OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド
A.7.6.2 ホット・プラグの規則
ホット・プラグの計画と実行にあたっては,以下の 3 つの規則に従ってください。
- ホット・プラグするデバイスと,同じセグメント上の他のすべてのデバイスは, SCSI-3 Parallel Interface (SPI) Standard (作業ドラフト X3T10/855D) の Annex A と A.4 の電気的要件に準拠しなければなりません。 SCSI-2 標準ではホット・プラグの要件が十分に定義されていないのでこのドラフト標準を参照してください。 SPI マニュアルでは,ホット・プラグを実行するセグメントのレシーバとターミネータの要件,および,プラグするデバイスのトランシーバ,TERMPWR,終端,電源/接地/シグナルのシーケンスの要件を指定しています。
- ホット・プラグはスタブ接続でのみ実行してください。
ホット・プラグしたデバイスでは,SCSI バスと 1 個でしか接続できず,デバイスで SCSI バスを終端することはできず,またデバイスの接続はスタブの許容最大長を超えることができないことを意味します。
図 A-3 を参照してください。有効なホット・プラグである SCSI バス・トポロジの例を 図 A-13 に示します。
図 A-13 SCSI バス・トポロジ
- 静電放電 (ESD) でデバイスが破壊されたり,SCSI バス上のアクティブ・シグナルに障害が発生しないよう配慮してください。SCSI バスの導線が暴露状態にあるときだけでなく,接続や切断プロセスの間は以上の点に注意してください。
- 危険や SCSI バス・シグナル通知の干渉を避けるため,接地オフセット電圧には注意してください。特にシングル・エンドの構成には注意が必要です。接地オフセット電圧の測定と防止手順については, 付録 A.7.8 項 を参照してください。
- ホット・プラグしたデバイスは,接続,切断のプロセス間は非アクティブとします。アクティブな状態でこれらのプロセスを実行すると,SCSI バスがハングすることがあります。OpenVMS は,最終的にはハング・バスを検出してリセットしますが,ハング状態になると一時的に OpenVMS Cluster の操作ができなくなります。
注意
同じ理由から,デバイスは非アクティブな状態で電源を切っておくほうが良いでしょう。
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デバイスを確実に非アクティブにする手順については, 付録 A.7.6.3 項 を参照してください。
- クォーラム・ディスクはホット・プラグできません。クォーラム・ディスクへの I/O を停止する機構がなく,また,交換ディスクに正しいクォーラム・ファイルが格納されないからです。
クォーラム・ディスクを取り外すには,クォーラム・ディスクとしてデバイスを取り外すように OpenVMS Cluster システムを再構成する必要があります。操作手順については,『OpenVMS Cluster システム』を参照してください。
クォーラム・ディスクの可用性を強化するには,HSZxx ミラー・セットをクォーラム・ディスクとして使用します。この場合,クォーラム・ディスクの機能を維持しながら,障害が発生したメンバを交換できます。
- ホット・プラグ操作でディスクを取り外し,または交換するときは,前もって論理的にマウントを解除します。これは,そのディスクを非アクティブにし,ファイル・システムの一貫性を保つためです。
- アクティブな SCSI バスに挿入するときは,DWZZx の電源を入れておき,アクティブな SCSI バスに接続されている間は電源を入れたままにしておきます。これは,DWZZx の電源のオン/オフ切り替え時に,接続されているセグメントの操作に悪影響が及ぶのを避けるためです。
- バス・アイソレータに接続されたセグメントは,そのバス・アイソレータ上の他のポートが不正終了したときには必ず非アクティブな状態にしておきます。不正終了したバス・アイソレータ・ポートから他の信号に不正シグナルが転送されるのを防ぐためです。
以上のことから,ホット・プラグ操作では,バス・アイソレータに接続されているセグメントのどれかを (潜在的な) アクティブ・セグメントとして指定し,他は非アクティブにしておきます。 図 A-14 を参照してください。セグメントを確実に非アクティブにするための手順については, 付録 A.7.6.3 項 を参照してください。
図 A-14 バス・アイソレータのホット・プラグ
バス・アイソレータには複数のスタブ接続があるので,それぞれにホット・プラグが可能ですが,ホット・プラグ操作では,同時に複数のセグメントをアクティブ・セグメントにすることはできません。
- 電気導線は,必ず相手のコネクタ・ピンと合うか確認してください。コネクタが外されているときだけでなく,切断や接続の最中もよく注意してください。
- デバイスを交換するときは,必ず同じタイプのデバイスと交換してください。 OpenVMS Cluster 上のシステムが SCSI ID を DK デバイスまたは MK デバイスとして構成すると,OpenVMS Cluster メンバが実行している限りその SCSI ID には,それぞれ DK デバイスか MK デバイスしか接続できなくなるためです。
同じデバイス・タイプの異なる実装は互換性があります (たとえば,RZ26L は RZ28B と交換できます)。ただし,新しいデバイスのマウントを開始するまで,システムはデバイス・タイプの変更を認識しません。また,ホスト方式のシャドウイングでは,シャドウ・セットのすべてのメンバが同じデバイス・タイプでなければなりません。
- システムがブートしたときに空の SCSI ID は,システムが実行中は空のままにします。この規則は,複数のプロセッサが SCSI バスにあって,MSCP サーバがそのどれかにログオンしているときに適用します (MSCP_LOAD システム・パラメータを 1 に設定しておくと,MSCP サーバがロードされます)。
この規則が必要なのは,SCSI バスのノードに,MSCP サービス提供によるパスではなく直接パスでディスクをアクセスさせるためです。新しいデバイスを (SYSMAN IO コマンドで) システム上に構成すると,システムは共用 SCSI バスの二次システムにそのデバイスをサービスします。二次システムは,MSCP サービスによるパスで新しいデバイスを自動的に構成します。この場合,MSCP サービスによるパスから直接 SCSI パスへのフェールオーバが実装されていないため,二次システムは新しいデバイスに直接 SCSI パスを使用できなくなります。
A.7.6.3 デバイスまたはセグメントを確実に非アクティブにするための手順
デバイスやセグメントを確実に非アクティブにするには,以下のように操作します。
- ディスクを確実に非アクティブにするには,以下のように操作します。
- OpenVMS Cluster システムの全メンバ上でディスクのマウントを解除します。
- マウントを解除したディスクに発生する可能性のある I/O のマウントが解除されていることを確認します。次に例を示します。
- ディスクをクォーラム・ディスクとして無効にします。
- ディスクを (DCL コマンド ALLOCATE で) 占有し,以後のマウントや初期化ができないようにします。
- 論理 SCSI バス上のすべての一時停止ホストによるコンソール・ポーリングを無効にします (コンソール変数 SCSI_POLL を OFF に設定し,INIT コマンドを入力します)。
- 電源入力や初期化自己診断テスト,ブート,SCSI バスの構成を行っているホストが論理 SCSI バス上にないか確認します (SYSMAN IO コマンド使用)。
- HSZxx コントローラを確実に非アクティブにするには,以下のように操作します。
- OpenVMS Cluster システムの全メンバ上のすべての HSZxx 仮想ディスクについて,マウントを解除します。
- 『HS Family of Array Controller User's Guide』の手順に従ってコントローラをシャットダウンします。
- HSZxx の電源を切ります (オプション)。
- ホスト・アダプタを確実に非アクティブにするには,以下のように操作します。
- システムを一時停止します。
- システムの電源を切るか,コンソール変数 SCSI_POLL を OFF に設定し,停止したシステムに INIT コマンドを入力します。これでそのシステムがポーリングしたり,ポーリングに応答するのを防ぐことができます。
- セグメントを確実に非アクティブにするには,セグメント上のすべてのデバイスについての場合と同じ操作をします。
A.7.6.4 StorageWorks SBB ディスクのホット・プラグの手順
SBB (ストレージ構築ブロック) ディスクをアクティブな SCSI バスから取り外すには,以下のように操作します。
- 接地スタッドに取り付けられている ESD 接地ストラップまたはシステムのどれかのキャビネットの無塗装金属面を使用します。操作手順については,システム・インストール手順を参照してください。
- 付録 A.7.6.3 項 の手順に従って,ディスクを非アクティブにします。
- SBB 横のクリップを押し込み,StorageWorks シェルフからディスクを取り出します。
SBB ディスクをアクティブな SCSI バスに接続するには,以下のように操作します。
- 接地スタッドに取り付けられている ESD 接地ストラップまたはシステムのどれかのキャビネットの無塗装金属面を使用します。操作手順については,システム・インストール手順を参照してください。
- そのデバイスに対応する SCSI ID が (ジャンパか,StorageWorks シェルフのスロットで設定) 以下の要件を満たしているか確認します。
- SCSI ID が論理 SCSI バスに対して一意である。
- SCSI ID は DK デバイスとして以下のすべてにおいて構成済みである。
- ID を構成済みの OpenVMS Cluster システムのすべてのメンバ。
- 同じSCSI バス上で MSCP サーバを実行中のすべての OpenVMS プロセッサ。
- SBB を StorageWorks シェルフに挿入します。
- 必要に応じて SYSMAN IO コマンドでディスクを OpenVMS Cluster メンバに構成します。
A.7.6.5 HSZxx のホット・プラグ手順
HSZxx コントローラをアクティブな SCSI バスから取り外すには,以下のように操作します。
- 接地スタッドに取り付けられている ESD 接地ストラップまたはシステムのどれかのキャビネットの無塗装金属面を使用します。操作手順については,システム・インストール手順を参照してください。
- 付録 A.7.6.3 項 の手順に従って, HSZxx を非アクティブにします。
- HSZxx 電源を切ることができますが,配電系統には接続したままにして接地を維持します。
- ディファレンシャル・トライコネクタのネジをゆるめて, HSZxx から取り外します。
- 取り外しの際に,裸のコネクタ・ピンが ESD や他の電気導体に触れないように注意してください。
HSZxx コントローラをアクティブな SCSI バスに接続するには,以下のように操作します。
- 接地スタッドに取り付けられている ESD 接地ストラップまたはシステムのどれかのキャビネットの無塗装金属面を使用します。操作手順については,システム・インストール手順を参照してください。また,HSZ
x と,それに取り付けられているすべての構成要素の間の接地オフセット電圧が 付録 A.7.8 項 の指定範囲内にあるか確認してください。
- 取り外しの際に,裸のコネクタ・ピンが ESD や他の電気導体に触れないように注意してください。
- HSZxx の電源を入れ,HSZxx に付属しているディスク装置が以下の要件を満たしているか確認します。
- ディスク装置が論理 SCSI バス上で一意である。
- ディスク装置は,以下のすべてにおいて必ず DK デバイスとして構成する。
- ID を構成済みの OpenVMS Cluster システムのすべてのメンバ。
- 同じSCSI バス上で MSCP サーバを実行中のすべての OpenVMS プロセッサ。
- HSZxx アクティブ・セグメントと正しくスタブ接続できるか確認してください。(途中にケーブルを挟まず,トライコネクタを HSZxx コントローラ・モジュールに直結すれば,接続は制約に違反していません。)
- 位置がずれないよう慎重にディファレンシャル・トライコネクタを HSZxx に接続します。ネジを締めます。
- 必要に応じて,SYSMAN IO コマンドで HSZxx 仮想ディスクを OpenVMS Cluster メンバに構成します。
A.7.6.6 ホスト・アダプタのホット・プラグ手順
ホスト・アダプタをアクティブな SCSI バスから取り外すには,以下のように操作します。
- 接地スタッドに取り付けられている ESD 接地ストラップまたはシステムのどれかのキャビネットの無塗装金属面を使用します。操作手順については,システム・インストール手順を参照してください。
- これから切り離す接続部がスタブ接続か確認します。スタブ接続でない場合は,ホット・プラグ手順は実行しないでください。
- 付録 A.7.6.3 項 の手順に従って,ホスト・アダプタを非アクティブにします。
- システムの電源は切ってもかまいませんが,接地を保つため配電系統にはプラグを差し込んだままにしておきます。
- ホスト・アダプタのシングル・エンド・コネクタから"Y" ケーブルを外します。
- 取り外しの際に,裸のコネクタ・ピンが ESD や他の電気導体に触れないように注意してください。
- ホストの電源を入れたままホストの内部バスからアダプタをアンプラグ
しないでください。
これで,アダプタは SCSI バスから切り離されました。アダプタをホストから取り外すには,まずホストの電源を切り,ホストの内部バスからアダプタを取り外します。
ホスト・アダプタをアクティブな SCSI バスにプラグ・インするには,以下のように操作します。
- 接地スタッドに取り付けられている ESD 接地ストラップまたはシステムのどれかのキャビネットの無塗装金属面を使用します。操作手順については,システム・インストール手順を参照してください。また,ホストと,それに取り付けられているすべての構成要素の間の接地オフセット電圧が
付録 A.7.8 項 の指定範囲内にあるか確認してください。
- 取り外しの際に,裸のコネクタ・ピンが ESD や他の電気導体に触れないように注意してください。
- ホスト・アダプタをアクティブ・セグメントと合法的にスタブ接続できるか確認してください (スタブ長は許容範囲内とし,ホスト・アダプタがアクティブ・セグメントの終端にならないこと)。
- アダプタをホストにプラグ・インします (プラグ・インされていない場合)。
- システムを配電系統にプラグ・インし,接地が正しく行われているか確認します。必要に応じて電源を入れます。
- "Y" ケーブルをホスト・アダプタにまっすぐ接続します。
A.7.6.7 DWZZx コントローラのホット・プラグ手順
DWZZx をアクティブな SCSI バスから切り離すには,以下のように操作します。
- 接地スタッドに取り付けられている ESD 接地ストラップまたはシステムのどれかのキャビネットの無塗装金属面を使用します。操作手順については,システム・インストール手順を参照してください。
- これから切り離す接続部がスタブ接続か確認します。スタブ接続でない場合,ホット・プラグ手順は実行しないでください。
- DWZZxx の電源は切らないでください。付属 SCSI バス・セグメントの操作に支障が生ずることがあるからです。
- 切断後,どの SCSI バス・セグメントをアクティブにしておくかを決めます。 付録 A.7.6.3 項 の手順に従って,他のセグメントを非アクティブにします。
アクティブ・セグメントから DWZZx を取り外すとき,非アクティブ・セグメントからも DWZZx を取り外すまで,あるいは,アクティブ・セグメントから切断された DWZZx ポートに適正な終端が復元されるまで,非アクティブ・セグメントは非アクティブのままにしておきます。
- 次の手順は,DWZZx のタイプとホット・プラグするセグメントによって,以下のように異なります。
DWZZx タイプ |
要件 |
操作 |
SBB
1
|
シングル・エンド・セグメントをアクティブのままにする。
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SBB 横のクリップを押し込み,DWZZ
x を StorageWorks シェルフから取り出します。
|
SBB
1
|
ディファレンシャル・セグメントはアクティブのままとする。
|
ネジをゆるめて,DWZZ
x からディファレンシャル・トライコネクタを取り外します。
|
テーブル・トップ
|
シングル・エンド・セグメントはアクティブのままにする。
|
DWZZ
xのシングル・エンド・コネクタから "Y" ケーブルを外します。
|
テーブル・トップ
|
ディファレンシャル・セグメントはアクティブのままとする。
|
ネジをゆるめて,DWZZ
x からディファレンシャル・トライコネクタを取り外します。
|
1StorageWorks で SBB とは,ストレージ構築ブロックの略称です。
- 取り外しの際に,裸のコネクタ・ピンが ESD や他の電気導体に触れないように注意してください。
DWZZx をアクティブな SCSI バスにプラグ・インするには,以下のように操作します。
- 接地スタッドに取り付けられている ESD 接地ストラップまたはシステムのどれかのキャビネットの無塗装金属面を使用します。操作手順については,システム・インストール手順を参照してください。また,DWZZx と,それに取り付けられているすべての構成要素の間の接地オフセット電圧が 付録 A.7.8 項 の指定範囲内にあるか確認してください。
- 取り外しの際に,裸のコネクタ・ピンが ESD や他の電気導体に触れないように注意してください。
- DWZZx をアクティブ・セグメントと正しくスタブ接続できるか確認してください (スタブ長は許容範囲内とし,DWZZx がアクティブ・セグメントの終端にならないこと)。
- DWZZx の電源は入れたままにしておきます。追加する SCSI セグメントを接続して終端を接続します。このセグメント上のすべてのデバイスは非アクティブにしておきます。
- 次の手順は,DWZZx のタイプと,ホット・プラグするセグメントによって,以下のように異なります。
DWZZx タイプ |
要件 |
操作 |
SBB
1
|
シングル・エンド・セグメントをホット・プラグする。
|
DWZZ
x を StorageWorks シェルフに挿入します。
|
SBB
1
|
ディファレンシャル・セグメントをホット・プラグする。
|
ずれないように慎重にディファレンシャル・トライコネクタを DWZZ
x に接続します。ネジを締めます。
|
テーブル・トップ
|
シングル・エンド・セグメントをホット・プラグする。
|
ずれないように慎重に "Y" ケーブルを DWZZ
x に接続します。
|
テーブル・トップ
|
ディファレンシャル・セグメントをホット・プラグする。
|
ずれないように慎重にディファレンシャル・トライコネクタを DWZZ
x に接続します。ネジを締めます。
|
1StorageWorks で SBB とは,ストレージ構築ブロックの略称です。
- 新しい取り付けたセグメントにストレージ・デバイスがある場合,SYSMAN IO コマンドで必要に応じて OpenVMS Cluster メンバ上に構成します。