本書は,DEC XTPU (DEC eXtended Text Processing Utility) 言語についての解説書です。
改訂/更新情報: | 日本語 OpenVMS V7.2『 DEC XTPU リファレンス・マニュアル』の改訂版です。 |
オペレーティング・システム: | 日本語 Compaq OpenVMS Alpha V7.3 日本語 Compaq OpenVMS VAX V7.3 |
ソフトウェア・バージョン: | DEC XTPU V3.3 |
(C) 2001 Compaq Computer Corporation
本書の著作権はコンパックコンピュータ株式会社が保有しており,本書中の解説および図,表はコンパックの文書による許可なしに,その全体または一部を,いかなる場合にも再版あるいは複製することを禁じます。
また,本書に記載されている事項は,予告なく変更されることがありますので,あらかじめご承知おきください。万一,本書の記述に誤りがあった場合でも,コンパックは一切その責任を負いかねます。
本書で解説するソフトウェア(対象ソフトウェア)は,所定のライセンス契約が締結された場合に限り,その使用あるいは複製が許可されます。
コンパックは,コンパックまたはコンパックの指定する会社から納入された機器以外の機器で対象ソフトウェアを使用した場合,その性能あるいは信頼性について一切責任を負いかねます。
以下は,米国 Compaq Computer Corporation の商標です。
COMPAQ,VAX,VMS および Compaq ロゴ。
以下は,他社の商標です。
Adobe,Adobe Illustrator,POSTSCRIPT は米国 Adobe Systems 社の商標です。
BITSTREAM は米国 Bitstream 社の商標です。
COMPAQ は米国COMPAQ Computer 社の商標です。
Microsoft,MS および MS--DOS は米国 Microsoft 社の商標です。
Motif,OSF,OSF/1,OSF/Motif および Open Software Foundation は米国 Open Software Foundation 社の商標です。
その他のすべての商標および登録商標は,それぞれの所有者が保有しています。
次へ | 目次 | 索引 | DOC HOME |
本書は,DEC XTPU (DEC eXtended Text Processing Utility)言語について説明します。英語版の DECTPU と DEC XTPU の相違点についてのみ記述されていますので,本書に記述されていない機能の解説は,『DEC Text Processing Utility Reference Manual』を参照してください。
本書は主に参照資料として使用するように構成されています。
本書は DEC XTPU で拡張された機能に関する解説書であり,読者が一般的な DECTPU の機能を理解していることを前提としています。一般的な DECTPU の機能については『DEC Text Processing Utility Reference Manual』を参照してください。 DEC XTPU の一部の高度な機能,たとえばコール可能なインタフェースや FILE_PARSE 組込みプロシージャなどは,Compaq OpenVMS システムの概念を十分理解した経験の豊富なシステム・プログラマを対象としています。 Compaq OpenVMS オペレーティング・システムに関するマニュアルについては,この後の"関連資料"の節を参照してください。
本書は,6つの章と2つの付録から構成されています。
第 1 章 | DEC XTPU の概要を示します。 |
第 2 章 | DEC XTPU のデータ・タイプのうち,文字セットに関連するものについて詳しく説明します。 |
第 3 章 | DEC XTPU の字句要素について説明します。この中には文字セット,識別子,変数,定数,および DEC XTPU 言語ステートメントなどの予約語が含まれています。 |
第 4 章 | DEC XTPU 組込みプロシージャのうち,機能拡張のために追加,または変更された組込みプロシージャについて説明します。 |
第 5 章 | DEC XTPU を呼び出す方法を示します。 |
第 6 章 | DEC XTPU のコール可能なインタフェースについて説明します。 |
付録 A | DEC XTPU でサポートされる端末装置について説明します。 |
付録 B | DEC XTPU で英語版に追加されたメッセージとその省略形,および重大度レベルのリストを示します。 |
DEC XTPU プログラムでは,字下げやスペーシングなどの特殊なフォーマッティングは必要とされません。本書のプログラミングの例では,DEC XTPU プログラムを作成するためのいろいろな方法を示すために,複数の異なるフォーマッティング・スタイルが使用されています。プロシージャに含まれる長いステートメントは複数行に分割することにより,読みやすくなっています。本書で使用されているフォーマットに必ずしも従う必要はなく,自分の使いやすいフォーマットを使用することができます。
本書では以下の表記法を使用します。
表記法 | 意味 |
---|---|
Ctrl/x | Ctrl/x という表記は, Ctrl キーを押しながら別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。 |
PF1 x | PF1 x という表記は,PF1 に定義されたキーを押してから,別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。 |
[Return] | 例の中で,キー名が四角で囲まれている場合には,キーボード上でそのキーを押すことを示します。テキストの中では,キー名は四角で囲まれていません。
HTML 形式のドキュメントでは,キー名は四角ではなく,括弧で囲まれています。 |
... | 例の中の水平方向の反復記号は,次のいずれかを示します。
|
.
. . |
垂直方向の反復記号は,コードの例やコマンド形式の中の項目が省略されていることを示します。このように項目が省略されるのは,その項目が説明している内容にとって重要ではないからです。 |
( ) | コマンドの形式の説明において,括弧は,複数のオプションを選択した場合に,選択したオプションを括弧で囲まなければならないことを示しています。 |
[ ] | コマンドの形式の説明において,大括弧で囲まれた要素は任意のオプションです。オプションをすべて選択しても,いずれか1つを選択しても,あるいは1つも選択しなくても構いません。ただし,OpenVMS ファイル指定のディレクトリ名の構文や,割り当て文の部分文字列指定の構文の中では,大括弧に囲まれた要素は省略できません。 |
[|] | コマンド形式の説明では,括弧内の要素を分けている垂直棒線はオプションを 1 つまたは複数選択するか,または何も選択しないことを意味します。 |
{ } | コマンドの形式の説明において,中括弧で囲まれた要素は必須オプションです。いずれか1のオプションを指定しなければなりません。 |
太字 | 太字のテキストは,新しい用語,引数,属性,条件を示しています。 |
italic text | イタリック体のテキストは,重要な情報を示します。また,システム・メッセージ (たとえば内部エラー number),コマンド・ライン(たとえば /PRODUCER= name),コマンド・パラメータ(たとえば device-name) などの変数を示す場合にも使用されます。 |
UPPERCASE TEXT | 英大文字のテキストは,コマンド,ルーチン名,ファイル名,ファイル保護コード名,システム特権の短縮形を示します。 |
Monospace type | モノスペース・タイプの文字は,コード例および会話型の画面表示を示します。
C プログラミング言語では,テキスト中のモノスペース・タイプの文字は,キーワード,別々にコンパイルされた外部関数およびファイルの名前,構文の要約,または例に示される変数または識別子への参照などを示します。 |
- | コマンド形式の記述の最後,コマンド・ライン,コード・ラインにおいて,ハイフンは,要求に対する引数がその後の行に続くことを示します。 |
数字 | 特に明記しない限り,本文中の数字はすべて10 進数です。 10 進数以外 (2 進数,8 進数,16 進数) は,その旨を明記してあります。 |
この章では,DEC XTPU(DEC eXtended Text Processing Utility)に関して,以下の項目について解説します。
DEC XTPU とは英語版の DEC Text Processing Utility (DECTPU) を拡張し,複数コードセットを処理する機能を追加した,プログラミング可能なテキスト処理ユーティリティです。 DEC XTPU は,テキスト処理インタフェースを開発するアプリケーション・プログラマ,およびシステム・プログラマを援助するためのツールとして設計されています。たとえば,プログラマはDEC XTPU を用いて,特別な環境のエディタを作ることができます。このDEC XTPUユーティリティにはコンパイラ,インタプリタ,高級手続き言語,およびDEC XTPU で書かれたインタフェースが含まれています。
DEC XTPU はスクリーン向きエディタのための一般的な機能の他に,以下の特殊機能も備えています。
DEC XTPU のレイヤ上に構築されたエディタや他のアプリケーション・プログラムは,ユーザと DEC XTPU 間のインタフェースになります。ユーザは日本語 EVE を使うか,または独自のアプリケーション・プログラムを作ることによって, DEC XTPU を利用できます。
すなわち,DEC XTPU は日本語のテキスト処理アプリケーションを構築するための基礎となるものであると考えることができます。日本語 EVE という編集インターフェイスは, DEC XTPU の上にレイヤ構造として作成されたインタフェースの例であり, DEC XTPU 言語で書かれています。
日本語 EVE は,簡単に学習し,使用することができる日本語エディタです。一般的な編集機能は日本語 EVE キーパッドの1つのキーを押すことにより利用できるので,これまでエディタを使ったことがない人でも,基本的な編集操作なら,すみやかに実行することができます。
また,テキスト・エディタの使用経験の豊富なユーザにとっても,日本語 EVE は強力で効率のよいエディタです。高度な編集機能は,日本語 EVE コマンド・ラインにコマンドを入力することにより実行できます。このコマンドを使用すれば, DEC XTPU の多くの特殊な機能を使用することができます。日本語 EVE インタフェースについての詳しい説明は,『日本語EVE ユーザーズ・ガイド』および『日本語EVE リファレンス・マニュアル』を参照してください。
DEC XTPU は,強力なテキスト処理作業を行う高級手続き型プログラミング言語です。 DEC XTPU 言語は DEC XTPU のもっとも基本的な構成要素であると考えることができます。 DEC XTPU の機能をアクセスするには,DEC XTPU 言語でプログラムを作成し, DEC XTPU ユーティリティを使ってそのプログラムをコンパイルし,実行しなければなりません。 1 つの DEC XTPU ステートメントだけしか含まない単純なプログラムから,日本語 EVE インタフェースのセクション・ファイルのように複雑なプログラムまで,いろいろなプログラムをDEC XTPU 言語で作成することができます。
DEC XTPU 言語はブロック構造になっているため,簡単に学習でき,また使用できます。 DEC XTPU 言語には多くのデータ・タイプ,関係演算子,エラー処理機能,繰り返しや CASE 文,重要な機能を実行するための広範囲にわたる組込みプロシージャなどがあります。コメントはコメント文字(!)によって示すことができるので,プロシージャに関する内部的な記述を,プロシージャに含めることができます。また,ユーザ作成デバッグ・プログラムを用いてプロシージャをデバッグすることもできます。
DEC XTPU 言語には多くのデータ・タイプが含まれています。データ・タイプは変数の内容の意味を解釈するために使用されます。他の多くの言語と異なって, DEC XTPU 言語にはデータ・タイプを変数に割り当てるための宣言ステートメントはありません。 DEC XTPU の変数のデータ・タイプは,代入ステートメントで代入されたときのデータ・タイプであると解釈されます。たとえば,次のステートメントは,文字列データ・タイプを this_var という変数に代入します。
this_var := 'This can be a string of your choice'; |
次のステートメントは,ウィンドウ・データ・タイプを変数 lower_case に代入します。ウィンドウはスクリーンの1行目から始まる15行を使用し,ステータス・ラインは OFF(表示されない)です。
x := CREATE_WINDOW(1, 15, OFF) |
多くのDEC XTPU データ・タイプ(たとえば学習タイプやパターン)は,通常のプログラミング言語で使用されているデータ・タイプと異なっています。 DEC XTPU のデータ・タイプは 表 1-1 に示すとおりです。
データ・タイプ | 説明 |
---|---|
ARRAY | 要素の集まり |
BUFFER | テキスト・レコードの集まり- BUFFER は編集作業ができる範囲を示します。 |
INTEGER | 整数-有効な値は,-2,147,483,648 から 2,147,483,647 です。 |
KEYWORD | DEC XTPU コンパイラにとって特別の意味がある予約語 |
LEARN | DEC XTPU キーストロークの集まり |
MARKER | バッファ内の文字位置 |
PATTERN | 一連の文字-パターン演算子とパターン組込みプロシージャは結果としてこのデータ・タイプを通知します。PATTERN はバッファ内の特定のテキストを見つけるために,SEARCH 組込みプロシージャで使用されます。 |
PROCESS | VMS サブプロセス |
PROGRAM | 実行可能なDEC XTPU ステートメントのコンパイルされた形式 |
RANGE | 2つのマーカの間に存在するすべてのテキスト(2つのマーカも含む) |
STRING | 文字列 |
UNSPECIFIED | 変数宣言を持つコードがコンパイルされた後のグローバル変数の初期状態 |
WINDOW | スクリーンを分割した領域-ウィンドウは,テキスト・バッファのうちスクリーン上に現れている領域です。 |
DEC XTPU データ・タイプについての詳しい説明は,『Guide to the DEC Text Processing Utility』および本書の 第 2 章 "DEC XTPUのデータ・タイプ" を参照してください。
次へ | 目次 | 索引 |