OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


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11.8 1 つの OpenVMS Cluster に Alpha システムと VAX システム

OpenVMS Alpha システムと OpenVMS VAX システムは,同じ OpenVMS Cluster に組み込んで,両方の柔軟性と移行の機能を利用できます。 Alpha の処理能力を既存の VAXcluster に追加することで,システムやハードウェアに固有のアプリケーションを活用できます。

11.8.1 アーキテクチャを横断しての OpenVMS Cluster のサテライト・ブート

OpenVMS Alpha バージョン 7.1 以降と OpenVMS VAX バージョン 7.1 以降では, VAX ブート・ノードから Alpha サテライトとブート・サービスを提供でき,また逆に,Alpha ブート・ノードからは VAX サテライトにブート・サービスを提供することができます。このサポートをクロス・アーキテクチャ・ブートといい,構成の柔軟性とサテライトに対するブート・サーバの可用性を高めることができます。

クロス・アーキテクチャ・ブートが必要な構成状況としては,次の 2 通りが考えられます。

11.8.2 制限事項

OpenVMS オペレーティング・システムおよびレイヤード・プロダクトのインストールとアップグレードは,アーキテクチャを越えて実行することはできません。たとえば,OpenVMS Alpha ソフトウェアのインストールとアップグレードには Alpha システムを使用します。クロス・アーキテクチャ・ブートを利用できる OpenVMS Cluster システムを構成するとき,各アーキテクチャから少なくとも 1 システムは,インストールとアップグレードに使用できるディスクで構成してください。

システム・ディスクに常駐できる OpenVMS オペレーティング・システムのバージョンは 1 つだけであり,アーキテクチャ固有のバージョンとします。たとえば,OpenVMS VAX バージョン 7.3 を OpenVMS Alpha バージョン 7.3 のシステム・ディスクに共存させることはできません。


付録 A
OpenVMS Cluster インターコネクトとしての SCSI

OpenVMS Cluster ストレージ・インターコネクトに接続されたストレージを複数のコンピュータが同時にアクセスできるのは,OpenVMS Cluster システムの長所の 1 つです。さらに, OpenVMS Cluster システムについては,パフォーマンスとストレージのアクセスの高可用性が特長です。

この付録では,OpenVMS Cluster システムにおけるストレージ・インターコネクトとしての SCSI (Small Computer System Interface) のサポート方法を説明します。SCSI インターコネクトを通じて,複数の Alpha コンピュータ (ホストまたはノードとも呼ぶ) から SCSI ディスクに同時にアクセスできます。このような構成を SCSI マルチホスト OpenVMS Cluster と言います。SCSI インターコネクト (SCSI バスとも呼ぶ) は,業界標準インターコネクトであり,1 つ以上のコンピュータ,周辺機器,相互接続の構成要素をサポートします。

この付録での説明は,OpenVMS Cluster 環境におけるストレージ・リソースの概念を理解していることが前提となっています。OpenVMS Cluster の概念と構成の要件については,以下の OpenVMS Cluster マニュアルでも説明しています。

この付録は,次の 2 つの項目に分かれています。

A.1 この付録で使用する表記法

この付録では,ANSI 標準と図で使用する要素を,特定の表記法に従って表記します。

A.1.1 SCSI ANSI 標準

SCSI インターコネクトで構成した OpenVMS Cluster システムでは,標準的な SCSI-2 構成要素または SCSI-3 構成要素を使用します。SCSI-2 構成要素は, American National Standards Institute (ANSI) Standard SCSI-2, X3T9.2,Rev. 10L で定義したアーキテクチャに準拠しています。SCSI-3 構成要素は, SCSI-3 Architecture およびコマンド標準の認定バージョンに準拠しています。説明の便宜上,この付録では,SCSI-2 と SCSI-3 のどちらも SCSI と表記します。

A.1.2 図中で使用する記号

図 A-1 は,この付録の図中で使用する記号です。

図 A-1 図中で使用する記号の意味


A.2 SCSI ストレージのアクセス

OpenVMS Cluster 構成では,以下の方式で,複数の VAX ホストと Alpha ホストを SCSI デバイスに直結できます。

SCSI デバイスは,OpenVMS MSCP サーバで間接的にアクセスすることもできます。

以下の項では,SCSI ストレージ・デバイスに対するシングル・ホストとマルチホストのアクセスについて説明します。

A.2.1 OpenVMS Cluster システムにおけるシングル・ホスト SCSI アクセス

OpenVMS バージョン 6.2 より前のバージョンでは, OpenVMS Cluster システムは,埋め込み SCSI アダプタ,またはオプションの外部 SCSI アダプタ,あるいは専用の RAID (redundant arrays of independent disks) コントローラで単一ホストに接続された SCSI ストレージ・デバイスをサポートしていました。この場合,SCSI バスに接続できるホストは 1 つだけでした。

A.2.2 OpenVMS Cluster システムにおけるマルチホスト SCSI アクセス

OpenVMS Alpha バージョン 6.2 以降,OpenVMS Cluster システム上の複数の Alpha ホストを 1 本の SCSI バスで接続できるようになり,SCSI ストレージ・デバイスのアクセスを共用できるようになりました。 SCSI ストレージ・デバイスのアクセスを共用することで高い可用性が実現できます。

図 A-2 は,SCSI インターコネクトで SCSI デバイスのアクセスを共用する OpenVMS Cluster 構成です。ただし,ホスト間 OpenVMS Cluster (System Communications Architecture [SCA]) 通信には,もう 1 本のインターコネクト (ローカル・エリア・ネットワーク [LAN] など)が必要です。

図 A-2 共用 SCSI アクセスによる可用性が高いサーバ


3 ノード OpenVMS Cluster システムを構築するには,ストレージ・インターコネクトに共用 SCSI バスを使用します。また大規模な OpenVMS Cluster 構成に共用 SCSI バスを組み込むこともできます。SCSI バスでクォーラム・ディスクを使用すると, 2 ノード構成や 3 ノード構成の可用性を強化できます。共用 SCSI ストレージ・デバイス向けには,ホスト方式の RAID (ホスト方式のシャドウイング) と MSCPサーバがサポートされています。

A.3 構成上の要件とハードウェア・サポート

この項では,マルチホスト SCSI OpenVMS Cluster システムにおける構成上の要件とサポートされているハードウェアを紹介します。

A.3.1 構成上の要件

表 A-1 は,SCSI OpenVMS Cluster システムに構成できるソフトウェアとハードウェアの基本構成要素の要件と性能をまとめたものです。

表 A-1 SCSI マルチホスト OpenVMS Cluster 構成の要件
要件 説明
ソフトウェア SCSI インターコネクト上のストレージまでのアクセスを共用する Alpha ホストは,すべて以下のソフトウェアを実行していなければなりません。

  • OpenVMS Alpha バージョン 6.2 またはそれ以降

  • OpenVMS Cluster Software for OpenVMS Alpha バージョン 6.2 またはそれ以降

ハードウェア 表 A-2 は,SCSI OpenVMS Cluster システムにサポートされているハードウェア構成要素をまとめたものです。 SCSI OpenVMS Cluster 構成で使用できるその他のハードウェア・デバイスについては, 付録 A.7.7 項 を参照してください。
SCSI のテープ・ドライブ,フロッピー・ドライブ,CD-ROM ドライブ マルチホスト SCSI インターコネクト上に,SCSIのテープ・ドライブ,フロッピー・ドライブ, CD-ROM ドライブは構成できません。構成で SCSI テープ,フロッピー, CD-ROM ドライブのいずれかが必要な場合は,シングル・ホスト SCSI インターコネクト上で構成してください。OpenVMS Cluster 構成の他のホストに対して,SCSI のテープ,フロッピー, CD-ROM ドライブは,MSCP サービスまたは TMSCP サービスが可能です。
1 本の SCSI バス当たりの最高ホスト数 マルチホスト SCSI バスには,最高で 3 つのホストを接続できます。 表 A-2 に掲載されているホストは,同じ共用 SCSI インターコネクト上に任意の組み合わせで構成できます。
1 つのホスト当たりの最高 SCSI バス本数 1 つのホストには,最高で 6 本のマルチホスト SCSI バスを接続できます。構成できる非共用(シングル・ホスト) SCSI バスの本数は,ホスト・バスの空きスロット数で決まります。
ホスト間通信 クラスタの全メンバは,DSSI,CI,Ethernet,FDDI,または MEMORY CHANNEL など,ホスト間 (SCA) 通信に使用できるインターコネクトで接続しなければなりません。
ホスト方式の RAID (ホスト方式のシャドウイングなど) SCSI OpenVMS Cluster 構成でサポート。
SCSI デバイスの命名 各 SCSI デバイスの名前は,OpenVMS Cluster システム上で一意の名前です。マルチホスト SCSI バスを使用しているシステム上でデバイスを構成するときは,以下の要件に従ってください。

  • ホストから各 SCSI インターコネクトへの接続では,少なくともアダプタを 1 つ使用する。

  • ポート割り当てクラスを使用する場合を除き,所定の SCSI インターコネクトに接続されているホスト・アダプタは,すべて同じ OpenVMS デバイス名 (PKA0 など) を持つものとする ( 『OpenVMS Cluster システム』参照)。

  • SCSI インターコネクトに接続された各システムには,ゼロ以外のノード・ディスク割り当てクラス値が必要。これらのノード・ディスク割り当てクラスの値は,以下の条件のいずれかに該当する場合異なる場合がある。

    • SCSI インターコネクトに正のゼロ以外のポート割り当てクラスがある場合

    • ゼロ以外のコントローラ割り当てクラスがある HSZ70 または HSZ80 コントローラが,SCSI インターコネクトに接続されているデバイスだけにアクセスする場合

    複数の SCSI インターコネクトがある場合は,すべての SCSI インターコネクトを考慮に入れ,各システムのノード・ディスク割り当てクラスに異なる値を選択できるかどうかを判断する必要があります。また,既存の SCSI インターコネクトに SCSI デバイスを追加する場合は,ノード・ディスク割り当てクラスを異なる値にできるかどうかを再評価する必要があります。このため,弊社では,同じ SCSI インターコネクトに接続されているすべてのシステムで,同じノード・ディスク割り当てクラスを使用することをお勧めします。割り当てクラスの詳細は,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。

A.3.2 ハードウェアのサポート

表 A-2 は,SCSI OpenVMS Cluster システムにサポートされているハードウェア構成要素です。あわせてこれらのハードウェア構成で使用できる最小バージョンも掲載します。つまり, 表 A-2 に記載されているバージョンまたはそれ以降のバージョンが必要であるということです。ホストのサポート情報については,次のウェブ・サイトを参照してください。


http://www.hp.com/country/us/eng/prodserv/servers.html 

このサイトで AlphaServer あるいは AlphaStation システムのドキュメントを参照してください。

ディスク・サポート情報については,次のウェブ・サイトを参照してください。


http://www.hp.com/country/us/eng/prodserv/storage.html 

SCSI インターコネクト構成と SCSI インターコネクト上のすべてのデバイスは, ANSI 標準 SCSI-2 マニュアルまたは SCSI-3 のアーキテクチャ標準とコマンド標準で定義した要件と,この付録で紹介する要件に準拠していなければなりません。 SCSI OpenVMS Cluster 構成で使用できるハードウェア・デバイスについては, 付録 A.7.7 項 も参照してください。

表 A-2 SCSI OpenVMS Cluster システムでサポートされているハードウェア
構成要素 サポートされているアイテム 最低ファームウェア (FW) のバージョン1
コントローラ HSZ40--B 2.5 (FW)
  HSZ50  
  HSZ70  
  HSZ80 8.3 (FW)
アダプタ 2 埋め込み (NCR-810 方式)  
  KZPAA (PCI から SCSI へ)  
  KZPSA (PCI から SCSI へ) A11 (FW)
  KZPBA-CB (PCI から SCSI へ) 5.53 (FW)
  KZTSA (TURBOchannel から SCSI へ) A10-1 (FW)


1この欄で定めのない限り,デバイスの最小ファームウェア・バージョンは,実行するオペレーティング・システムのバージョンと同じでなければなりません。 SCSI マルチホスト OpenVMS Cluster 構成では,それ以外のファームウェア要件はありません。
2ローカル・ストレージへのシングル・ホスト・アクセス用にこの他のタイプの SCSI アダプタを構成できます。

A.4 SCSI インターコネクトの概念

SCSI 標準では,イニシエータ (通常は,ホスト・システム) と SCSI ターゲット (通常は,周辺機器) 間のインタラクションを管理する規則を定義しています。この標準では,デバイス固有の特性に関係なく,SCSI デバイス (ディスク・ドライブ,テープ・ドライブ,プリンタ,光学媒体装置など) との通信が可能なホスト・サービスを扱います。

以下の項では,SCSI 標準とデフォルトの操作モードについて説明します。また,キャパシティ,パフォーマンス,可用性,通信距離などに関して,デフォルトの SCSI 機能を強化することができるオプションの機構についても説明します。

A.4.1 デバイス数

SCSI バスは,最高で 16 個のデバイスをサポートできる I/O インターコネクトです。 Narrow SCSI バスは,最高で 8 基のデバイスをサポートします。Wide SCSI バスは,最高で 16 個のデバイスをサポートします。サポートできるデバイスには,ディスク・ドライブやテープ・ドライブなどのホスト・アダプタ,周辺コントローラ,ディスクリート周辺機器があります。0 から 15 までの固有の ID 番号でアドレス指定します。デバイス ID を割り当てるには,コンソール・コマンドを入力するか,ジャンパまたはスイッチを設定するか,StorageWorks エンクロージャのスロットを選択します。

注意

16 個のデバイスを Wide SCSI バスに接続するには,デバイス自体も Wide アドレス指定をサポートしている必要があります。Narrow デバイスでは,ID 7 を超えるアドレスをサポートしていません。現在,HSZ40 は 7 を超えるアドレスをサポートしていません。Wide アドレス指定をサポートしているホスト・アダプタには, KZTSA,KZPSA,QLogic Wide アダプタ (KZPBA,KZPDA,ITIOP,P1SE,P2SE) があります。マルチホスト SCSI OpenVMS Cluster 構成では,KZPBA-CB のみサポートしています。

先の 8 個のデバイスの制限を超えてデバイスを構成するときは,バスの長さの要件を順守してください ( 表 A-4 を参照)。

BA356 ボックスに Wide ID を構成するには,BA356 マニュアル『StorageWorks Solutions BA356-SB 16-Bit Shelf User's Guide』 (EK-BA356-UG) を参照してください。開始アドレスが 8 の BA356 ボックスに Narrow デバイスは構成しないでください。

SCSI インターコネクトのデバイス数を増やすには,一部のデバイスに論理ユニット番号 (LUN) を利用した二次レベルのデバイス・アドレス指定を実装します。各デバイス ID には,最高で 8 つの LUN (0〜7) を利用して,1 つの SCSI デバイスを複数のユニットとしてアドレス指定できます。デバイス ID ごとの LUN の最大値は,8 です。

注意

SCSI インターコネクトにデバイスを接続するとき,インターコネクト上の各デバイスには固有のデバイス ID が必要です。固有のデバイス ID を作成するには,デバイスのデフォルト・デバイス ID を変更します。個々のデバイスの ID の設定方法については,該当するデバイスのオーナーズ・ガイドを参照してください。


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