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この章では,ネットワーク・キットに含まれている Compaq Graphical Configuration Manager (GCM) for OpenVMS について説明します。キットから GCM サーバと GCM クライアントをインストールする方法を説明し,GCM クライアント/サーバ・セッションを確立するための基本的な説明を述べます。基本的な GCM セットアップを実行すると,GCM クライアントの「 Help 」メニューから GCM の詳細情報を得ることができます。
13.1 概要
Compaq Graphical Configuration Manager (GCM) for OpenVMS は,移植性のあるクライアント/サーバ・アプリケーションであり,OpenVMS を実行しているパーティション分割された AlphaServer システムの構成を視覚的に表示および制御するための手段となります。GCM クライアントは Java ベースのアプリケーションであり,Java ランタイム環境 (JDK V1.2.2 以上) と TCP/IP ネットワークをサポートする任意のオペレーティング・システムで動作します。GCM サーバは,1 つ以上の AlphaServer システム上で,パーティション分割されたそれぞれの OpenVMS インスタンスの独立プロセスとして実行されます。GCM を使用すると,GCU とほとんど同じ方法で Galaxy システムの構成と管理を行うことができます。違いは,GCU は DECwindows Motif アプリケーションであり,GCM は Java ベースのアプリケーションであることです。
GCM クライアントは,現時点では Java JDK バージョン 1.3 以上ではサポートされません。 |
Compaq OpenVMS Graphical Configuration Manager によって行われるネットワーク通信はすべて,SSL (Secure Socket Layer) を使用します。GCM 管理データベースは暗号化されます。
GCM クライアントから,OpenVMS システム管理者は 1 つ以上の GCM サーバへのセキュアな接続を確立して,次の機能を実行することができます。
アソシエーション (association) とは,それぞれに GCM サーバがインストールされている OpenVMS インスタンスのグループであり,共通の GCM 管理データベースを共用します。アソシエーションを定義することによって,システム管理者は幅広い配置方式の中から運用ニーズに適したものを使用することができます。たとえば,大規模なシステムではハード・パーティションを作成して,部門ごとに使用することができます。これらのハード・パーティションの中にソフト・パーティションを作成して,個別のワーク・グループやユーザー・グループで使用することができます。このような複雑な環境では,ハード・パーティションとソフト・パーティションのセットごとに個別のシステム管理者が存在する場合があります。また,すべてのパーティション,あるいはパーティションのサブセットの責任者となる総合管理者を定義することもできます。GCM では,特定のアソシエーションを定義して,特定のアクセス特権を個別のユーザに認可することができます。
最も単純な配置では,1 つの GCM サーバが単一のハード・パーティションの単一のソフト・パーティションで実行されます。管理データベース内のアソシエーション・レコードは,ハード・パーティション ( およびそのソフト・パーティション ) を,個別のシステムとして管理される一意なエンティティとして識別します。
最も複雑な配置では,多くの異なるシステム (GS シリーズ,ES40,4100,8xxx) のそれぞれのハード・パーティション内のそれぞれのソフト・パーティションで GCM サーバが実行されます。管理データベースのアソシエーション・レコードは,管理対象となる複合エンティティを形成するシステムのグループを識別します。アソシエーションが複数のシステムとパーティションで構成されるとき,それぞれの GCM サーバはアソシエーション内の他の GCM サーバに対して自分自身を識別し,それによってセキュアな通信グリッドが確立され,高度な分散管理機能を行うことができます。
13.2 インストールの前提条件
このセクションでは,GCM をインストールして実行するためのソフトウェアおよびハードウェア要件を示します。
13.2.1 ソフトウェア要件
GCM サーバ:
GCM クライアント:
GCM クライアントは,現時点では,Java JDK バージョン 1.3 以上ではサポートされません。 |
GCM のパフォーマンスは,アソシエーションのサイズと構成によって左右されます。大きく複雑なアソシエーション (多くの GCM サーバを含んでいるもの) ほど,ネットワーク転送は低速になります。
GCM クライアントを実行するそれぞれのマシンに,800x600 ピクセル (SVGA) 以上のディスプレイが必要です。
GCM クライアントを実行するそれぞれの PC に,128 MB 以上のメモリが必要です。
13.3 インストール手順
このセクションでは,GCM のコンポーネントをインストールする方法を説明します。インストールは,次のようなステップで行います。
OpenVMS GCM サーバおよびクライアント用の POLYCENTER Software Installation ユーティリティ・キットの内部テスト版は,次の場所にあります。
BULOVA::GCM_KITS:CPQ-AXPVMS-GCM_CLIENT-A0100--1.PCSI-DCX_AXPEXE BULOVA::GCM_KITS:CPQ-AXPVMS-GCM_SERVER-A0100--1.PCSI-DCX_AXPEXE |
Microsoft Windows GCM クライアント用の InstallShield キットの内部テスト版は,次の場所にあります。
BULOVA::GCM_KITS:GCM_CLIENT_A0100.ZIP |
GCM サーバは,OpenVMS バージョン 7.3-1 およびそれ以降のバージョンではプリインストールされています。以前のバージョンの OpenVMS( バージョン 7.2-1H1 以上) では,POLYCENTER Software Installation ユーティリティ・キットを使用して GCM サーバをインストールすることができます (第 13.3.1 項 を参照)。
GCM サーバのインストールでは,次の操作が行われます。
GCM_RULESET.XML
GCM_CUSTOM.XML
GCM_BANNER.JPG
GCM_NOTICE.HTML
GCM$SETUP.EXE
GCM_CERT.PEM
例 13-1 に,GCM サーバのインストール例を示します。
例 13-1 GCM サーバのインストール例 |
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$ PRODUCT INSTALL GCM_SERVER The following product has been selected: CPQ AXPVMS GCM_SERVER A1.0 Layered Product Do you want to continue? [YES] Configuration phase starting ... You will be asked to choose options, if any, for each selected product and for any products that may be installed to satisfy software dependency requirements. CPQ AXPVMS GCM_SERVER A1.0: Graphical Configuration Manager V1.0 COPYRIGHT © (c) 2001 -- All rights reserved Compaq Computer Corporation License and Product Authorization Key (PAK) Information * This product does not have any configuration options. Copying GCM Release Notes to SYS$HELP Will install the GCM Server V1.0. GCM Startup File Execution phase starting ... The following product will be installed to destination: CPQ AXPVMS GCM_SERVER A1.0 DISK$WFGLX5_X931:[VMS$COMMON.] Portion done: 0%...10%...20%...30%...90%...100% The following product has been installed: CPQ AXPVMS GCM_SERVER A1.0 Layered Product $ |
例 13-2 に,GCM サーバがインストールされた後の現在のディレクトリのファイルを示します。
例 13-2 GCM サーバ・ファイルのディレクトリ |
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$ SET DEFAULT SYS$COMMON:[SYS$CONFIG] $ DIRECTORY Directory SYS$COMMON:[SYS$CONFIG] GCM$SETUP.EXE;1 GCM_BANNER.JPG;1 GCM_CERT.PEM;1 GCM_CUSTOM.XML;1 GCM_NOTICE.HTML;1 GCM_RULESET.XML;1 GCM_SERVER.COM;1 Total of 10 files. |
第 13.3.3.1 項 では,OpenVMS GCM クライアントのインストール方法を示します。
第 13.3.3.2 項 では,PC GCM クライアントのインストール方法を示します。
13.3.3.1 OpenVMS GCM クライアント
例 13-3 に,OpenVMS GCM クライアントのインストール例を示します。
例 13-3 OpenVMS GCM クライアントのインストール |
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$ PRODUCT INSTALL GCM_CLIENT The following product has been selected: CPQ AXPVMS GCM_CLIENT A1.0 Layered Product Do you want to continue? [YES] Configuration phase starting ... You will be asked to choose options, if any, for each selected product and for any products that may be installed to satisfy software dependency requirements. CPQ AXPVMS GCM_CLIENT A1.0: Graphical Configuration Manager V1.0 Client COPYRIGHT © (c) 2001 -- All rights reserved Compaq Computer Corporation License and Product Authorization Key (PAK) Information * This product does not have any configuration options. Copying GCM Release Notes to SYS$HELP Will install the GCM Java Client V1.0. Will install a private copy of the Java JRE V1.2.2-3. Will install a private copy of the Java Fast VM V1.2.2-1 Execution phase starting ... The following product will be installed to destination: CPQ AXPVMS GCM_CLIENT A1.0 DISK$WFGLX5_X931:[VMS$COMMON.] Portion done: 0%...10%...20%...90%...100% The following product has been installed: CPQ AXPVMS GCM_CLIENT A1.0 Layered Product $ |
例 13-4 に,OpenVMS GCM クライアントがインストールされた現在のディレクトリのファイルを示します。OpenVMS GCM クライアントをインストールすると,JRE.DIR ディレクトリに Java ランタイム環境がインストールされることに注目してください。
例 13-4 GCM クライアント・ファイルのディレクトリ |
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$ SET DEFAULT SYS$COMMON:[GCM_CLIENT] $ DIRECTORY Directory SYS$COMMON:[GCM_CLIENT] BIN.DIR;1 GCM_CERT.CRT;1 RUN_GCMCLIENT.COM;1 IMAGES.DIR;1 JRE122.DIR;1 LIB.DIR;1 README.TXT;1 Total of 7 files. $ |
PC GCM クライアントをインストールするには,まず,BULOVA::GCM_KITS:GCM_CLIENT_A0100.ZIP ファイルをコピーした後,zip ユーティリティを使用して GCM クライアントをインストールします。
インストール・プロセスでは,GCM クライアントのインストール先の Windows ディレクトリを選択することができます。GCM クライアント・セッションで毎回同じ環境設定を使用するには,インストール時に選択したディレクトリから GCM クライアントを起動する必要があります。このためには,「GCM Client」アイコンをクリックします。
13.3.4 GCM サーバのセットアップ
GCM サーバをセットアップするには,まず,デフォルトを SYS$COMMON:[SYS$CONFIG] ディレクトリに設定した後,GCM$SETUP.EXE を実行して次のタスクを行います。
GCM サーバのセットアップ中に,追加の GCM ユーザを登録するかどうかも選ぶことができます。
GCM$SETUP.EXE を実行すると,GCM 管理データベース・ファイル SYS$COMMON:[SYS$CONFIG] GCM_ADMIN.EDB が生成され,暗号化されます。GCM サーバの起動を選択すると,SYS$STARTUP:GCMSRV$STARTUP.COM プロシージャが実行されて,次のような操作が実行されます。
GCM サーバは,サーバ障害後は自動的に再起動します。GCM サーバがハングした場合はタイムアウトになり,再起動します。適切な特権を持つ GCM クライアントから RESTART コマンドを入力することもできます。 初めて GCM サーバが再起動したときのプロセス名は GCM_SERVER01 です。その後,GCM サーバが再起動するたびに,プロセス名は 1 ずつ増分されます。プロセス名が GCM_SERVER99 になると,GCM サーバが再起動ループに入るのを防止するために,その後の再起動は禁止されます。 システム論理名 GCMSRV$ABORT を定義することによって,自動再起動の試みを防ぐことができます。再起動の試みの原因を取り除いた後,この論理名の割り当てを解除して,GCM サーバの自動再起動を有効にしておく必要があります。 |
例 13-5 に,初期の GCM サーバ構成のセットアップ例を示します。
例 13-5 GCM サーバのセットアップ例 |
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$ SET DEFAULT SYS$COMMON:[SYS$CONFIG] $ DIRECTORY Directory SYS$COMMON:[SYS$CONFIG] GCM$SETUP.EXE;1 GCM_BANNER.JPG;1 GCM_CERT.PEM;1 GCM_CUSTOM.XML;1 GCM_NOTICE.HTML;1 GCM_RULESET.XML;1 Total of 6 files. $ RUN GCM$SETUP OpenVMS GCM-Server Setup Utility Copyright 2001, Compaq Computer Corportation This utility initializes the GCM Administrative Database: GCM_ADMIN.EDB If you are performing an initial GCM-Server installation, continue. If you are replacing an existing database, you must delete the current database files on all GCM-Server instances in your current Association to allow the new database to be recognized. CONTINUE (Y/N)? y DO YOU PREFER FULL TEXT ASSISTANCE (Y/N)? y STEP 1: SERVER DISCOVERY IP PORT NUMBER USE THE DEFAULT PORT NUMBER 4100 (Y/N)? y STEP 2: CONNECTION BOUNDS USE THE DEFAULT CONCURRENT CLIENT LIMIT (Y/N)? y USE THE DEFAULT CONCURRENT SERVER LIMIT (Y/N)? y STEP 3: CONNECTION SECURITY USE CLIENT-SERVER SECURITY (Y/N)? y STEP 4: SERVER ASSOCIATION RECORD ENTER THE ASSOCIATION NAME: TEST ASSOCIATION STEP 5: SYSTEM RECORDS ENTER SYSTEM NAME (star.zko.compaq.com)(or 0 when done): WFGLX5.ZKO.DEC.COM ENTER SYSTEM IP ADDRESS (or 0 to use DNS): 16.32.112.17 ENTER SYSTEM NUMBER: 0 ENTER HARD PARTITION NUMBER: 1 ENTER SOFT PARTITION NUMBER: 0 %Define additional system records as needed... ENTER SYSTEM NAME (star.zko.compaq.com)(or 0 when done): 0 STEP 6: CLIENT AUTHORIZATION RECORDS ENTER CLIENT NAME/TITLE (or 0 when done): First Last ENTER USERNAME: First ENTER INITIAL PASSWORD FOR First: Last ENTER EMAIL ADDRESS FOR First: First.Last@compaq.com GIVE First CONFIG PRIVILEGE (Y/N)? y GIVE First COMMAND PRIVILEGE (Y/N)? y GIVE First USER-COMMAND PRIVILEGE (Y/N)? y GIVE First POWER PRIVILEGE (Y/N)? y GIVE First ADMIN PRIVILEGE (Y/N)? y ENABLE First ACCOUNT NOW (Y/N)? y %Define additional client records as needed... ENTER CLIENT NAME/TITLE (or 0 when done): 0 STEP 7: SERVER STARTUP OPTIONS DO YOU WANT THE LOCAL GCM-SERVER TO START ON SYSTEM BOOT (Y/N)? y You may choose to start the local GCM-Server now, or you can start it later via $ @SYS$STARTUP:GCMSRV$STARTUP.COM DO YOU WANT TO START THE LOCAL GCM-SERVER NOW (Y/N)? y %DCL-I-SUPERSEDE, previous value of GCMSRV$RESTART has been superseded ************************ POST SETUP TASKS ************************** This completes the GCM Admin Database initialization. IMPORTANT: If you are using multiple GCM-Servers, copy the newly created GCM Admin Database file: SYS$COMMON:[SYS$CONFIG]GCM_ADMIN.EDB, to the same location on each system you defined in the Association, then start or restart each server via $ @SYS$STARTUP:GCMSRV$STARTUP.COM If the database has been properly defined, each server will detect the presence of the other servers and form the specified Association. At this point, you can use the GCM Client to establish a connection and further tune the installation. For maximum security, you may wish to protect or remove this utility. $ |
各エントリを説明する完全なプロンプト・テキストを含んだ GCM サーバのセットアップ例については,第 13.12 節 を参照してください。
GCM$SETUP ユーティリティは,システム構成,ユーザ識別情報,および起動方法に関する詳細の入力を求めます。
セキュリティを強化するには,GCM セットアップ・ユーティリティを実行した後,名前の変更,削除,またはその他の方法でこのユーティリティを保護してください。セットアップ・ユーティリティが再び必要になるのは,初期データベースを再構築する必要がある場合だけです。
初期セットアップ時に,GCM サーバを実行するシステムを少なくとも 1 つ定義し ( 通常は,ログインしているシステム ),また,administrator 特権を持つユーザを登録する必要があります。このユーザは,後で GCM クライアントを実行して GCM サーバに接続し,詳細な構成と調整を行います。GCM サーバのセットアップ中に,アソシエーションに追加のインスタンスを定義することができ,また,個別のアクセス特権を持つ追加の GCM ユーザを登録することができます。また,これらのタスクは,GCM クライアントからいつでも行うことができます。
GCM セットアップ・ユーティリティは,SYS$COMMON:[SYS$CONFIG]GCM_ADMIN.EDB ファイルを作成します。これは,初期の GCM 管理データベースです。これは,アソシエーションとそのユーザに関する情報を含む暗号化されたデータベースです。通常の操作では,このデータベースを解釈できるのは GCM サーバだけです。( 第 13.9 節 を参照。) 複数のインスタンスを持つアソシエーションを構成した場合には,それらのインスタンス上で GCM サーバを起動する前に,GCM 管理データベースを追加インスタンスのそれぞれの GCM サーバ・ディレクトリに手動でコピーする必要があります。データベース・ファイルをコピーしないと,アソシエーションが正しく作成されなかったり,初期の GCM 管理データベースが上書きされることがあります。
新しいインスタンスの追加やインスタンスの削除など,アソシエーションの構成の変更は主要な変更です。アソシエーションに主要な変更を加えたときには必ず,GCM サーバを起動する前に,そのインスタンス上の GCM サーバ・ディレクトリに GCM 管理データベース・ファイルを手動でコピーする必要があります。
アクティブなアソシエーション内のデータベースにマイナーな変更を加えた場合は,すべての GCM サーバに自動的に伝播されます。GCM サーバを再起動する必要はありません。マイナーな変更としては,GCM クライアント・レコードの追加と削除や GCM サーバ・パラメータの調整などが含まれます。
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