OpenVMS
システム管理者マニュアル


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16.17.3 プロセス・ダンプへのアクセスの制限 (Alpha のみ)

非特権ユーザが完全プロセスを書き込むことができるようにしながら,同時にユーザがそのプロセス・ダンプを読み込むことができないようにすることができます。その場合,次の手順を行います。

  1. IMGDMP$PROTECT ライト識別子が存在しない場合には,イメージ SYS$SYSTEM:IMGDMP_RIGHTS.EXE を実行してこれを作成する ( 第 16.17.1 項 を参照)。

  2. ライト識別子 IMGDMP$PROTECT を使用して,保護されたディレクトリを作成する。次に例を示す。


        $ CREATE /DIRECTORY DKA300:[PROCDUMPS] - 
            /PROTECTION=(S:RWE,O:RWE,G,W) /OWNER_UIC=IMGDMP$PROTECT 
        $ SET SECURITY DKA300:[000000]PROCDUMPS.DIR - 
            /ACL=((DEFAULT_PROTECTION,SYSTEM:RWED,OWNER:RWED,GROUP:,WORLD:), - 
             (IDENTIFIER=IMGDMP$PROTECT,ACCESS=READ+WRITE), - 
             (IDENTIFIER=IMGDMP$PROTECT,OPTIONS=DEFAULT, - 
              ACCESS=READ+WRITE+EXECUTE+DELETE+CONTROL), - 
             (CREATOR,ACCESS=NONE)) 
    

  3. エグゼクティブ・モード論理名 SYS$PROTECTED_PROCDMP が,保護されたディレクトリを指すように定義する。次に例を示す。


        $ DEFINE /SYSTEM /EXECUTIVE_MODE SYS$PROTECTED_PROCDMP DKA300:[PROCDUMPS] 
    

  4. 保護されたディレクトリが含まれるディスクで DISKQUOTA を使用する場合には,プロセス・ダンプに使用する最大ディスク領域を指定する。次に例を示す。


        $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN 
        SYSMAN> DISKQUOTA CREATE /DEVICE=DKA300  ! if necessary 
        SYSMAN> DISKQUOTA ENABLE /DEVICE=DKA300  ! if necessary 
        SYSMAN> DISKQUOTA ADD IMGDMP$PROTECT /DEVICE=DKA300 /PERMQUOTA=10000 
        SYSMAN> DISKQUOTA REBUILD /DEVICE=DKA300  ! if necessary 
        SYSMAN> EXIT 
    

警告

IMGDMP$PROTECT は,どのユーザにも許可しないでください。これは,プロセス・ダンプの書き込み中に,必要に応じてエグゼクティブ・モードから SYS$SHARE:IMGDMP.EXE によって許可されたり,許可を取り消されたりします。これをユーザに永久に許可すると,ユーザは,保護されたディレクトリに書き込まれたすべてのプロセス・ダンプのすべてにアクセスできるようになります。

保護されたディレクトリにさらに ACL を追加して設定し,どのユーザにそのディレクトリ内のプロセス・ダンプへの読み込みや書き込みを許可するかを,さらに厳しく制御することもできます。

高い特権を使用してイメージがインストールされたり,保護されたサブシステムに所属する場合にプロセス・ダンプを取るには,ユーザは CMKRNL 特権を保持していなければならず,定義上は特権ユーザに限られます ( 第 16.17.1 項 を参照)。


第 17 章
性能の管理

本章では,性能管理の基本概念を紹介します。詳細は『Guide to OpenVMS Performance Management』を参照してください。

本章の内容

本章では,次の作業を説明します。

作業 参照箇所
作業負荷の把握 第 17.2 節
作業負荷管理方針の選択 第 17.3 節
作業負荷の配分 第 17.4 節
チューニングが必要な時期の予測 第 17.6 節
チューニングの評価 第 17.7 節
性能オプションの選択 第 17.8 節
インストール・ユーティリティによるイメージのインストール (INSTALL) 第 17.10 節
特定用途のためのメモリの予約 (Alpha のみ) 第 17.11 節

さらに,次の項目について説明します。

項目 参照箇所
性能管理 第 17.1 節
システム・チューニング 第 17.5 節
イメージと既知イメージ 第 17.10.1 項
既知のファイル・リスト 第 17.10.2 項
既知イメージの属性 第 17.10.3 項

17.1 性能管理について

性能管理とは,現在の作業負荷のハードウェアとソフトウェアの資源を最適化することです。この仕事には,いくつかの異なる,しかし互いに関連する作業が伴います。

17.2 作業負荷の把握

システムの正常時の作業負荷と動作を把握することは,システム管理者が性能を評価するときに最も重要なことの 1 つです。各システム管理者は,システムの作業負荷を十分に把握し,次の項目を確認してください。

OpenVMS オペレーティング・システムの管理が初めての方は,システム動作を監視する際に次のツールを利用するといいでしょう。

『Guide to OpenVMS Performance Management』 (VAX システムの場合),および『Guide to OpenVMS AXP Performance Management』 (Alpha システムの場合)には, Monitor ユーティリティなどの OpenVMS ツールを使ったシステムの性能の監視と評価の手順が詳しく説明されています。また,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』には, Monitor ユーティリティの使用に関する参照情報が記述されています。

時間の経過とともに,システムの典型的なページ・フォルト率,典型的な CPU 使用量,正常時のメモリ使用量,典型的な動作モードといった,性能を示す基準値が把握できます。また,特定の処理がシステムの性能にどのように影響するか,ユーザ数や時刻によって,システムの性能のどの部分にどのような影響が出るかが分かり始めます。

システムの監視を続けるうちに,許容できる値の範囲を理解できるようになり,同じツールでより効果的に異常を検出できるようになります。性能の管理を効果的に行うためには,システムを定期的に評価することが重要です。問題を避ける最良の方法は,それを予測することです。問題が大きくならないうちに,システムがどのように動作しているのかを把握するように努めてください。

Monitor ユーティリティと会計情報ユーティリティを使って重要なデータ項目を定期的に分析すれば,システムの動作をより理解できます。また,これらのデータの収集と観察を続けることによって,使用量の傾向が分かり,システムがいつその限界に達するかを予測することができます。

さらに,システム管理用のツールによってもシステム資源が使用されるということを知っておきましょう。計測する項目やデータ収集の頻度を決めるときには,そのことに十分注意してください。ツールを過度に使用すると,データの収集,保存,分析によって資源が使用されるために,システムの作業負荷と容量を正しく認識できなくなることがあります。データの収集と分析は,事前に計画をたてた上で,その計画に従って実行するようにしてください。

17.3 作業負荷管理方針の決定

システムの性能は作業負荷管理の効率に比例して上下します。作業負荷を管理するための方針は,各システムで独自に決定する必要があります。システムの設定値を調整する前に,次の点を必ず解決してください。

17.4 作業負荷の配分

システムの稼働時間全体に渡って,作業負荷をできるだけ均等に配分してください。ただし,サイト別の作業スケジュールをたてると,会話型ユーザを最適な時間に割り当てることがむずかしくなる場合もあります。次の方法を参考にしてください。

17.5 システム・チューニングについて

チューニングとは,さまざまなシステム設定値を変更することによって,特定の構成および作業負荷からシステム全体としての性能を向上させることです。メモリや装置を適切な時期に増設すれば,ほぼ確実にシステムの性能を大幅に向上させることができます。しかし,そのようなシステム構成の変更は,チューニングとは異なります。

ほとんどのシステムでは,作業負荷は常に変化しています。ある瞬間には最高の性能が得られても,次の瞬間に作業負荷が変化し,同じシステム・パラメータの設定でも,最高の性能が得られなくなることがあります。チューニングの最終目標は,システム全体としてベストな性能が平均的に得られる値を見つけることです。

性能に影響する問題の中には,次に示すように,システム設定値を調整しても解決できないものもあります。作業を始める前に,これらの問題が実際にないかどうか調べる必要があります。

チューニングを行う場合,動作を注意深く分析し,値を変更する項目の数をできるだけ少なくします。システム資源は,次の 2 つのタイプのパラメータの値を調整することにより制御します。

パラメータ・タイプ 説明
システム・
パラメータ
システム・パラメータに設定した値により,システム全体としてのシステム資源が制御される。 AUTOGEN コマンド・プロシージャは,システム構成のデータに従ってシステム・パラメータ値を自動的に設定する。さらに,稼働中のシステムからのフィードバックを記録し,システムの作業負荷に基づいて,パラメータ値を調整することができる。必要な調整を行うためのパラメータと新しい値の選択方法については,『Guide to OpenVMS Performance Management』 (VAX システムの場合),および『Guide to OpenVMS AXP Performance Management』 (Alpha システムの場合)を参照。

『Guide to OpenVMS Performance Management』では,必要な変更を行うためのパラメータと新しい値の選択方法について説明します。

AUTOGEN を使用して,システム・パラメータ値を変更する方法については, 第 15.5 節 を参照。

UAF 制限とクォータ 利用者登録ファイル (UAF) レコードの制限とクォータに設定されている値により,ユーザごとのシステム資源が制御される。これらの値を制御するには,AUTHORIZE ユーティリティを使用する。詳細は 第 7.11 節 を参照。

チューニングを始める前に『Guide to OpenVMS Performance Management』 (VAX システムの場合),または『Guide to OpenVMS AXP Performance Management』 (Alpha システムの場合) を参照し, OpenVMS がどのように資源を管理しているか理解してください。また,各システム値の性格も理解しておく必要があります。これらが十分理解されていないと,結果としてシステム全体の性能を大幅に低下させてしまうことがあります。

17.6 チューニングが必要な時期の予測

OpenVMS システムでチューニングが必要になることはほとんどありません。 AUTOGEN コマンド・プロシージャが,システム構成に依存するすべてのパラメータを実際の構成に適合するように自動的に設定するからです。 AUTOGEN についての詳細は, 第 15.4 節 を参照してください。

また,限定されますが,システムにはシステムの動作中にシステム自身を動的に調整する機能が備えられています。非ページング動的プール,ワーキング・セットのサイズ,空きページ・リスト,および変更ページ・リスト上のページの数といった特定の領域に関して,必要に応じて自動的に調整を行います。したがって,これらの値はシステムの動作中に動的に変化することがあります。

システムの性能が満足できない場合,その原因の多くはハードウェアの容量不足です。システムに対する要求がその能力を超えてしまうと,システム設定値を調整しても性能が大幅に向上することはありません。そのような調整は,既存の資源のトレード・オフすなわち一時しのぎにすぎないからです。

しかし,チューニングの必要がまったく無いわけではなく,特に次の条件を満たす場合にはチューニングが必要になることがあります。


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