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1 インストール前の準備

この章では,日本語OpenVMS VAX V7.2のインストレーションをする前の準備について説明します。

1.1 ディストリビューション・キット

日本語OpenVMS VAX V7.2オペレーティング・システムで提供されるキットはイニシャル・ キットであり,標準版OpenVMS VAX V7.2を日本語化するためのモジュールのみを含んでいます。 次のユーザは,このキットを使用してください。

1.2 日本語OpenVMS VAXの構成

日本語OpenVMS VAXは,標準版OpenVMSと同様に, 一部のシステムのみをインストールして使用できるように,以下の4 個のセーブセットから構成されています。

個々のセーブセットはさらに,数個の機能あるいはユーティリティからなるテーラリング・ クラスで構成されており,ユーザはテーラリングするかどうかを選択できます。

ただし,通常の場合,すべてのセーブセットは無条件にインストールされます。 システム・ディスクに必要なディスク・スペースがない場合,または明示的にセーブセットを指定した場合に, 個々のセーブセットを選択し, インストールします。しかし,その場合にも必須セーブセットは必ず選択されます。 もし,必須セーブセット以外のファイルで不要なものがある場合は, インストール後にテーラリング・ユーティリティを使用してファイルを削除(テーラ・ オフ)してください。テーラリング・ユーティリティの使用法については, 本書の第6章を参照してください。

それぞれのセーブセットをインストールすることで使用できる機能を,以下に示します。 個々の機能の詳細は,各ユーティリティの利用者の手引きを参照してください。

1.2.1 必須セーブセット

  1. 日本語スタートアップ・プロシージャ

    日本語OpenVMS VAXの初期設定を行うプロシージャ群です。

  2. 日本語ライブラリ

    日本語文字列操作ルーチンや日本語汎用ライブラリ,かな漢字変換ライブラリ, 日本語画面制御ライブラリ(SMG),ユーザ・キー定義ライブラリ(IMLIB) ,日本語COBOLランタイム・ライブラリなどのプログラム開発用の各種ライブラリです。

  3. KANJIGEN(漢字端末設定ユーティリティ)

    漢字ビデオ・ターミナルや漢字プリンタなどの属性の表示および設定を行うユーティリティです。

  4. DEC XTPU

    DECTPUに日本語処理機能を追加したもので,日本語EVEエディタが標準で用意されています。

  5. テーラリング・ユーティリティ

    日本語OpenVMS VAXのファイルの部分的な追加, 削除を行います。

1.2.2 ユーティリティ・セーブセット

  1. 日本語ユーティリティ

    日本語メール・ユーティリティなどの,以下のユーティリティが含まれます。

    KCODE 漢字コード変換
    KCONVERT DEC漢字コード変換
    KINQUIRE ローマ字・かな漢字変換型 INQUIREコマンド
    JDICEDIT 辞書編集ユーティリティ
    JMAIL 日本語メール・ユーティリティ
    SORT,MERGE 日本語ソート・ 日本語マージ

  2. フォント管理ユーティリティ

    ユーザ定義文字の管理及びユーザ定義文字のプリンタでの印字などをサポートするユーティリティが含まれています。

    Kanji font database 漢字フォント・データ
    Kanji utility Help 漢字ユーティリティのHELP
    Kanji print symbiont 漢字プリンタ用プリント・シンビオント
    Kanji terminal driver 漢字端末用ドライバ
    CMGR ユーザ定義文字管理ユーティリティ

  3. FIP(日本語入力プロセス)

    日本語OpenVMS VAX上の端末(VT284, VT382など)上で動いているアプリケーションに,日本語を入力するためのフロントエンド・ システムです。

  4. プログラミング・サポート

    日本語ライブラリを使用したプログラム用のインクルード・ファイルなどが含まれています。

  5. 日本語システムのヘルプ

  6. 翻訳ヘルプ/メッセージ

1.2.3 オプショナル・セーブセット

日本語OpenVMS VAXの付加的機能を提供します。

IVP インストレーションの検証プロシージャ
サンプル・プログラム 日本語ユーティリティ,DEC XTPUなどのプログラム例
古いファイル JTPUの共有イメージなど

1.2.4 日本語DECwindowsサポート セーブセット

日本語DECwindows Motif for OpenVMSが使用するフォント・ファイル,キーマップ・ ファイルなどを提供します。標準版OpenVMSでDECwindowsファイルをインストールしている場合にのみ必要となります。

キーマップ・ファイル 日本語キーボードに対応したキーマップ・ ファイル
フォント別名ファイル 指定されたファイルがない場合に使用する別名フォントを記述するファイルの例
75dpiフォント 75dpiの日本語フォント
100dpiフォント 100dpiの日本語フォント

1.3 OpenVMSライセンス・マネジメント・ファシリティ

新規に日本語OpenVMS VAXを使用するユーザは, 日本語OpenVMS VAXをインストールする際に, 必ずソフトウェア・ライセンスを登録しなければなりません。 ライセンスを登録するための情報は,日本語OpenVMS VAX と一緒に出荷される,プロダクト・オーソライゼーション・ キー(PAK)に含まれています。PAKはライセンス情報が記載されている用紙です。

日本語OpenVMS VAXのライセンスは, インストレーションの前でも後でも登録できますが,インストレーションの前に行うことをお勧めします。 日本語OpenVMS VAX ではインストレーション中にライセンスを登録し,キーをロードしたかどうかを確認するようになっています。 ライセンスの登録とキーのロードを行っていない場合は, インストレーションを行うことはできますが, 日本語OpenVMS VAXを使用したり,IVP を実行したりすることはできません。ライセンスを登録し, キーをロードして初めて,日本語OpenVMS VAXを使用したり,IVPを実行したりすることができます。

ライセンスを登録する方法には次の2つがあります。

  1. コマンド・プロシージャSYS$UPDATE:VMSLICENSE.COM を使用する。

  2. DCLコマンドLICENSE REGISTER を使用する。

詳細は『OpenVMS License Management Utility Manual』を参照してください。

1.4 必要なハードウェアの最小構成

日本語OpenVMS VAX V7.2は,VAXアーキテクチャの各機種で動作します( 一部の機種を除く)。また,日本語OpenVMS VAX V7.2 が動作するためには以下の環境が必要です。

詳細は『日本語OpenVMSオペレーティング・システムV7.2ソフトウェア仕様書』(SPD)を参照してください。

1.5 必要なソフトウェア

1.5.1 標準版OpenVMS VAX V7.2

日本語OpenVMS VAX V7.2をインストールするためには, 標準版OpenVMS VAXがV7.2であることが必要です。インストレーションの方法については『OpenVMS VAX Version 7.2 Upgrade and Installation Manual』を参照してください。

1.5.2 XPG4ロケール・データ・ファイル

標準版OpenVMS VAX V7.2のインストール後,XPG4 ロケール・データ・ファイル・キットのインストレーションが必要です。 ロケール・データ・ファイルは,V6.2から標準版OpenVMS VAX で提供されるようになった,XPG4ランタイム・ライブラリおよびユーテリティで使用されるもので, 独立したキットで提供されています。

キット名はVMSI18N072です。このキットはCD-ROMの場合は標準版OpenVMS VAX & Alpha V7.2 Associated Layered Products CD-ROMおよび日本語OpenVMS VAX V7.2 CD-ROMの両方に含まれています。 またTK50 あるいは9トラック1600 BPI磁気テープの場合は,日本語OpenVMS VAX V7.2キットの2巻目に含まれていますので, いずれの提供媒体からでもインストールすることができます。

VMSINSTALを起動すると,VMSINSTALの初期メッセージが表示された後,各国語サポートに関する4 つの質問が表示されます。このうち,日本語サポートについて"YES" と入力してください。日本語サポート以外のインストレーションは必須ではありませんので,"NO" を入力します。実際の質問は次のとおりです。

             * Do you want European and US support [YES]?
             * Do you want Chinese support [YES]?
             * Do you want Japanese support [YES]?
             * Do you want Korean support [YES]?
             * Do you want Thai support [YES]?
             * Do you want the Unicode converters [YES]?

日本語サポートのみを選択した場合,インストール時に必要なディスク容量は約10,000 ブロックです。


注意
日本語サポート以外のインストールは, 日本語OpenVMS VAX V7.2をインストールするための必須インストールではありません。 また,USサポートは, 標準版OpenVMS VAX V7.2のインストレーションにより提供されています。 もし,全ての質問に対して"YES" と答えた場合,システム・ディスク上で約80,000ブロックの容量を占めますのでご注意ください。

インストレーションの例を付録 Bに示しますので, 参照してください。

1.5.3 日本語DECwindows Motif

日本語OpenVMS V7.2でサポートされる日本語DECwindows Motifはバージョン1.2-3 以上です。ただし,日本語DECwindows Motif V1.2-3またはV1.2-4 を使用する場合は修正キットのインストレーションが必要です。

詳しくは,第1.11節の日本語DECwindows Motifのインストレーションの項を参照してください。

1.6 インストレーションに必要な時間

日本語OpenVMS VAX V7.2すべてをインストールするためには(VAXstation 4000-60 でTK50を使用した場合),約40分かかります。

1.7 インストレーションに必要な特権

インストレーションには,次の特権が必要です。

なお,VMSINSTALはインストレーション開始のときにBYPASS特権をはずしますので注意してください。

1.8 必要なディスク容量

日本語OpenVMS VAX V7.2をインストールするために必要なディスク容量は, 次の表のとおりです。

必要とするディスク容量のサイズは,インストールするモジュールを選択することによって, 次の表より小さくなります。

必要なシステム・ディスクのサイズ

インストール時 インストール後
必須セーブセットのみ 約19,000ブロック 約16,000ブロック
必須+ユーティリティセーブセット 約44,000ブロック 約37,000ブロック
必須+ユーティリティ+ オプショナルセーブセット 約50,000ブロック 約43,000ブロック
必須+ ユーティリティ+ オプショナル+DECwindowsサポート 約77,000ブロック 約69,000ブロック

現在の空きブロック数は,次のようにしてみることができます。

          $ SHOW DEVICE device-name

値が十分でないときは,不必要なファイルを消すなどの処置をとってください。 日本語OpenVMS VAXファイルの削除については, 本書の第6章,ならびに付録 E を参照してください。

1.9 必要なシステム・パラメータ

日本語システムのユーティリティは,インストレーション後に次表の値のグローバル・ ページ,グローバル・セクションを必要とします。

ユーティリティとイメージ グローバル・ページ グローバル・セクション
CMGR
CMGRSHR.EXE
CMGRDISPSHR.EXE
114
88
3
3
JMAIL
JMAIL.EXE
JMAILSHR.EXE
JMAILSHRP.EXE
JMAILMSG.EXE
224
118
122
26
3
1
3
1
日本語共有イメージ
JSYSHR.EXE
JSYSHRP.EXE
340
16
5
4
日本語画面管理ライブラリ
JSY$SMGSHR.EXE
396 2
JTPU共有イメージ
JTPUMSG.EXE
JTPUSHR.EXE
JTPU$CCTSHR.EXE
JTPU$DECWSHR.EXE
120
536
132
198
1
2
2
2
KANJIGEN
KANJIGEN.EXE
46 3
KINQUIRE
KINQ.EXE
8 1
SORT, MERGE
SORTDTYPE.EXE
SORJPNDICT.EXE
28
84
2
2
IMLIB
IM$SHR.EXE
IM$MESSAGE.EXE
82
8
3
1
TYPE
TYPE.EXE
JSY$UTIL$SHARE.EXE
90
4
1
1
FIP
FIP.EXE
FIP$CONTROL.EXE
FIPSHR.EXE
IM$HMCISVECSHR.EXE
IM$ARKSHR.EXE
IM$HMJSYVECSHR.EXE
IM$CIS_TRANSPORT_DECNET.EXE
IM$CIS_TRANSPORT_LOCAL.EXE
IM$CICSHR.EXE
IM$HMSHR.EXE
IM$KKCSHR.EXE
FIPMSG.EXE
174
6
60
10
20
28
4
4
4
136
20
18
2
1
4
2
3
2
1
1
1
3
3
1
XTPU
JEVE$SECTION_V3.XTPU$SECTION
XTPU.EXE
XTPU$CCTSHR.EXE
XTPU$CSSHR_JA_JP.EXE
XTPU$MOTIFSHR.EXE
XTPUSHR.EXE
XTPUMSG.EXE
2,662
4
138
156
226
756
148
1
1
1
1
1
1
1

合計 7,354 77

日本語OpenVMS VAX V7.2のインストレーション・プロシージャは, 最低限必要なグローバル・ページ,グローバル・セクションの空きをそれぞれ 8,500 ページ,78セクションとしています。現在のシステムの設定がこの値に満たない場合, またシステムのDCLTABLES.EXEが1,000ページ以上あるような場合, インストレーションは失敗します。

現在のシステムで使用可能なグローバル・ページとグローバル・セクションの空きは, 次のようにして調べることができます。

          $ WRITE SYS$OUTPUT F$GETSYI("FREE_GBLPAGES")
          $ WRITE SYS$OUTPUT F$GETSYI("FREE_GBLSECTS")

インストレーション中には,DCLTABLES.EXEなどの再インストールが行なわれるために, 上の表の合計値よりさらに大きなグローバル・ページ,グローバル・ セクション空きが必要となります。

グローバル・ページ,グローバル・セクションの値は,次のようにして変更することができます。

  1. SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DATに追加

    次の行をSYS$SYSTEM:MODPARAMS.DATに加えてください。

              GBLPAGES = <グローバル・ページの値>
              GBLSECTIONS = <グローバル・セクションの値>
    

    あるいは次の行でもかまいません。

              ADD_GBLPAGES = <追加するグローバル・ページの値>
              ADD_GBLSECTIONS = <追加するグローバル・セクションの値>
    

  2. AUTOGENをかける

    次のようにAUTOGENを実行してください。

              $ @SYS$UPDATE:AUTOGEN GETDATA REBOOT NOFEEDBACK
    

    システムがシャット・ダウンされリブートされます。グローバル・ページとグローバル・ セクションの数は,SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DATに書かれた数に変更になります。

1.10 システム・ディスクのバックアップ

インストレーションの最初に,システム・ディスクをバックアップしたかどうかを尋ねてきます。 インストレーション中に問題が発生したときのために, システム・ディスクのバックアップをとっておくことをお勧めします。

バックアップ実行の詳細については,『OpenVMSシステム管理者マニュアル』を参照してください。

1.11 日本語OpenVMS VAX V7.1以前からのアップグレード

日本語OpenVMS VAX V6.1, V6.2,V7.0またはV7.1から日本語OpenVMS VAX V7.2にアップグレードする場合は,必ず以下の手順で行うようにしてください。

  1. 日本語DECwindows Motif V1.2-3またはV1.2-4のインストレーション

    日本語DECwindows Motifを実行していない場合は,この作業は必要ありませんので2 の作業へ進んでください。

    日本語OpenVMS V7.2でサポートされる日本語DECwindows MotifのバージョンはV1.2-3 以上です。次の表に従って,必要な作業を決定してください。

    現在の日本語DECwindowsMotifのバージョン 日本語OpenVMS V7.2アップグレード前に必要な作業
    V1.2-3より前 日本語DECwindows Motif V1.2-3以上のバージョンへのアップグレード
    V1.2-3 英語版DECwindows V1.2-3の2000 年対応キット(VAXDWMW02_U3012)のインストールが必要です

    日本語DECwindows V1.2-3 修正キットのインストールをお勧めします

    V1.2-4 英語版DECwindows V1.2-4 の2000年対応キット(VAXMOTF02_U4012)のインストールが必要です

    日本語DECwindows V1.2-4 修正キットのインストールをお勧めします

  2. SYS$MANAGER:SYSTARTUP_VMS.COMの編集

    SYS$MANAGER:SYSTARTUP_VMS.COMをエディタで編集して,日本語OpenVMS 関係の初期化処理を行っている箇所(たとえばJSY$STARTUP.COM ,KANJIUP.COMを呼び出している部分や漢字プリンタの装置ddcu を割り当てている部分)を,次のようにコメント・アウトしてください。

                 $! @SYS$STARTUP:JSY$STARTUP
                 $! ASSIGN ddcu: JSY$PRINT
                 $! @JSY$SYSTEM:KANJIUP
    

    日本語OpenVMS VAX V6.1で実行していたXPG$STARTUP.COMは日本語OpenVMS VAX V6.2 以降では使用されませんので,XPG$STARTUP.COMを実行している部分はSYSTARTUP_VMS.COM から削除してください。

  3. 日本語DECwindows Motif言語設定の変更

    ワークステーションで日本語DECwindows Motifを実行していない場合は, この作業は必要ありませんので4の作業へ進んでください。

    ワークステーションで日本語DECwindows Motifを実行しており, SYSTEMアカウントのセッション・マネージャの言語設定が「日本語」になっている場合は「US English 」に変更してください。

  4. システム設定の変更

    日本語OpenVMS VAXを標準版OpenVMS VAXにもどすためには,SYSGENパラメータのTTY_CLASS をTTにするなどいくつかの設定の変更が必要となります。 この作業を行うために以下のコマンド・プロシージャを実行してください。

                 $ @JSY$SYSTEM:JSY$RESETPARAMS.COM
    

    AUTOGENが実行されシステムは自動的にシャット・ダウンされます。これで標準版OpenVMS VAX V7.2 へのアップグレードが可能な状態になっています。

  5. 標準版OpenVMS VAX V7.2へのアップグレード

    標準版OpenVMS VAX V7.2のキットを用いて,標準版OpenVMS VAXのアップグレードを行ってください。 アップグレードの方法については『OpenVMS VAX Version 7.2 Upgrade and Installation Manual 』を参照してください。

  6. XPG4ロケール・データ・ファイル・キットのインストール

    ロケール・データ・ファイル・キットVMSI18N072のインストレーションを行ってください。 インストレーションの手順は第1.5.2項を参照してください。

  7. 日本語OpenVMS VAX V7.2のインストール

    日本語OpenVMS VAX V7.2のインストレーションを行ってください。以後の作業については, 第2章 "日本語インストレーション" およびそれ以降の章を参照してください。


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