OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


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A.4.2 パフォーマンス

SCSI デバイスのデフォルトの操作モードは,8 ビット非同期モードです。このモードを Narrow モードと呼ぶことがあります。このモードでは,8 ビットのデータがデバイス間で転送されます。各データ転送は,データを受信するデバイスが肯定応答します。デフォルト・モードのパフォーマンスには限度があるので,SCSI 標準では,パフォーマンスを強化するためのオプション機構が定義されています。次に,パフォーマンスを強化する方法を 2 つ示します。

SCSI インターコネクトにおける通信は,すべて 2 つのデバイス間で順次発生するため,各デバイス・ペアは使用するオプション機能を互いに調整する必要があります。ほとんどの SCSI デバイスは,これらのオプションを少なくとも 1 つ実装します。

表 A-3 は,8 ビット転送と 16 ビット転送を,Standard, Fast,Ultra の各同期モードで使用した場合のデータ転送速度をまとめたものです。

表 A-3 最大データ転送速度 (MB/s)
モード Narrow (8 ビット) Wide (16 ビット)
Standard 5 10
Fast 10 20
Ultra 20 40

A.4.3 接続距離

SCSI インターコネクトで利用できる最大長は,構成で使用するシグナル通知と,データ転送速度で決まります。SCSI インターコネクトの電気シグナル通知には 2 種類あります。

表 A-4 は,シグナル通知の方式によって SCSI インターコネクトの距離がどのような影響を受けるかをまとめたものです。

表 A-4 SCSI インターコネクトの最大距離
シグナル通知の方式 データ転送速度 最大ケーブル長
シングル・エンド Standard 6 m 1
シングル・エンド Fast 3 m
シングル・エンド Ultra 20.5 m 2
ディファレンシャル Standard または Fast 25 m
ディファレンシャル Ultra 25.5 m 2


1SCSI 標準は,このインターコネクト方式で最長 6 m と指定されています。ただし,データの一貫性を最高に保つため,ケーブル長はなるべく 4 m 以内にしてください。
2詳細については,『StorageWorks Ultra SCSI Configuration Guidelines』(EK-ULTRA-CG) を参照してください。

DWZZA,DWZZB,DWZZC コンバータ は,シングル・エンドからディファレンシャルまでを含む各種コンバータであり,シングル・エンドやディファレンシャルの SCSI インターコネクト・セグメントに接続します。DWZZA は,Narrow (8 ビット) SCSI バス用,DWZZB は Wide (16 ビット) 用のSCSI バスであり,DWZZC は Wide Ultra SCSI バス用です。

ディファレンシャル・セグメントは,以下のような状況に最適です。

DWZZA,DWZZB,DWZZC は,あくまでシグナル・コンバータであり,SCSI デバイス ID を割り当てることはできません。2 つの SCSI デバイス間のパスには,最大で 2 個の DWZZA コンバータまたは 2 つの DWZZB コンバータを定義できます。 DWZZC の構成については,『StorageWorks Ultra SCSI Configuration Guidelines』を参照してください。

A.4.4 ケーブル配線と終端

シングル・エンドとディファレンシャルの各 SCSI インターコネクトには,各端点に 1 つずつ,合計 2 つのターミネータが必要です。インターコネクトに指定された最大接続距離は,ターミネータからターミネータまでを計測します。

インターコネクト・ターミネータの電源は,TERMPWR という SCSI インターコネクト・ラインから供給します。各 StorageWorks ホスト・アダプタとエンクロージャが, TERMPWR インターコネクト・ラインに電源を供給し,ホストまたはエンクロージャのどれかに電源が供給されていれば,インターコネクトの終端が機能するようになっています。

ショート・ケーブル (または etch) でインターコネクトに接続されているデバイスをスタブと言います。スタブの長さは,インターコネクトのシグナルの一貫性を維持するために短くなっています。スタブの許容最大長は,インターコネクトが使用するシグナル通知方式によって以下のように決められています。

その他,シングル・エンド・インターコネクト上のスタブ間の最短の長さは,0.3 m に定められています。この構成例については, 図 A-3 を参照してください。

注意

シングル・エンド・バスとディファレンシャル・バスには, DWZZx コンバータを使用する場合もそれぞれ終端が必要です。

既存のターミネータを超えて SCSI バスを延長するには,そのターミネータを無効にするか,取り外す必要があります。

図 A-3 最大スタブ長


A.5 SCSI OpenVMS Cluster ハードウェア構成

選択するハードウェア構成は,各種要素の組み合わせによって異なります。

構成上の制約については,『OpenVMS Cluster Software Software Product Description』 (SPD 29.78.xx) を参照してください。

以下の項では,SCSI 構成の構築方法の指針の他,さまざまなサイトに適した構成方法について説明します。

A.5.1 アドオン SCSI アダプタを使用するシステム

共用 SCSI バス構成では,一般にオプションのアドオン KZPAA,KZPSA,KZPBA,KZTSA の各アダプタを使用します。これらのアダプタを接続しても,SCSI ケーブルの長さに反映されないので,一般に内部アダプタよりも構成が簡単です。また,共用 SCSI バス用のアドオン・アダプタでシステムを構成する際に,内部アダプタで共用できないデバイス (SCSI テープ・ドライブ,フロッピー・ドライブ,CD-ROM ドライブなど) を接続できます。

アドオン・アダプタを使用する場合は,ストレージは BA350,BA353,または HSZ xx StorageWorks エンクロージャで構成します。これらのエンクロージャは,すべてのデータ・ディスク,そして共用の OpenVMS Cluster システムとクォーラム・ディスクに最適です。StorageWorks エンクロージャを使用すれば,ディスクのアクセスを維持したまま個々のシステムをシャット・ダウンできます。

以下の項では,アドオン・アダプタを活かした SCSI OpenVMS Cluster 構成をいくつか紹介します。

A.5.1.1 アドオン SCSI アダプタによる基本的なシステムの構築

図 A-4 は,SCSI アダプタと StorageWorks エンクロージャを使用した基本構成の論理図です。この構成は比較的シンプルであるにもかかわらず,内部バス上で非共用ファイル (ページ・ファイルやスワップ・ファイルなど) とともにテープ,フロッピー,CD-ROM,ディスクを使用できるという利点があります。 図 A-5 は,AlphaServer 1000 システムと BA350 エンクロージャを使用した同じタイプの構成です。

BA350 エンクロージャは内部で 0.9 m の SCSI ケーブルを使用します。この構成は,一般に 2 本の 1 m SCSI ケーブルを使用します。(BA353 エンクロージャでも同じ合計ケーブル長で 0.9 m ケーブルを使用します。) 合計長さ 2.9 m のケーブルで Fast SCSI モード操作が可能です。

共用 BA350 ストレージ・エンクロージャは,理論的には単一点障害の要因になり得ますが,この基本システムは非常に信頼性が高い SCSI OpenVMS Cluster 構成です。クォーラム・ディスクが BA350 にある場合, OpenVMS Cluster システムとのアクセスを維持しながら,どちらの AlphaStation システムも単独でシャット・ダウンできます。ただし, AlphaStation システムを物理的に取り外すことはできません。終端がない SCSI バスが生じるからです。

OpenVMS Cluster システムの動作を続行しつつシステムの取り外しができるようにするには, 付録 A.5.1.2 項 にあるように,DWZZx コンバータでシステムを構築します。SCSI インターコネクトに障害が発生しても,データのアクセスを維持したい場合は,以下のどちらかの操作をします。

図 A-4 と,この付録のその他の論理構成図では,必要なネットワーク・インターコネクトが省略されています。

図 A-4 概念図: 基本的な SCSI システム


図 A-5 構成例: AlphaServer 1000,KZPAA アダプタ,BA350 エンクロージャ使用の基本的な SCSI システム


A.5.1.2 エンクロージャを追加または物理的距離を延長したシステム,または,HSZ コントローラ付きのシステム

エンクロージャを追加したり,システム間の物理的な距離を離したい場合,あるいは HSZ コントローラを使用する場合,シングル・エンド・シグナル通知とディファレンシャル・ケーブルの SCSI バスを備えたシステム間に DWZZx コンバータを配置する構成を使用します。

DWZZx コンバータを利用すると,SCSI バスの接続距離の制約が緩和されます。これは DWZZx では,ディファレンシャル・シグナル通知を使用するバスにシングル・エンド・デバイスを接続できるからです。 付録 A.4.3 項 で説明したように,ディファレンシャル・シグナル通知を使用する SCSI バス構成での最大ケーブル長は 25 m です。一方,シングル・エンド構成で Fast モード・データ転送を行うには 3 m が限度です。

DWZZx コンバータは,スタンドアロンのデスクトップ構成要素として,あるいは StorageWorks 互換の構築ブロックとして使用できます。 DWZZx コンバータは,内部 SCSI アダプタやオプションの KZPAA アダプタと併用できます。

HSZ40 は,ディファレンシャル SCSI バスに接続できるハイ・パフォーマンスなディファレンシャル SCSI コントローラであり,最高で 72 個の SCSI デバイスをサポートします。HSZ40 は,ディファレンシャル・コンバータでシングル・エンドになる DWZZx を組み込んだ共用 SCSI バス上に構成できます。HSZ40 コントローラ上に構成したディスク・デバイスは, RAID セットに組み合わせることができ,これによってパフォーマンスと可用性を強化します。

図 A-6 は,潜在的な物理的距離を広げるために (またはエンクロージャや HSZ40 を追加するために) DWZZA を追加した構成の論理図であり, 図 A-7 は,この構成例を具体的に示した図です。

図 A-6 概念図: DWZZAを利用した物理的な距離の延長またはエンクロージャの追加


図 A-7 構成例: DWZZAを利用した物理的な距離の延長またはエンクロージャの追加


図 A-8 は,3 ホスト SCSI OpenVMS Cluster システムの構成方法を表した図です。

図 A-8 構成例: SCSI バス上の 3 ホスト


A.5.1.3 ディファレンシャル・ホスト・アダプタを使用するシステムの構築

図 A-9 は,同じ SCSI バス上に 2 個の KZPSA アダプタを備えた構成の例です。この構成で,SCSI 終端は,KZPSA から取り外されており,外部ターミネータは "Y" ケーブル上にインストール済みです。そのため,SCSI バスを有効にしたまま SCSI バスから KZPSA アダプタを取り外すことができます。クラスタ内の他のシステムをアクティブにしたまま (メンテナンスや修理目的で) SCSI OpenVMS Cluster 構成から個々のシステムを取り外せる機能があるために,非常に高いレベルの可用性を実現できます。

図 A-9 では,以下の点に注意してください。

図 A-9 構成例: ディファレンシャル・ホスト・アダプタ (KZPSA) を使用した SCSI システム


図 A-9 の構成に示すディファレンシャル SCSI バスは,エンクロージャ間でチェーン化され,最長で 25 m となっています。 (BA356 バスはディファレンシャル SCSI バスの長さに加えません。ディファレンシャル・バスを構成するのは, BN21W-0B "Y" ケーブルと BN21K/BN21L ケーブルだけです。)このケーブル配線方式が不便な構成や,接続距離が不足する場合は,別のラジアル方式を利用できます。

別のラジアル SCSI ケーブル配線方式とは,SCSI ハブ方式のことです。 図 A-10 は,SCSI ハブ構成の論理図です。 図 A-11 は,この構成例を具体的に表現したものです。

図 A-10 概念図: SCSI ハブを使用した SCSI システム


図 A-11 は,SCSI ハブ構成の例です。

図 A-11 構成例: SCSI ハブ構成における SCSI システム


A.6 インストール

ここでは,SCSI OpenVMS Cluster システムにハードウェアをセットアップし,インストールする手順について説明します。この節では,共用 SCSI バス方式の新しい OpenVMS Cluster システムを作成します。ただし,既存の OpenVMS Cluster 構成に共用 SCSI バスを追加する場合は,『OpenVMS Cluster システム』の手順説明も合わせて参考にし,計画全体を整えてください。

表 A-5 は,SCSI OpenVMS Cluster システムにハードウェアをセットアップし,インストールする手順を説明したものです。

表 A-5 SCSI OpenVMS Cluster システムのインストール手順
手順 説明 参照
1 エンクロージャ間が適切に接地されているか確認する。 付録 A.6.1 項付録 A.7.8 項
2 SCSI ホスト ID を構成する。 付録 A.6.2 項
3 システムの電源を入れ,デバイスを確認する。 付録 A.6.3 項
4 SCSI コンソール・パラメータを設定する。 付録 A.6.4 項
5 OpenVMS オペレーティング・システムをインストールする。 付録 A.6.5 項
6 追加システムを構成する。 付録 A.6.6 項


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