日本語Compaq TCP/IP Services for OpenVMS
リリース・ノート


前へ 次へ 目次


1.1.9 ロード・ブローカのクラスタ・フェイルオーバ

本リリースでは,ロード・ブローカ (LBROKER) を OpenVMS クラスタ内の複数のシステム上で実行することができます。これはロッキング・メカニズムによって実現されています。クラスタ内で最初に起動された LBROKER プロセスがロックを獲得し,それ以降に起動された他の LBROKER プロセスは,ロックが解放されるのを待つスタンバイ状態になります。最初の LBROKER を実行しているシステムがダウンすると, LBROKER はロックを解放し,次の使用可能なスタンバイ LBROKER がロックを獲得できるようになります。その後,システムはアクティブな LBROKER プロセスを実行します。それ以外のサーバはスタンバイ状態のままです。

新たにコンフィギュレーションを行う必要はありません。

LBROKER のフェイルオーバ・メカニズムを無効にするには,次のシステム論理名を定義します。


$ DEFINE /SYSTEM TCPIP$LBROKER_ALLOW_CONCURRENT_SERVERS 1 

この論理名が定義されていると,上記のロッキング・メカニズムを使用せずに, OpenVMS クラスタ内で複数の LBROKER プロセスを実行することができます。

1.1.10 DHCP による BIND の動的更新

この機能により,DHCP クライアントに登録名をコンフィギュレーションすることができます。 DHCP は BIND データベースを更新する際に,この名前を使ってアドレス割り当てを行います。

DHCP による BIND の動的更新をコンフィギュレーションするためには,以下の操作を行います。

  1. SERVER.PCY ファイルに以下のコンフィギュレーション・オプションを設定します (または DHCP GUI を使ってこれらの変更を加えます)。

  2. DHCP サーバからの動的更新を受け付けるように BIND サーバをセットアップします。DHCP を OpenVMS クラスタ内の複数のノードで実行している場合には,このステップを,DHCP サーバが実行されているすべてのノード上で実行するようにしてください。 BIND サーバの動的更新についての詳細は,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』を参照してください。
  3. .DDNSKEYS ファイルをセットアップします。
    このファイルは,TCPIP$DHCP_CONFIG (この論理名が定義されている場合),または DHCP アカウントの省略時のディレクトリ (SYS$SYSDEVICE:[TCPIP$DHCP]) に存在します。このファイルにファイル名はありません。これは,名前を持たず, .DDNSKEYS という拡張子を持つファイルです (たとえば TCPIP$DHCP_CONFIG:.DDNSKEYS)。
    .DDNSKEYS ファイルは,DHCP サーバで更新する個々の BIND ドメインを記述するエントリを含んでいます。個々の行は 1 つのエントリを持ち,スペースで区切られた次の 3 つのフィールドを含んでいます。
    1. 更新するドメイン
    2. DHCP サーバがドメインの更新情報を送信する BIND サーバの IP アドレス
    3. このフィールドは,将来のセキュアな動的更新のために予約されています。


    DHCP サーバは,前方変換と後方変換のために BIND を更新します。このため,この 2 つの変換のそれぞれに 1 つずつ,合わせて 2 つのエントリが必要です。後方変換では,BIND の「in-addr.arpa」規約が使用されます。
    たとえば,17.21.208.100 の BIND サーバに,ドメイン fu.bar.com の更新情報を送信するには,次のように指定します。


    $ TYPE .DDNSKEYS 
     fu.bar.com 17.21.208.100 
     21.17.in-addr.arpa 17.21.208.100 
    

  4. SERVER.PCY ファイルの中で dns_tracks_dhcp_leaseパラメータを設定します。
    動的な BIND 更新が失敗した場合,DHCP サーバはエラーをログに記録し, IP アドレスのリースを DHCP クライアントに与えますが,失敗した動的 DNS 更新操作を自動的に繰り返すことはしません。また,特定の IP アドレスのリースがクライアントによって更新された場合, DHCP サーバは,SERVER.PCY ファイルで dns_tracks_dhcp_leaseパラメータが設定されていなければ,その時点では新たな動的 BIND 更新を送信しません。このため,サーバが動的 BIND 更新を実行するようにセットアップされている場合には,SERVER.PCY ファイルに dns_tracks_dhcp_leaseパラメータを設定することをお勧めします。

1.1.11 XDM ターミナルのサポート

X ターミナルなどのネットワーク・ディスプレイのために,ログイン・サーバは X Display Manager Control Protocol (XDMCP) 1.0 をサポートしています。これによりディスプレイ・デバイスは,ログイン・サーバに対して,ディスプレイ上にログイン画面を表示するように要求することができます。

XDMCP を使用するには,システムで DECwindows Motif V1.2-5 以降を実行していなければなりません。

システム上での XDM のコンフィギュレーションについての詳細は,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』を参照してください。

1.1.12 TELNET クライアントの機能強化

本リリースの TELNET クライアント構成要素は,ウィンドウのサイズ変更機能 (行と列) や位置オプションなどの点で強化されています。これらのオプションを使用するためには,TELNET サーバが適切なサポートを行っている必要があります。

1.1.13 NFS サーバおよびクライアントの機能強化

本リリースの NFS では,以下のものを含むいくつかの機能強化が行われています。

以降の各項では,これらの機能について詳しく説明しています。

1.1.13.1 NFS V3 プロトコル

本リリースには,NFS サーバの新しいバージョンが含まれています。新しい NFS サーバは,次の両方の RFC に準拠しています。

TCP/IP Services V5.1 に付属する NFS サーバは,これらの RFC に定められている NFS V2 プロトコルと V3 プロトコルの両方に応答します。

NFS V3 プロトコルの主な改善点には以下のものがあります。

1.1.13.2 ファイルの拡張と切り捨て

新しいバージョンの NFS サーバは,これまでのバージョンとは異なる方法でファイル・サイズを決定します。この変更により,一部のユーザにとってはパフォーマンスが大幅に改善されます。

1.1.13.3 真の割り当てサイズを報告する NFS クライアント

これまでのリリースでは,OpenVMS NFS クライアントは,割り当てサイズをつねに EOF サイズに等しい値として報告していました。本リリースでは,クライアントは真の割り当てサイズを報告しようと試みます。ただし,ファイルの明示的な拡張または切り捨てを行う際には,クライアントはキャッシングされたファイル属性を更新するまで,ファイル・サイズが要求した値のとおりであると仮定します。キャッシングされたファイル属性の更新は据え置かれることがあります。真の割り当てサイズは,ボリューム割り当てクラスタ係数のために,より大きな値になることがあります。

1.1.13.4 MOUNT 再試行の省略時の値

MOUNT コマンドの /RETRIES 修飾子の省略時の値は 4 に変更されました。これは大部分の UNIX オペレーティング・システムのソフト・マウントの省略時の値と同じです。再試行回数を制限することにより,最大待機時間を制限します。

新しい省略時の値を設定するには,次の論理名を定義します。


TCPIP$NFS_CLIENT_MOUNT_DEFAULT_RETRIES 

この論理名は,I/O操作が試みられる回数の省略時の値を変更します。この論理名は負でない整数に設定してください。この論理名をゼロ (0) に設定すると,以前のバージョンの日本語 TCP/IP Services でインプリメントされていた「無限の再試行,無限の待機」が行われます。値ゼロは,UNIX のハード・マウントと同等の結果になります。

省略時の設定は, TCP/IP 管理コマンド MOUNT の /RETRIES 修飾子を使って無効にすることができます。

1.1.13.5 ネットワーク・ロッキング

本リリースは,ユーザがファイルをロックできる NFS ネットワーク・ロッキングの部分的なインプリメンテーションをサポートしています。ソフトウェアは複数のリモート・ユーザの間で,またリモート・ユーザとローカル・ユーザの間でロックの調整を行います。ファイル・ロッキング機能は, OpenVMS レコード管理システム (RMS) が使用されているかどうかにかかわらず適用されます。ただし,NFS はネットワーク・ロッキングと RMS レコード・ロックの間での調整は行いません。

本バージョンの NFS はバイト範囲ロッキングはサポートしていません。バイト範囲ロック要求が受信されると,それはファイル・ロック要求として処理されます。

ファイル・ロッキングは Network Lock Manager (NLM) と Network Status Monitor (NSM) を使ってインプリメントされます。 NLM はクライアントが行ったロックを調整します。 NSM は,サーバまたはクライアントがクラッシュしたときに,ロック情報を復旧します。 NSM は,クライアントまたはサーバがクラッシュしてリブートしたときに,次のように NLM を使ってホスト・リストを保守します。

NSM と NLM は,TCPIP$CONFIG.COM コンフィギュレーション・プロシージャの「Server Configuration」メニューから「LOCKD/STATD」を選択した場合に有効になります。その結果,TCP/IP Services を起動すると, TCPIP$LOCKD と TCPIP$STATD の 2 つのプロセスが起動されるようになります。

ファイル・ロッキング機能の管理についての詳細は,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』を参照してください。また,本リリース・ノートの 第 3.7 節 も参照してください。

1.1.13.6 MOUNT サービスの管理

MOUNT サービスは,バージョン 2 の NFS プロトコルで使用されているバージョン 1 の MOUNT プロトコルに応答します。また,バージョン 3 の NFS プロトコルで使用されているバージョン 3 の MOUNT プロトコルもサポートしています。現在では,MOUNT サービスは別個のプロセスとして実行されますが,これまでのバージョンの日本語 TCP/IP Services では, MOUNT は NFS サービスの一部として実行されていました。

MOUNT サービスは,(TCPIP$NFS_STARTUP.COM などを使って) NFS サーバを起動したときに自動的に起動されます。

MOUNT サービスの管理についての詳細は,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』を参照してください。

1.1.14 DHCP クライアントのコンフィギュレーション

このバージョンの TCP/IP Services では,システムを,DHCP サーバによって自動的にコンフィギュレーションされる DHCP クライアントとして指定することができます。同じシステムが DHCP クライアントと DHCP サーバの両方になることはできません。

DHCP クライアント・ソフトウェアは以下の RFC に準拠しています。

DHCP クライアント・サービスについては,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』で説明しています。

DHCP クライアント機能を有効にするためには,DHCP クライアントを手動でコンフィギュレーションするか,ソフトウェアに DHCP クライアントのコンフィギュレーションを行わせます。


前へ 次へ 目次