Compaq OpenVMS
システム管理者マニュアル


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4.5 通常のスタートアップ・コマンド・プロシージャを使用しないブート

第 4.1.4 項 に,汎用スタートアップ・コマンド・プロシージャ SYS$SYSTEM:STARTUP.COM が説明されています。省略時の設定では,ブートされたシステムは自動的に STARTUP.COM を実行して,スタートアップ・イベントを行います。しかし,ある特殊な状況では,変更した汎用スタートアップ・コマンド・プロシージャをそのまま使用しないでシステムをブートすることがあります。具体的には,次のような方法があります。

ブート方法 参照箇所
代替汎用スタートアップ・プロシージャによるブート 第 4.5.1 項
代替省略時スタートアップ・コマンド・プロシージャによるブート 第 4.5.2 項
簡易スタートアップによるブート 第 4.5.3 項
実行中のスタートアップ・プロシージャ・コマンドの表示 第 4.5.4 項

重要

STARTUP.COM は変更しないでください。システムを正しく立ち上げるためには,このプロシージャが必要です。サイト別スタートアップ・プロシージャを変更して,サイト別に操作を行う方法については, 第 5.2 節 を参照してください。

4.5.1 代替汎用スタートアップ・プロシージャによるブート

省略時のシステム・スタートアップ・プロシージャは SYS$SYSTEM:STARTUP.COM です。このプロシージャを変更せずにそのまま使用することをおすすめします。しかし,サイトによっては,システムに特殊なスタートアップ・コマンドを実行させる必要がある場合もあります。会話型ブートを使用すれば,一時的に代替スタートアップ・プロシージャでシステムをブートすることができます。

また,サイト別スタートアップ・コマンド・プロシージャにコマンドを追加して,サイト別にスタートアップ・イベントを実行することもできます。詳細は 第 5.2 節 を参照してください。

作業方法

  1. 会話型ブートの手順については,次のマニュアルを参照。

  2. 次のコマンドを入力して,現在のスタートアップ・ファイルを表示する。


    SYSBOOT> SHOW/STARTUP
    

  3. SET/STARTUP コマンドを入力して,代替汎用スタートアップ・コマンド・プロシージャを指定する。


    SET/STARTUP   ファイル指定 
    


    ファイル指定には,スタートアップ・ファイルの完全ファイル指定を指定する。


    SYSBOOT> SET/STARTUP SYS$SYSTEM:XSTARTUP.COM
    


    ファイル指定で指定されたスタートアップ・ファイルが存在しない場合,次のメッセージが表示される。


    Error opening primary input file SYS$INPUT 
    File not found 
    


    入力したファイル名が正しいか確認すること。

  4. 次のコマンドを入力して,変更に間違いがないか確認する。


    SYSBOOT> SHOW/STARTUP
    

  5. CONTINUE コマンドを入力して,ブートを継続する。


    SYSBOOT> CONTINUE
    

代替汎用スタートアップ・プロシージャを省略時のスタートアップ・プロシージャにする方法については, 第 4.5.2 項 を参照してください。



SYSBOOT> SHOW/STARTUP
Startup command file = SYS$SYSTEM:STARTUP.COM
SYSBOOT> SET/STARTUP SYS$SYSTEM:XSTARTUP.COM
SYSBOOT> SHOW/STARTUP
Startup command file = SYS$SYSTEM:XSTARTUP.COM
SYSBOOT> CONTINUE

4.5.2 代替省略時スタートアップ・コマンド・プロシージャによるブート

省略時のシステム・スタートアップ・プロシージャは SYS$SYSTEM:STARTUP.COM です。しかし,サイトによっては,システムに特殊なスタートアップ・コマンドを実行させる必要がある場合があります。頻繁に SYS$SYSTEM:STARTUP.COM 以外のスタートアップ・コマンド・プロシージャを使う場合は,そのプロシージャを省略時の設定で使用するよう指定することができます。

作業方法

  1. SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT ファイルを編集する。 AUTOGEN はこのファイルを使用して,パラメータを変更する。

  2. 代替プロシージャ名を STARTUP シンボルに割り当てる行を
    MODPARAMS.DAT に追加する。


    STARTUP = "SYS$SYSTEM:MY_STARTUP.COM" 
    

  3. 準備ができたら AUTOGEN を起動する。システムを再ブートすると,ステップ 2 で指定したプロシージャが省略時のスタートアップ・コマンド・プロシージャになる。



$ EDIT SYS$SYSTEM:MODPARAMS.DAT
   .
   .
   .
[Insert the following line in MODPARAMS.DAT:] 
STARTUP = "SYS$SYSTEM:MY_STARTUP.COM"
   .
   .
   .
$ @SYS$SYSTEM:AUTOGEN SAVPARAMS REBOOT

4.5.3 簡易スタートアップによるブート

スタートアップ・イベントの一部を省いて,システムをブートしなければならない場合もあります。たとえば,スタートアップ・イベントに問題があってログインできない場合,スタートアップを実行せずにシステムをブートすれば,ログインして問題を解決できます。

簡易スタートアップでブートする場合は,システムを実行するのに必須な要素しか起動しません。これらのタスクは,オペレーティング・システムのリリースによって変わることがあります。

作業方法

  1. 会話型ブートの手順については,次のマニュアルを参照。

  2. SYSBOOT> プロンプトに対して,次のコマンドを入力する。


    SYSBOOT> SET STARTUP_P1 "MIN"
    

  3. CONTINUE コマンドを入力して,ブートを継続。


    SYSBOOT> CONTINUE
    

  4. システムのブートが終了すれば,ログインする。そして,次のコマンドで SYSMAN を起動して,ステップ 2 で設定した STARTUP_P1 パラメータをクリアする。


    $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
    SYSMAN> PARAMETERS USE CURRENT
    SYSMAN> PARAMETERS SET STARTUP_P1 ""
    SYSMAN> PARAMETERS WRITE CURRENT
    



[perform a conversational boot] 
SYSBOOT> SET STARTUP_P1 "MIN"
SYSBOOT> CONTINUE
[system completes booting] 
Username: [Return]
Password: [Return]
 
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> PARAMETERS USE CURRENT
SYSMAN> PARAMETERS SET STARTUP_P1 ""
SYSMAN> PARAMETERS WRITE CURRENT

重要

VAXCLUSTER システム・パラメータの値を 0 に設定して簡易スタートアップによるブートを行う場合は,アクセス可能な HSC 装置または DSSI 装置だけがブート装置となります。またその際,ブート装置が HSC コントローラまたは DSSI コントローラで制御されている必要があります。

HSC 装置と DSSI 装置をアクセス可能にするには,次のいずれかの操作を行います。

  • 次のコマンドを使用する。


    $ RUN SYS$SYSTEM:CONFIGURE/DETACH
    


    この方法を使用すると,システムを再ブートせずに装置をアクセス可能にできる。

  • STARTUP_P1 システム・パラメータを "" に設定してシステムを再ブートする。

  • VAXCLUSTER システム・パラメータを 1 または 2 に設定してシステムを再ブートする。

4.5.4 スタートアップ・プロシージャのコマンドを表示しながらのブート

スタートアップ・コマンド・プロシージャをテストする場合,あるいはスタートアップ中の問題の原因を究明する場合,スタートアップ・コマンドを実行しながら,それらのコマンドを表示することができます。

作業方法

  1. 会話型ブートの手順については,次のマニュアルを参照。

  2. SYSBOOT> プロンプトに対して,次のコマンドを入力する。


    SYSBOOT> SET STARTUP_P2 "YES"
    

  3. CONTINUE コマンドを入力して,ブートを継続する。


    SYSBOOT> CONTINUE
    

  4. システムのブートが終了すれば,ログインする。さらに,次のコマンドで SYSMAN を起動して,ステップ 2 で設定した STARTUP_P2 パラメータをクリアする。


    $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
    SYSMAN> PARAMETERS USE CURRENT
    SYSMAN> PARAMETERS SET STARTUP_P2 ""
    SYSMAN> PARAMETERS WRITE CURRENT
    



 
[perform a conversational boot] 
SYSBOOT> SET STARTUP_P2 "YES"
SYSBOOT> CONTINUE
[system completes booting] 
Username: [Return]
Password: [Return]
 
$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> PARAMETERS USE CURRENT
SYSMAN> PARAMETERS SET STARTUP_P2 ""
SYSMAN> PARAMETERS WRITE CURRENT

4.5.5 SYSMAN によるスタートアップ・プロシージャ・コマンドの表示

会話型ブートを実行してスタートアップ・プロシージャを表示させるのに加えて,SYSMAN の STARTUP SET OPTIONS コマンドを使用してもスタートアップ状態を表示できます。 SYSMAN を利用する利点は,複数のノードを同時に検証しログをとることができることです。

SYSMAN スタートアップ・ログは STARTUP_P2 を次の項目を指定するように再定義します。

STARTUP SET OPTIONS コマンドには, 表 4-2 に示す 4 つのオプションがあります。

表 4-2 スタートアップ・ログ・オプション
オプション 機能
/VERIFY=FULL コンポーネント・スタートアップ・プロシージャと STARTUP.COM によって実行されたすべての DCL 行を表示する。
/VERIFY=PARTIAL コンポーネント・スタートアップ・プロシージャによって実行されたすべての DCL 行を表示する。ただし,STARTUP.COM によって実行された DCL 行は表示しない。
/OUTPUT=FILE
/OUTPUT=CONSOLE
SYS$SPECIFIC:[SYSEXE]STARTUP.LOG を作成する。スタートアップ・プロシージャによって生成されたすべての出力を含む。または,この出力をコンソールに表示できる。
/CHECKPOINTING 各スタートアップ・フェーズとコンポーネント・ファイルの時間と状態を記述した情報メッセージを表示する。

作業方法

  1. $ プロンプトに対し,次のコマンドを入力する。


    $ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
    

  2. SYSMAN> プロンプトに対し,次のコマンドを入力する。


    SYSMAN> STARTUP SET OPTIONS/[ 修飾子 ]
    


    修飾子は, 表 4-2 に挙げたオプションを使用できる。これらのオプションは,次回システムをブートしたときも有効である。



$ RUN SYS$SYSTEM:SYSMAN
SYSMAN> STARTUP SET OPTIONS/VERIFY=FULL/OUTPUT=FILE/CHECKPOINTING

この例は,次の条件でスタートアップ・ログを要求しています。

完全検証
STARTUP.LOG ファイルへの出力
チェックポイント

現在のスタートアップ・オプションを確認するには,次のコマンドを入力します。


SYSMAN> STARTUP SHOW OPTIONS

詳細は『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。

4.6 ブート中の問題の解決

BOOT コマンドを入力したときにハードウェアまたはソフトウェアが誤動作すると,オペレーティング・システムがブートできないことがあります。

ハードウェア上の問題

ディスク・ドライブやコンソール・メディアの読み取りエラー,あるいはマシン・チェック時のエラーは,ほとんどの場合,ハードウェアの誤動作が原因です。ハードウェア上の問題が発生すると,通常,システム・コンソール・ターミナルには,先頭に疑問符 (?) の付いたエラー・メッセージが表示されます。次のいずれかまたは両方を実行してください。

ソフトウェア上の問題

オペレーティング・システムがメモリにロードされたものの, STARTUP.COM コマンド・プロシージャが動作しない場合は,ほとんどの場合,ソフトウェア上の誤動作が原因です。特に,次のメッセージが表示されない場合は,その可能性が高くなります。


The OpenVMS system is now executing the system startup procedure. 

この問題に対しては,次のいずれかまたは両方を実行してください。

4.7 システム・ディスクへのブート・ブロックの書き込み

システム・ディスクのブロック 0 はブート・ブロック です。このブロックには,システムをブートするときに使用される 1 次ブートストラップ・イメージの大きさと位置が記憶されています。

VAX システムでは,1 次ブートストラップ・イメージは VMB.EXE です。

Alpha システムでは,1 次ブートストラップ・イメージは APB.EXE です。

いくつかのプロセッサは,このブート・ブロックを読み取り,1 次ブートストラップ・イメージの位置を知ります。 ブート・ブロックを読み取るプロセッサを次に示します。

ユーザのシステムがブート・ブロックを読み取るかどうかについては,次のマニュアルを参照してください。

システム・ディスクのブート・ブロックが不正と思われる場合は,WRITEBOOT ユーティリティを使って新しいブート・ブロックを書き込むことができます。ブート・ブロックが不正になる原因として考えられるのは,次のような場合です。

WRITEBOOT ユーティリティを使用するためには,LOG_IO 特権が必要です。

作業方法

VAX システムの場合,次の手順に従って WRITEBOOT ユーティリティを使用します。

  1. 次のコマンドを入力して,WRITEBOOT ユーティリティを起動する。


    $ RUN SYS$SYSTEM:WRITEBOOT
    

  2. このプロシージャは次のメッセージを表示する。


    Target system device (and boot file if not VMB.EXE):?
    

    VAX システムでは,VMB.EXE は省略時のブートストラップ・イメージである。次のフォーマットで応答を入力する。


    device:[VMS$COMMON.SYSEXE]VMB.EXE; 
    


    ユーザのシステムのアップグレードとインストールのマニュアルに記載されている装置名フォーマットを使用すること。省略時以外のブートストラップ・イメージでブートする場合,装置とディレクトリを含む,イメージの完全ファイル指定を指定しなければならない。

  3. 次のメッセージが表示される。


    Enter VBN of boot file code (default is one): 
    


    通常,ブート・コードは,ブートストラップ・イメージの仮想ブロック番号 (VBN) 1 に位置する。Return を押して,そのまま省略時の値の 1 を選択する。

  4. 次のメッセージが表示される。


    Enter load address of primary bootstrap in HEX (default is 200): 
    


    ロード・アドレス は,システムがブートストラップ・イメージをロードするメモリ上の位置 (16 進法)。通常,ブートストラップ・イメージはアドレス 200 にコピーする。 Return を押して,そのまま省略時の値の 200 を使用する。

  5. 指定した情報がシステム・ディスクのブート・ブロック (ブロック 0) に書き込まれる。


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