本書はソフトウェアに対する新機能と変更,インストール,アップグレード,互換性情報,新規および既存のソフトウェアの問題点や制限事項,およびソフトウェアとドキュメントの修正事項について解説したものです。
改訂情報: 本書は改訂版です。
オペレーティング・システム: 日本語OpenVMS Alpha V7.2-2,V7.3 日本語OpenVMS VAX V7.2,V7.3
ソフトウェア・バージョン: 日本語Compaq TCP/IP Services for OpenVMS V5.3
(c) 2002 Compaq Information Technologies Group, L.P.
Compaq,Compaq ロゴ,Alpha, Insight Manager,OpenVMS,Tru64,VAX,VMS,および Digital ロゴは, Compaq Information Technologies Group, L.P. の商標です。
Windows は,米国 Microsoft 社の商標です。
本書に記載しているその他すべての製品名は,それぞれの会社の商標です。
次へ | 目次 |
日本語Compaq TCP/IP Services for OpenVMSは, TCP/IPネットワーキング・プロトコル体系とインターネット・サービスを日本語OpenVMS Alphaおよび日本語OpenVMS VAXシステム用に実装した弊社の製品です。本書では,日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS バージョン 5.3 の製品について説明します。
日本語 TCP/IP Services は,異機種間ネットワーク通信およびリソース共有のための業界標準プロトコルをサポートする関数およびアプリケーションの包括的なスーツを提供します。
インストレーション手順については,『日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS インストレーション/コンフィギュレーション・ガイド』を参照してください。
リリース・ノートで提供するバージョン固有の情報は,ドキュメント・セットに記載されている情報に代わるものです。ソフトウェアの本バージョンの機能,制限事項,および訂正事項は,リリース・ノートで説明しています。ソフトウェアをインストールする前には,必ずリリース・ノートをお読みください。
本リリース・ノートは,経験のある OpenVMS および UNIX のシステム管理者を対象にしており,OpenVMS のシステム管理,TCP/IP ネットワーク,および日本語 TCP/IP Services 製品に関する知識があるものと想定しています。
表 1 に,日本語 TCP/IP Services の本バージョンで利用できるドキュメントを示します。
マニュアル | 内容 |
---|---|
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Concepts and Planning 』 | このマニュアルでは,日本語 TCP/IP Services ソフトウェアを使用するためにシステムのコンフィギュレーションを行う前に考慮すべき一般的な設計上の問題を含め,OpenVMS システム上でのTCP/IPネットワーキングに関する概念的な情報を提供します。
また,このマニュアルでは,TCP/IP Servicesのドキュメント・セットのマニュアルについて記述し,日本語 TCP/IP Services ソフトウェア製品で使用されている用語および頭文字の用語集を提供しています。 |
『日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS リリース・ノート』 | リリース・ノートでは,ドキュメント・セットの情報に置き代わるバージョン固有の情報を提供しています。ソフトウェアの本バージョンの機能,制限事項,および訂正事項については,リリース・ノートに記載されています。ソフトウェアをインストールする前には必ずリリース・ノートをお読みください。 |
『日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS インストレーション/コンフィギュレーション・ガイド』 | このマニュアルは,日本語TCP/IP Services 製品のインストレーションとコンフィギュレーションの方法について説明しています。 |
『日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS 日本語機能の手引き』 | このマニュアルは,日本Compaq TCP/IP Services for OpenVMSの日本語機能の概要と,漢字フィルタの使用方法,および漢字フィルタのプログラミングについて説明しています。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Release Notes Supplement 』 | このマニュアルは,英語版リリース・ノートのうち,日本語版リリース・ノートで翻訳されていない付録の部分をそのまままとめたものです。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS User's Guide 』 | このマニュアルは,リモート・ファイル操作,電子メール,TELNET,TN3270,ネットワーク印刷など,日本語 TCP/IP Servicesで利用できるアプリケーションの使用方法について説明しています。また,これらのサービスを使って,プライベート・インターネットや世界規模のインターネット上のシステムと通信を行う方法についても説明しています。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』 | このマニュアルは,日本語 TCP/IP Services 製品のコンフィギュレーションと管理の方法について説明しています。
このマニュアルは,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management Command Reference 』と併用してください。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management Command Reference 』 | このマニュアルは,日本語TCP/IP Services の管理コマンドについて説明しています。
このマニュアルは『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』と併用してください。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management Command Quick Reference Card 』 | このリファレンス・カードでは,構成要素ごとに TCP/IP 管理コマンドをリストし,各コマンドの目的を説明しています。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS UNIX Command Reference Card 』 | このリファレンス・カードには,よく実行されるネットワーク管理タスクおよび対応する TCP/IP 管理と Compaq Tru64 UNIX コマンド書式に関する情報が記載されています。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS ONC RPC Programming 』 | このマニュアルは,オープン・ネットワーク・コンピューティングのリモート・プロシージャ・コール(ONC RPC)を使った高水準プログラミングについて概説しています。また,RPCプログラミング・インタフェースや, RPCGENプロトコル・コンパイラを使ったアプリケーションの作成方法についても説明しています。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Sockets API and System Services Programming 』 | このマニュアルは,ソケット APIとOpenVMSシステム・サービスを使って,ネットワーク・アプリケーションを開発する方法について説明しています。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS SNMP Programming and Reference 』 | このマニュアルは,簡易ネットワーク管理プロトコル(SNMP) および SNMPアプリケーション・プログラミング・インタフェース(API) について説明しています。また,TCP/IP Services で提供されるサブエージェント,サブエージェントの管理のために提供されているユーティリティ,およびユーザ独自のサブエージェントの構築方法についても説明しています。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Tuning and Troubleshooting 』 | このマニュアルでは,ネットワーク問題の原因を切り分ける方法,および最高の性能を引き出すために日本語 TCP/IP Services ソフトウェアをチューニングする方法について説明しています。 |
『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Guide to IPv6 』 | このマニュアルでは, IPv6環境,この環境におけるシステムの役割り,異なるIPv6アドレスのタイプと機能,および 6bone ネットワークにアクセスするために日本語 TCP/IP Services をコンフィギュレーションする方法について説明しています。 |
Compaq OpenVMS の製品およびサービスについての詳細は,次の Compaq の Web サイトにアクセスしてください。
http://www.compaq.com/openvms |
TCP/IP プロトコル体系の包括的な概要については, Douglas Comer 著『Internetworking with TCP/IP: Principles, Protocols, and Architecture』が役に立ちます。
日本語 TCP/IP Services は,次の両方を指します。
UNIX は,Compaq Tru64 UNIX オペレーティング・システムを指します。
本書では次の表記法に従っています。また,IPアドレスはすべて架空のものです。
Ctrl/ x | Ctrl/ x のような表記は, Ctrl というラベルの付いたキーを押しながら,別のキーまたはポインティング・デバイスのボタンを押すことを示します。 |
PF1 x | PF1 x のような表記は,まず,PF1 というラベルの付いたキーを押して放し,その後,別のキーまたはポインティング・デバイスのボタンを押すことを示します。 |
[Return] | 例中では,四角で囲まれたキー名は,ユーザがキーボードのキーを押すことを示します (本文中では,キー名は四角で囲まれません)。
本書の HTML 版では,この表記は四角ではなく,カッコになります。 |
... | 例中の水平方向の省略記号は,次のいずれかを示します。
|
.
. . |
垂直方向の省略記号は,コーディング例またはコマンド形式で項目が省略されていることを示します。つまり,説明しているトピックに関して重要でない事項であるため,省略されています。 |
( ) | コマンド形式の説明で,カッコは,複数選択する場合には,選択したものをカッコで囲む必要があることを示します。 |
[ ] | コマンド形式の説明で,大カッコはオプション選択を示します。ユーザは1つまたは複数の項目を選択することも,あるいは選択しないこともできます。コマンド行に大カッコを入力してはなりません。ただし,OpenVMS のディレクトリ指定,または割り当て文の部分列指定の構文では大カッコを含める必要があります。 |
| | コマンド形式の説明では,縦線は大カッコまたは中カッコ内で選択項目を区切ります。大カッコ内では,選択はオプションですが,中カッコ内では,必ず 1つ以上を選択する必要があります。コマンド行に縦線を入力してはなりません。 |
{ } | コマンド形式の説明で,中カッコは必須の選択を示し,リストされている項目から 1 つ以上の項目を選択する必要があります。コマンド行に中カッコを入力してはなりません。 |
bold text | この書体は,新しい用語であることを示します。また,引数の名前,属性,あるいは理由を示します。 |
italic text | 斜体のテキストは,変数を示します。変数には,システム出力 (Internal error number),コマンド行 (/PRODUCER= name),および本文中のコマンド・パラメータ (このとき, dd はデバイス・タイプの事前に定義されたコードを表します) において異なる情報も含まれます。 |
UPPERCASE TEXT | 大文字は,コマンド,ルーチン名,ファイル名,またはシステム特権の短縮形を示します。 |
Monospace text | この書体は,コーディング例および対話型の画面表示を示します。
C プログラミング言語では,テキスト中のこの書体は次の項目を示します。つまり,キーワード,単独でコンパイルされた外部関数とファイル,構文のまとめ,例中の変数または識別子の参照を示します。 |
- | コマンド形式の説明,コマンド行,コード行の終わりのハイフンは,コマンドまたは文が次の行に継続することを示します。 |
数 | 本文中のすべての数は,特に明記していなければ,10進数です。基数が10進法以外の場合,つまり,2進,8進,16進の場合には,明記されています。 |
この章では,日本語 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS V5.3 の新機能について説明します。これらのサービスのコンフィギュレーションおよび管理についての詳細は,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Management 』を参照してください。
TCP/IP Services V5.3 は,バージョン 5.1 から直接アップグレードされたものです。バージョン 5.2 は限定リリースです。 |
表 1-1 に, TCP/IP Services V5.3 の新機能と,それについて説明している箇所を示します。
機能 | 節 |
---|---|
新しいカーネル・コード・ベース | 第 1.1 節 |
NTP Version 4 | 第 1.2 節 |
BIND Version 9 | 第 1.3 節 |
IMAP | 第 1.4 節 |
Kerberos for TELNET | 第 1.5 節 |
SYSCONFIGTAB | 第 1.6 節 |
エラー・メッセージのオンライン・ヘルプ | 第 1.7 節 |
LPD クラスタ・サポート | 第 1.8 節 |
基本的な IPv6 サポートは TCP/IP Services バージョン 5.1 で提供されていました。バージョン 5.3 は,次のような拡張サービスを提供するために,基本的な IPv6 の機能の上に構築されています。
IPv6 の拡張機能については,以降の各項で説明します。
1.1.1 IPv6 の移行メカニズム
本リリースには,6to4 と呼ばれる新しい IPv6 移行メカニズムのサポートが含まれています (RFC 3056 で定義)。
TCP/IP Services の本リリースでは, OpenVMS システムは,6to4 サイトのホストまたは 6to4 ボーダ・ルータ (分離ホストとしてのボーダ・ルータのサポートを含む) のいずれかとして動作することができます 6to4 中継ルータのサポートは,現在のところ提供されていません。
OpenVMS ノードは,明示的な 6to4 のコンフィギュレーションがなくても, 6to4 サイト内部でホストとして動作することができます。このノードは,標準の IPv6 アドレス自動構成メカニズムを使用して, 6to4 プリフィックスを取得します (つまり,6to4 サイトの端で動作する 6to4 ボーダ・ルータは, 6to4 プリフィックスを通知し,ホストは,そのプリフィックスから自動的に 6to4 アドレスを構成することができます)。その後,通常のルーティング・メカニズムを使用して,このノードから 6to4 の宛先に送信されたパケットは,ボーダ・ルータに送られます。
制限事項
RFC 3056 に概略が記述されているアドレス選択に関して提案されている規則は,現在のところ実装されていません。このため,6to4 とネイティブの IPv6 が混在するサイトで動作しているノードは,IPv6 パケットを送信する際に,ノードのソース・アドレスを誤って選択する恐れがあります。 6to4 とネイティブの IPv6 が混在するサイトでホストを稼動させないように推奨します。
OpenVMS のボーダ・ルータは,IPv4 のみの集合体へのインタフェースを 1 つだけ持っています。6to4 トラフィックは,このインタフェースを介して送受信することができます。また,OpenVMS ボーダ・ルータは, 6to4 サイトへの IPv6 インタフェースを 1 または複数持っています (IPv6 の各インタフェースは,同じ 6to4 サイト内の異なる LAN への接続です)。
IETF では,IPv6 でのマルチホーム・ネットワークの問題の処理方法を定義していません。このため,マルチホーム IPv6 ネットワークを今は設定しないようにお勧めします。 OpenVMS システムは,6to4 サイトでボーダ・ルータとして稼動している場合,そのサイト内の唯一のボーダ・ルータにすべきです。 6to4 サイト内に複数のボーダ・ルータを構成しないように推奨します。
1.1.2 拡張プログラミング・ソケット・インタフェース
TCP/IP Services の本バージョンでは, draft-ietf-ipngwg-rfc2292bis-06.txtで定義されているように, IPv6 のための拡張ソケット API をサポートします。
draft-ietf-ipngwg-rfc2292bis-06.txtで定義されている IPv6 のための拡張ソケット API は,RFC 2292 で定義されている IPv6 のための拡張ソケット API とは異なるものです。 RFC 2292 用にコーディングされたすべてのアプリケーションは,新しい拡張 API を反映するようにアップデートする必要があります。 |
拡張ソケット API を使用したプログラミングについての情報は,『 Compaq TCP/IP Services for OpenVMS Release Notes Supplement 』の Appendix D を参照してください。
次へ | 目次 |