前へ | 次へ | 目次 | 索引 |
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS TCP/IP Services 製品は,業界標準の TCP/IP 通信プロトコル・セットを, Internet Engineering Task Force (IETF) によって使用される Request for Comments (RFCs) の指定に従って, OpenVMS にインプリメントしたものです。
TCP/IP Services を使用すると,異機種混合ネットワークがインターコネクトできるようになるため,ユーザは次のようにさまざまな方法で遠隔ホストに接続することが可能になります。
TCP/IP による相互接続では,それぞれのネットワークのハードウェアの詳細を意識せず,コンピュータは個々の物理的ネットワーク接続に関係なく通信することができます。TCP/IP は,標準の伝送手段と,全二重で信頼性が高いストリーム通信サービスの両方を,ソフトウェア・アプリケーションに提供します。
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS ソフトウェアは, OpenVMS システム,UNIX システム,およびその他の TCP/IP プロトコル・セットと Sun Microsystems' Network File System (NFS) をサポートするシステムの間の相互操作性およびリソース共用機能を提供します。 TCP/IP システムおよびその他のインターネット・ホストは,イーサネット, Fiber Distributed Data Interface (FDDI),トークン・リング,および非同期転送モード (ATM) などさまざまなネットワーク・ハードウェア構成で標準の TCP/IP プロトコルを使用して,データおよびリソースを共用しています。
TCP/IP ネットワークに接続されているそれぞれのエンド・システムは, ホストと呼ばれます。それぞれのホストには,固有の名前とアドレスがあります。ローカル・ホストは現在使用しているシステムであり,遠隔ホストは通信している相手のシステムです。 ホストは,ホスト間で情報を伝送する ラインによって接続されています。ラインは,データを 1 つのホストから別のホストへ渡すときに経由する物理パスです (ラインの例としては,電話ライン,光ファイバ・ケーブル,およびサテライトがあります)。
TCP/IP ネットワークは,パケット交換ネットワークと呼ばれます。情報は,連続したストリームではなく,小さなパケット単位でホストからホストへ伝送されます。たとえば,ホストから別のホストへ伝送されるファイルは,多数の小さなパケットに分割され,一度に 1 つずつ,ネットワークを介して送信されます。それぞれのパケットには,デスティネーション・ホストのアドレスに関する情報が含まれています。デスティネーションに着くと,パケットは組み立てられます。
データ・メッセージをソース・ホストからデスティネーション・ホストに出力先を指定するプロセスは,
ルーティングと呼ばれます。相互に直接接続されていないホスト間では,仲介ホストを経由してデータをソースからデスティネーションに転送できます。
23.3.1 OpenVMS Cluster システムのサポート
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS は,OpenVMS Cluster システム,およびクラスタ・エイリアスの使用をサポートしています。ネットワークは,クラスタをインターネット・エイリアスと呼ばれる, 1 つの名前を持った 1 つのシステムとして認識します。遠隔ホストは,クラスタ・エイリアスを使用してクラスタを 1 つのホストとしてアドレスを指定したり,1 つのクラスタ・メンバのホスト名を使用して,クラスタ・メンバに個別にアドレスを指定することができます。
23.3.2 TCP/IP Services 管理ツールおよびユーティリティ
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS は,100 を超える OpenVMS DCL スタイルのコマンドが含まれた,総合的な使いやすいネットワーク管理ツールを提供します。これらのコマンドは, TCPIP>プロンプトで管理コマンドを実行することにより,TCP/IP Services の構成要素をローカルに構成し,監視し,チューニングすることができます。
UNIX 管理コマンドを使用して,コンポーネントの一部を管理することもできます。
使用しているシステムでの TCP/IP Services の管理方法の詳細については, 『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management』 を参照してください。
23.4 TCP/IP ネットワークに参加するための準備
ホストで TCP/IP を構成するためには,その前に,一意な IP アドレスとホスト名が必要になります。ネットワーク・ハードウェア・アドレスは,ハードコード化されていて固定されていますが, IP アドレスはそれと異なり,ネットワーク管理者によって割り当てられます。ネットワークを公的なインターネットに接続する場合は, InterNIC から公式の一意なネットワーク ID を取得する必要があります。 IP アドレスは 32 ビットの長さ (8 ビットが 4 つ) になっており,これでネットワークとホストを識別します。ホスト名は,通信を簡単にする目的で,コンピュータに割り当てられた名前です。
IP アドレスは,ホスト ID とネットワーク ID を指定し,ホストがどのパケットを受信して,どのパケットを無視するか決定するための判断材料を提供します。ホストは,自身のアドレスおよびデスティネーション・コンピュータのアドレスを,サブネット・マスクと比較して,別のホストが同じサブネットにあるのか異なるサブネットにあるのか判断します。デスティネーションのネットワーク ID がソースのネットワーク ID と一致する場合,パケットはローカル・ネットワークのデスティネーション・ホストに配布されます。 2 つのネットワーク ID が一致しない場合,パケットは IP ルータを経由してデスティネーション・コンピュータ宛に転送されます。
IP アドレスとホスト名の他に,次の情報をネットワーク管理者から聞いておく必要があります。
また,どのエンド・ユーザ・サービスを提供するかということと,ユーザのシステムがクライアントとして動作するか,サーバとして動作するか,あるいは両方として動作するかについても決定しておく必要があります。
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS のインストールおよび構成の計画の詳細については 『Digital TCP/IP Services for OpenVMS Concepts and Planning』 を参照してください。
23.5 TCP/IP Services のインストールおよび構成
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS ソフトウェアは,次のいずれかの方法でシステムにインストールすることができます。
TCP/IP Services ソフトウェアが正常にインストールされたら,次のようにメニュー方式の構成プロシージャを起動し,使用しているシステムおよびネットワーク固有の特性に従って,ソフトウェアを構成します。
$ @SYS$MANAGER:TCPIP$CONFIG |
インストールおよび構成の詳細については,
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Installation and Configuration』 を参照してください。
23.6 TCP/IP Services の開始と停止
Compaq TCP/IP Services for OpenVMS の標準ソフトウェアおよびオプションの構成要素を構成した後でこれを開始したり,所定のシャットダウンのために停止したりするには,次のコマンドを実行します。
$ @SYS$MANAGER:TCPIP$CONFIG |
その後,TCP/IP Services for OpenVMS を開始または停止するためのメニュー・オプションを入力します。
23.7 TCP/IP Services のドキュメント
表 23-3 は, Compaq TCP/IP Services for OpenVMS のためのドキュメントのリストです。 TCP/IP Services for OpenVMS の計画,インストール,構成,使用,および管理の詳細については,これらのドキュメントを参照してください。
マニュアル | 説明 |
---|---|
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Release Notes』 | インストール,アップグレード,互換などソフトウェアの変更点に関する情報について説明しています。また,新旧のソフトウェアの問題,制限事項,さらにソフトウェアとドキュメントの訂正事項についても説明しています。 |
『Digital TCP/IP Services for OpenVMS Concepts and Planning』 | TCP/IP の概念と構成要素について紹介し,ソフトウェア構成の計画を立てる上で役に立つ情報を提供しています。 |
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Installation and Configuration』 | 使用している OpenVMS ホストに Compaq TCP/IP Services for OpenVMS 製品をインストールし,構成する方法について説明しています。 |
『Digital TCP/IP Services for OpenVMS User's Guide』 | 遠隔ファイル操作,電子メール,TELNET,TN3270,ネットワーク・プリントなど,TCP/IP Services で使用可能なアプリケーションの使用方法について説明しています。さらに,これらのサービスを使用して,プライベート・インターネットまたはワールドワイド・インターネット上にあるシステムと通信する方法についても説明しています。 |
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management』 | Compaq TCP/IP Services for OpenVMS ソフトウェア製品の日常的な管理について説明しています。 |
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management Command Reference』 | Compaq TCP/IP Services for OpenVMS コマンドについて説明しています。 『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management』 マニュアルの補完的ガイドです。 |
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Tuning and Troubleshooting』 | Compaq TCP/IP Services for OpenVMS のトラブルシューティングの方法およびそのパフォーマンス・チューニングの方法について説明しています。 |
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Guide to IPv6』 | Compaq TCP/IP Services for OpenVMS IPv6 の機能と,使用しているシステムに IPv6 をインストールし,構成する方法について説明しています。 |
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Sockets API and System Services Programming』 | Compaq TCP/IP Services for OpenVMS を使用し, Berkeley Sockets Sockets または OpenVMS システム・サービスを使用してネットワーク・アプリケーションを開発する方法について説明しています。 |
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS ONC RPC Programming』 | Provides an overview of high-level programming with Open Network Computing Remote Call (ONC RPC) を使用した上位レベルのプログラミングの概要を示し,RPCGEN プロトコル・コンパイラを使用してアプリケーションを作成する方法および RPC プログラミング・インタフェースについて説明しています。 |
『Compaq TCP/IP Services for OpenVMS SNMP Programming and Reference』 | Simple Network Management Protocol (SNMP) および SNMP アプリケーション・プログラミング・インタフェース (eSNMP) について説明しています。 TCP/IP Services で提供されるサブエージェント,サブエージェントを管理するために提供されるユーティリティ,および独自にサブエージェントを構築する方法について説明しています。 |
23.8 DECnet-Plus for OpenVMS ネットワーク・ソフトウェア
DECnet-Plus for OpenVMS を使用すると,さまざまなコンパックのオペレーティング・システムが,コンパックのオペレーティング・システムや他のベンダ製のシステムと通信できるようになります。 DECnet-Plus ネットワークは,遠隔システムとの通信,リソースの共有,分散処理などをサポートします。ネットワーク・ユーザは,ネットワーク上のすべてのシステム上にあるリソースにアクセスできるようになります。ネットワークに参加しているそれぞれのシステムは,ネットワーク・ノードと呼ばれます。
DECnet-Plus は, DIGITAL ネットワーク・アーキテクチャ (DNA) の第 5 フェーズのインプリメントです。DNA Phase V では, OSI プロトコルが DECnet プロトコルに統合されています。さらに,DECnet-Plus は,インターネット規格 RFC 1006 とインターネットの草稿 RFC 1859 をサポートしています。これによって OSI アプリケーションと DECnet アプリケーションが TCP/IP を介して動作するようになります。このように DECnet-Plus を使用することによって,コンパックのシステムからでも他のベンダのシステムからでも,アプリケーションは,任意の DECnet Phase IV ベースのシステムまたはOSI ベースのシステム上の OSI および DECnetアプリケーションと通信できるようになります。
DECnet-Plus の DECnet (Phase IV) との主な違いは,一般的なプロトコルをサポートしているという点にあります。
DECnet-Plus では,ネットワーク機能を拡張するためのさまざまな機能が用意されています。これらの機能を次に示します。
DECnet ノード名の命名規則は,次の 2 種類の DECnet 機能に対応しています。
ネームスペース:.ディレクトリ ... .ディレクトリ.ノード名 |
ネームスペース | グローバル・ネーム・サービスを指定 |
ディレクトリ ...
.ディレクトリ |
ネーム・サービス内の階層化ディレクトリ・パスを定義 |
ノード名 | DECnet ノードを定義する特定のオブジェクト |
次に,ローカル・ネームスペース,DECdns, DNS/BIND に対応する完全なノード名の例を示します。
ローカル・ネームスペース - LOCAL:.CPlace DECdns - ACME:.warren.CPlace Domain - CPlace.warren.acme.com |
ユーザが入力した完全な名前は,大文字と小文字が区別された状態でシステムに格納されます。ただしエントリと,格納された名前をマッチングさせる時には,システムは大文字と小文字を区別しません。つまりユーザが Acme と入力した場合でも,システムは,それを ACME と認識します。
完全な名前についての詳細は,DECnet-Plus のドキュメントを参照してください。
前へ | 次へ | 目次 | 索引 |