OpenVMS
システム管理者マニュアル


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第 4 章
システムの起動と停止

本章では,システムのいろいろなスタートアップ (起動) 方法とシャットダウン (停止) 方法について説明します。

システムをスタートアップするには,まずシステムをブート します。多くのシステムには,システム固有のブート用コマンドがあります。システムのブート手順についての詳細は,次のマニュアルを参照してください。

本章の内容

この章では,次の作業について説明します。

作業 参照箇所
AlphaServer 4100 コンピュータにおけるメモリ・テストの延期 第 4.1.2 項
システム・パラメータ値を変更したブート 第 4.2 節
SYSBOOT によるポート割り当てクラスの割り当て 第 4.3 節
緊急時のブート 第 4.4 節
スタートアップを制御したブート 第 4.5 節
ブート問題の解決 第 4.6 節
システム・ディスクへの新しいブート・ブロックの書き込み 第 4.7 節
SHUTDOWN.COM による通常のシャットダウン 第 4.8.1 項
SHUTDOWN.COM のカスタマイズによるサイト別の処理 第 4.8.3 項
SYSMAN による通常のシャットダウン 第 4.8.4 項
OPCCRASH.EXE プログラムによる緊急シャットダウン 第 4.8.5 項
コンソール・コマンドによる緊急シャットダウン 第 4.8.6 項

さらに,次の項目について説明します。

項目 参照箇所
ブートおよびスタートアップ・プロセス 第 4.1.1 項
ノンストップ・ブート: 最も一般的なブート操作 第 4.1.3.1 項
会話型ブート: 特殊ブート機能 第 4.1.3.2 項
システム・スタートアップと STARTUP.COM 第 4.1.4 項
システム・シャットダウン・プロシージャ 第 4.8 節
シャットダウン・イベントの順序 第 4.8.2 項

4.1 ブートとシステム・スタートアップ

ブート とは,システム・ディスク上のシステム・ソフトウェアをプロセッサのメモリにロードすることです。システムをブートするとき,自動的にシステムをスタートアップさせるためのタスクを自動的に行います。これらのタスクは, システム・スタートアップ と呼ばれます。

はじめてシステムをブートする前には,オペレーティング・システムをインストールしておかなければなりません。

ブート・プロシージャは,システムによって異なります。たとえば,コンソール記憶装置を搭載しているコンピュータは,ブート・コマンド・プロシージャを使用します。このブート・コマンド・プロシージャをコピーして編集すれば,ターゲットとなるシステム・ディスクを変更することができます。また,内部メモリ装置を持つコンピュータは,そこからシステム・ディスク名を取得します。

Alpha システムの場合,磁気テープ装置からブートを行うことはできません。

4.1.1 ブートとスタートアップ・プロセス

ブートとスタートアップ・プロセスは,次のステップから構成されます。

  1. BOOT コマンドを入力する。 ブート・ブロック は,1 次ブートストラップ・イメージ を指す。これはディスク上の固定された記憶位置を指す。このイメージはディスクからメイン・メモリに読み込まれる。
    VAX システムでは,1 次ブートストラップ・イメージは VMB.EXE である。
    Alpha システムでは,1 次ブートストラップ・イメージは APB.EXE である。
    1 次ブートストラップ・イメージを使用すると,システム・ディスクにアクセスできる。このプログラムは,2 次ブートストラップ・イメージ SYS$SYSTEM:SYSBOOT.EXE を検索してメモリにロードする。

  2. SYSBOOT.EXE は,省略時のパラメータ・ファイルに保存されたシステム・パラメータをメモリにロードする (省略時のパラメータ・ファイルとブート時におけるシステム・パラメータのロードについての詳細は, 第 4.2 節 を参照)。
    会話型ブートを行う場合,プロシージャは停止し, SYSBOOT> プロンプトが表示される (会話型ブートについての詳細は, 第 4.1.3.2 項 を参照)。その他の場合,SYSBOOT.EXE はオペレーティング・システム実行可能イメージをメモリにロードし,その実行可能イメージに制御を渡す。

  3. 実行可能イメージが終了すると,SWAPPER プロセスを実行する。

  4. SWAPPER は SYSINIT プロセスを生成する。

  5. 他の処理と同時に SYSINIT は STARTUP プロセスを生成する。

  6. STARTUP は SYS$SYSTEM:STARTUP.COM を実行する (SYSMAN,SYSGEN,会話型ブートで他のファイルを指定している場合を除く)。 STARTUP.COM は,SYSTARTUP_VMS.COM を含む,その他のスタートアップ・コマンド・プロシージャを実行する (STARTUP.COM についての詳細は 第 4.1.4 項 を,その他のスタートアップ・プロシージャについての詳細は 第 5.2.1 項 を参照)。
    システム・パラメータの現在の値は,省略時のパラメータ・ファイルに書き込まれる。

  7. ブート・プロセスが終了すると,オペレーティング・システムにログインできる。

4.1.2 AlphaServer 4100 コンピュータにおけるメモリ・テストの延期

システムの電源投入からユーザ・ログインまでの時間を短縮するために, AlphaServer 4100 コンピュータでは,メモリ・テストの一部を延期させることができるようになりました。このオプションを選択すると,コンソールは必要最小限のメモリをテストし,残りのメモリのテストをオペレーティング・システムに任せます。

この新しい機能を使用するには,コンソールで MEMORY_TEST 環境変数に特定の値を指定してからブートする必要があります。 MEMORY_TEST に指定する値は次のとおりです。

説明
FULL (オフ) コンソールがすべてのテストを行う。
NONE ブート前に 32 MB のメモリがテストされる。
PARTIAL ブート前に 256 MB のメモリがテストされる。

MEMORY_TEST を NONE または PARTIAL に設定した場合,次に示すいずれか,または両方の期間に,テストされていない残りのメモリを OpenVMS が必要に応じてテストします。

MEMORY_TEST の値を変更したときには,必ず INIT コンソール・コマンドを実行してその新しい値を有効にしてください。このため,ブートする前に,コンソールから次の手順を行う必要があります。

  1. (必要に応じて) MEMORY_TEST の値を変更する。

  2. コンソールから INIT コマンドを実行する。

  3. オペレーティング・システムをブートする。

メモリが実際にテストされる際,OpenVMS からさらに細かく制御することもできます。システム・パラメータ MMG_CTLFLAGS の 2 番目のビットは,次のようにメモリ・テストの延期を制御します。

4.1.3 ブート操作のタイプ

次のタイプのブート操作を行うことができます。

タイプ 目的 参照箇所
ノンストップ・ブート 特殊な操作を行うためにストップすることなくブートを行う。ほとんどの場合,この種類のブートが使用される。 第 4.1.3.1 項
会話型ブート 特殊な操作を行う。たとえば,ブート前のシステム・パラメータの変更など。 第 4.1.3.2 項

4.1.3.1 ノンストップ・ブート: 最も一般的なブート操作

最も多く使用されるブート方法は,システム・ディスクからのノンストップ・ブート です。ブート前にシステム・パラメータ値を変更した後,レイヤード製品をインストールした後,またはスタンドアロン・バックアップの後でノンストップ・ブートを行います。

ノンストップ・モードでのブート手順については,次のマニュアルを参照してください。

4.1.3.2 会話型ブート: 特殊なブート機能

会話型ブート は,プログラミングの研究または開発が行われる環境のように,実験,テスト,またはデバッグのために動作条件を変更しなければならない場所で使用されます。 会話型ブートでは,次の操作を行うことができます。

操作 参照箇所
システム・パラメータ値を表示または変更してからのブート 1 第 4.2.1 項
代替パラメータ・ファイルのシステム・パラメータ値によるブート 1 第 4.2.2 項
省略時のシステム・パラメータ値によるブート (変更したシステム・パラメータ値を使用すると,システムがブートできない場合など) 1 第 4.4.1 項
スタートアップ・プロシージャまたはログイン・プロシージャを使用しないブート (変更したスタートアップ・プロシージャまたはログイン・プロシージャを使用すると,システムがブートできない場合など) 第 4.4.2 項
ユーザ登録ファイルを使用しないブート (変更したユーザ登録ファイルを使用すると,ログインができない場合など) 第 4.4.3 項
代替汎用スタートアップ・プロシージャによるブート 第 4.5.1 項
簡易スタートアップによるブート 第 4.5.3 項
スタートアップ・プロシージャのコマンドを表示しながらのブート 第 4.5.4 項


1システム・パラメータを変更する場合には,なるべく AUTOGEN を使用すること。会話型ブートを使用してシステム・パラメータを変更するのは,一時的な場合に限定する。変更したパラメータを恒久的に使用する場合には, MODPARAMS.DAT を編集してから AUTOGEN を実行する。変更したパラメータを恒久的に使用する方法については, 第 15.5 節 を参照。

会話型ブートは,次のマニュアルに示す手順に従って行ってください。

4.1.4 システム・スタートアップと STARTUP.COM

システム・ブートの直後,システムをスタートアップし,スタートアップ・イベントの進行を制御するために 汎用コマンド・プロシージャ SYS$SYSTEM:STARTUP.COM が実行されます。この項では,STARTUP.COM について説明します。

重要

SYS$SYSTEM:STARTUP.COM は変更しないでください。このファイルは,システムのオペレーティング・システムを次のバージョンにアップグレードするたびに削除され,置き換えられます。 STARTUP.COM をそのままにしておくことによって,ファイル中のコマンドを間違って変更したりすることを防げます。逆に,このファイルを変更すると,スタートアップ・プロシージャの実行が失敗することもあります。

STARTUP.COM は変更すべきではありませんが,システムのブート時に,汎用のスタートアップを制御するような特殊なケースがあります。詳細は 第 4.5 節 を参照してください。

STARTUP.COM は次のスタートアップ・タスクを行うために,コマンド・プロシージャ,実行可能イメージ,データベース・ファイルを使用します。

STARTUP.COM は,次のサイト別 スタートアップ・コマンド・プロシージャを,次の順番で実行します。

  1. SYS$MANAGER:SYCONFIG.COM

  2. SYS$MANAGER:SYLOGICALS.COM

  3. SYS$MANAGER:SYPAGSWPFILES.COM

  4. SYS$MANAGER:SYSECURITY.COM

  5. SYS$MANAGER:SYSTARTUP_VMS.COM

サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャについての詳細は, 第 5.2 節 を参照してください。

4.1.5 ブートとスタートアップが進行していることを示すメッセージ

システムのブートに成功するとバナーが表示され,さらに次のようなメッセージが表示されます。

  1. 次のメッセージは,システムがコマンド・プロシージャ
    SYS$SYSTEM:STARTUP.COM を実行していることを示す。


    The OpenVMS system is now executing the system startup procedure. 
    


    このプロシージャはシステムを構築および初期化し,いくつかのサイト別コマンド・プロシージャを実行する。詳細は 第 4.1.4 項 を参照。

  2. 数分後,システムは次のようなメッセージを表示する。


    The OpenVMS system is now executing the site-specific system startup commands. 
    


    このメッセージは,システムが SYSTARTUP_VMS.COM を実行していることを示す。このファイルを変更すれば,スタートアップ時にさまざまな操作を実行することができる。詳細は 第 5.2.7 項 を参照。

  3. 最後に,このプロシージャは情報メッセージとアカウント情報を表示する。


    %SET-I-INTSET, login interactive limit=64, current interactive value = 0 
    19-APR-2000 15:00:00.00 
      SYSTEM       job terminated at 19-APR-2000 15:00:00.00 
     
    Accounting information: 
     Buffered I/O count:       133     Peak working set size:        401 
     Direct I/O count:          12     Peak pagefile size:          2379 
     Page faults:              325     Mounted volumes:                0 
     Charged CPU time: 0 00:00:55.23   Elapsed time:       0 00:01:31.24 
    


    システムがこの情報を表示した後,ログインが可能になる。


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