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6 OpenVMSシステムでの装置のサポート

この章では,AlphaシステムとVAXシステムでの OpenVMS 装置のサポートに関するリリース・ ノートをまとめます。必要に応じて,Alpha 固有の情報であるのか,VAX 固有の情報であるのかが見出しに示されます。

6.1 OpenVMS デバイス・ドライバの再コンパイルと再リンク

ここでは,OpenVMS デバイス・ドライバの再コンパイルと再リンクに関するリリース・ ノートをまとめます。

6.1.1 Alphaデバイス・ドライバに影響を与える可能性のあるスレッド単位のセキュリティ

V7.2

OpenVMS Alpha デバイス・ドライバに影響を与える可能性のあるスレッド単位のセキュリティの詳細については, 第5.19.2.1 項を参照してください。

6.1.2 AlphaとVAXのSCSIデバイス・ドライバ

V7.2

OpenVMS の以前のバージョンの OpenVMS Alpha SCSIデバイス・ドライバが OpenVMS バージョン7.2 で正しく動作するには,再コンパイルと再リンクが必要です。

これらのドライバの再コンパイルと再リンクが必要なのは,OpenVMSバージョン7.2 で SCSI 構造体が大幅に変更されているからです。これらの変更は,SCSI インターコネクトとして Fibre Channel をサポートするための準備で必要でした。 構造体が変更されても,ソースを変更する必要はありません。

OpenVMS Alpha 7.0 より以前のバージョンからアップグレードしている OpenVMS Alpha SCSI ドライバがある場合は,第6.1.3 項を参照してください。

OpenVMS バージョン7.1 では,すべての OpenVMS Alpha および VAX SCSI デバイス・ ドライバの再コンパイルと再リンクが必要でした。OpenVMS バージョン7.1 で稼動するために再コンパイルと再リンクされた OpenVMS VAX デバイス・ドライバは, OpenVMS バージョン7.2 でそのまま正しく動作します。

6.1.3 OpenVMS Alphaデバイス・ドライバ

V7.1

OpenVMS Alphaバージョン7.0で稼動するために再コンパイルおよび再リンクされたデバイス・ ドライバは,OpenVMS Alpha Version 7.1以上で稼動するためにソース・ コードを変更したり,再コンパイルや再リンクする必要がありません( ただし,Alpha SCSIドライバは再コンパイルと再リンクが必要です。 第6.1.2項を参照してください) 。

OpenVMS Alphaバージョン7.0より以前のリリースのデバイス・ドライバのうち,OpenVMS Alpha バージョン7.0用に再コンパイルおよび再リンクされていないデバイス・ ドライバをOpenVMS Alphaバージョン7.1以上で稼動するには, 再コンパイルと再リンクが必要です。

OpenVMS Alphaバージョン7.0では,OpenVMS Alpha特権付きインタフェースと構造体が大幅に変更されました。 これらの変更の結果,OpenVMS Alphaバージョン7.0より以前のリリースのデバイス・ドライバは, OpenVMS Alphaバージョン7.0以上で正しく動作するために,ソース・ コードも変更する必要がありました。カスタマが作成したドライバのソースの変更が必要となるOpenVMS Alpha バージョン7.0の変更点の詳細については, 『OpenVMS Alpha Guide to Upgrading Privileged-Code Applications』を参照してください。

6.2 制限事項:論理ユニット番号に対するパラレルSCSIのサポート

V7.2

OpenVMSでは,パラレルSCSIバスで,各ターゲットIDに対して最大8つの論理ユニット番号(LUN) LUN がサポートされます。

SCSI-2標準では,8つのLUNに制限されていますが,SCSI-3標準は最近, LUNを64に拡大しました。HSZ80は8つより多くのLUNを実装した唯一のサポートされる装置です( 各ターゲットIDに対して32のLUNをサポートします) 。この機能はOpenVMSの現在のリリースでは使用できません。OpenVMS でのLUNの値は0〜7の範囲でなければなりません。

この制限事項は,オペレーティング・システムの将来のリリースで解除される可能性があります。 この制限事項はFibre Channelには適用されません。

6.3 一部のSCSI構成では選択的な自動構成がサポートされない

V7.2

OpenVMS Alphaでは,どの装置を自動構成するかをシステム管理者が指定するために,SYSMAN コマンドを提供しています。この情報は,次の修飾子を使用して永久的に指定できるので, システム・ブートのたびに適用され, 手動の自動構成コマンドを実行するときにも適用されます。

     SYSMAN> IO SET/EXCLUDE=(device_name)
     SYSMAN> IO AUTOCONFIGURE/EXCLUDE=(device_name) and/or /SELECT=(device_name)

HSZ割り当てクラスが割り当てられた装置名やポート割り当てクラスを含むSCSI 装置名を選択的に自動構成するために,これらのコマンドを使用することはできません。 また,これらのコマンドをFibre Channel装置に対して使用することもできません。 この制限事項はクラス・ドライバ装置(DK ,MK,DG)にだけ適用されます。選択的な自動構成は,SCSIおよびFibre Channel ポート・ドライバ装置(PK,PG,FG)のすべてに対して使用できます。

この制限事項は,ポート割り当てクラスを使用するOpenVMSバージョン7.1 にも適用されます。

6.4 IO$_SKIPFILE関数の動作の変更

V7.2

特定のSCSIテープ・ドライブの場合,OpenVMSバージョン7.1でIO$_ SKIPFILE関数の性能が大幅に向上しています。新たに実装されたIO$_ SKIPFILEは,テープがANSI標準X3.27-1987に従ってフォーマットされている場合,INIT ,MOUNT,BACKUP,COPYなどのすべての組み込みOpenVMSテープ関数と組み合わせて正しく機能します。 これはOpenVMSのデフォルト・ テープ標準規格です。

修飾子(IO$M_ALLOWFAST)を指定すると,IO$_SKIPFILE関数に対してより高い性能が要求されます。IO$M_ALLOWFAST 修飾子を使用すると, IO$_SKIPFILEは2つの連続したファイル・マークではなく,データの最後で停止します。IO$M_ALLOWFAST 修飾子の詳細については,『OpenVMS I/O User's Reference Manual』を参照してください。

OpenVMSバージョン7.2では,SKIPFILEのサポートは標準のDCLインタフェースを介して実装されており, 以前のSYS$ETC:MKSET.TXTファイルとSYS$ETC:MKSET.EXE ファイルは廃止されました。DCLインタフェースの使用の詳細については, 『OpenVMS I/O User's Reference Manual』を参照してください。

6.5 CRCTXルーチンの機能の強化(Alphaのみ)

V7.1-2

Counted Resource Context Block (CRCTX)構造体を管理するために使用できるシステム・ ルーチンが強化されました。次のルーチンは,CRCTX構造体のステータス(CRCTX$V_ITEM_VALID) を設定およびチェックするようになりました。

これらのルーチンは次のように変更されました。

有効なCRCTXステータス(CRCTX$V_ITEM_VALIDを1に設定)でIOC$DEALLOC_ CRCTXを呼び出すと,サービスは不正なステータスを返します。SYSBOOTパラメータSYSTEM_CHECK がセットされている場合は,システムはクラッシュします。 このため,ユーザが割り当ての解除されていない有効なリソースを持っているときに,CRCTX の割り当てを誤って解除するのを防止できます。

IOC$ALLOC_CNT_RESは,無効CRCTXステータス(CRCTX$V_ITEM_VALIDを0に設定) で呼び出さなければなりません。有効ステータスでこのルーチンを呼び出すと,OpenVMS はこのCRCTXによってマップされたリソースをユーザが手放すものと解釈します。OpenVMS は新しいリソースを割り当てず,不正なステータスを返します。SYSTEM_CHECK がセットされている場合は,システムはクラッシュします。IOC$ALLOC_CNT_RES は戻る前に有効ビットをセットします。

IOC$DEALLOC_CNT_RESは,有効CRCTXステータス(CRCTX$V_ITEM_VALIDを1に設定) で呼び出さなければなりません。無効CRCTXでIOC$DEALLOC_CNT_RES を呼び出すと,OpenVMSは他のパラメータが有効でないものと解釈し,不正ステータスを返します。SYSTEM_CHECK がセットされている場合は,システムはクラッシュします。IOC$DEALLOC_CNT_RES は戻る前に有効ビットをクリアします。

IOC$LOAD_MAPは有効CRCTXで呼び出さなければなりません。無効CRCTX (CRCTX$V_ITEM_VALIDが0に設定)で呼び出すと,他のパラメータも無効であると解釈され, 不正ステータスが返されます。SYSBOOTパラメータSYSTEM_CHECK がセットされている場合は,システムはクラッシュします。

これらの変更により,デバイス・サポート・アプリケーションや特権付きコード・ アプリケーションの開発者は,OpenVMSで汎用リソースとして取り扱われるscatter gather registers の割り当てを解除する必要があるかどうか判断できます。CRCTX$V_ITEM_VALID ビットがセットされている場合は,IOC$DEALLOC_CNT_RES を呼び出さなければなりません。

6.6 システム・ルーチンでのLengthパラメータの新しい値(Alpha のみ)

V7.1-2

OpenVMS Alphaデバイス・ドライバで呼び出される次のシステム・ルーチンのlength パラメータに新しい値が追加されました。


IOC$READ_PCI_CONFIG
IOC$WRITE_PCI_CONFIG
IOC$READ_IO
IOC$WRITE_IO

2つの新しいlength値(IOC$K_BYTEとIOC$K_WORD)が追加されたため,バイト・ データとワード・データを右桁揃えで渡すことができるようになりました。 表 6-1はlengthパラメータに対して指定できる値を示しています。

表 6-1 Lengthパラメータの値

値(16進数) キーワード
1 IOC$K_BYTE_LANED
2 IOC$K_WORD_LANED
4 IOC$K_LONGWORD
8 IOC$K_QUADWORD
100 IOC$K_BYTE
200 IOC$K_WORD

IOC$K_BYTE_LANEDとIOC$K_WORD_LANEDは次の方法でバイトを格納します。

IOC$K_BYTE_LANED (1)バイト・レーン・バイト

アドレスのビット<1:0>に応じて,バイトは次のレーンのいずれかにロングワードとして格納されます。

        +---+---+---+---+
        |   |   |   | X |       bits <1:0> = 0
        +---+---+---+---+

        +---+---+---+---+
        |   |   | X |   |       bits <1:0> = 1
        +---+---+---+---+

        +---+---+---+---+
        |   | X |   |   |       bits <1:0> = 2
        +---+---+---+---+

        +---+---+---+---+
        | X |   |   |   |       bits <1:0> = 3
        +---+---+---+---+

ドライバは正しいバイトを選択するために,アドレスの下位2ビットを使用しなければなりません。

IOC$K_WORD_LANED (2)バイト・レーン・ワード

アドレスのビット <1:0>に応じて,ワードは次の場所のいずれかにロングワードとして格納されます。

        +---+---+---+---+
        |   |   | XXXXX |       bits <1:0> = 0
        +---+---+---+---+

        +---+---+---+---+
        |   | XXXXX |   |       bits <1:0> = 1
        +---+---+---+---+

        +---+---+---+---+
        | XXXXX |   |   |       bits <1:0> = 2
        +---+---+---+---+

ドライバはアドレスの下位2ビットを使用して,正しいワードを選択しなければなりません。

しかし,IOC$K_BYTEとIOC$K_WORDを使用する場合は,データは常に右桁揃えされます。

IOC$K_BYTE (hex 100)右桁揃えバイト

バイトは常に右端のレーンに格納されます。

        +---+---+---+---+
        |   |   |   | X |       bits <1:0> = 0,1,2,3
        +---+---+---+---+

上位バイトには予測できないデータが格納されるため,正しく動作するにはマスクしなければなりません。

IOC$K_WORD (hex 200)右桁揃えワード

ワードは常に右端のレーンに格納されます。

        +---+---+---+---+
        |   |   | XXXXX |       bits <1:0> = 0,1,2
        +---+---+---+---+

上位ワードには予測できないデータが格納されるので,正しく動作するにはマスクしなければなりません。

lengthパラメータの新しい値を使用すれば,デバイス・ドライバを作成するプログラマは, 書き込みの前と読み込みの後に,データを正しいレーンに格納する必要がなくなります。

6.7 DMA用のドライバで必要なメモリ・バリア(Alphaのみ)

V7.1-2

21264プロセッサ・アーキテクチャでは,命令を順序通りに実行しないことと, 一連のコードを実際のコードの場所より前に実行することで,性能を向上しています。 この結果,DMA装置との通信も含めて,プロセス間通信に影響が発生する可能性があります。 以前のハードウェア実装で正しく実行されていたコードが,21264 プロセッサや将来のAlphaプロセッサで正しく実行されないようになる場合があります。

CPUと装置の間で共有メモリを使用する通信の場合の規則については, The Alpha Architecture Reference Manual, Third Editionを参照してください。21264プロセッサで規則が変更されたわけではありませんが, 実行順序の問題が発生する可能性が高くなっています。

問題はおもに,次の両方の条件が満たされるときに,DMA読み込みを実行するデバイス・ ドライバで発生します。

次の例を参照してください。

     Device: Write DATA
             Logical MB (logical memory barrier)
             Write FLAG (perhaps memory queue pointer,
                         memory location, or CSR bit)

     Driver: Read FLAG
             If FLAG, Read/Use DATA
             else exit Interrupt Service Routine
             Loop to Read flag

この例では,装置のLOGICAL MBは,実際には装置から読み込まれたCSRである可能性があります。 このドライバでは,メモリ・バリア命令が,フラグの読み込みとデータの使用の間のコードに存在しなければ ならない という問題があります。プロセッサ間通信の場合は,この問題が常に発生しますが, 装置と通信するドライバでは注意が払われていない可能性があります。

以前のリリースでは,ドライバはおそらくPCIの順序に関する規則とキャッシュの結合性によって, フラグを確認した後,古いDATAを検出することがありませんでした。

21264プロセッサでは,Read FLAGの後に推論的な実行が行われ,FLAGのロードを待っている間に,DATA が推論的にあらかじめフェッチされることがあります。DATA とFLAGの間に明示的な依存関係がなく,FLAGがセットされていることがわかった場合には, あらかじめフェッチされていた古いDATA が使用されることがあります。判断はすでに推測した内容をもとに行なわれています。

FLAGの読み込みとDATAのRead/Useの間のメモリ・バリアは,明示的なバリアを推測として設定します。 このようなバリアは,FLAGとDATAの順序も強制的に設定します。


注意
LOCK/DEVICELOCK を使用しても, メモリ・バリアがコード内に配置されることを保証できません。さらに,Read FLAG と DATA の Read/Use の間のサブルーチン呼び出しのメモリ・バリアは推論を防止しません。 メモリ・バリアはインラインでなければなりません

共有メモリを使用する装置にデータを送信する場合も,同じ問題が発生する可能性があります( ただし,発生頻度は低くなります)。この場合,コードは DATA の書き込みと FLAG の書き込みの間にメモリ・バリアを配置しなければ なりません。 この規則は,共有メモリを介して装置と通信するデバイス・ドライバで正しい順序を確保するために必要です。


6.8 ISA_CONFIG.DATは将来のリリースでサポートされない(Alpha のみ)

V7.1

SYS$MANAGER:ISA_CONFIG.DATファイルを使用してISA装置を構成する機能のサポートは,OpenVMS Alpha の将来のリリースでは提供されません。 このファイルを使用する場合,コンソールからはISACFGユーティリティを使用し, デバイス・ドライバをロードする場合は,新しいファイル・ ベースの自動構成方式を使用するように変換しなければなりません( 『Writing OpenVMS Alpha Device Drivers in C』を参照)。

6.9 AlphaStation 200/400ではISA_CONFIG.DATの変更が必要

V7.1

AlphaStation 200/400ファミリ・システムでISA装置を構成されるお客様は, 各装置のノード情報が各装置記述ブロックの最後に格納されるように,SYS$MANAGER:ISA_CONFIG.DAT ファイルを変更しなければなりません。


重要
OpenVMSバージョン6.2または7.0 システムからアップグレードする場合は,アップグレード手順を開始する前に, この変更を行なわなければなりません。

たとえば,OpenVMSバージョン7.1より以前には,装置記述ブロックは次のとおりでした。

             [AUA0]
              NAME=AU
              NODE=3
              DRIVER=SYS$MSBDRIVER
              IRQ=9
              DMA=(0,1)
              PORT=(388:4,530:8)

上記は次のように変更されました。

             [AUA0]
              NAME=AU
              DRIVER=SYS$MSBDRIVER
              IRQ=9
              DMA=(0,1)
              PORT=(388:4,530:8)
              NODE=3

SYS$MANAGER:ISA_CONFIG.DATファイルを使用されるお客様は,第6.8節を参照してください。

6.10 Alphaシステムでのシリアル・ライン装置の名前

V7.1

OpenVMSでは,次のAlphaシステムで第2のシリアル・ポートを取り扱う方法が変更されました。

console環境変数をgraphicsに設定した状態で,これらのシステムのいずれかがブートされると, シリアル・ラインの名前(COM1)は以前のリリースと異なる名前になります。COM1 装置はOPA1ではなく,TTB0 という名前になります。この場合,COM1装置はSYS$OPDRIVERではなく, SYS$YSDRIVERによって制御されます。

consoleがserialに設定されている場合は,COM1装置の名前はOPA0になります。

6.11 AlphaServer 4100システムでのメモリ・ ホール

V7.1

AlphaServer 4100システムには,物理的なメモリ・ホールが存在する可能性があります。 図 6-1に示すように,メモリ・ ドータ・カード・ペアには512 MB,256 MB,128 MBの3種類のサイズがあります。AlphaServer 4100 システムの構成規則に従うと,メモリ・カード・ ペアはサイズの大きい順に並べなければなりません。

AlphaServer 4100ハードウェアは最初のメモリ・ドータ・カード・セットを読み込み, 後続のメモリ・カード・ペアが同じサイズであるものと解釈します。 ハードウェアが読み込んだ最初のカード・セットの後のメモリ・ カード・ペアのサイズは同じでない可能性があるため,メモリ・ ホールが発生します。図 6-1に示すように,3000.0000 にあるホールはOpenVMSで取り扱わなければなりません。 4800.0000にあるホールはアドレス空間の先頭にあり,OpenVMSで無視してもかまいません。


注意
OpenVMS Alphaの以前のバージョンでは, 物理的なメモリ・ホールのあるシステムが効率的にサポートされていなかったので, システム・メモリの使い方が非効率的になっていました。OpenVMS Alpha バージョン7.1以上のメモリ管理構造体は,メモリ・ ホールを認識するように少し変更されています。この結果,OpenVMS Alphaオペレーティング・システムの以前のバージョンで非効率的だった部分は排除されました。

図 6-1 Example Memory Diagram

この構成は,ドライバがマップ・レジスタを使用しなければならないかどうかを判断するために使用されるアルゴリズムに影響を与えます。 OpenVMS Alphaバージョン7.1より以前のリリースでは,デバイス・ドライバは次の操作を実行していました。

  1. キーIOC$K_DIRECT_DMA_SIZEを使用してIOC$NODE_DATAを呼び出すことで, ダイレクトDMAウィンドウのサイズ(メガバイト単位)を取得します。 これは通常,1 GBです。

  2. IOC$NODE_DATAから返されたサイズをページ数に変換し,サイズを mmg$gl_memsizeと比較します。これには物理メモリのページ数が格納されています。

  3. mmg$gl_memsizeがIOC$NODE_DATAから返されたサイズより大きい場合は, マップ・レジスタを使用します。それ以外の場合はダイレクトDMA ウィンドウを使用します。

mmg$gl_memsizeグローバル・セルには,メモリ・ホールは含まれません。 この結果,システムには7/8 GBのメモリしかありませんが, OpenVMS Alphaバージョン7.1より以前のリリースのアルゴリズムでは, 装置がダイレクトDMAウィンドウを使用できるように見えます。それでも1 GB の境界をこえて128 MBのメモリがあるので,ドライバはマップ・レジスタを使用する必要があります。 この問題を回避するために,OpenVMS Alphaバージョン7.1より以前のリリースのアルゴリズムを使用するドライバは, 次のアルゴリズムに変更しなければなりません。

  1. キーIOC$K_DIRECT_DMA_SIZEを使用してIOC$NODE_DATAを呼び出すことで, ダイレクトDMAウィンドウのサイズ(メガバイト単位)を取得します。 これは通常,1 GBです。

  2. IOC$NODE_DATAから返されたサイズをページ数に変換します。 バイト数をmmg$gl_page_sizeの値で除算します。次の例を参照してください。
         int dma_size;
         int pages;
    
         status = IOC$NODE_DATA (crb, IOC$K_DIRECT_DMA_SIZE, &dma_size);
                 /* dma_size contains the number of megabytes.
                  * convert number of megabytes to bytes.
                  */
         dma_size = dma_size * (1024 * 1024);
                 /* Convert number of bytes to number of pages by
                  *  dividing by number of bytes per page.
                  */
         pages = dma_size / MMG$GL_PAGE_SIZE;
    

  3. 変換したページ数をmmg$gl_maxpfn + 1と比較します。

  4. mmg$gl_maxpfn + 1がIOC$NODE_DATAから返されたサイズより大きい場合は, マップ・レジスタを使用します。それ以外の場合はダイレクトDMA ウィンドウを使用します。

6.12 SYS$MSBDRIVERはOpenVMS Alphaディストリビューションから削除

V7.0

Microsoft Windows Sound System ISAサウンド・カード(MSB)用のドライバであるSYS$MSBDRIVER は,バージョン7.0でOpenVMS Alphaのディストリビューションから削除されました。 削除されたファイルは次のとおりです。

このドライバの強化されたバージョン(MMOV$MSBDRIVER)がMultimedia Services for OpenVMS Alphaバージョン2.0に含まれています。このレイヤード・ プロダクトには,ビデオ・キャプチャとプレイバック,DECsound の強化されたバージョン,その他のオーディオ・アプリケーションとビデオ・ アプリケーションのサポートも含まれています。

MMOV$MSBDRIVERは,SYS$MSBDRIVERと同じ$QIOプログラミング・インタフェースを提供します。 なるべくMultimedia Services for OpenVMSで提供されるWAVE アプリケーション・プログラミング・インタフェースを使用するようにしてください。 このインタフェースの方が柔軟で,他のプラットフォームへの移植性が優れているからです(Multimedia Services for OpenVMSバージョン2.0の詳細については,SPD 64.24.00を参照してください) 。

6.13 OpenVMS Alphaドライバ用の装置IPLの設定

V6.2

PCI,EISA,ISAバスをサポートするAlphaハードウェア・プラットフォームでは,20 または21の異なるIPLでI/O装置割り込みを発生させます。装置割り込みが発生するIPL は,装置をプラットフォーム間で移動したときに変化する可能性があります。 ドライバが装置IPLを20であると宣言した後,I/O 装置割り込みがIPL 21で発生するマシンでドライバを実行すると, 問題が発生します。

この問題に対する最も簡単な対処法は,PCI,EISA,ISAデバイス・ドライバでIPL 21 を使用することです。この対処法は,I/O装置割り込みがIPL 20で発生するプラットフォームでも,I/O装置割り込みがIPL 21で発生するプラットフォームでも正しく動作します。

OpenVMS Alphaの将来のリリースでは,ドライバが装置IPLを動的に判断するための, 装置から独立した機能が提供される予定です。

6.14 AlphaStation 255: PCI構成の制限事項

V7.1

OpenVMS Alphaオペレーティング・システムでは,AlphaStation 255シリーズ・ システム上で,PCIスロット0で構成されたPCIオプション・カードがサポートされません。

PCIスロット0は,AlphaStation 255シリーズ・システムで最下位の物理PCI オプション・スロットです。このスロットの割り込みシグナルは内蔵イーサネット・ ポートと共有されます。OpenVMS Alphaオペレーティング・ システムでは現在,PCI装置が割り込みラインを共有できないので, スロット0に取り付けられたPCI装置が正しく動作しないか,内蔵イーサネット・ ポートでエラーが発生します。この制限があるために, AlphaStation 255シリーズ・システムはスロット1とスロット2に構成された最大2 枚のPCIオプション・カードだけをサポートします。

6.15 RZ25MおよびRZ26Nディスク・ドライブに関する勧告(Alpha)

V7.1

DWZZAとロング・ディファレンシャルSCSIバスを含む構成で,CompaqがサポートするSCSI ディスク・ドライブをテストしているときに,2台のドライブ(RZ25M とRZ26N)でバス・フェーズに関する問題が検出されました。この理由から,DWZZA を接続するディファレンシャル・バスの長さが20メートル以上の構成では, これらのドライブを使用しないでください。

この勧告はRZ25MおよびRZ26Nドライブにだけ適用されます。OpenVMS SPD に,サポートされるドライブとして示されている他のすべてのディスク・ ドライブは,SCSI-2仕様の完全なバスの長さまで使用できます。

6.16 AlphaServer 2100システムでのSCSIコントローラの制限事項

V6.2

1 GB以上のメモリを搭載したAlphaServer 2100システムでは,Adaptec 1740/1742 SCSIコントローラ(PB2HA-SA)はサポートされません。コントローラがこのようなシステムに接続されている場合は, 次のメッセージがオペレータのコンソールに表示されます。

     %PKJDRVR-E- PKX0, Port is going OFFLINE.

6.17 OpenVMS Alpha SCSIファームウェアのサポート

ここでは,SCSIファームウェアのサポートについて説明します。

6.17.1 RZ26NおよびRZ28Mディスクに対する推奨ファームウェア・ サポート

V6.2-1H3

RZ26NおよびRZ28Mディスクを使用する場合は,ファームウェアのリビジョンは0568 以上をおすすめします。

これらのディスクで最新のファームウェア・リビジョン・レベルが使用されていない場合は, 問題が発生する可能性があります。

6.17.2 RZ26LおよびRZ28ディスクのマルチホスト使用のために必要なファームウェア

V6.2

OpenVMS ClusterのマルチホストSCSIバスにRZ26LまたはRZ28ディスクを取り付ける場合, ディスクの最低ファームウェア・リビジョンは442です。

ここでは,一部のRZ26LおよびRZ28ドライブでファームウェアを更新するために使用する手順について説明します。 この手順を使用できるのは,ホスト・ システムのSCSIアダプタに直接接続されているドライブの場合だけです。 インテリジェント・コントローラ(HSZ40やKZPSC)などを介して接続されているドライブは, この手順で更新できません。別のファームウェア更新手順があるかどうかについては, インテリジェント・コントローラのドキュメントを参照してください。


重要
ファームウェア・リビジョン・ レベル442に安全にアップグレードできるのは,特定のRZ26LおよびRZ28 ファームウェア・リビジョンだけです。ディスクをファームウェア・ リビジョン・レベル442にアップグレードできるかどうか判断するには, 第6.17.2.1項を参照してください。 ディスクがファームウェア・ リビジョン・レベル442をサポートできる場合は, 第6.17.2.2項で説明しているRZTOOLSユーティリティを使用して, ディスクのファームウェアを更新します。

6.17.2.1 ファームウェア・リビジョン・レベル442の要件

ファームウェア・リビジョン・レベル442に安全にアップグレードできるのは, 表 6-2に示したディスク・ ドライブとファームウェア・ リビジョン・レベルの組み合わせだけです。他の組み合わせに対して更新手順を実行すると, ディスクを破損する可能性があります。

表 6-2 リビジョン・レベル442ファームウェアの互換性

ディスク・ドライブ ファームウェア・リビジョン ディスク・ファイル名
RZ26L 440C RZ26L_442D_ DEC.FUP
RZ28 441CまたはD41C
435または436
RZ28_442D_DEC2104.FUP
RZ28P4_442C_DEC.FUP

6.17.2.2 ファームウェア・リビジョン・レベル442のインストール手順

ディスクでリビジョン・レベル442ファームウェアが必要かどうかと,安全にアップグレードできるかどうかを判断した後, 次の手順を実行してファームウェアを更新します( アップグレードするディスクのファイル名については, 表 6-2を参照してください)。

     $ MCR SYS$ETC:RZTOOLS_ALPHA DKB500 /LOAD=SYS$ETC:filename.FUP
       Read in 262144 bytes.
       Current FW version - X440C
       Upgrading to       - DEC0
       Loading code  ......
       New code has been sent to the drive.

6.18 OpenVMS Alpha SCSIポート・ドライバとクラス・ ドライバ

V6.2

ここでは,OpenVMS Alpha SCSIクラス・デバイス・ドライバとポート・デバイス・ ドライバの制限事項について説明します。

6.18.1 アドオンSCSIアダプタ

V6.2

OpenVMS Alphaのバージョン6.2以上では,さまざまなアドオンSCSIアダプタがサポートされます。Compaq のAlphaGenerationプラットフォームは通常,1 つ以上の内蔵SCSIアダプタをサポートし,さらに追加としてアドオンSCSI アダプタを増設することもできます。AlphaコンソールとOpenVMSの間で使用される装置名の規則が異なるため,OpenVMS 装置名はコンソールに表示される名前と一致しないことがあります。

たとえば,内蔵SCSIアダプタでは,SCSI装置のコンソール名がDKA100として表示されることがあります。 しかし,2台のアドオンSCSIアダプタを増設すると,"A" は"C"になります。OpenVMSが実行されている場合は, DKA100はDKC100として表示されます。

コンソールとOpenVMSの装置名は異なる可能性がありますが,アドオンSCSI アダプタが増設されたり,取り外されたりしない限り,コンソールに表示される装置名とOpenVMS のもとでの装置名の間の固有の指定は一貫性があります。

6.18.2 KZMSA XMIとAdaptec 1742Aアダプタの場合のSCSI ディスクI/Oの性能の低下

V6.2

OpenVMS Alphaバージョン6.2でSCSI-2 Tagged Command Queuing (TCQ)がサポートされるようになった結果,KZMSA XMI to SCSI とAdaptec 1742Aアダプタを使用している場合,SCSI ディスクのI/O性能が20%低下する可能性があります。 これは,これらのアダプタに対してTCQが実装されていないからです。 性能が低下するのは,I/O当たりのCPUコストが増加する領域です。OpenVMS Alpha バージョン6.1でCPU利用率が最大値より低い場合は, OpenVMS Alphaバージョン6.2で性能が低下することはありません。

DEC 7000を使用されているお客様で,KZMSAアダプタを使用してDEC 8000 ファミリ・システムにアップグレードを検討しているお客様にとって,この状況が大きな影響を与えるとは考えられません。 これらのプロセッサの速度は非常に高速であり, 性能の低下を補って余りあるからです。しかし,OpenVMS Alpha バージョン6.2にアップグレードされるDEC 7000のお客様の場合,SCSI I/O ディスクの性能は低下します。

DEC 2000 Model 300システムとAdaptec 1742A SCSIアダプタをご使用のお客様の場合は, この問題が大きな影響を与えると考えられます。

6.19 OpenVMS Alphaでの装置サポートに関するドキュメント

OpenVMSバージョン7.2で,『Writing OpenVMS Alpha Device Drivers in C 』マニュアルはOpenVMS ドキュメンテーション・セットに添付されなくなりました。 このマニュアルの最新のリビジョンは,1999年2月にDigital Pressから提供される予定です。 詳細については,次のWebサイトを参照してください。

http://www.bh.com/digitalpress


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