OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


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6.1.2 直接 SCSI から MSCP サービス対象へのフェールオーバ (ディスクのみ)

OpenVMS では,SCSI バスを共用する複数のホストをサポートしています。この機能を,マルチホスト SCSI OpenVMS Cluster システムといいます。この構成では,SCSI バスは共用ストレージ・インターコネクトです。クラスタ通信は 2 番目のインターコネクト (LAN,DSSI,CI,または MEMORY CHANNEL) を通じて行われます。

図 6-2 に示すように,マルチホスト SCSI OpenVMS Cluster システムのマルチパス・サポートでは,直接関連付けられた SCSI から MSCP のサービス対象である SCSI ストレージへ,フェールオーバが可能です。

図 6-2 1 つのインターコネクトによる直接 SCSI から MSCP のサービス対象構成


この構成では,次の点に着目してください。

このようなマルチホスト SCSI OpenVMS Cluster システムでのマルチパス・サポートでも,MSCP サービス対象 SCSI ストレージから直接接続された SCSI ストレージへのフェールオーバは有効化されます。たとえば, 図 6-2 の構成では,以下のようなイベントが発生する可能性があります。

注意

本書では,直接 SCSI から MSCP サービス対象パスへのフェールオーバ機能は,直接パスとサービス対象パスとの間のいずれかの方向におけるフェールオーバ機能を意味します。

6.1.3 両方の種類のマルチパス・フェールオーバを組み合わせた構成

図 6-3 に示すように,マルチホスト SCSI OpenVMS クラスタ・システムでは,クラスタを両方の種類のマルチパス・フェールオーバ ( 直接 SCSI から直接 SCSI と直接 SCSI から MSCP サービス対象の SCSI) に構成することによりディスク・ストレージの可用性を強化できます。

図 6-3 インターコネクトが 2 つの直接 SCSI から MSCP サービス対象構成


この構成では,次の点に着目してください。

この構成には,「直接 SCSI フェールオーバ」と「直接から MSCP サービス対象 SCSI へのフェールオーバ」の両方の利点があります。

6.2 構成要件と制限事項

マルチパス SCSI と FC 構成の要件については, 表 6-1 を参照してください。

表 6-1 マルチパス SCSI と FC 構成の要件
構成要素 説明
ホスト・アダプタ パラレル SCSI の場合,KZPBA-CB を使用します。 OpenVMS でディスク・マルチパス・フェールオーバをサポートする唯一の SCSI ホスト・アダプタです。 Fibre Channel の場合,KGPSA-BC と KGPSA-CA の両方が OpenVMS でマルチパス・フェールオーバをサポートします。
Alpha コンソール・ファームウェア HSZ70 と HSZ80 を備えたシステムでは,最小更新レベルは,5.3 または 5.4 であり,AlphaServer によって異なります。 HSG80 を備えたシステムでは,最小更新レベルは 5.4 です。
コントローラ・ファームウェア HSZ70 の場合, 最小更新レベルは 7.3 です。 HSZ80 の場合,8.3 です。HSG80 の場合,8.4 です。 MDR の場合,最小更新レベルは 1170 です。
コントローラ・モジュール・モード マルチバス・モードに設定します (ディスクのみ)。選択は,HS x コンソールで行います。
全接続 マルチバス・モードで HS x に接続されているすべてのホストには,両方の HS x コントローラ・モジュールまでのパスが必要です。異なるコントローラに排他的に接続されているホストは,コントローラ間で論理ユニットをあちらこちらに切り替え,I/O が実行されるのを防ぐためです。

これを防ぐには,常にホストからコントローラ・モジュールへ全接続されるようにしておきます。コントローラとのホストの接続に障害が発生すると,以下のどれかの操作が実行され,パスの切り替えが無限に繰り返されるのを防ぎます。

  • 接続を迅速に修復する。

  • 他のホストが特定の接続のコントローラに切り替えられるのを防ぐ。そのためには,部分接続のコントローラの原因になるパスへの切り替えを無効にするか ( 第 6.7.11 項 参照),部分的に接続されているコントローラをシャットダウンする。

  • 部分的に接続されたホストを両方のコントローラから切り離す。

割り当てクラス パラレル SCSI の場合,有効な HSZ 割り当てクラスが必要です ( 第 6.5.3 項 参照)。SCSI バスが HSZ コントローラだけで構成され,すべてのコントローラが有効な HSZ 割り当てクラスを持つ場合,そのバスの古い SCSI デバイス命名規則に従う必要はありません。つまり,そのアダプタに同じポート割り当てクラスを割り当てたり,同じノード割り当てクラスと同じ OpenVMS アダプタ・デバイス名を割り当てる必要はありません。

ただし,非 HSZ デバイスがバスにある場合,あるいは HSZ 割り当てクラスなしの HSZ コントローラがある場合,ノードとポート割り当てクラス代入,およびコントローラ・デバイスの名前については共用 SCSI バスの標準ルールに従う必要があります。

AlphaServer 2 x00(A) を除き, HSZ 割り当てクラスによるデバイスからのブートは,KZPBA-CB をサポートするすべての AlphaServer でサポートされています。

コントローラ割り当てクラスは,FC デバイスには使用しません。

注意: Volume Shadowing for OpenVMS を使用している場合は,すべてのディスクに 0 以外の割り当てクラスが必要です。 HSG コントローラと HSV コントローラに接続されているすべての FC ディスクには,割り当てクラス値として 1 が自動的に代入されます。この値は,ボリューム・シャドウイング要件を満たす値です。

マルチパス FC と SCSI 構成の制限事項については, 表 6-2 を参照してください。

表 6-2 マルチパス FC と SCSI 構成の制限事項
機能 説明
サポートされているデバイス コントローラ・モジュール HSZ70,HSZ80,HSG60,HSG80,および HSV110 に関連付けられている DKDRIVER ディスク・デバイスをサポートします。 MDR に関連付けられている MKDRIVER テープと GKDRIVER テープ・ロボットはサポートされます。テープなどの他のデバイス・タイプや GKDRIVER などの汎用クラス・ドライバはサポートしていません。

大きな負荷がかかっている場合,HSZ70 または HSZ80 コントロールでは,ホストによるコントローラの手動または自動切り替えができない場合があります。テストの結果,この問題はめったに起こらないことが判明しています。この問題は,ファームウェア HSOF V7.7 およびそれ以降のバージョンを使用する HSZ70 では修正済みです。将来のリリースでは HSZ80 についても修正される予定です。この問題は HSG x コントローラ,HSV x コントローラ,MDR では 発生しません

複合バージョンと複合アーキテクチャ・クラスタ HSZ,HSG,または HSV にマルチバス・モードで接続されているホストでは, OpenVMS バージョン 7.2 またはそれ以上を実行する必要があります。

サービス対象パスへのマルチパス・フェールオーバを使用するには,共用 SCSI または Fibre Channel デバイスへ直接アクセスしているすべてのシステムで MPDEV_REMOTE を有効にする必要があります。この機能は,OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 で初めて導入されました。このため,MPDEV_REMOTE を有効にするすべてのノードで, OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 またはそれ以降を実行する必要があります。

SCSI から MSCP へのフェールオーバ
MSCP から SCSI へのフェールオーバ
マルチパス・ホストは,共用 SCSI バス (パラレル SCSI または Fibre Channel) 経由で SCSI ディスク・デバイスに接続する必要があります。共用 SCSI バス上のすべてのホストで OpenVMS Alpha バージョン 7.3--1 を実行する必要があります。また,これらのホストでは MPDEV_REMOTE システム・パラメータを 1 に設定する必要があります。
Volume Shadowing for OpenVMS 一定のシステム・パラメータにデフォルト設定を使用すると,マルチパス・サポート用に構成されたシャドウ・セット・メンバが削除されることがあります。このような現象は,Volume Shadowing for OpenVMS を使用しているシャドウ・セット・メンバに見られます。

これを防ぐには,Volume Shadowing for OpenVMS でマルチパス・シャドウ・セットを構成するときは,以下の推奨設定をこれらのパラメータに使用してください。

システム・パラメータ 推奨設定
MSCP_CMD_TMO 最小値として 60。
ほとんどの構成に 60 が適切ですが,構成によってはさらに高い値が必要なものもあります。
SHADOW_MBR_TMO MSCP_CMD_TMO の 3 倍以上
SHADOW_SYS_TMO MSCP_CMD_TMO の 3 倍以上
MVTIMEOUT SHADOW_MBR_TMO の 4 倍以上

6.3 HSx フェールオーバ・モード

デュアル冗長構成,透過的フェールオーバ・モード,マルチバス・フェールオーバ・モードの場合,HSZ70,HSZ80,HSGx は,フェールオーバ操作の 2 つのモードを実装しています。

注意

OpenVMS Alpha バージョン 7.3 から,HSGx で透過的フェールオーバ・モードがサポートされるようになりました。

以下の項で説明しますが,HSx フェールオーバ・モードでシステムを正しく機能させるためには,インターコネクト・ハードウェアとホスト・オペレーティング・システム・ソフトウェアの構成との互換性が必要です。

6.3.1 透過的フェールオーバ・モード

透過的フェールオーバ・モードでは,HSx はデュアル・コントローラ・ペアの 1 つのポート上に各論理ユニットを提供します。さまざまなポートにさまざまな論理ユニットを割り当てることができますが,個々の論理ユニットは,同時に 1 つのポートからでないとアクセスできません。 図 6-4 のように,コントローラ・モジュールの障害を HSZ が検出すると,HSZ は正常なコントローラ上の対応するポートに論理ユニットを移動します。

図 6-4 透過モードにおけるストレージ・サブシステム


透過モードでは,2 つのポートが同じホスト・バスにあることが前提なので,ホストのデバイス・ビューを変更しなくても論理ユニットがポート間を移動できます。このフェールオーバ・モードでバス構成が正しいことを確認するのはシステム・マネージャです。OpenVMS では,HSZ コントローラの透過的フェールオーバをバージョン 6.2 からサポートしています。

HSZ または HSG で透過的フェールオーバ・モードを選択するには,構成に従って以下のコマンドのどれかをコンソールに入力します。


HSZ> SET FAILOVER COPY=THIS_CONTROLLER 

または


HSZ> SET FAILOVER COPY=OTHER_CONTROLLER 

透過モードの HSZ におけるコンソール SHOW コマンドの例を以下に示します。


z70_A => SHOW THIS_CONTROLLER 
Controller: 
        HSZ70 ZG64100160 firmare XB32-0, Hardware CX25 
        Configured for dual-redundancy with ZG64100136 
            In dual-redundant configuration 
        Device Port SCSI address 7 
        Time: 02-DEC-1998 09:22:09 
Host port: 
        SCSI target(s) (0, 2, 3, 4, 5, 6) 
        Preferred target(s) (3, 5) 
        TRANSFER_RATE_REQUESTED = 20MHZ 
        Host Functionality Mode = A 
        Allocation class           0 
        Command Console LUN is target 0, lun 1 
Cache: 
        32 megabyte write cache, version 4 
        Cache is GOOD 
        Battery is GOOD 
        No unflushed data in cache 
        CACHE_FLUSH_TIMER = DEFAULT (10 seconds) 
        NOCACHE_UPS 

6.3.2 マルチバス・フェールオーバ・モード (ディスクのみ)

マルチバス・フェールオーバ・モードであるとき,HSx は,デュアル・コントローラ・ペアのポート上にあるホストから SCSI 照会に対しては,必ず応答します。これにより,デバイスに対するすべてのパスを認識できます。デバイスまでのすべてのパスがホストによって認識される場合,次の 2 つの利点があります。

論理ユニットはすべてのポートで認識できますが,I/O を実行できるのはオンラインである 1 つのコントローラのポート上だけです。異なる論理ユニットがオンラインになることはできますが, 図 6-5 に示すように,各論理ユニットは 1 度に 1 つのコントローラに対してのみオンラインになります。

図 6-5 マルチバス・モードのストレージ・サブシステム


論理ユニットがどのコントローラに対してオンラインであるかを知るには, HSx コンソール・コマンドに次のように入力します。


z70_A => SHOW UNIT FULL 
    LUN                                      Uses 
-------------------------------------------------------------- 
  D200                                       DISK20300 
        Switches: 
          RUN                    NOWRITE_PROTECT        READ_CACHE 
          MAXIMUM_CACHED_TRANSFER_SIZE = 32 
          ACCESS_ID = ALL 
        State: 
          ONLINE to the other controller 
          PREFERRED_PATH = OTHER_CONTROLLER 
        Size: 2050860 blocks 

ホストが論理ユニットに対して実行する I/O では 1 本のパスだけを使用します。これは,そのパスに障害が発生するまで変更されません。HSZ80 コントローラや HSG80 コントローラのようにコントローラにポートが 2 つある場合,異なるホストが,論理ユニットがオンラインになっているコントローラの異なるポートを利用して同じ論理ユニットにアクセスできます。

マルチバス・フェールオーバ・モードの HSx は OpenVMS バージョン 7.2 から導入されたマルチパス機能にだけ使用できます。

マルチバス・フェールオーバ・モードを選択するには,構成に応じて, HSx: コンソールに,以下のどれかを入力します。


HSZ> SET MULTIBUS_FAILOVER COPY=THIS_CONTROLLER 

または


HSZ> SET MULTIBUS_FAILOVER COPY=OTHER_CONTROLLER 

マルチバス・モードの HSx コントローラでコンソール SHOW コマンドを実行する例を以下に示します。


z70_B => SHOW THIS_CONTROLLER 
Controller: 
        HSZ70 ZG64100136 firmware XB32-0, Hardware CX25 
        Configured for MULTIBUS_FAILOVER with ZG64100160 
            In dual-redundant configuration 
        Device Port SCSI address 6 
        Time: NOT SET 
Host port: 
        SCSI target(s) (0, 2, 3, 4, 5, 6) 
 
        TRANSFER_RATE_REQUESTED = 20MHZ 
        Host Functionality Mode = A 
        Allocation class           0 
        Command Console LUN is target 0, lun 1 
Cache: 
        32 megabyte write cache, version 4 
        Cache is GOOD 
        Battery is GOOD 
        No unflushed data in cache 
        CACHE_FLUSH_TIMER = DEFAULT (10 seconds) 
        NOCACHE_UPS 


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