OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


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6.3.3 マルチバス・モードのコントローラ用のポート・アドレス指定

パラレル SCSI と FC では,マルチバス・コントローラによるアドレス指定の方法が異なります。パラレル SCSI (HSZ70 と HSZ80) では,すべてのポートが同じ SCSI ターゲット ID に割り当てられます。 図 6-6 の HSZ80 の構成はこれを示したものです。

図 6-6 マルチバス・モードのパラレル SCSI コントローラのポート・アドレス指定


すべてのポートに同じターゲット ID が割り当てられるのは,ターゲット ID が OpenVMS デバイス名の一部であり (たとえば $4$DKC600 の 6 など),すべてのパスについてデバイス名が同じでなくてはならないためです。したがって,ポートは別々の SCSI バスにないとアドレスが競合します。

図 6-7 に示すように,HSGx または HSVx を使用した Fibre Channel 構成では,すべてのポートに固有の FC アドレスと WWID が割り当てられます。 MDR の場合も同じです。

図 6-7 マルチバス・モードの Fibre Channel コントローラのポート・アドレス指定


OpenVMS FC デバイス名に使用しないため,HSGx および HSVx 上のポートの FC アドレスと WWID はすべて異なります。そのため,同じ FC インターコネクトに何本でもポートを接続できます。実際,インターコネクトが 1 本しかなくても,可用性とパフォーマンスの強化のために,マルチバス・モードの HSGx または HSVx のポートはすべて接続したほうが良いでしょう。

6.4 パラレル SCSI マルチパス構成 (ディスクのみ)

この節の図では,透過的フェールオーバとマルチパス・フェールオーバに構成されたシステムを表示します。HSZ80 など複数のポートを持つコントローラ・モジュールにおける注意事項をまとめています。

6.4.1 透過的フェールオーバ

図 6-8 に示すように,パラレル SCSI 構成の透過的フェールオーバでは,両方のコントローラ・モジュールが同じ SCSI バスにあるものとします。

図 6-8 透過的フェールオーバ付きのパラレル SCSI 構成


この構成の内容は以下のとおりです。

6.4.2 マルチバス・フェールオーバと複数のパス

ホストからストレージまで複数のパスを持つパラレル SCSI 構成では,透過的フェールオーバによる構成よりも高い可用性とパフォーマンスが得られます。 図 6-9 に,この構成を示します。

図 6-9 マルチバス・フェールオーバと複数のパスによるパラレル SCSI 構成


この構成では,次の点に着目してください。

6.4.3 マルチポート・ストレージ・コントローラによる構成

可用性とパフォーマンスを強化するには,HSZ80 などのマルチポート・ストレージ・コントローラを使用します。 HSZ80 ストレージ・コントローラは HSZ70 に似ていますが, HSZ80 コントローラごとに 2 つのポートがあるという点で異なります。

この項では,マルチポート・ストレージ・コントローラを使用する 3 つの構成を示します。これらの構成は,可用性の高い順に紹介しています。

図 6-10 は,HSZ80 を透過モードで使用するインターコネクトが 1 本のシングル・ホストです。

図 6-10 透過モードによるシングル・インターコネクトのマルチポート・パラレル SCSI 構成


この構成では,次の点に着目してください。

図 6-11 は,ホストから 2 本のパスを使用し,透過モードで構成したシステムです。

図 6-11 透過モードによる複数パスのマルチポート・パラレル SCSI 構成


この構成の内容は以下のとおりです。

この構成では,バスが 2 本あっても,ホストから各論理ユニットまでのパスは 1 本だけです。コントローラに障害が発生すると,論理ユニットは他のコントローラの対応するポートに移動します。どちらのポートも同じホスト・バスにあるものとします。

この構成では SCSI バスを同時にアクティブにできるため, 図 6-10 の構成よりもすぐれたパフォーマンスが得られます。

図 6-12 は,マルチバス・モードでマルチポート HSZ80 ストレージ・コントローラ構成を使用するシステムです。

図 6-12 マルチバス・モードによる複数パスのマルチポート・パラレル SCSI 構成


この構成の内容は以下のとおりです。

6.5 パラレル SCSI マルチパス構成のディスク・デバイス命名

SCSI デバイス名は,システムの拡張とともに拡張され,複雑になります。拡張前の SCSI デバイス名はパスとは無縁です。デバイス名は,デバイスをアクセスするためのノード,ホスト・アダプタ,SCSI バス ID,論理ユニット番号 (LUN) を表します。以下のような理由で,ホストが複数あって,パスが複数になる環境に,パス方式の名前は不適当です。

以上の制限事項のうち,最初の 2 つはノード割り当てクラスとポート割り当てクラスを使用すれば解決できます。3 番目の問題には,HSZ コントローラ方式の割り当てクラスを使用する必要があります。これら 3 つの割り当てクラスについては,以下の項でその概要を説明します。

6.5.1 ノード割り当てクラスの概要

ノード割り当てクラスは,ノード名の代わりにデバイス名に使用します。同じ SCSI デバイスに対して複数のノードが直接的な接続関係にあるとき,ノード割り当てクラスが必要です。

ノード割り当てクラスは,SCSI ストレージ・デバイスとアクセスを共用するすべてのノードが次の要件にあてはまるときに使用できます。

図 6-13 は,ノード割り当てクラスで命名されたデバイスの構成です。

図 6-13 ノード割り当てクラスで命名したデバイス


6.5.2 ポート割り当てクラスの概要

デバイス名におけるポート割り当てクラスは,デバイスのアクセスに使用するホスト・アダプタを表します。デバイス名のノード割り当てクラスの代わりにポート割り当てクラスを使用し,アダプタ・コントローラ名は常に A です。

SCSI システムが固有のデバイス名を作成するとき,SCSI ID が不十分な場合や,共用バス上のアダプタのコントローラ名が一致しない場合にポート割り当てクラスを使用できます。ポート割り当てクラスをデバイス名に使用できるのは, SCSI ストレージ・デバイスに対するアクセスを共用するすべてのノードに,そのデバイスまでの直接パスが 1 本しかない場合だけです。

図 6-14 は,ポート割り当てクラスで命名されたデバイスの構成です。

図 6-14 ポート割り当てクラスを使用したデバイス名


6.5.3 HSZ 割り当てクラスを使用したデバイス名

同じストレージ・デバイスに複数のバスが接続されているノードがある場合, 図 6-15 に示す新しい HSZ 割り当てクラスを使用します。

図 6-15 HSZ 割り当てクラスを使用したデバイス名


HSZ 割り当てクラスは,割り当てクラス HSC,HSD,HSJ に似ています。 HSZ 割り当てクラス番号を使用したデバイス名の形式は,以下のとおりです。


$HSZ-allocation-class$ddcu

形式の意味は次のとおりです。

システム管理者は,構成に応じて以下のコマンドのどちらかを使用して HSZ コンソールから HSZ 割り当てクラスを設定します。


HSZ> SET THIS_CONTROLLER ALLOCATION_CLASS = n

または


HSZ> SET OTHER_CONTROLLER ALLOCATION_CLASS = n

ここで n は 1 から 999 の値です。

デュアル冗長構成の 1 つのコントローラ・モジュールに割り当てクラスが設定されると,他のコントローラでも自動的に同じ値に設定されます。

以下の例では,割り当てクラスは 199 に設定されます。この例では,この値が両方のコントローラに設定される様子を表しています。


z70_B => SET THIS ALLOCATION_CLASS=199 
z70_B => SHOW THIS_CONTROLLER 
Controller: 
        HSZ70 ZG64100136 firmware XB32-0, Hardware CX25 
        Configured for MULTIBUS_FAILOVER with ZG64100160 
            In dual-redundant configuration 
        Device Port SCSI address 6 
        Time: NOT SET 
Host port: 
        SCSI target(s) (0, 2, 3, 4, 5, 6) 
 
        TRANSFER_RATE_REQUESTED = 20MHZ 
        Host Functionality Mode = A 
        Allocation class         199 
        Command Console LUN is target 0, lun 1 
Cache: 
        32 megabyte write cache, version 4 
        Cache is GOOD 
        Battery is GOOD 
        No unflushed data in cache 
        CACHE_FLUSH_TIMER = DEFAULT (10 seconds) 
        NOCACHE_UPS 
z70_B => SHOW OTHER_CONTROLLER 
Controller: 
        HSZ70 ZG64100160 firmware XB32-0, Hardware CX25 
        Configured for MULTIBUS_FAILOVER with ZG64100136 
            In dual-redundant configuration 
        Device Port SCSI address 7 
        Time: NOT SET 
Host port: 
        SCSI target(s) (0, 2, 3, 4, 5, 6) 
 
        TRANSFER_RATE_REQUESTED = 20MHZ 
        Host Functionality Mode = A 
        Allocation class         199 
        Command Console LUN is target 0, lun 1 
Cache: 
        32 megabyte write cache, version 4 
        Cache is GOOD 
        Battery is GOOD 
        No unflushed data in cache 
        CACHE_FLUSH_TIMER = DEFAULT (10 seconds) 
        NOCACHE_UPS 

以下の規則は,SCSI デバイス名に HSZ 割り当てクラスを使用する場合に適用します。

  1. マルチバス・モードでは,デバイス名に HSZ 割り当てクラスを使用します (そうしないと,デバイスが構成されません)。

  2. 透過モードでは,デバイス名に HSZ 割り当てクラスを使用できますが,必須ではありません。

  3. HSZ の両方のコントローラに同じ HSZ 割り当てクラス番号を設定します。これは HSZ ファームウェアが自動的に処理します。

  4. クラスタ内では,すべてのタイプの割り当てクラスで HSZ 割り当てクラス番号を固有にします。

  5. HSZ 割り当てクラスを持つデバイスを参照するときは,HSZ 割り当てクラスを指定します。たとえば,DKA500 と NODE10$DKA500 という名前は使用できません。また,$GETDVI システム・サービスは,このようなデバイスに対しては, HSZ 割り当てクラスを組み入れた完全な名前だけを戻します。

6.6 Fibre Channel マルチパス構成

図 6-16 は,テープ・ストレージ・サブシステムとディスク・ストレージ・サブシステムの両方で構成されるマルチパス構成を示したものです。この図では,ディスク・ストレージ・コントローラがマルチバス・モードで構成されています。

図 6-16 デュアル・ポート・ストレージ・コントローラが 2 つとデュアル・ポート MDR が 1 つ,およびバスが 2 本のシングル・ホスト


この構成では,次の点に着目してください。

各 HSG80 ポートに,専用の Fibre Channel アドレスと Fibre Channel ポート WWID がある点に着目してください。これは,すべてのポートが同じ SCSI アドレスに応答するために異なる SCSI バスに接続されているマルチバス・モードの HSZ80 と異なる点です。独立した FC アドレスにより,デュアル HSG80 の両方のポートを同じ FC で使用できます。

図 6-17 は, 図 6-16 と似ていますが,この図では,2 本の Fibre Channel インターコネクトが追加されています。

図 6-17 デュアル・ポート・ストレージ・コントローラが 2 つとデュアル・ポート MDR が 1 つ,およびバスが 4 本のシングル・ホスト


この構成では,次の点に着目してください。

図 6-18 は,前述の 2 つの図を基に作成されています。この図では,シングル・ホストではなく,2 つのホストを使用しています。

図 6-18 デュアル・ポート・ストレージ・コントローラ 2 つと,デュアル・ポート MDR 1 つと,バスが 4 本の 2 つのホスト


この構成では,次の点に着目してください。

6.7 マルチパス構成の実装

パラレル SCSI と Fibre Channel インターコネクトは,マルチパス構成をサポートします。これらの構成の実装は似ており,パスを指定するシステム・パラメータとコマンドは同じです。パス識別子の構文は異なります。

デバイスまでの複数のパスの実装は,次の手順で行います。

  1. マルチパス・サポートが必要なデバイスまで,複数の物理パスがあるシステムの構成。

  2. HSx コントローラをマルチバス・モードに設定 ( ディスクのみ )。

  3. オプションで,構成に応じたマルチパス・システム・パラメータとコンソール・パラメータの設定によるマルチパス・サポートの指定。

  4. DCL コマンド SET DEVICE/qualifier/PATH=path-identifier によるマルチパス機能の操作の調整。


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