日本語Compaq TCP/IP Services for OpenVMS
リリース・ノート


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1.1.7 SMTP 機能

本バージョンの日本語 TCP/IP Services には,以下の SMTP 機能が含まれています。

1.1.7.1 SMTP SFF (Send From File)

SMTP では,メール・メッセージをファイルとして作成し,これを指定されたヘッダを付けて SMTP メーラに送信することができます。この機能を使うと,メール・メッセージを作成して送信する自動化ツールを作成することができます。また,メーラは新しいメール・メッセージの本体中の MIME および SMTP ヘッダをカプセル化しないので,テキスト以外のファイル (MIME) を転送するのにも便利です。つまり SMTP は,メッセージをカプセル化せずにそのままの形で指定されたユーザに送信する,パーソナル・コンピュータ上の redirectコマンドのように機能することができます。

カプセル化を行わず,受信者が読める形で MIME メール・メッセージをリダイレクトするには,以下の操作を行います。

  1. OpenVMS MAIL から,EXTRACT/NOHEADER を使用してメール・メッセージを抽出します。
  2. MAIL プログラムを終了します。
  3. ファイルを変更して SMTP コマンドを追加します。たとえば,受信者のアドレスを RCPT TO:<> の行に追加します。 SFF 書式についての詳細は, 第 1.1.7.1.1 項 を参照してください。
  4. ファイルを SFF に送信します。

From:,To:,または Message-ID: などのヘッダを追加したい場合には,これらのヘッダをファイルに追加しなくてはなりません。SFF は, 第 1.1.7.1.3 項 で説明するように,Received: ヘッダのみを追加します。

1.1.7.1.1 SFF ファイルの書式

SFF を使うと,RFC 822 メッセージの前に (RFC 821 で定められている) コマンドを追加することで,RFC 822 に準拠するテキスト・ファイルを送信することができます。MIME は定義上,RFC 822 に準拠しています。このため, MIME メールは SFF を使って配信することができます。

次に例を示します。


$ TYPE TEST_SMTP_SFF.TXT 
MAIL FROM:<green@abc.com> 
RCPT TO:<green@abc.com> 
DATA 
Date: Sun, 4 Aug 1996 14:48:14 -0400 
Message-Id: <96080414481486@abc.com> 
From: green@abc.com (Charly Green - ABC-Corp engineering) 
To: green@abc.com 
Subject: Test of SFF mechanism 
 
This is the message text. 

SMTP プロトコル・コマンドは以下のものを指定します。

  1. メールの返信パス
  2. 受信者
  3. DATA コマンド
  4. RFC 822 メッセージ

RFC 822 メッセージの前に置かれるコマンドは,ファイル中に上に示した順序で指定されなくてはなりません。MAIL FROM および RCPT TO コマンドは, RFC 821 に記述されている"エンベロープ"を構成します。以下に,このエンベロープの要約を示します。

  1. MAIL FROM コマンドは,必要な場合にメールのバウンス先となるアドレスを指定します。MAIL FROM コマンドは 1 つだけ存在している必要があります。
    次の例のように,空の MAIL FROM コマンドを指定することができます。


    MAIL FROM:<> 
    

  2. RCPT TO コマンドは,受信者のアドレスを指定します。 RCPT TO コマンドは少なくとも 1 つは存在していなくてはなりませんが,各受信者ごとに 1 つずつ,複数のコマンドが存在していてもかまいません。
    空の RCPT TO コマンドを指定してはなりません。
    個々の RCPT TO コマンドは,それぞれ別の行に指定しなくてはならず, 1 つのアドレスしか含むことができません。メールを複数のアドレスに送信する場合には,各アドレスごとに 1 つの RCPT TO コマンドを指定してください。
  3. DATA コマンドは最後の RCPT TO コマンドの後に置かれ, RCPT TO コマンドの終わりとヘッダ・ブロックの始まりを示します。 DATA コマンドは必ず指定しなくてはなりません。

RFC 822 ヘッダに Return-Path ヘッダを含めてはなりません。メールがローカルに配信される場合,SMTP は MAIL FROM コマンドを元にした Return-Path ヘッダを追加します。メールが他の SMTP ホストにリレーされる場合,返信パスは最終的な宛先ホストに基づいて MAIL FROM コマンドによって決定されます。

1.1.7.1.2 SFF ファイルの必要条件

メール・メッセージ・ファイルは以下のいずれかの書式を持つことができます。

1.1.7.1.3 SFF セキュリティ機能

任意のヘッダを持つメッセージを作成できる機能は,メッセージ・ヘッダの捏造に利用されかねません。これを防ぐために,この SFF メカニズムには以下のセキュリティ機能が含まれています。

以下で説明するように,SFF はアプリケーションまたは DCL から起動することができます。

1.1.7.1.4 アプリケーションからの SFF の呼び出し

TCPIP$SMTP_MAILSHR.EXE は,TCPIP$SMTP_SEND_FROM_FILE という名前のルーチンを含んでいます。このルーチンは次のように宣言されています。


unsigned int TCPIP$SMTP_SEND_FROM_FILE(infile_name,logfd,log_level) 
char *infile_name; 
FILE *logfd; 
int log_level; 

このルーチンの引数を以下に示します。

このルーチンを呼び出すためには,TCPIP$SMTP_MAILSHR.EXE/SHARE をリンクしてください。

1.1.7.1.5 DCL からの SFF の呼び出し

SMTP_SFF コマンドを使用すると,SFF を呼び出すことができます。 SMTP_SFF を,DCL から使用できるようにフォーリン・コマンドとして定義するには,次のコマンドを入力します。


$ SMTP_SFF:==$TCPIP$SYSTEM:TCPIP$SMTP_SFF.EXE 

このコマンドは,UNIX 形式のパラメータを受け取り,それらを SSF に渡します。

コマンドの書式は次のとおりです。


SMTP_SFF infile_name [-log logfile_name] [-loglevel log_level] 

以下に,このコマンドのパラメータの意味を示します。

1.1.7.2 SMTP 発信別名

新しいバージョンの TCP/IP Services SMTP は,送信されるメールに適用され,返信の送信先のネットワーク・アドレスを指定する発信別名の指定をサポートしています。

1.1.7.2.1 発信別名の定義

場合によっては,送信するメール・メッセージの From:メール・ヘッダの内容を制御したいことがあります。独自に設定された From:ヘッダは「発信別名」と呼ばれます。これをセットアップするには, TCPIP$SMTP_FROM 論理名を,希望の From:ヘッダのテキストに定義します。

たとえば,この論理名は次のように定義することができます。


$ DEFINE TCPIP$SMTP_FROM "bill.smith@xxx.com" 

このコマンドは発信別名を次のものに設定します。


From: bill.smith@xxx.com 

TCPIP$SMTP_FROM 論理名は,OpenVMS Mail を起動する前に定義しておいてください。

ヘッダをつねに発信別名を使って送信したい場合には,論理名をログイン・コマンド・プロシージャ (LOGIN.COM) で定義するようにします。

発信別名は,受信者が返信可能な有効なアドレスでなくてはなりません。これが有効なアドレスでないと,受信者は返信を行うことができず,バウンスしたメール・メッセージは送信者に戻ってきません。

TCPIP$SMTP_FROM 論理名を定義しなかった場合,メール・メッセージ上の From:アドレスは,これまでのアドレスと同じものになります。

TCPIP$SMTP_FROM 論理名に割り当てる値には,単純な 7 ビット ASCII 文字のみを使用します。制御文字を使用してはなりません。

TCPIP$SMTP_FROM の定義に使用するアドレスは,RFC 822 の下で有効な SMTP アドレス,つまり user@domain の形式でなくてはなりません。アドレスが正しく解釈されなかった場合,SMTP メーラはそのアドレスを無視し,ユーザの元の From:アドレスを使用します。

1.1.7.2.2 発信別名への個人名文字列の追加

OpenVMS Mail の個人名文字列を定義している場合, SMTP メーラはその文字列を発信別名に追加します。

たとえば,個人名文字列が次のように定義されているとします。


Bill L. Smith Phone: 123-456-8000 

TCPIP$SMTP_FROM 論理名が次のように定義されているとします。


$ DEFINE TCPIP$SMTP_FROM "bill.smith@xxx.com" 

結果として得られる From:ヘッダは,次のようになります。


From: bill.smith@xxx.com (Bill L. Smith Phone: 123-456-8000) 

個人名が From:アドレスに追加されるのは,以下の条件が両方とも満たされている場合に限られます。

OpenVMS Mail の個人名で定義されているのとは別の個人名文字列を使用するには, TCPIP$SMTP_FROM 論理名の一部として,user@domain アドレスの後の括弧で囲まれた語句として個人名文字列を定義します。アドレスと括弧で囲まれた語句はスペースで区切ります。個人名の中で二重引用符 (") を使用してはなりません。

たとえば,発信別名の論理名は次のように定義することができます。


$ DEFINE TCPIP$SMTP_FROM - 
$_ "bill.smith@xxx.com (Phone: 123-456-8000 FAX: 123-456-9000)" 

SMTP メーラでは,次の構文で TCPIP$SMTP_FROM 論理名を定義することはできません。


"personal name" <user@host> 

また,論理名を次のように指定してはなりません。


$ DEFINE TCPIP$SMTP_FROM """personal name"" <bill.smith@xxx.com>" 

その代わりに,次のように定義してください。


$ DEFINE TCPIP$SMTP_FROM "bill.smith@xxx.com (personal name)" 

1.1.7.2.3 置換ドメイン文字列の追加

SMTP ドメイン文字列 (アドレスの @domain の部分) なしで TCPIP$SMTP_FROM を定義すると,SMTP は定義されたテキストに置換ドメイン名を追加します。置換ドメイン名が定義されていなければ,ホスト名が使用されます。

たとえば,ホストが x.com という置換ドメインでコンフィギュレーションされており,TCPIP$SMTP_FROM 論理名が次のように定義されているとします。


$ DEFINE TCPIP$SMTP_FROM "bill.smith" 

この場合,結果として得られるアドレスは次のようになります。


     
From: bill.smith@x.com 

一方,ホストに置換ドメインがコンフィギュレーションされておらず,ホスト名が host.x.comである場合,SMTP_FROM が次のように定義されているとします。


$ DEFINE TCPIP$SMTP_FROM "bill smith" 

この場合,結果として得られるアドレスは次のようになります。


From: bill.smith@host.x.com 

1.1.7.2.4 TCPIP$SMTP_FROM の変更の禁止

TCPIP SMTP が TCPIP$SMTP_FROM に割り当てた値に加える変更 (OpenVMS 個人名の追加や,@domain のない値への @domain の追加など) を禁止するには,文字列 [VERBATIM]を追加します。

次に例を示します。


$ DEFINE TCPIP$SMTP_FROM "[VERBATIM] bill.smith@xxx.com" 

この場合,結果として得られるアドレスは次のようになります。


From: bill.smith@xxx.com 

1.1.7.2.5 TCPIP$SMTP_FROM と Return-Path:ヘッダ

ユーザが定義したアドレスは,Return-Path:メール・ヘッダに使われます。 Return-Path:ヘッダは,配信不可能なメールをバウンスするために使用されます。 Return-Path:ヘッダに使用されるテキストのバージョンからは (個人名文字列などの) コメントが削除され,つねに @domain 文字列が含まれていることに注意してください (追加されるドメイン名についての詳細は, 第 1.1.7.2.3 項 を参照してください)。

1.1.7.2.6 X-VMS-True-From:ヘッダ

From:ヘッダの設定のために TCPIP$SMTP_FROM 論理名が使用された場合,通常は From:ヘッダに使用されるテキストが,X-VMS-True-From:ヘッダとしてヘッダに追加されます。これは捏造を防止するための手段です。

1.1.7.2.7 発信別名処理の管理

発信別名処理と TCPIP$SMTP_FROM 論理名の使用を禁止するには,次のシステム論理名を定義します。


$ DEFINE/SYSTEM TCPIP$SMTP_PROHIBIT_USER_HEADERS 1 

1.1.8 Metric サーバの機能強化

Metric サーバは,ロード・ブローカとともに,OpenVMS クラスタ内での負荷分散を提供します。本リリースの Metric サーバでは,以下の機能強化が行われています。


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