日本語 OpenVMS
V7.3-1 リリース・ノート


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第 3 章
制限事項

この章では日本語 OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 の制限事項を説明します。

3.1 日本語ファイル名の制限事項

V7.3

DCL を含む大部分のアプリケーションは,ファイル名に日本語が使用されることを予期して設計されていません。特に Super DEC 漢字コードセットによって日本語ファイル名にアクセスする場合,ユーザの期待とは異なる結果が得られる場合があるだけでなく,アプリケーションがエラーを起こしたり,異常終了する場合があります。

ユーザはこれらの制限事項を理解した上で,必要に応じて日本語ファイル名を使うようにしてください。

3.1.1 日本語ファイル名をサポートするボリューム構造

日本語 OpenVMS V7.2 からサポートされている日本語ファイル名は,標準版 OpenVMS V7.2 以降で提供する Extended File Specification の機能である,Unicode ファイル名を利用しています。Unicode ファイル名は,新しいボリューム構造である ODS-5 でのみサポートされているため,日本語ファイル名もまた ODS-5 ボリュームでのみサポートされます。

注意

ODS-5 ボリューム構造についての詳細は,『OpenVMS Extended File Specifications の手引き』を参照してください。

3.1.2 DCL コマンド

日本語 OpenVMS V7.3 では,標準版 OpenVMS V7.3 の DCL コマンドで日本語ファイル名が完全に正常に動作することを保証しません。一部の DCL コマンドでは日本語ファイル名が正しく表示されないなどの問題が発生する場合があります。

3.1.3 ファイル名コンバータの非同期切り換えの禁止

ファイル名コンバータの有効/無効は,プロセス単位に設定されます。したがって,マルチスレッド環境で不用意にコンバータを切り換えると他のスレッドの動作に影響を与えます。特に RMS によるファイル・アクセスの実行中に切り換えを行うと,予期せぬ障害が発生する場合があります。

ファイル名コンバータの切り換えは,必ずスレッド間の同期をとってから行ってください。

3.1.4 ファイル名に半角カナを使用した場合の制限

標準版 OpenVMS V7.3 と日本語 OpenVMS V7.3 が提供する各種ユーティリティのうち,日本語ファイル名をサポートすると明記されているものでも,半角カナの含まれているファイル名を表示すると,半角カナ以降のカラムがずれる等の現象が発生しますが,これは日本語OpenVMS V7.3 の制限です。

3.1.5 RMS 以外の API での日本語ファイル名の使用

$QIO などの RMS 以外の API では,ファイル名として Super DEC 漢字コードセットを使用することはできません。これらの API で使用できるファイル名については『OpenVMS Extended File Specifications の手引き』を参照してください。

3.1.6 RMS で日本語ファイル名に使用できない文字

日本語 OpenVMS V7.3-1 では,以下の文字はファイル名として使用できません。

アスタリスク (*)
疑問符 (?)
ユーザ定義文字 (0xA121〜0xFE7E)
Super DEC 漢字でない文字 ( JIS X 0213 や ISO Latin-1 文字など)

3.1.7 RMS で ISO Latin-1 に変換される文字

以下の文字は ISO Latin-1 文字とみなされるため,ファイル名にこれらの文字だけから成る場合は,Unicode ではなく ISO Latin-1 に変換されます。これは Windows NT の仕様です。

文字 SDK Unicode
´ A1AD 00B4
¨ A1AF 00A8
± A1DE 00B1
× A1DF 00D7
÷ A1E0 00F7
° A1EB 00B0
§ A1F8 00A7
A2F9 00B6

3.1.8 日本語ユーティリティ

日本語 OpenVMS V7.3 が提供する日本語ユーティリティでは,一部を除いて長いファイル名は使用できません。 Super DEC 漢字コードセットを用いて日本語のファイル名を使用する場合は,ファイル指定に漢字を含めることができます。

JMAIL ユーティリティと JEVE/XTPU エディタは,ファイル名に漢字を含めることができます。

以下の日本語ユーティリティでは,日本語ファイル名が使用できることを保証しません。

3.1.9 ファイル名にアルファベットを使用する場合の注意点

ODS-5 ディスク上で,ファイル名にアルファベット ( 半角と全角のラテン文字,ギリシア文字,キリール文字 ) を使用した場合,デフォルトの設定ではアルファベットの大文字と小文字が同一視されます。そのため同一の名前で大文字と小文字のファイル名を作成することはできません。もしそのようなファイル名を作成しようとした場合,先に作られたファイル名に統一されます。

たとえば,全角アルファベットの小文字のabc.txt という名前のファイルを作ったとします。


    $ create abc.txt    
    ^Z 

その後に,全角アルファベットの大文字のABC.TXT という名前のファイルを作ろうとします。


    $ create ABC.TXT    
    ^Z 

しかし,大文字のABC.TXT ファイルは先にあった小文字abc.txt と同一視され,ディレクトリには次のように表示されます。


    $ dir 
 
    Directory DISK$ODS5:[TEST] 
 
    abc.txt;2            abc.txt;1    
 
    Total of 2 files. 

また,このような同一視は, DIR コマンド等でファイル名を検索する場合にも行なわれます。


    $ dir ABC.TXT 
 
    Directory DISK$ODS5:[TEST]    
 
    abc.txt;2            abc.txt;1    
 
    Total of 2 files. 
    $ 

3.1.10 日本語ライブラリ

日本語 OpenVMS V7.3 では,日本語ライブラリ・ルーチンで日本語ファイル名が使用できることを保証しません。

3.1.11 ネットワーク・アクセス

日本語 OpenVMS V7.3 では,Super DEC 漢字コードセットを用いてネットワーク上にあるファイルにアクセスすることを保証しません。 Super DEC 漢字コードセットを使わずに,ネットワーク上のファイルにアクセスする場合の制限は『OpenVMS Extended File Specifications の手引き』を参照してください。

3.1.12 その他の制限事項

『OpenVMS Extended File Specifications の手引き』に記述された制限事項は,日本語ファイル名を利用する場合にも当てはまります。ユーザは必ずこれらの制限事項を理解した上で,日本語ファイル名を使用してください。

3.2 BACKUP ユーティリティの日本語化方式の変更

V7.3

BACKUP ユーティリティの主要な日本語機能が標準版に組み込まれたため, BACKUP ユーティリティの中核を成す BACKUPSHR.EXE の日本語化が不要になりました。かわりに V7.3 では BACKUP ユーティリティのユーザ・インタフェース部分である BACKUP.EXE が日本語化され, JSY$BACKUP.EXE に置き代わっています。

この変更に伴い,BACKUPSHR.EXE を呼び出すアプリケーションは,日本語ファイル名を VTF-7 形式で表現する必要があります。

3.3 インストール時の使用キーボードによる制限事項

Alpha V6.1

ワークステーションでLK401-JJ,LK421-AJ,LK421-JJ,LK411-JJ,PCXAJ-AA (以上のキーボードは JIS 配列になっています)または,LK411AJ を使用する場合,日本語 DECwindows Motif のインストレーションが完了するまで,一部のキーの刻印と実際に入力される文字が一致しません。この様な場合は以下の表を参考にキー入力を行なってください。

表 3-1 :LK401/LK421 JIS配列キーボード
表 3-2 :LK411-JJキーボード
表 3-3 :PCXAJ-AAキーボード
表 3-4 :LK411-AJキーボード

表 3-1 LK401/LK421 JIS配列キーボード
    入力する文字 LK401/LK421 JIS配列キーボード上の押すキー1
        "           * (Shift + : )
        &           ' (Shift + 7 )
        '           :  
        (           ) (Shift + 9 )
        )   (Shift + 0)
        *           ( (Shift + 8)
        +           -- ( over bar ) (Shift + ^ )
        :           + (Shift + ;)
        <           ¥(半角)  
        =           ^  
        >           | (Shift +¥(半角))
        @           " (Shift + 2)
        [           @  
        \           ]  
        ]           [  
        ^           & (Shift + 6)
        _           = (Shift + - )
        `         ESC  
        {           ` (Shift + @ )
        |           } (Shift + ] )
        }           { (Shift + [ )
        ~            (Shift + ESC )


17,9,0,8,2,6 の数字はテン・キーではなく,メイン・キー最上段の数字キーを押してください。

表 3-2 LK411-JJ JIS 配列キーボード
    入力する文字 LK411-JJキーボード上の押すキー 1
        "           * (Shift + : )
        &           ' (Shift + 7 )
        '           :  
        (           ) (Shift + 9 )
        )   (Shift + 0)
        *           ( (Shift + 8)
        +           -- ( over bar ) (Shift + ^ )
        :           + (Shift + ;)
        =           ^  
        @           " (Shift + 2)
        [           @  
        ]           [  
        ^           & (Shift + 6)
        _           = (Shift + - )
        {           ` (Shift + @ )
        }           { (Shift + [ )


17,9,0,8,2,6 の数字はテン・キーではなく,メイン・キー最上段の数字キーを押してください。

表 3-3 PCXAJ-AAキーボード
    入力する文字 PCXAJ-AAキーボード上の押すキー1
        "           * (Shift + : )
        &           ' (Shift + 7 )
        '           :  
        (           ) (Shift + 9 )
        )           ~ (Shift + 0)
        *           ( (Shift + 8)
        +           -- ( over bar ) (Shift + ^ )
        :           + (Shift + ;)
        =           ^  
        @           " (Shift + 2)
        [           @  
        ]           [  
        ^           & (Shift + 6)
        _           = (Shift + - )
        `         全角/半角  
        {           ` (Shift + @ )
        }           { (Shift + [ )
        ~            (Shift + 全角/半角)


17,9,0,8,2,6 の数字はテン・キーではなく,メイン・キー最上段の数字キーを押してください。 (Shift + 全角/半角)キーは対応する刻印がありません。

表 3-4 LK411-AJキーボード
    入力する文字 LK411-AJキーボード上の押すキー
        `           <  
        ~           > (Shift + < )

【例】

PCXAJ-AAキーボードを使用して,日本語 OpenVMS Alpha オペレーティング・システムをインストールする場合,コマンドを入力する際に   :   キーを押すかわりに   +  キーを押してください。


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