OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


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A.6.1 手順 1: SCSI 接地要件の確認

OpenVMS Cluster システムをインストールする前に,配電システムがローカル要件を満足しているか確認します (電気コードなど)。構成が,共通 SCSI インターコネクトで接続された複数のエンクロージャからなる場合,それらのエンクロージャの接地が適切であるか確認します。安全上と SCSI インターコネクトの正確な機能のためには,正しい接地方法が求められます。

電気工事は有資格者によって行ってください。 SCSI システムの接地要件の詳細については, 付録 A.7.8 項 を参照してください。

A.6.2 手順 2: SCSI ノード ID の構成

この項では,SCSI ノードとデバイス ID の構成方法を説明します。マルチホスト SCSI バスとシングル・ホスト SCSI バスでは,SCSI ID は異なる方法で割り当てます。

図 A-12 は 2 つのホストを示しています。それぞれがシングル・ホスト SCSI バスで構成されており,マルチホスト SCSI バスを共用しています。 (この図の記号の意味については, 図 A-1 を参照してください。)

図 A-12 SCSI アクセスの割り当てクラスの設定


以下の項では,この種のマルチホスト SCSI 構成に ID を割り当てる方法を説明します。このトピックの詳細については,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。

A.6.2.1 マルチホスト SCSI バスにおけるデバイス ID の構成

マルチホスト SCSI バスの構成時には,以下の規則を守ってください。

A.6.2.2 シングル・ホスト SCSI バスにおけるデバイス ID の構成

デバイス ID の選択は,ノード割り当てクラスを利用するか,ポート割り当てクラスを利用するかで異なります。以下の説明では,ノード割り当てクラスを使用しています。ポート割り当てクラスについては,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。

マルチホスト SCSI 構成では,OpenVMS が生成するデバイス名の形式は $allocation_class$DKA300 です。割り当てクラスは,ALLOCLASS システム・パラメータで設定します。OpenVMS は,ブート時に各コントローラに文字を割り当ててコントローラ名 (A,B,C など) とします。単位番号 (0,100,200,300 など) は, SCSI デバイス ID から抽出されます。

マルチホスト SCSI 構成の一部であるシングル・ホスト SCSI バスでデバイスを構成する場合,シングル・ホスト SCSI バスに接続されたディスクに必ず一意のデバイス名を指定してください。そのためには,同じ割り当てクラスを使用するシステムに同じコントローラ名でシングル・ホスト SCSI バスに接続されているデバイスには,異なる ID を割り当てます。バスが共用されていなくても,異なるデバイス名を付けます。

たとえば, 図 A-12 で,図の下の 2 つのディスクは,同じ割り当てクラスを使用する 2 つのシステムの SCSI バス A にあります。そのため,異なるデバイス ID (この場合,2 と 3) が割り当てられています。

所定の割り当てクラス,SCSI デバイス・タイプ,コントローラ名 (この例では,$4$DKA) で,クラスタには最高で 8 つのデバイスを接続できます。各デバイスごとに SCSI バス ID を割り当てます。8 つすべての ID を使用するには,別のバスのプロセッサと同じ ID の 1 本の SCSI バス上にディスクを構成する必要があります。これによってパフォーマンスにどのような影響が出るかについては, 付録 A.7.5 項 を参照してください。

異なる SCSI バスに,異なる SCSI デバイス・タイプを同じSCSI ID で構成すれば, SCSI バス ID を"兼用"できます。たとえば,デバイス・タイプ DK とデバイス・タイプ MK の場合,$4$DKA100 と $4$MKA100 になります。

A.6.3 手順 3: 電源入力と SCSI デバイスの検査

SCSI ケーブルを接続したら,システムの電源を入れます。コンソール SHOW DEVICE コマンドを入力し,すべてのデバイスが SCSI インターコネクトで認識できるか確認します。

SCSI ID の競合がある場合,ディスプレイは現在のデバイスを表示しないか,または,存在しないデバイスを表示することがあります。表示が間違っている場合は,各デバイスの SCSI ID ジャンパ,StorageWorks シェルフによる自動 ID 割り当て,ホスト・アダプタと HSZxx コントローラ ID の設定が間違っていないか確認してください。変更されている場合は,INIT と入力し,SHOW DEVICE を再度実行します。問題が解決しない場合は,SCSI ケーブルの長さと終端を確認してください。

例 A-1 は,コンソール SHOW DEVICE コマンドの出力例です。このシステムには,ホスト SCSI アダプタがプライベート SCSI バス (PKA0) に 1 個,そして追加 SCSI アダプタ (PKB0 と PKC0) がそれぞれ別々の共用 SCSI バスに 1 個ずつあります。

例 A-1 SHOW DEVICE コマンドの出力例

>>>SHOW DEVICE 
dka0.0.0.6.0               DKA0                          RZ26L  442D 
dka400.4.0.6.0             DKA400                        RRD43  2893 
dkb100.1.0.11.0            DKB100                        RZ26  392A 
dkb200.2.0.11.0            DKB200                        RZ26L  442D 
dkc400.4.0.12.0            DKC400                        HSZ40   V25 
dkc401.4.0.12.0            DKC401                        HSZ40   V25 
dkc500.5.0.12.0            DKC500                        HSZ40   V25 
dkc501.5.0.12.0            DKC501                        HSZ40   V25 
dkc506.5.0.12.0            DKC506                        HSZ40   V25 
dva0.0.0.0.1               DVA0 
jkb700.7.0.11.0            JKB700                        OpenVMS  V62 
jkc700.7.0.12.0            JKC700                        OpenVMS  V62 
mka300.3.0.6.0             MKA300                        TLZ06  0389 
era0.0.0.2.1               ERA0                          08-00-2B-3F-3A-B9 
pka0.7.0.6.0               PKA0                          SCSI Bus ID 7 
pkb0.6.0.11.0              PKB0                          SCSI Bus ID 6 
pkc0.6.0.12.0              PKC0                          SCSI Bus ID 6 
 
 

上の例のデバイス名について,以下に説明します。

A.6.4 手順 4: SCSI コンソール・パラメータの表示と設定

SCSI OpenVMS Cluster システムを作成するとき, 表 A-6 に表示されるコンソール環境パラメータの設定を確認し,必要に応じて,構成上の要件に従って値をリセットします。

表 A-6 では,SCSI コンソール・パラメータを簡単に説明しています。これらのパラメータやその他のシステム・パラメータの設定の詳細については,各システムのマニュアルを参照してください。

注意

ホスト・アダプタの種類によってコンソール環境パラメータは異なります。個々のアダプタについては,それぞれのインストレーション・ガイドおよびユーザーズ・ガイドを参照してください。

表 A-6 SCSI 環境パラメータ
パラメータ 説明
bootdef_dev device_name デフォルトのブート・デバイスをシステムに指定します。
boot_osflags root_number, bootflag boot_osflags 変数には,システム・ブートストラップのオプションのアスペクト (会話型ブートストラップなど) をオペレーティング・システムに伝える情報を格納します。
pk*0_disconnect ターゲットがコマンドで実行中に,ターゲットの接続を SCSI バスから切断します。このパラメータを 1 に設定すると,ターゲットの接続は,コマンドを処理中に SCSI バスから切断されます。このパラメータを 0 に設定すると,ターゲットがコマンドで実行中は SCSI バスの制御を維持します。
pk*0_fast SCSI アダプタを Fast SCSI モードで実行します。このパラメータを 1 に設定すると,デフォルトの速度が Fast モードになります。パラメータを 0 に設定すると,デフォルトの速度が Standard モードになります。
pk*0_host_id ホスト・アダプタの SCSI デバイス ID を 0 から 7 の間に設定します。
scsi_poll システムが一時停止すると,すべての SCSI インターコネクトにおいて,コンソール・ポーリングを有効にします。
control_scsi_term システムのバルクヘッドの統合 SCSI インターコネクト上のターミネータを有効または無効にします (一部のシステム対象)。

注意

パラメータを変更するには,まず (対応するコンソール SET コマンドで) パラメータを編集します。次にコンソール INIT コマンドを入力するか, Reset ボタンを押して変更を有効にします。


ブート・パラメータを設定する前に,以下の例のようにそれらのパラメータの現在の設定を表示します。


  1. >>>SHOW *BOOT* 
     
    boot_osflags            10,0 
    boot_reset              OFF 
    bootdef_dev             dka200.2.0.6.0 
    >>> 
    


    boot_osflags パラメータの最初の番号は,システム・ルートを指定します。(この例で最初の番号は,10 です。) boot_reset パラメータは,ブート・プロセスを制御します。デフォルトのブート・デバイスは,OpenVMS オペレーティング・システムの読み込み元デバイスです。その他のブート・デバイスについては,各システムのマニュアルを参照してください。
    システムには複数のブート・デバイスを指定できます。その場合,ユーザが指定したデバイス・リストからブート・デバイスをシステムが検索します。ブート可能なシステム・ソフトウェアを最初に見つけたデバイスからシステムが自動的にブートします。代替デバイス名をブート・コマンド行に指定すれば,デフォルトのブート・デバイスを無効にできます。
    一般の環境ではデフォルトのブート・フラグで問題ないはずです。デフォルトのブート・フラグを無効にするには,-flags オプションでブート・コマンド行から動的にブート・フラグを指定します。


  2. >>>SHOW *PK* 
     
    pka0_disconnect         1 
    pka0_fast               1 
    pka0_host_id            7 
    


    pk*0_disconnect パラメータは,ターゲットがコマンドを実行中に,ターゲットの接続を SCSI バスから切断してよいかどうかを指定します。マルチホスト SCSI バスでは,接続が切断されるように,pk*0_disconnect パラメータを必ず 1 に設定します。
    pk*0_fast パラメータは,SCSI コントローラ上の Fast SCSI デバイスが Standard モードと Fast モードのどちらで実行するかを制御します。パラメータを 0 に設定すると,デフォルトの速度が Standard モードに設定されます。pk*0_fast パラメータを 1 に設定すると,デフォルトの速度が Fast SCSI モードに設定されます。この例で,SCSI コントローラ pka0 上のデバイスは,Fast SCSI モードに設定されます。この場合,このコントローラに接続された Standard と Fast の両方の SCSI デバイスともそのデバイスに応じた速度で実行されます (つまり,Fast か Standard モード)。
    pk*0_host_id パラメータは,指定したホスト・アダプタのバス・ノード ID を割り当てます。たとえば,pka0 には SCSI デバイス ID の 7 が割り当てられています。


  3. >>>SHOW *POLL* 
    scsi_poll               ON 
    


    コンソール・モードのときに SCSI デバイスのポーリングを有効または無効にします。
    ポーリングの ON,OFF は,サイトのニーズと環境に合わせて設定してください。ポーリングを有効にすると,SHOW DEVICE の出力をいつも最新の状態に維持できます。ただし,ポーリングは SCSI バス帯域幅を消費するので (未使用の SCSI ID に比例),マルチホスト SCSI バスのシステムのどれかが長時間コンソール・モードになるときはポーリングを無効にするほうが良い場合もあります。
    ホット・プラグ操作時に,ポーリングは必ず無効にしておきます。 SCSI OpenVMS Cluster 環境におけるホット・プラグについては, 付録 A.7.6 項 を参照してください。


  4. >>>SHOW *TERM* 
    control_scsi_term       external 
    


    一部のシステム (AlphaStation 400) で,外部コネクタの次の SCSI ターミネータを有効または無効にするときに使用します。ケーブルをバルクヘッドに接続する場合は, control_scsi_term パラメータを external に設定します。それ以外は,パラメータを internal に設定します。

A.6.5 手順 5: OpenVMS オペレーティング・システムのインストール

OpenVMS オペレーティング・システムのインストールについては,OpenVMS Alpha または VAX のアップグレードとインストレーションのマニュアルを参照してください。OpenVMS Cluster システムでシステム・ディスクごとにインストールを 1 回ずつ実行します。ほとんどの構成がシステム・ディスクは 1 枚です。したがって,この手順はどのシステムでも 1 回で済みます。

インストール時に,システムをクラスタ・メンバにするかどうかを確認するプロンプトが表示されたら,Yes と応答してください。次に,『OpenVMS Cluster システム』の指針に従ってインストールを実行してください。

A.6.6 手順 6: その他のシステムの構成

CLUSTER_CONFIG コマンド・プロシージャで追加システムを構成します。このプロシージャは,SCSI バスで構成した二次ホストに対して 1 回実行します。 (詳細については, 付録 A.7.1 項 を参照してください。)

A.7 補足情報

以下の項では,SCSI OpenVMS Cluster システムに関する技術的な細部および概念について説明します。

A.7.1 OpenVMS Cluster 構成コマンド・プロシージャの実行

CLUSTER_CONFIG.COM または CLUSTER_CONFIG_LAN.COM コマンド・プロシージャを実行して,OpenVMS Cluster システムでノードをセットアップし,構成します。ブートに DECnet と LANCP ユーティリティのどちらを使用するかで使用するコマンド・プロシージャは異なります。 CLUSTER_CONFIG.COM では DECnet を使用し,CLUSTER_CONFIG_LAN.COM では LANCP ユーティリティを使用します。(両方のプロシージャの使用方法については,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。)

通常は,イニシャル OpenVMS インストレーション・プロシージャで最初のコンピュータを OpenVMS Cluster システムとしてセットアップします ( 付録 A.6.5 項 参照)。 CLUSTER_CONFIG プロシージャにより,追加ノードを構成します。ただし,前のインストールでクラスタリングを有効にせずに OpenVMS をインストールしていた場合は,最初に CLUSTER_CONFIG を実行したときに,このプロシージャによってスタンドアロン・システムがクラスタ・システムに変換されます。

SCSI クラスタに新たなノードを構成するには,追加するノードごとに CLUSTER_CONFIG.COM を実行します。追加 SCSI ノードの構成については, 表 A-7 を参照してください。

表 A-7 追加ノードのインストール手順
ステップ 手順
1 最初のノードから,CLUSTER_CONFIG.COM 手順を実行し, ADD のデフォルト・オプション [1] を選択します。
2 続行を確認するプロンプトが CLUSTER_CONFIG.COM によって表示されたら,Yes と応答します。
3 既存のシングル・ノード・クラスタに追加するノードの DECnet 名とアドレスを指定します。
4 これを共用 SCSI インターコネクトのノードにすることを確認します。
5 このノードをサテライトにするかどうかを確認するプロンプトが表示されたら No と応えます。
6 他のクラスタ・メンバにサービスを提供する場合,そのディスク・サーバにするノードを構成します。
7 新しいノードのシステム・ルートを所定のデフォルトのデバイスに設定します。
8 新しいノードのシステム・ルートを選択します。最初のノードは SYS0 を使用します。デフォルト (最初の追加ノードは SYS10) を選択するか,自分で番号付けの方式を選択します。SYS1 から SYS n まで選択できます。 n は 16 進数の FFFF です。
9 クラスタの新しいノードが最初のノードと同じ ALLOCLASS を使用するよう,デフォルトのディスク割り当てクラスを選択します。
10 クォーラム・ディスクがあるかどうかを確認します。
11 ページ・ファイルとスワップ・ファイルのサイズに関する質問に応答します。
12 CLUSTER_CONFIG.COM が終了したら,新しいシステム・ルートから新しいノードをブートします。たとえば,ディスク DKA200 の SYSFF の場合,以下のコマンドを入力します。
 BOOT -FL FF,0 DKA200

BOOT コマンドでは,以下のフラグを使用します。

  • -FL は,ブート・フラグを表します。

  • FF は,新しいシステム・ルートです。

  • 0 は,会話型ブートなど特別なブート要件がないことを表します。


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