Compaq OpenVMS
システム管理者マニュアル


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2.5.1.1 システム・ディスクを完成する

VMSKITBLD の BUILD オプションを使って作成したシステム・ディスクは,そのままでは完全なシステム・ディスクではありません。完全なものにするためには,次の手順に従ってください。

  1. 会話型ブートで,新しいシステム・ディスクをブートする。会話型ブートについては,使用しているコンピュータ用のインストールおよびアップグレードのためのマニュアルを参照。

  2. SYSBOOT> プロンプトに対して USE DEFAULT コマンドを入力して,システムをブートする。これによって,すべてのシステム・パラメータに対して省略時の値が使用される。

  3. システム上のレイヤード・プロダクトがまだすべてはチューニングされておらず,このためにシステム起動時にハングが起る可能性のある場合,これらのレイヤード・プロダクトをすべて起動することなくシステムだけを起動することができます。これには,SYSBOOT> プロンプトに対して SET STARTUP_P1 "MIN" と入力します。

  4. CONTINUE コマンドを入力して,ブートを継続する。

  5. システムのブートが終了したら,SYSTEM アカウントにログインする。 SYSTEM アカウントのパスワードには,省略時のパスワード MANAGER を使用する。必ず,このパスワードは変更すること。

  6. AUTHORIZE ユーティリティを使用してライト・データベースとネットワーク代理データベースを作成する。詳細は『OpenVMS Guide to System Security』を参照。

  7. SAVPARAMS フェーズから AUTOGEN を実行して,システム・パラメータに適切な値を設定する。このとき,必ず CHECK_FEEDBACK オプションを指定する。 AUTOGEN の実行方法については, 第 15.5 節 と『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』の AUTOGEN ユーティリティの章を参照。
    古いシステム・ディスクを使って再ブートする場合は,AUTOGEN を起動するときに終了フェーズとして REBOOT を指定する。
    新しいシステム・ディスクを使って再ブートする場合は,終了フェーズとして SHUTDOWN を指定し,新しいシステム・ディスクを指定して再ブートする。



SYSBOOT> USE DEFAULT
SYSBOOT> SET STARTUP_P1 "MIN"
SYSBOOT> CONTINUE
   .
   .
   .
$ SET DEFAULT SYS$COMMON:[SYSEXE]
$ RUN AUTHORIZE
UAF> CREATE/RIGHTS
UAF> CREATE/PROXY
UAF> EXIT
$ @SYS$UPDATE:AUTOGEN SAVPARAMS REBOOT CHECK_FEEDBACK
   .
   .
   .

2.5.2 システム・ファイルの既存のディスクへのコピー

VMSKITBLD を使用すると,既存ファイルを削除せずに,オペレーティング・システム・ファイルだけをターゲット・ディスクにコピーすることができます。たとえば,大量のシステム・ファイルを間違って削除して,別のシステム・ディスクからそのディスクにシステム・ファイルをコピーする場合に便利です。

この操作を行うためには,オペレーティング・システムが動作し,かつコピー元にするソース・ディスクがマウントされている必要があります。

VMSKITBLD.COM の COPY オプションを使用した場合, SYSUAF.DAT やサイト別コマンド・ファイルなど,ユーザが変更したファイルはコピーされません。このようなファイルについては,VMSKITBLD は無変更の TEMPLATE バージョンを使用します。また VMSKITBLD は,システム別ファイルの SWAPFILE.SYS や PAGEFILE.SYS,SYSDUMP.DMP も作成しません。

VMSKITBLD は,ターゲット・ディスク上の元のシステム・ファイルを削除してから,対応する新しいファイルをコピーします。

システム・ファイルのコピー方法

  1. SYSTEM アカウントにログインする。

  2. ターゲット・ディスクを適切なドライブに装着する。

  3. ターゲット・ディスク名を書き留めておく。

  4. 次のコマンドを入力して VMSKITBLD を起動する。


    $ @SYS$UPDATE:VMSKITBLD
    

    VMSKITBLD は,オプションの選択を求める。オプションは 1 つしか選択できない。


    Operation [BUILD,ADD,COPY]?
    

  5. COPY と入力して,Return キーを押す。 VMSKITBLD は,必要な情報の入力を求めるメッセージか,プロシージャのステータスを報告するメッセージを表示する。次に,表示されるプロンプトと,それに対する応答を説明する。

    1. 次のプロンプトに対しては,ソース・ディスク名を入力する。


      * Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:): 
      

    2. 次のプロンプトに対しては,ソース・ディスクのトップ・レベルのシステム・ディレクトリを入力する。


      * Enter SOURCE disk top level system directory [default = SYS0]: 
      


      たいていの場合,省略時の値の [SYS0] のままで問題はない。

    3. 次のプロンプトに対しては,ターゲット・ディスク名を入力する。


      * Enter TARGET disk name (ddcu:): 
      

    4. 次のプロンプトに対しては,トップ・レベルのシステム・ディレクトリを入力する。


      * Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]: 
      


      たいていの場合,省略時の値の [SYS0] のままで問題はない。


    ドル記号 ($) が表示されると,ファイルのコピーとシステム・ディスクの作成は完了である。VMSKITBLD は,自動的にターゲット・ディスクをディスマウントする。



* Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:): SYS$SYSDEVICE:
* Enter SOURCE top level system directory [default = SYS0]: [Return]
* Enter TARGET disk name (ddcu:): DUA0: [Return]
* Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]: [Return]
%DCL-I-ALLOC, _DUA0: allocated
%MOUNT-I-MOUNTED, VAXVMSRL5 mounted on _DUA0:
    Copying files from source disk ... 
    Copying DECwindows files from source disk ... 
    Writing a boot block ... 
    System disk complete.
$

2.5.3 代替システム・ルート・ディレクトリの追加

VMSKITBLD の ADD オプションは,ターゲット・システム・ディスクに代替システム・ルート・ディレクトリを作成するためのオプションです。このオプションを使えば,テスト環境を作成することができます。このテスト環境では,オペレーティング・システムの現行バージョンの影響を与えずにソフトウェアをテストすることができます。

使用中のシステム・ディスクに ADD オプションを使用することはできません。

注意

OpenVMS Cluster 環境に新しいシステムを追加する目的で ADD オプションを使用しないでください。その場合は,SYS$MANAGER:CLUSTER_CONFIG.COM プロシージャを使用します。

ADD オプションは,専用のルート・ディレクトリを作成するだけです。現在の共通ディレクトリは新しいルートにリンクされます。

代替システム・ルート・ディレクトリの追加方法

  1. SYSTEM アカウントにログインする。

  2. システム・ディスクの未使用ブロック数を調べ, SWAPFILE.SYS,PAGEFILE.SYS,SYSDUMP.DMP などの新しいファイルを格納する空き領域が十分にあることを確認する。これらのファイルの大きさは,使用しているコンピュータの機種によって異なる。ページ・ファイル,スワップ・ファイル,ダンプ・ファイルの大きさの算出方法については, 第 16.4 節 を参照。

  3. ターゲット・システム・ディスクがディスマウントされていて,オンラインになっていることを確認する。

  4. 次のコマンドを入力して VMSKITBLD を起動する。


    $ @SYS$UPDATE:VMSKITBLD
    

    VMSKITBLD は,オプションの選択を求める。オプションは 1 つしか選択できない。


    Operation [BUILD,ADD,COPY]? 
    

  5. ADD と入力して,Return キーを押す。 VMSKITBLD は,処理の完了に必要な情報の入力を求めるメッセージか,プロシージャのステータスを報告するメッセージを表示する。次に,表示されるプロンプトと,それに対する応答を説明する。

    1. 次のプロンプトに対しては,SYS$SYSDEVICE と入力して Return を押す。


      * Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:): 
      

    2. 次のプロンプトに対しては,Return を押して,省略時の値を選択する。


      * Enter SOURCE disk top level system directory [default = SYS0]: 
      

    3. 次のプロンプトに対しては,ターゲット・ディスク名を入力する。


      * Enter TARGET disk name (ddcu:): 
      

    4. 次のプロンプトに対しては,新しいルート・ディレクトリ指定を入力する。


      * Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]: 
      


      SYSE と SYSF ディレクトリは指定しないこと。

      • SYSE はスタンドアロン BACKUP 用に予約されている。

      • SYSF は弊社用に予約されている。


    ドル記号 ($) プロンプトが表示されると,新しいシステム・ルート・ディレクトリの作成が完了である。 VMSKITBLD は,自動的にターゲット・ディスクをディスマウントする。

  6. ターゲット・ディスクをブートし,AUTOGEN を実行することによって,新しいシステム・ルートを設定する ( 第 2.5.3.1 項 参照)。


次の例は,ターゲット・ディスク SHEMP$DUA5 に SYSA という名の代替システム・ルート・ディレクトリを作成する例です。


* Enter mounted SOURCE disk name (ddcu:): SYS$SYSDEVICE:
* Enter SOURCE top level system directory [default = SYS0]:[RETURN]
* Enter TARGET disk name (ddcu:): SHEMP$DUA5: [RETURN]
* Enter TARGET disk top level system directory [default = SYS0]: SYSA [RETURN]
%DCL-I-ALLOC, _SHEMP$DUA5: allocated
%MOUNT-I-MOUNTED, VAXVMSRL5   mounted on _SHEMP$DUA5:
    Creating system specific directories ...
    Creating SYSGEN files ...
%SYSGEN-I-CREATED, _SHEMP$DUA5:<SYSA.SYSEXE>SWAPFILE.SYS;1 created
%SYSGEN-I-CREATED, _SHEMP$DUA5:<SYSA.SYSEXE>PAGEFILE.SYS;1 created
%SYSGEN-I-CREATED, _SHEMP$DUA5:<SYSA.SYSEXE>SYSDUMP.DMP;1 created
    System disk complete.
$ 

2.5.3.1 システム・ルートを設定する

システム・ディスクに対する代替システム・ルート・ディレクトリの追加が終了したら,次の段階として,そのルートに対してシステム・パラメータを設定する必要があります。次の手順に従ってください。

  1. システムをシャットダウンし,コンピュータを停止状態にする。システムのシャットダウンについては, 第 4.8.1 項 を参照。

  2. 会話型ブートを行う。会話型ブートについては,使用しているコンピュータ用のアップグレードとインストールのためのマニュアルを参照。

  3. 会話型プロンプト SYSBOOT> に対して,次のコマンドを入力する。


    SYSBOOT> USE DEFAULT
    SYSBOOT> SET STARTUP_P1 "MIN"
    SYSBOOT> CONTINUE
    

  4. システムのブートが終了してから,SYSTEM アカウントにログインし, SAVPARAMS フェーズから AUTOGEN を実行して,システム・パラメータに適切な値を設定する。
    古いルート・ディレクトリから再ブートする場合は, AUTOGEN を起動するときに終了フェーズとして REBOOT を指定する。
    新しいルート・ディレクトリから再ブートする場合は,終了フェーズとして SHUTDOWN を指定し,手動で再ブートする。 AUTOGEN についての詳細は, 第 15.5 節 と『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』の AUTOGEN ユーティリティの章を参照。



SYSBOOT> USE DEFAULT
SYSBOOT> SET STARTUP_P1 "MIN"
SYSBOOT> CONTINUE
   .
   .
   .
$ @SYS$UPDATE:AUTOGEN SAVPARAMS REBOOT CHECK_FEEDBACK
   .
   .
   .


第 3 章
ソフトウェアのインストール,アップグレード,アップデート

本章では,OpenVMS オペレーティング・システム・ソフトウェアとレイヤード製品のインストールとアップグレード,アップデートに関連する事項について説明します。ソフトウェアのインストールとアップグレードに関しては, POLYCENTER Software Installation ユーティリティおよび VMSINSTAL.COM コマンド・プロシージャの 2 つの方法が使用できます。

オペレーティング・システム・ソフトウェア

OpenVMS VAX または OpenVMS Alpha オペレーティング・システムのインストールまたはアップグレードには,最新の『Upgrade and Installation manual』を参照してください。

レイヤード製品ソフトウェア

レイヤード製品のインストールまたはアップグレードには, POLYCENTER Software Installation ユーティリティまたは VMSINSTAL.COM コマンド・プロシージャのいずれかを使用します。レイヤード製品は,使用する方法ごとに別々にパッケージングされています。どちらの方法を使用するかは,レイヤード製品のドキュメントを参照してください。

本章の内容

この章では,次の作業について説明します。

作業 参照箇所
レイヤード製品ソフトウェアのインストール 第 3.2 節
VMSINSTAL.COM を使用したレイヤード・ソフトウェアのインストール 第 3.3 節 から 第 3.6 節
POLYCENTER Software Installation ユーティリティの使用 第 3.7 節 から 第 3.10 節

さらに,次の項目について説明します。

項目 参照箇所
VMSINSTAL.COM 第 3.3 節
POLYCENTER Software Installation ユーティリティ 第 3.7 節

3.1 オペレーティング・システムのインストール,アップグレード,アップデート

ソフトウェアのインストールには,完全なインストール,アップグレード,アップデートがあります。この用語の意味は,次の通りです。

インストール オペレーティング・システムの完全に新しいバージョンをインストールする。
アップグレード オペレーティング・システムの既存のバージョンに大幅な変更を加える。
アップデート オペレーティング・システムの既存のバージョンに小さな変更を加える。

OpenVMS オペレーティング・システムをインストール,またはアップグレードする手順について詳しくは次のドキュメントを参照ください。

3.2 レイヤード製品のインストール,アップグレード

レイヤード製品をインストールおよびアップグレードするには,ソフトウェア・インストレーション・コマンド・プロシージャの SYS$UPDATE:VMSINSTAL.COM または POLYCENTER Software Installation ユーティリティを使用します。各レイヤード製品のインストレーション・マニュアルには,使用すべきプロシージャが書いてあります。

Alpha または VAX システム上でレイヤード製品をインストールまたはアップグレードするには,次の手順に従ってください。


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