1. 文字パターン・データのオンデマンド・ローディング出力

    日本語ターミナル・ドライバは,漢字ターミナルのフォント ROM にない文字パターンを必要に応じて出力する機能を提供します。

    オンデマンド・ローディングについての詳しい説明は, 第 2.2 節 をご覧ください。

  2. 罫線漢字コードの変換

    DEC 漢字 1983 年版罫線コードを,DEC 漢字文字セットの,DEC 確保領域内にある DEC 罫線に変換します。これにより, DEC 漢字 1978 年版の漢字ターミナルで罫線を表示できます。

  3. 日本語文字コードの入出力
    Super DEC 漢字の文字コードが文字として扱われるように,以下の取り扱いを変更します。


    上記の機能は,KANJIGEN ユーティリティの文字単位編集機能によって設定されます。

2.1.2 標準ターミナル・ドライバとの切り換え

VAX 版

日本語 Compaq OpenVMS VAX では,標準ターミナル・ドライバと日本語ターミナル・ドライバの切り換えは,次のようにして行います。

  1. 日本語ターミナル・ドライバへの切り換え

    JSY$SYSTEM:JSY$SETPARAMS.COM を使用します。このコマンド・プロシージャは,以下の処理を行います。

  2. 標準ターミナル・ドライバへの切り換え

    JSY$SYSTEM:JSY$RESETPARAMS.COM を使用します。このコマンド・プロシージャは,以下の処理を行います。

通常は,ターミナル・ドライバを切り換える必要はありませんが,日本語 Compaq OpenVMS のバージョン・アップの際に必要になる場合があります。

Alpha 版

日本語 OpenVMS Alpha V6.2 以降では,日本語を使う場合でも標準ターミナル・ドライバを使用します。システム・パラメータの TTY_CLASSNAME の定義は "TT" に設定します。

2.2 オンデマンド・ローディング

この節では,オンデマンド・ローディングについて説明します。

2.2.1 概要

漢字ターミナルには,そのフォント ROM に JIS X0208第1水準の漢字のみを持つもの,第2水準まで持つものなどさまざまですが,日本語 OpenVMS は漢字ターミナルにない漢字も自由に使用できるように,オンデマンド・ローディング機能を提供します。

オンデマンド・ローディングとは,漢字ターミナルのフォント ROM にない文字パターンを検知し,必要に応じて対応する文字パターンを漢字ターミナルに送って,文字の出力を可能にする機能です。

漢字ターミナルのフォントROM にない文字パターンを検知した場合,日本語ターミナル・ドライバが補助プロセスであるフォント・ハンドラに漢字コードを通知します。フォント・ハンドラは,システムのフォント・データベースを読み,その漢字コードの文字パターンを漢字ターミナルに送ります。

このオンデマンド・ローディング処理を行うかどうかは, KANJIGEN ユーティリティで各漢字ターミナルごとに指定できます。

2.2.2 ソフトウェア・オンデマンド・ローディング

ソフトウェア・オンデマンド・ローディングとは,漢字ターミナルのフォント要求機能を用いないオンデマンド・ローディング機能です。漢字ターミナルが接続されているシリアル・ライン・インタフェースの種類,ターミナル・サーバの種類およびバージョンにかかわりなく,使用することがができます。

ただし,1 つのターミナルからターミナル・サーバ経由で複数のセッションを使用している場合,その各セッションで同時にソフトウェア・オンデマンド・ローディングを使用することはできません。その場合はハードウェア・オンデマンド・ローディングを使用してください。

ハードウェア・オンデマンド・ローディング処理の流れを 図 2-1 に示します。

図 2-1 ソフトウェア・オンデマンド・ローディングの流れ


  1. ユーザ・プロセスは,日本語ターミナル・ドライバへ表示する漢字コードを送る。

  2. 日本語ターミナル・ドライバは,受け取った漢字コードが漢字ターミナルのフォントROMにあるかどうか調べ,もしなければフォント・ハンドラに文字パターンの要求を行う。

  3. フォント・ハンドラは,要求された漢字コードに対応する文字パターンを,フォント・データベースより読み込む。

  4. フォント・ハンドラは,日本語ターミナル・ドライバに文字パターンの出力を依頼し,日本語ターミナル・ドライバは文字パターンを漢字ターミナルに送る。

  5. 日本語ターミナル・ドライバは,漢字コードを漢字ターミナルに送る。

  6. 漢字ターミナルは,文字パターンをフォントRAMに記憶し,表示または印刷する。

2.2.3 ハードウェア・オンデマンド・ローディング

ハードウェア・オンデマンド・ローディングとは,漢字ターミナルのフォント要求機能を用いるオンデマンド・ローディング機能です。漢字ターミナル自身がフォントの管理を行うため,ターミナル・サーバ経由で複数のセッションを使用している場合でも,オンデマンド・ローディングを行うことができます。

ただし,1 つのターミナルからターミナル・サーバ経由で複数のノードへ接続して,その各セッションで同時にオンデマンド・ローディングを使用する場合は,接続している全てのノードのフォント・データベースの内容が同一である必要があります。

ハードウェア・オンデマンド・ローディングを使用できるのは,以下のターミナル・サーバ経由の接続の場合のみです。

これら以外のインタフェースでオンデマンド・ローディングを行う場合には,ソフトウェア・オンデマンド・ローディングを使用してください。

ハードウェア・オンデマンド・ローディング処理の流れを 図 2-2 に示します。

図 2-2 ハードウェア・オンデマンド・ローディングの流れ


  1. ユーザ・プロセスは,日本語ターミナル・ドライバを通して漢字コードを漢字ターミナルに出力する。

  2. 漢字ターミナルは,出力しようとする漢字の文字パターンが漢字ターミナル中にあるかどうか調べ,もしなければ文字パターンの要求を行う。

  3. 日本語ターミナル・ドライバは,フォント・ハンドラの AST ルーチンを起動すると共に,漢字コードを引き渡す。

  4. フォント・ハンドラは,要求された漢字コードに対応する文字パターンを,フォント・データベースより読み込む。

  5. フォント・ハンドラは,日本語ターミナル・ドライバに文字パターンの出力を依頼する。

  6. 日本語ターミナル・ドライバは,他のデータに優先して文字パターンを漢字ターミナルに送る。

  7. 漢字ターミナルは,文字パターンをフォントRAM に記憶し,表示または印刷する。

2.2.4 オンデマンド・ローディングの使用方法

オンデマンド・ローディングを使用するには,KANJIGEN ユーティリティの /FONT 修飾子を使用して,指定した漢字ターミナルに対するオンデマンド・ローディング処理を有効にしてください(KANJIGEN ユーティリティについては, 第 5 章 を参照)。

オンデマンド・ローディングをサポートする装置については, 表 1-1 を参照してください。一部の漢字プリンタでは,オンデマンド・ローディングがサポートされていますが,漢字プリンタに対しては漢字プリント・シンビオントを使用するようにしてください。漢字プリント・シンビオントについては, 第 3 章 を参照してください。

2.2.5 注意および制限事項

2.3 フォント・ハンドラ

フォント・ハンドラはシステムに 1 つだけ存在する,オンデマンド・ローディング用の補助プロセスで,ユーザとは直接には関係せず独立して動作します。

  1. 起動

    フォント・ハンドラ・プロセスは,日本語 Compaq OpenVMS の起動時に自動的に作成されます。

  2. 属性

    フォント・ハンドラの主な属性を以下に示します。

    - プロセス名 JSY$FS_JA_JP_01
    - 優先順位 8
    - UIC [1,20]


第 3 章
漢字プリント・シンビオント

この章では,漢字プリント・シンビオントについて説明します。

3.1 概要

漢字プリント・シンビオントは,Compaq OpenVMS オペレーティング・システムの標準プリント・シンビオントの機能に加え,拡張漢字や JIS X 0208 第 2 水準漢字 (ハードウェアに無い場合) を印字する機能を持つ漢字プリンタの専用シンビオントです。本章では,漢字プリント・シンビオントと標準プリント・シンビオントの違いを説明します。

3.2 漢字プリント・シンビオントが行う処理

漢字プリント・シンビオントは標準プリント・シンビオントの処理に加えて,以下の処理を行います。

3.3 プリンタ・ハードウェア・タイプ論理名

漢字プリント・シンビオントの起動時に,論理名 JSY$PRTSMB_HWTYPE_queue-name により接続されている漢字プリンタのタイプを指定します。指定可能な値は 0 から 2 で,以下の表で示されるハードウェアのタイプに相当します。

漢字コード プリンタのROM第1水準 プリンタのROM第2水準
JIS X0208-1978 2 1
JIS X0208-1983 設定できません 0 1


1省略時または未定義時にはこの設定となります。

漢字プリント・シンビオントが論理名を参照するためには,論理名がシステム論理名テーブルになければなりません。つまり JSY$PRTSMB_HWTYPE_queue-name 論理名は DCLコマンドのDEFINE/SYSTEM,またはASSIGN/SYSTEMを使用して定義しなければなりません。

3.4 漢字プリント・シンビオントの種類

漢字プリント・シンビオントは2種類あり,漢字プリンタの接続形式により使い分ける必要があります。

3.5 サポートする漢字プリンタ

漢字プリント・シンビオントは,以下の漢字プリンタをサポートします。

漢字プリント・シンビオントはLN03,DEClaser 2300 および DEClaser 2400 をサポートしません。これらのプリンタには,標準版の PRTSMB.EXE または LATSYM.EXE を使用し,ユーザ定義文字の印刷にはプリローディングを使用してください。

3.6 プリント・キューの設定方法

プリント・キューの設定方法については,『 Compaq OpenVMS システム管理者マニュアル』を参照してください。

漢字プリント・シンビオントを使用するプリント・キュー設定の具体例については,『日本語 Compaq OpenVMS 概説書』を参照してください。

3.7 注意および制限事項


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