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表 11-3 を参考に,OpenVMS Cluster 全体で 1 つのシステム・ディスクとするかマルチ・システム・ディスクを使用するか決定してください。
シングル・システム・ディスク | マルチ・システム・ディスク |
---|---|
システム・ディスクのファイルにアクセスするまでの待機時間が長くなることがある。 | 長く待たなくてもシステム・ディスクのファイルにアクセスでき,プロセッサ・パフォーマンスが高速である。 |
シングル・リソースの競合が多い。 | シングル・リソースの競合が少ない。 |
サテライトのブート時間が長い。 | サテライトのブート時間が短い。 |
管理するシステム・ディスクは 1 つだけである。 | 複数のシステム・ディスクを管理しなければならない。 |
システム管理がシンプルである。 | システム・パラメータやファイルのクラスタ規模での調整など,システム管理が複雑である。 |
ハードウェアとソフトウェアの経費が経済的である。 | ハードウェアとソフトウェアにより多くの経費がかかる。特にディスクをシャドウ化した場合。 |
シングル・システム・ディスクの管理には時間と経験があまり要求されないためシステム管理の経費が経済的である。 | マルチ・システム・ディスクの管理にはより多くの時間と経験が要求されるためシステム管理により多くの経費が要求される。 |
処理上のニーズに合わせて,共通環境とマルチ環境のどちらかを選択します。前者では,環境ファイルがクラスタ規模で共用され,後者では,クラスタ規模で共用されるファイルと,一定の OpenVMS Cluster メンバだけがアクセスできるファイルに分かれます。
以下に示すのは,最も頻繁に使用および操作される OpenVMS Cluster環境ファイルです。
SYS$SYSTEM:SYSUAF.DAT
SYS$SYSTEM:NETPROXY.DAT
SYS$SYSTEM:VMSMAIL_PROFILE.DATA
SYS$SYSTEM:NETNODE_REMOTE.DAT
SYS$MANAGER:NETNODE_UPDATE.COM
SYS$SYSTEM:RIGHTSLIST.DAT
SYS$SYSTEM:QMAN$MASTER.DAT
関連項目: これらのファイルの管理方法についての詳細は,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。
11.3.1 共通環境
共通 OpenVMS Cluster 環境は,OpenVMS Cluster の全ノードで共通な操作環境です。共通環境は,システム・ファイルを共通バージョンで使用できるため,マルチ環境より簡単に管理できます。環境は,以下のようにセットアップします。
最もシンプルで経済的な環境は, 図 11-1 に示すすべての環境ファイルを搭載した 1 つのシステム・ディスクだけで,OpenVMS Cluster に対応する方法です。この方法の長所は,以下のとおりです。
すべてのノードが同じシステム・ディスクを共用する OpenVMS Cluster の場合,ほとんどの共通環境ファイルは SYS$SYSTEM ディレクトリに配置します。
ただし,環境ファイルを別のディスクに移動して,OpenVMS Cluster のパフォーマンスを強化することもできます。一般に,環境ファイルの処理はシステム・ディスクの処理の 80% を占めるため,常駐ディスクを分散させればシステム・ディスクの負担が減ります。 図 11-3 は,分割された共通ディスクの例です。
SYSUAF.DAT などの環境ファイルを別の共通ディスクに移動すると,SYSUAF.DAT は, SYS$SYSTEM:SYSUAF.DAT のデフォルト・パスでは見つからなくなります。
関連項目: OpenVMS Cluster の全ノードが新しい場所にある SYSUAF.DAT にアクセスできるようにする方法については,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。
11.3.3 マルチ環境
マルチ環境は,ノードによって異なります。個々のノードやノード・サブセットは以下の目的でセットアップします。
図 11-4 は,マルチ環境の例です。
図 11-4 マルチ環境 OpenVMS Cluster
図 11-4 のマルチ環境 OpenVMS Cluster は,2 つのシステム・ディスクからなります。1 つは VAX ノード用であり,他の 1 つは Alpha ノード用です。共通ディスクには,各ノードやノード・グループ用の環境ファイルがあります。 OpenVMS Cluster システム管理者は,一般にシンプルなシングル (共通) 環境を好みますが,すべてのノードがリソースを共用するわけではないマルチ環境の作成時には環境ファイルの多重化が必要です。環境は,それぞれユーザが実行するタスクの種類と使用するリソースに応じて多様化でき,その構成にはさまざまなアプリケーションをインストールできます。
4 個の DSSI ノードのそれぞれが専用のページ・ディスクとスワップ・ディスクを持ち, DSSI インターコネクト上の Alpha システムと VAX システム・ディスクにおけるページ処理とスワップ処理の負荷を軽減しています。DSSI インターコネクト上のディスクはすべてシャドウ化され,障害の発生時にもディスクを保護することができます。
11.4 その他のマルチ環境の手法
この節では,複数のSYSUAF.DAT ファイルや複数のキュー・マネージャの使用方法など,その他のマルチ環境の手法について説明します。
11.4.1 複数の SYSUAF.DAT ファイルの使用
ほとんどの OpenVMS Clusterは,1 つのユーザ権限 (SYSUAF.DAT) ファイルで管理しますが,複数のユーザ権限ファイルを利用すれば,ユーザがアクセスできるシステムを限定することができます。この方法では,すべてのシステムのアクセスを必要とするユーザには複数のパスワードが必要になります。
複数の SYSUAF.DAT ファイルを運用する場合は,セキュリティに気をつけてください。 OpenVMS VAX および OpenVMS Alpha オペレーティング・システムでは,複数のセキュリティ・ドメインをサポートしていません。
関連項目: SYSUAF.DAT エントリなど,シングル・セキュリティ・ドメイン内では同一でなければならないフィールドの一覧については,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。
Alpha システムでは,多くのプロセス割り当て量が必要なため,システム管理者は複数の SYSUAF.DAT ファイルを用意して対応することがあります。しかし,これは最適な解決方法とは言えません。複数の SYSUAF.DAT ファイルを作成するのは,ノードによって環境を変えるためであり,プロセス割り当て量を増やすのが本来の目的ではありません。プロセス割り当て量を増やす方法としては,SYSUAF.DAT ファイルを 1 つとし, SYSUAF.DAT ファイルで指定したプロセス割り当て量を無効にするシステム・パラメータを使用して Alpha システムのリソースを管理する方法をお勧めします。
11.4.2 複数のキュー・マネージャの使用
OpenVMS Cluster におけるバッチ・トランザクションとプリント・トランザクションの数が多すぎて混雑している場合,複数のキュー・マネージャを実装してバッチとプリントの負荷をノード間に分散させることができます。
OpenVMS Cluster には,QMAN$MASTER.DAT ファイルを 1 つずつ配置します。複数のキュー・マネージャは,複数の*.QMAN$QUEUES ファイルと *.QMAN$JOURNAL ファイルで定義します。キュー・マネージャ・ファイルの各ペアを別々のディスクに配置します。 QMAN$MASTER.DAT ファイルにアクセスが集中するようであれば,半導体ディスク (SSD) に常駐させて,OpenVMS Cluster が処理できるバッチ・トランザクションとプリント・トランザクションの数を増やします。たとえば,バッチ・キューとプリント・キューに別々のキュー・マネージャを作成できます。
関連項目: 複数のキュー・マネージャの実装例とコマンドについては,『OpenVMS システム管理者マニュアル (上巻)』を参照してください。
11.5 クォーラムの手法
OpenVMS Cluster システムは,クォーラム・アルゴリズムを利用してストレージのアクセスを同期します。クォーラム・アルゴリズムとは,OpenVMS Cluster システムでリソースを共用する方法を "決定する(ボートする)" 多数のOpenVMS Cluster メンバが存在するかどうかを確かめる数学的手法です。接続マネージャは,動的な値としてクォーラムを計算し,OpenVMS Cluster メンバの大半が機能しているときにだけ処理を実行します。
クォーラム・ボーツを決定する要素は次のとおりです。
各 OpenVMS Cluster システムには,クォーラム・ディスクを 1 つだけ配置できます。クォーラム・ディスクはシャドウ・セットのメンバにはできませんが,システム・ディスクにすることはできます。
接続マネージャは,"クォーラム・ディスク・ウォッチャ"からクォーラム・ディスクの情報を入手します。クォーラム・ディスク・ウォッチャは,クォーラム・ディスクとの間にアクティブな直接接続を持つ,任意のシステムです。
11.5.1 クォーラム手法のオプション
クォーラム・ディスクには,少なくとも直接接続を持つシステムが 2 つ必要です。これによってシステムのどちらかに障害が発生しても,クォーラム・ディスク・ボーツにアクセスできます。
クォーラム手法を検討するにあたり,どのような障害状況のときに OpenVMS Cluster の処理を続行するかを決めておく必要があります。 表 11-4 は,その 4 つのオプションを示したものです。
手法のオプション1 | 説明 |
---|---|
"予想"最高ノード数が残っていれば,処理を続行する。 | すべてのノードにボーツを与え,クォーラム・ディスクは使用しません。この手法では,ノードが 3 個以上必要です。 |
(3 つ以上のノードの内) ノードが 1 つでも残っていれば,処理を続行する。 | この手法では,クォーラム・ディスクが必要です。
全システムのボーツ合計数より 1 つ少ない値までクォーラム・ディスクのボーツ数を増やすと (また,EXPECTED_VOTES システム・パラメータの値も同じだけ増やす),ノードが 1 つだけのクラスタをクォーラム・ディスク・ウォッチャとして実行できます。この場合,ボーツ・システムの過半数になるまで待たなくても OpenVMS Cluster システムを利用できます。 |
(2 ノード OpenVMS Cluster) ノードが 1 つでも残っていれば,処理を続行する。 | 各ノードとクォーラム・ディスクにボーツを与えます。
2 ノード OpenVMS Cluster は,特別な事例です。クォーラム・ディスクを確立すると, 2 ノード OpenVMS Cluster の可用性を強化できます。このような構成では,クォーラム・ディスクまたは 1 ノードが故障してもクォーラムを維持し運用を続行することができます。この場合,両方のノードが,両方ともクォーラム・ディスク・ウォッチャになるように, (CI,DSSI,SCSI,または Fibre Channel によって) ストレージに直接接続される必要があります。 |
OpenVMS Cluster の重要ノードが 1 つでも処理を続行する。 | 一般に,この手法では,サーバにはボーツが与えられ,サテライトには与えられません。 3 つ以上のサーバがあり,クォーラム・ディスクがないことが前提です。 |
関連項目: クォーラム・ディスク管理の詳細については,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。
11.6 状態遷移の手法
OpenVMS Cluster の状態遷移は,OpenVMS Cluster システムに対してシステムを追加したり削除したとき,そして OpenVMS Cluster がクォーラム・ディスクの状態遷移を検出すると発生します。接続マネージャは,これらのイベントを受けて OpenVMS Cluster 内のデータの一貫性を維持するように対応します。
状態遷移が問題になるのは,システムが OpenVMS Cluster システムに対して頻繁に追加あるいは削除され,それによって障害が発生する場合です。
ユーザとアプリケーションに対する状態遷移の間隔と効果は,遷移の理由,構成,使用中のアプリケーションによって決まります。遷移を有効に管理すれば,システム・マネージャは以下の対応ができます。
以下の指針は,実際の遷移時間を短縮し,遷移後の影響を最小限にするための方法をまとめたものです。
パラメータ | 説明 |
---|---|
QDSKINTERVAL | クォーラム・ディスク・ポーリング間隔を指定します。 |
RECNXINTERVL | 接続マネージャが別のシステムとの通信を復元するときの所要時間を指定します。 |
TIMVCFAIL | 仮想回路障害の検出に必要な時間を指定します。 |
関連項目: OpenVMS Cluster 遷移とそのフェーズ,システム・パラメータ,クォーラム管理の詳細については,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。
11.7 マルチ・バージョンの移行サポートと保証サポート
HP では,バージョン混在およびアーキテクチャ混在環境の OpenVMS Cluster システムに対し,移行サポートと保証サポートの 2 つのレベルのサポートを提供します。
保証サポートとは, OpenVMS Cluster 上に 2 つのバージョンが共存することを認めているものであり,これらの構成を使用している利用者から寄せられた問題にはすべて回答します。
移行サポートは,カスタマのクラスタ環境で,保証されている OpenVMS Cluster バージョンへ最小限の影響で移行するのを支援するためのサポートです。移行サポートでは,新しいバージョンの OpenVMS VAX や OpenVMS Alpha に段階的に移行していくユーザのために,共に使用できるバージョンを明確に示します。弊社は,これらの構成に対して提出される問題レポートに回答します。ただし,例外的に,問題に対する回答の中で,保証されている構成に移行するようユーザに依頼する場合があります。
弊社は,アーキテクチャに関係なく,クラスタ内で同時に実行できる OpenVMS のバージョンを 2 つだけサポートします。 表 11-6 に示す 2 つのバージョンがサポートされ,すでに説明した移行サポートの制限を受けます。 |
表 11-6 は,考えられるすべてのバージョンの組み合わせに対して,提供されるサポートのレベルを示しています。
Alpha V7.3x/VAX V7.3 | Alpha V7.2-2/VAX V7.2 | |
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Alpha V7.3 x/VAX V7.3 | 保証 | 移行 |
Alpha V7.2-2/VAX V7.2 | 移行 | 保証 |
OpenVMS の各バージョンの標準サポートの有効期限については,次の URL の HP サービスの Web サイトを参照してください。
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複合バージョンのクラスタでは, OpenVMS の旧バージョンに修正キットをインストールする必要があります。必要な修正キットの完全なリストについては,『OpenVMS Alpha V 7.3-1 リリース・ノート [翻訳版]』を参照してください。
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