OpenVMS
システム管理者マニュアル


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第 5 章
オペレーティング・システムのカスタマイズ

インストールしたオペレーティング・システムは,ユーザの必要に応じてカスタマイズすることができます。

本章の内容

この章では次の作業について説明します。

作業 参照箇所
オプション・ファイルの追加と削除 第 5.1 節
サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャの変更 第 5.2 節
ログイン・コマンド・プロシージャの変更 第 5.3 節
スタートアップ・データベースのカスタマイズ 第 5.4 節
+ システム・バージョン依存イメージの登録 第 5.5 節
ヘルプ・メッセージ・データベースのカスタマイズ 第 5.6 節
MAIL のカスタマイズ 第 5.7 節
MIME (Multipurpose Internet Mail Extension) ユーティリティの設定 第 5.8 節
カスタマイズの保存 第 5.9 節


+VAX のみ

さらに,次の項目について説明します。

項目 参照箇所
サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャ 第 5.2.1 項
スタートアップ・イベントの順序 第 5.2.2 項
スタートアップ・データベース 第 5.4.1 項
レイヤード製品のスタートアップ・データベース 第 5.4.2 項

5.1 オプション・ファイルの追加と削除

OpenVMS では,DECwindow のサポートも含め,オプションのシステム・ファイルを追加,削除することによって,オペレーティング・システムの大きさを変更することができます。これは,小規模なシステムやディスク空間が限られているシステムで特に有用です。

たとえば,システム・ディスクが RD54 の MicroVAX II コンピュータで,Delta/XDelta デバッガ (DELTA/XDELTA) やシステム・ダンプ解析ユーティリティ (SDA) などのシステム・プログラミング機能を使用しない場合は,システム・ディスクからそうしたファイルを削除することができます。

使用するシステムによっては,ファイルの追加および削除の方法には次の 2 種類を使用できます。

5.2 サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャの変更

システムのカスタマイズで大切な作業の 1 つは,サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャの作成または変更です。スタートアップ・コマンド・プロシージャにコマンドを登録しておくと,システムをブートするたびに,必ずそれらのコマンドが実行されることになります。

5.2.1 サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャ

次の用語を覚えてください。

用語 定義
スタートアップ・コマンド・プロシージャ システム・スタートアップ時に実行されるコマンド・プロシージャ。
汎用スタートアップ・コマンド・プロシージャ すべての OpenVMS システムに提供され,OpenVMS に必須のスタートアップ・コマンド・プロシージャ (各サイトに固有の要件とは関係のない部分)。このプロシージャの名前は SYS$SYSTEM:STARTUP.COM。 このプロシージャは変更してはいけない

システムをブートすると,自動的に STARTUP.COM が実行される。詳細は 第 4.1.4 項 を参照。

サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャ ユーザのサイトに合わせて実行する操作を変更できるスタートアップ・コマンド・プロシージャ。このプロシージャは,任意のテキスト・エディタで編集できる。

STARTUP.COM は,コンパックが提供するサイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャをいくつか実行する。 これらのプロシージャは, 表 5-1 にリストされている。

また,独自のプロシージャを作成して,SYSTARTUP_VMS.COM から実行することもできる。

コンパックが提供するサイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャを,実行される順に 表 5-1 に示します。これらのプロシージャは,論理名 SYS$STARTUP のシステム・ディレクトリにあります。

表 5-1 サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャ
順番 コマンド・プロシージャ 機能
1 SYCONFIG.COM サイト別装置構成用のコマンドを追加するファイル。詳細は 第 5.2.4 項 を参照。
2 SYLOGICALS.COM ユーザのサイト別システム論理名を定義するコマンドを追加するファイル。詳細は 第 5.2.5 項 を参照。
3 SYPAGSWPFILES.COM ページ・ファイルとスワップ・ファイルをインストールするコマンドを追加するファイルただし,SYS$SYSTEM 中の 1 次ページ・ファイルと 1 次スワップ・ファイルを除く。これらは自動的にインストールされる。詳細は 第 5.2.3 項 を参照。
4 SYSECURITY.COM 機密保護監査サーバを起動する前に,機密保護監査と機密保護保管ファイルの位置を定義するコマンドを追加するファイル。詳細は 第 5.2.6 項 を参照。
5 SYSTARTUP_VMS.COM ユーザのサイトをセットアップする様々な操作を実行するコマンドを追加する汎用コマンド・プロシージャ。たとえば,SYSTARTUP_VMS.COM 中で公用ディスクをマウントする。 詳細は 第 5.2.7 項 を参照。

5.2.1.1 テンプレート・ファイル

サイト別コマンド・プロシージャは,プロシージャごとに次の 2 つのバージョンが用意されており,ディストリビューション・キットの SYS$MANAGER ディレクトリに格納されています。

注意

コンパックが提供するファイル・タイプ .TEMPLATE のテンプレート・コマンド・ファイルを変更したり,削除したりしないでください。 VMSKITBLD.COM プロシージャはテンプレート・コマンド・ファイルを使用して,新しいシステム・ディスクを作成します。 .COM バージョンが壊れて .TEMPLATE バージョンを使用しなければならない場合には, .TEMPLATE ファイルをファイル・タイプを .COM としてコピーし,そのコピーを編集します。

5.2.1.2 スタートアップ・コマンド・プロシージャの変更規則

サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャを変更する場合,次の規則に従ってください。

重要

コンパックが提供するスタートアップ・プロシージャは,必ず正常に稼働します。しかし,スタートアップ・プロシージャまたはログイン・プロシージャの変更によってエラーが生じ,システムにログインできなくなる場合もあります。このような緊急時のブート手順については, 第 4.4.2 項 を参照してください。

5.2.2 スタートアップ・イベントの順序

サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャを変更するにあたっては,システムのスタートアップ・イベントの順序を理解しておく必要があります。

スタートアップ・プロシージャの各フェーズの順序は, VMS$PHASES.DAT というデータベース・ファイルによって決まります。このファイルは,STARTUP.COM が起動するフェーズを順番に並べたものです。 このファイルには,オペレーティング・システムを起動する 4 つの基本的なフェーズ (INITAIL,CONFIGURE,DEVICE, BASEENVIRON) が入っていて,さらに,レイヤード製品用のフェーズが続きます。

重要

VMS$PHASES.DAT を変更しないでください。システムは,このファイルの内容を使って,正しくスタートアップを行います。

起動時に,システムは次の順序で作業を行います。

  1. CLUSTER_SERVER プロセスの開始

  2. 基本処理に必要な論理名を定義し, SYS$MANAGER:VMSIMAGES.DAT に登録されているイメージをインストールする。

  3. SYSCONFIG.COM を実行する。

  4. 次のコマンドを実行し,新しいドライバを追加する。


    SYS$MANAGER:SYCONFIG.COM で STARTUP$AUTOCONFIGURE_ALL が 0 または FALSE と定義されている場合,このステップは実行されない。

  5. 1 次スワップ・ファイルをインストールする (ファイルが存在する場合のみ)。

  6. スワップ可能な CONFIGURE プロセスを起動する。システム・パラメータの NOAUTOCONFIG が 1 の場合, CONFIGURE プロセスは起動されない。また,SYS$MANAGER:SYCONFIG.COM によって STARTUP$AUTOCONFIGURE_ALL が 0 または FALSE と定義されている場合,このステップは実行されない。

  7. SYLOGICALS.COM を実行する。この時点で,すべての装置が STARTUP$AUTOCONFIGURE_ALL コマンド (ステップ 4),または CONFIGURE プロセス (ステップ 6 以降) で使用できる状態になっている。

  8. システムが VAXcluseter または OpenVMS Cluster 環境のサテライト・ノードの場合は,SATELLITE_PAGE.COM を実行し,ローカル・ディスクにページ・ファイルとスワップ・ファイルをインストールする。 SATELLITE_PAGE.COM は, CLUSTER_CONFIG.COM プロシージャを実行したときに作成されるファイルである。

  9. SYPAGSWPFILES.COM を実行する。

  10. 次のステップを実行する。ただし,実行する順序は決まっていない。

  11. 次のステップを実行する。ただし,実行する順序は決まっていない。

注意

システム・スタートアップ中のイベントの順序は,オペレーティング・システムの将来のリリースで変わることがあります。

5.2.3 ページ・ファイルとスワップ・ファイルをインストールするための SYPAGSWPFILES.COM の変更

ブート時,システムは自動的に SYS$SYSTEM ディレクトリの 1 次ページ・ファイルおよび 1 次スワップ・ファイルをインストールします。これらの 1 次ページ・ファイルおよび 1 次スワップ・ファイルが SYS$SYSTEM ディレクトリに存在しない場合,または 2 次ページ・ファイルおよび 2 次スワップ・ファイルをシステム・ディスク以外のディスクに登録している場合,これらのファイルをシステム・ブートのたびにインストールする必要があります。ページ・ファイルおよびスワップ・ファイルを適切にインストールするためには,SYPAGSWPFILES.COM にコマンドを登録します。

作業を行うにあたっては,ページ・ファイルとスワップ・ファイルの働きを理解し,それらのファイルを別のディレクトリに移さなければならない理由を認識しておいてください。詳細は 第 16.2 節 を参照してください。

また,SYPAGSWPFILES.COM ファイルには, SYSGEN の CREATE コマンドや DCL の INITIALIZE や MOUNT コマンドなど, INSTALL コマンド以外のページ・ファイルとスワップ・ファイルを設定するためのコマンドを登録することができます。 STARTUP.COM が SYPAGSWPFILES.COM を起動した時点では,システム・ディスクしかマウントされません。ページ・ファイルやスワップ・ファイルが存在するディスクをマウントするためには, SYPAGSWPFILES.COM に MOUNT コマンドを登録する必要があります。

SYPAGSWPFILES.COM を使用するためには,ページ・ファイルが少なくとも 1 つインストールされている必要があります。ページ・ファイルがない場合, STARTUP.COM は次のエラー・メッセージを表示します。


%STARTUP-E-NOPAGFIL, no page files have been successfully installed. 

重要

SYSDUMP.DMP という名前のシステム・ダンプ・ファイルがディレクトリ SYS$SPECIFIC:[SYSEXE] に存在しない場合は,クラッシュ・ダンプの書き込みのために, 1 次ページ・ファイル PAGEFILE.SYS がディレクトリ SYS$SPECIFIC:[SYSEXE] の中に存在しなければなりません。 SYSDUMP.DMP も PAGEFILE.SYS も SYS$SPECIFIC:[SYSEXE] にない場合は,クラッシュ・ダンプ・ファイルは生成されません。

SATELLIGE_PAGE.COM を使用して,サテライト・ノードのローカル・ディスクにページ・ファイルとスワップ・ファイルをインストールすることもできます。 SATELLITE_PAGE.COM は,CLUSTER_CONFIG.COM の実行時に作成されます。サテライト・ノードのローカル・ディスクのページ・ファイルとスワップ・ファイルのインストール方法については,『Compaq OpenVMS Cluster システム』を参照してください。

作業方法

  1. SYSGEN CREATE コマンドを次の形式で入力して,目的の場所に 2 次システム・ファイルを作成する。


    CREATE   ファイル指定/SIZE=ブロック数 
    


    たとえば,次のように入力する。


    SYSGEN> CREATE DUA2:[PAGE_SWAP]PAGEFILE_1.SYS/SIZE=100000
    SYSGEN> CREATE DUA2:[PAGE_SWAP]SWAPFILE_1.SYS/SIZE=100000
    


    CREATE コマンドは,ページ・ファイル,スワップ・ファイル,およびダンプ・ファイルとして使用可能なファイルを作成または拡張する。これらのファイルを作成するのは一度だけである。
    ページ・ファイルとスワップ・ファイルの作成方法についての詳細は, 第 16.16 節 を参照。 SYSGEN の CREATE コマンドについては,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』の SYSGEN の部分に詳しい説明がある。

  2. エディタを起動して,SYS$MANAGER:SYPAGSWPFILES.COM を編集する。

  3. 必要ならば,2 次ページ・ファイルと 2 次スワップ・ファイルを格納するディスクをマウントするための MOUNT コマンドを登録する。 SYPAGSWPFILES.COM を起動した時点では,システム・ディスク以外のディスクはマウントされていない。MOUNT コマンドについては,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』の MOUNT の部分で詳しく説明している。

  4. SYSGEN の起動を簡単にするために,次のコマンドを入力する。


    $ SYSGEN := $SYSGEN 
    


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