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この節では,Fibre Channel テープ機能を利用するために必要な構成要件とユーザ・コマンドについて説明します。 Fibre Channel テープ機能は,共用 Fibre Channel ストレージを使用する OpenVMS Cluster システムでの SCSI テープおよび SCSI テープ・ライブラリのサポートを意味します。 SCSI テープおよびライブラリは, Fibre Channel と SCSI 間のブリッジによって Fibre Channel に接続されます。現在は,2 つのブリッジ, Modular Data Router (MDR) と Network Storage Router (NSR) が利用できます。
7.5.1 最小ハードウェア構成
最小の Fibre Channel テープのハードウェア構成を以下に示します。
テープは,HSGxx ストレージ・サブシステム内でも FCTC-II (Fibre Channel Tape Controller II) を使用する場合でもサポートされません。 テープ・ライブラリ・ロボットは,媒体チェンジャ・デバイス の 1 つの例です。この用語は,この節を通して使用されます。 |
ここでは, Fibre Channel テープ・デバイスの命名に関する詳細な背景情報を示します。
テープ・デバイスおよび媒体チェンジャ・デバイスは, 第 7.5.3 項 で説明する SYSMAN の IO FIND および IO AUTOCONFIGURE のコマンドを使用して自動的に命名および構成されます。 Fibre Channel にテープを構成するシステム管理者は,この節でテープの構成手順を参照してください。
7.5.2.1 テープ・デバイスおよび媒体チェンジャ・デバイスの名前
Fibre Channel のテープおよび媒体チェンジャは, Fibre Channel ディスクの命名と同様のスキームを使用して命名されます。
パラレル SCSI では,直接接続されているテープのデバイス名は,デバイスの物理位置を表します。たとえば,MKB301 は,バス B,SCSI ターゲット ID 3,および LUN 1 に存在することを示しています。このような命名スキームは,Fibre Channel 構成には適しません。 Fibre Channel 構成では,ターゲットとノードの数が非常に大きくなる場合があります。
Fibre Channel テープ名は,$2$MGAn という形式で表されます。コントローラを表す文字は常に A で,接頭辞は $2$ です。デバイス・ニーモニックは,テープを表す場合は MG で,媒体チェンジャを表す場合は GG です。デバイス・ユニット n は,OpenVMS で自動的に生成されます。
名前作成アルゴリズムは,0 から始まる最初の未使用ユニット番号を選択します。 Fibre Channel で最初に検出されたテープは $2$MGA0 ,次のテープは $2$MGA1 というように順番に命名されていきます。同様に,Fibre Channel で最初に認識された媒体チェンジャの名前は $2$GGA0 になります。パラレル SCSI バスのテープおよび媒体チェンジャの命名方法は変わりません。
割り当てクラス 2 の使用については注意してください。割り当てクラス 1 は, HSG Fibre Channel ディスク ($1$DGAnnnn) と HSG コンソール・コマンド LUN ($1$GGAnnnn) のように,ユーザ定義識別子 (UDID) で名前が識別されたデバイスがすでに使用しています。
割り当てクラス 2 は, SYS$DEVICES.DAT ファイルから名前を取得したデバイスが使用します。この名前は,次の項で説明するワールドワイド識別子 (WWID) キーを基準にします。また,GG は,媒体チェンジャと HSG Command Console LUN (CCL) の両方に使用されるニーモニックですが,媒体チェンジャは常に割り当てクラス 2 であり, HSG CCL は割り当てクラス 1 である点にも注意してください。
1 つの OpenVMS Cluster システム内では,テープと媒体チェンジャの名前の整合性が自動的に維持されます。テープ・デバイスがクラスタ内のノードで命名されると,クラスタ内の他のすべてのノードが,自動的にそのデバイスと同じ名前を選択します。これにより最初の未使用ユニット番号を選択するアルゴリズムが無効になる場合があります。選択されたデバイス名は,これ以後にクラスタでリブート操作をしても変わりません。
複数の非クラスタ Alpha システムが SAN に存在し, Fibre Channel の同じテープ・デバイスにアクセスする必要がある場合は,上位レベルのアプリケーションで,一貫した命名および同期アクセスを行う必要があります。
7.5.2.2 ワールドワイド識別子 (WWID) の使用
各 Fibre Channel テープ・デバイス名に対し,OpenVMS はその名前に関連付けられている物理デバイスを一意に識別する必要があります。
パラレル SCSI では,直接接続されているデバイスは,物理パス ( ポート / ターゲット /LUN) によって一意に識別されます。 Fibre Channel ディスクは,ユーザ定義識別子 (UDID) で一意に識別されます。これらの方法は, Fibre Channel テープおよび媒体チェンジャでは非スケーラブルで利用できません。
このため,特定の Fibre Channel テープまたは媒体チェンジャ・デバイスの識別子には,ワールドワイド識別子 (WWID) を使用します。 WWID は,デバイス・ファームウェアに常駐し, Fibre Channel 標準によって一意であることが要求されています。
WWID には以下のようないくつかの形式があります。
WWID 全体は,バイナリの WWID ヘッダが前に付いた WWID データで構成されます。 WWID ヘッダは,WWID データの長さとタイプを示すロングワードです。
通常,デバイスが IEEE WWID をレポートすると,OpenVMS はこの WWID を,そのデバイスの一意に識別される WWID として選択します。デバイスがそのような WWID をレポートしない場合は,ASCII WWID が使用されます。デバイスが IEEE WWID またはシリアル番号情報のどちらもレポートしない場合, OpenVMS はデバイスを構成しません。デバイスの検出プロセス中に, OpenVMS は以下のメッセージを示してデバイスを拒否します。
%SYSMAN-E-NOWWID, error for device Product-ID, no valid WWID found. |
WWID は,バイナリと ASCII データを組み合わせて構成されています。これらのフォーマットは表示可能で,コンソール WWIDMGR ユーティリティで定義されたフォーマットと整合性を図るために使用されます。詳細は,『WWIDMGR Users' Manual』を参照してください。 (『Wwidmgr Users' Manual』は, Alpha Systems Firmware Update CD-ROM の [.DOC] ディレクトリにあります。)
WWID ヘッダの後のデータが純粋な ASCII データである場合は,それらのデータを二重引用符で囲む必要があります。
64 ビットの IEEE WWID の表示可能なフォーマットは, ASCII 形式で表される 8 桁の 16 進数 (WWID ヘッダ),コロン (:) および IEEE WWID データで構成されます。たとえば,次のようになります。
0C000008:0800-4606-8010-CD3C |
ASCII WWID の表示可能なフォーマットは,8 桁の WWID ヘッダ,コロン (:) および 8 バイトのベンダ ID と 16 バイトの製品 ID とシリアル番号を連結したもので構成されます。たとえば,次のようになります。
04100022:"COMPAQ DLT8000 JF71209240" |
ASCII WWID のシリアル番号には,プリント不可能な文字が含まれる場合があります。表示可能なフォーマットでは,そのような文字は \nn として表されます。この nn は,16 進数値を表す 2 桁の ASCII文字です。たとえば,ヌルは \00 として表されます。 |
Fibre Channel テープ・デバイスと媒体チェンジャ・デバイスは, SYS$SYSTEM:SYS$DEVICES.DAT ファイルの情報に従って構成されます。このファイルは,デバイス当たり 2 つの連続するレコードで構成される ASCII ファイルです。この 2 つのレコードは,次の形式で表されます。
[Device $2$devnam] WWID = displayable_identifier |
自動構成中に, Fibre Channel はプローブされ,すべてのデバイスの WWID がフェッチされます。フェッチされた WWID が, SYS$DEVICES.DAT ファイルのメモリ常駐コピーのエントリと一致すると,デバイスは,その WWID と一対になっているデバイス名を使用して構成されます。
SYS$DEVICES.DAT ファイルは,ポート割り当てクラス (PAC) 情報にも使用されます。 PAC と Fibre Channel テープはブート時にファイル・ベースのデバイス情報にアクセスする必要があるという共通性以外に関連がありません。 Fibre Channel テープの命名は同じファイルの 2 回目の使用となります。 デフォルトでは,SYS$DEVICES.DAT ファイルは,クラスタの共通ディレクトリ SYS$COMMON:[SYSEXE] に作成されます。 |
たとえば,SYS$DEVICES.DAT の以下の部分では, $2$MGA300 および $2$MGA23 という名前のデバイスが最終的に構成されます。
! [Device $2$MGA300] WWID = 04100022:"COMPAQ DLT8000 JF71209240" ! [Device $2$mga23] WWID = 04100022:"DEC TZ89 (C) DECJL01164302" |
このファイルには,通常 OpenVMS ユーティリティだけが読み込みと書き込みを行いますが,まれにこのファイルを編集しなければならない場合もあります。 第 7.5.5 項 で説明するようにデバイスのユニット番号のみ変更できます。ファイルに適用される内部の構文規則を以下にまとめます。
同様に, WWID =を含む行では,等号の両側に空白 ( またはなし ) を使用できます。すべての行は左揃えにし,512 文字未満にする必要があります。
このファイルの解析では大文字/小文字は区別されません。ただし,1 つだけ重要な例外があります。二重引用符で囲まれた文字はすべて文字通りの意味で解釈されるため,スペースや小文字などの文字は区別されます。二重引用符で囲まれた ASCII データの場合は,コロンと二重引用符の間にスペースを入れることはできません。
また,複数の WWID =行が 1 行の [Device devnam]に続く場合は,最後の WWID =値が優先されます。ただし,通常は, [Device devnam]行ごとに 1 行の WWID =しかありません。
同様に,2 行以上の [Device devnam]で同じデバイス名を指定し,WWID が異なる場合は,ファイルで指定された最後のデバイス名と WWID だけが使用されます。
このファイルはブート時に読み込まれます。また,このファイルには, SYSMAN の IO FIND_WWID コマンドを使って読み込みまたは書き込みを行います。システム固有の追加の SYS$DEVICES.DAT ファイルがある場合は,システムごとに SYSMAN の IO FIND_WWID を実行することでそのテープの命名レコードが自動的に取りこまれます。 SYSMAN の IO FIND_WWID コマンドについては次の項で詳しく説明します。 SYS$DEVICES.DAT ファイルは,以下に示す SYSMAN IO CREATE_WWID および REPLACE_WWID コマンドで変更されている場合があります。
7.5.3 Fibre Channel テープ・デバイスの管理サポート
Fibre Channel テープ・デバイスを管理するために,以下の 2 つのシステム管理ユーティリティ (SYSMAN) コマンドが用意されています。
Fibre Channel テープ・デバイスについては,以下の DCL サポートを利用できます。
7.5.4 Fibre Channel テープ・デバイスの構成
ここでは,Fibre Channel で新しいテープまたは媒体チェンジャを構成するために必要な手順を示します。
7.5.4.1 基本構成手順: 要約
クラスタで新しい Fibre Channel テープ・デバイスを構成するための基本手順を以下に示します。
$ MC SYSMAN SYSMAN> SET ENVIRONMENT/CLUSTER ! Execute on all nodes SYSMAN> IO FIND_WWID ! Assign names SYSMAN> IO AUTOCONFIGURE/LOG ! Configure devices SYSMAN> EXIT |
これらの手順は,最初の構成時に一度だけ実行する必要があります。以降は,システム・リブート時に自動的にデバイスが構成されます。
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