Compaq OpenVMS
システム管理者マニュアル


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14.1.2 キューのクラスと種類

バッチ・キューとプリント・キューは,一般的に次の 2 つのクラスに分けることができます。

クラス 説明
実行キュー 処理を待つバッチまたはプリント・ジョブを受け付けるキュー。
汎用キュー 適切な実行キューが使用可能になるまでジョブを保留するキュー。実行キューが使用可能になると,キュー・マネージャは,その使用可能な実行キューにジョブを再登録する。

以降の項では,実行キューと汎用キューについてさらに詳しく説明します。

14.1.2.1 実行キュー

実行キューの各タイプを説明します。

14.1.2.2 汎用キュー

次に汎用キューの種類を説明します。

14.1.3 自動起動キュー

可能なかぎり自動起動型のキューを使用することをおすすめします。 自動起動機能は,実行キューの起動を簡略化して,できるだけキューがいつでも利用できるようにします。自動起動機能によって可能なことは次のとおりです。

自動起動型キューを使用するためには,次の作業を実行する必要があります。

作業 説明
1 キューを自動起動キューとして作成し,オプションとしてフェイルオーバ・リストを指定する。
2 自動起動のためにキューをアクティブにする。この操作はキューを作成するとき,またはキューを作成した後で実行できる。
3 ノードで自動起動機能を有効にする。この操作は,キューを作成する前または作成した後に実行できる。

ノードで自動起動機能を有効にすると,キュー・マネージャはノードで実行可能なすべての停止されていたキューとアクティブ自動起動キューを自動的に起動する。 そのノードにフェイルオーバされた自動起動キューも自動的に起動される。

詳細は 第 14.3 節 を参照してください。

14.2 キュー環境の設計

この後の節では,バッチ・キュー環境および出力キュー環境の設計方法について説明します。

14.2.1 バッチ・キュー環境の設計

1 つのキュー,複数のキュー,または OpenVMS Cluster 環境に対してバッチ・キューを設計できます。次の表で参照している各節では,バッチ処理環境を設計するのに役立つ構成の例を図で示しています。実際の構成では,ここに示した複数の例から適切な要素を組み合わせて使用できます。

構成 参照箇所
バッチ処理が少なく,キューは 1 つでよい。 第 14.2.1.1 項
バッチ処理が大量にあり,複数のキューが必要である。または,特殊なバッチ処理を行うため独自のキューが必要である。 第 14.2.1.2 項
OpenVMS Cluster 環境である。 第 14.2.1.3 項
キューができるだけ常時使用可能な状態になっている必要がある。 第 14.1.3 項

14.2.1.1 単純なバッチ・キュー構成の使用

おもに会話型処理をサポートするスタンドアロン・システムの場合は,この単純な構成を使用できます。この構成は,必要とされるバッチ処理が限定されている場合に適しています。

図 14-1 は 1 つの省略時のバッチ・キューを示しています。

図 14-1 省略時のバッチ・キュー


SUBMIT コマンドでバッチ・ジョブがキュー登録された場合,省略時の設定では,ジョブは SYS$BATCH というキューに登録されます。スタンドアロン型システムで省略時のキューを 1 つだけ設定する場合,キューの名前は SYS$BATCH にしてください。

14.2.1.2 特殊な要件があるバッチ・キュー

ユーザのバッチ処理の要件が大きかったり,あるいは特殊な処理の要件がある場合は,複数のキューを設定しなければならないことがあります。そうした場合は,バッチ・キューのジョブに性能オプションと資源オプションを指定することによって,キューをカスタマイズし,特殊なジョブに対応することができます。

図 14-2 は複数のキューの構成例であり,それぞれのキューが特定の種類のバッチ・ジョブを処理するためにカスタマイズされています。

図 14-2 特別な資源オプションと性能オプションを設定した複数のバッチ・キュー構成例


図 14-2 の例の SYS$BATCH は省略時のキューです。通常のバッチ・ジョブはこのキューに登録されます。FAST キューは,メモリからスワップされることがない優先順位の高いジョブを実行します。 SLOW は,優先順位の低いジョブを処理するためのバックグラウンド・キューです。これらは物理メモリを大量に必要とする大きいジョブです。

キューの基本優先順位とスワップを有効にするか無効にするかの変更は,慎重に行ってください。ちょっと変更しただけでも,バッチ処理と会話型処理性能に多大な悪影響を与えることがあります。たとえば,キューの基本優先順位を 1 増やしただけでも,性能に多大な影響があることがあります。

バッチ・キューに対するこれらのオプションの指定方法については, 第 14.6.4 項 で説明します。

14.2.1.3 OpenVMS Cluster 環境内での汎用バッチ・キュー

第 14.1.2 項 で説明したように,汎用キューを使用して OpenVMS Cluster のノード間でバッチ処理を分散させることにより, OpenVMS Cluster 環境で資源利用のバランスを取ることができます。

図 14-3 は,そうした分散を行うときの代表的な構成例を表したものです。

図 14-3 クラスタ全体に汎用キューを分散させたバッチ・キューの構成例


図 14-3 の例に描かれているクラスタ全体の汎用バッチ・キュー SYS$BATCH は,OpenVMS Cluster のすべてのノードの実行キューにジョブを送り込むよう設定されています。そして,そこに登録されたジョブの実行キューの送り込みは, SYS$BATCH がジョブを送り込むすべての実行キューについて,ジョブ制限量に対する実際の実行ジョブの比率が最小になるように行われます。

たとえば,実行キューの MOE_BATCH,LARRY_BATCH,および CURLY_BATCH のジョブ制限量がすべて 5 であると仮定します。 MOE_BATCH と LARRY_BATCH が 4 つのジョブを実行していて, CURLY_BATCH が 1 つのジョブしか実行していない場合,汎用キュー SYS$BATCH は次のジョブを CURLY_BATCH に送り込みます。

OpenVMS Cluster のキュー構成については,『Compaq OpenVMS Cluster システム』を参照してください。汎用キューの作成方法については, 第 14.4.3 項 を参照してください。

14.2.2 出力キュー環境の設計

次の構成例を使用して,バッチ処理環境を設計してください。ユーザの構成は,これらの例の中からいくつかの要素を組み合わせて設計できます。

設定 参照箇所
限定された用途で1つのプリンタキューがあればよい 第 14.2.2.1 項
異機種のプリンタを使用する 第 14.2.2.2 項
PostScript プリントを行う 第 14.2.2.3 項
複数のシステムからプリンタにアクセスする 第 14.2.2.4 項
同一種のプリンタを複数台使用する 第 14.2.2.5 項
OpenVMS Cluster 環境である 第 14.2.2.6 項
出力キューを使用せずに直接プリンタに出力を行うアプリケーションを使用する 第 14.2.2.7 項
分散プリントを行う 第 14.2.2.8 項

14.2.2.1 簡単な出力キュー構成

図 14-4 は,簡単なキュー構成について説明したものです。この構成は,プリンタが 1 台のスタンドアロン・システムに適した構成です。

図 14-4 簡単な出力キュー


PRINT コマンドでプリント・ジョブがキュー登録された場合,省略時の設定では,ジョブは SYS$PRINT というキューに登録されます。スタンドアロン型システムで省略時のプリンタ・キューを 1 つだけ設定する場合,キューの名前は SYS$PRINT にしてください。

14.2.2.2 異種プリンタを使用する場合

LN03 プリンタ,LA210 プリンタ,LP27 ライン・プリンタというように,複数の異種プリンタを使用している場合は,それぞれのプリンタ別にキューを設定する必要があります。これは,省略時のフォームや装置制御ライブラリなど,それらのキューで使用するオプションが,たいていのプリンタごとに異なるためです。たとえば,ライン・プリンタの省略時のフォームの幅が 132 カラムであるの対し,LN03 プリンタの省略時のフォームの幅が 80 カラムということがあります。

図 14-5 は,こうしたケースでの出力実行キューの構成例です。

図 14-5 異種プリンタ使用時のキュー構成


14.2.2.3 PostScript プリントを行う場合

オペレーティング・システムには,PostScript プリントをサポートするソフトウェアが含まれていません。 PostScript プリントを行うためには,次のいずれかが必要です。

詳細は弊社のサポート担当者にお問い合わせください。

14.2.2.4 LAT プリンタを使用する場合

複数のシステムまたは複数の OpenVMS Cluster 環境間でプリンタを共用する場合は,ターミナル・サーバの LAT ポートにプリンタを接続します。 図 14-6 は,ターミナル・サーバに遠隔プリンタを接続したときの出力キューの構成例を表したものです。

図 14-6 ターミナル・サーバに遠隔プリンタを接続したときの構成例


通常,LAT プリンタは複数のシステムまたは複数のクラスタのユーザの間で共用されるため,LAT キューが使用不能になったときに影響を受けるユーザの数は多くなります。このため,できるだけ常時使用可能になるよう,LAT キューはフェイルオーバ・リストを使用して,自動起動型として設定することをおすすめします。

自動起動型キューの作成方法については, 第 14.4.2 項 を参照してください。


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