Compaq OpenVMS
システム管理者マニュアル


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11.15.7.2 コマンド・プロシージャによる夜間追加型バックアップ

コマンド・プロシージャを使用して,毎晩ディスクの追加型バックアップを行うことができます。次のいずれかの条件を満たす場合は,夜間の追加型バックアップと毎週のイメージ・バックアップを行う方が好都合です。

金曜の夜以外の毎晩 11:00 に,追加型バックアップを行いたいと仮定します。金曜の夜は,イメージ・バックアップを行うものとします。この後の手順で紹介するコマンド・プロシージャは,金曜の夜を除く毎晩,3 つのディスクの追加型バックアップを行い,自動的に自身を再キュー登録します。

作業方法

夜間の追加型バックアップ用コマンド・プロシージャを使用する手順は次のとおりです。

  1. SYS$MANAGER ディレクトリから次の内容のコマンド・プロシージャを作成し,INCREMENTAL_BACKUP.COM という名前を付ける。


    $! 
    $! Resubmit this procedure -- 
    $ SUBMIT/AFTER="TOMORROW+23:0" SYS$MANAGER:INCREMENTAL_BACKUP 
    $! 
    $ TODAY = f$cvtime("today",,"weekday") 
    $ IF TODAY .EQS. "Friday" THEN GOTO DONE 
    $! 
    $  ON ERROR THEN GOTO FAILURE 
    $  SET PROC/PRIV=(OPER,BYPASS) 
    $! 
    $  REPLY/ALL - 
        "Incremental Backup About to Begin.  Open Files Will Not Be Saved" 
    $! 
    $  BACKUP/RECORD/SINCE=BACKUP  DRA0:[000000...]  - 
       MIA0:INCREMENT1.SAV /LABEL=INC1 
    $  BACKUP/RECORD/SINCE=BACKUP  DRA1:[000000...]  - 
       MIA1:INCREMENT2.SAV /LABEL=INC2 
    $  BACKUP/RECORD/SINCE=BACKUP  DRA2:[000000...]  - 
       MIA2:INCREMENT3.SAV /LABEL=INC3 
    $  DISMOUNT MIA0: 
    $  DISMOUNT MIA1: 
    $  DISMOUNT MIA2: 
    $  EXIT 
    $! 
    $FAILURE: 
    $  WRITE SYS$OUTPUT "---> Backup failed" 
    $  WRITE SYS$OUTPUT "" 
    $  DISMOUNT MIA0: 
    $  DISMOUNT MIA1: 
    $  DISMOUNT MIA2: 
    $  EXIT 
    

  2. コマンド・プロシージャを編集し,実行環境に合せて以下を変更する。


    この例では,金曜日には追加型バックアップを行わない。金曜日は,イメージ・バックアップ (完全バックアップ) を行う。

  3. イメージ・バックアップをすでに行っていることを確認する。イメージ・バックアップでは,必ず,/BACKUP コマンド行に /IMAGE 修飾子とともに /RECORD 修飾子を使用すること。

  4. 次のコマンド行を入力して,コマンド・プロシージャをキュー登録する。プロシージャに SYS$MANAGER:INCREMENTAL_BACKUP.COM 以外の名前を付けた場合は,プロシージャ名をその名前に置き換えること。


    $ SUBMIT/AFTER=23  SYS$MANAGER:INCREMENTAL_BACKUP
    

  5. 必ず,指定した装置にテープを物理的にセットしておくこと。追加型バックアップが終了したら,バックアップ・テープを安全な場所に保管する。別のイメージ・バックアップを取るのでないかぎり,保管したテープは使用してはならない。

11.15.7.3 会話型コマンド・プロシージャによるバックアップ

ここでは,会話形式で磁気テープにディスクをバックアップするためのコマンド・プロシージャを紹介します。

作業方法

会話型コマンド・プロシージャを使用する手順は次のとおりです。

  1. 自分のディレクトリに次の内容のコマンド・プロシージャを作成する。


    $ ! Command procedure DAILYBACK.COM 
    $ ! 
    $ ! Execute this command procedure interactively 
    $ !  by entering the command @[directory]DAILYBACK 
    $ !  at the DCL prompt. 
    $ ! 
    $ ! The BACKUP command in this procedure contains the 
    $ !  output save-set qualifier /REWIND.  Therefore, this 
    $ !  command procedure always initializes the output tape. 
    $ ! 
    $ ON ERROR THEN GOTO FAILURE 
    $ INQUIRE DRIVE "Enter the drive name (without a colon)" 
    $ ALLOCATE 'DRIVE' 
    $ INQUIRE SAVESET_SPEC "Enter the save-set specifier" 
    $ INQUIRE LBL "Enter the tape label" 
    $ INQUIRE EXP "Enter the tape expiration date" 
    $ BACKUP/NOASSIST/RECORD/IGNORE=INTERLOCK/SINCE=BACKUP - 
      [...] 'DRIVE':'SAVESET_SPEC'/REWIND/LABEL='LBL'/TAPE_EXPIRATION='EXP' 
    $ DISMOUNT 'DRIVE' 
    $ EXIT 
    $! 
    $FAILURE: 
    $  WRITE SYS$OUTPUT "---> Backup failed" 
    $  WRITE SYS$OUTPUT "" 
    $  DISMOUNT 'DRIVE' 
    $  EXIT 
    

  2. プロシージャを実行して,装置,セーブ・セット,テープ・ラベル,およびテープ満了情報を入力する。

  3. 指定されたテープ装置が割り当てられると,BACKUP テープのボリューム・ヘッダ・レコードを検索してボリューム・ラベルを探し出す。そして,ボリューム・ヘッダ・レコードにボリューム・ラベルがない場合は,/LABEL 修飾子に指定されたラベルと満了日をヘッダ・レコードに書き込んで,テープを初期化する。ボリューム・ヘッダ・レコードにボリューム・ラベルがある場合は,そのラベルを指定されたラベルと比較し,テープが満了しているか調べる。
    テープが満了していない,またはラベルが一致しない場合,コマンド・プロシージャは終了する。テープが満了し,かつラベルが一致する場合は,指定された満了日をヘッダ・レコードに書き込んで,テープを初期化する。テープの初期化を終えると,BACKUP が,現在の省略時のディレクトリ・ツリー内にあって,前回の保存以降に作成または変更されたすべてのファイルを指定された名前のセーブ・セットに保存する。

11.15.8 ボリューム・シャドウ・セットのバックアップ

ボリューム・シャドウイング機能は,同一データのコピーを複数のディスク・ボリュームに作成して管理します。システムでボリューム・シャドウイング機能を使用している場合は,個々のディスク・ボリューム (シャドウ・セット・メンバ) を統合し,1 つのシャドウ・セットを形成することができます。このときボリューム・シャドウイング機能は,シャドウ・セットの各メンバにデータのコピーを作成します。シャドウ・セットに含める各ディスクについて,ディスクごとにライセンスが取得できます。このオプションは,少数のディスクしかシャドウイングしないようなクラスタで効果的です。ただし,シャドウイングを行うディスクが多い大規模なシステムでは,従来の容量ごと (CPUごと) のライセンスの方が適切な場合があります。

シャドウ・セットに含めることができるディスク数の制限を 表 11-7 に示します。

表 11-7 サポートされるシャドウ・セットの数
シャドウ・セットのタイプ サポートされるセット
単一メンバ セット数無限
複数メンバ 2メンバ・セットおよび 3メンバ・セット,または両方でディスク総数 400

これらの制限はクラスタごとに適用されます。たとえば,合計400 のディスクは,各クラスタにおいて, 2メンバ・シャドウ・セット200または, 3メンバ・シャドウ・セット 133に構成することができます。1 つのクラスタに単一メンバ,2メンバ,3メンバのシャドウ・セットが混在している場合には,最高400 のディスクを2メンバと3メンバのシャドウ・セットに入れることができます。

RAID レベル 1 (シャドウイング) のファームウェアのインプリメンテーションでは,単一の SWXCR-xx コントローラにローカルで接続されている SCSI ディスクを使用して,シャドウ・セットを作成することができます。 StorageWorks RAID Array 210 Subsystem (SWXCR-EA または SWXCR-EB EISA Backplane RAID のコントローラ) と StorageWorks PCI Backplane RAID コントローラ (SWXCR-PA または SWXCR-PB) は,独自のファームウェアで RAID レベル 0,1,5 を実現します。

このようなコントローラに接続されている SCSI ディスクも,OpenVMSでホスト・ベースのボリューム・シャドウイングで作成されたシャドウ・セットに入れることができます。たとえば,ホスト・ベースのボリューム・シャドウイングでは,クラスタ内に配置されている別個の SWXCR-xx RAID コントローラに接続されている 2 つの同様のディスクを含む RAID1 シャドウ・セットを作成することができます。 OpenVMS でボリューム・シャドウイングを行うシステムに接続すれば, SCSI ディスクをシャドウ・セットとして構成できます。

電源が落とされているか,ポーリングに応答しない状態の直接接続されている SCSI 装置の場合,装置をシャドウ・セットから取り外すには, 1 分近く時間がかかることがあります。その他の状況では,ほぼ SHADOW_MBR_TMO パラメータで指定された秒数だけかかります。

ボリューム・シャドウイングは,装置上でジオメトリと最大論理ブロック数 (LBN) をチェックします。これによって,RZ28 や RZ28B のような装置が,同じシャドウ・セット中で動作できます。装置 ID が異なっていても,同様のコントローラ (たとえば 2 台の HSJ コントローラ) 上で構成されていれば,ジオメトリや最大 LBN は一致します。

個々のユーザは,1 つの仮想ユニットとして作成されたシャドウ・セットにアクセスすることができます。たとえば,DUA1:,DUA2:,DUA3: という 3 つのディスクをまとめて,DSA1 という 1 つの仮想ユニットを作成したと仮定します。この場合,ユーザはシャドウ・セットのメンバに直接アクセスすることはできません。メンバを操作する場合は,仮想ユニット (DSA1:) にアクセスします。

ボリューム・シャドウイング機能はシャドウ・セットの各ボリュームにデータの複製を作成するため,シャドウ・セットのバックアップには特別な注意が必要です。ここでは,シャドウ・セットをバックアップする 1 つの方法として,BACKUP ユーティリティを使用する方法を簡単に紹介します。

重要

シャドウ・セットのバックアップを行おうとして,シャドウ・セット・メンバを個別にディスマウントしたり,アクティブなシャドウ・セット・メンバをバックアップしたりしないでください。シャドウ・セットは全体としてディスマウントし,メンバを 1 つ除いてシャドウ・セットを再作成します。この制約に従わないと,作成したバックアップ・コピーに矛盾するデータが含まれることがあります。

作業方法

ここでは,BACKUP を使用してシャドウ・セットをバックアップする手順の要約を示します。詳しい手順については,『Volume Shadowing for OpenVMS』を参照してください。

注意

紹介する手順を使用して追加型バックアップをしないでください。バックアップしたディスク・ボリュームを既存のシャドウ・セットに戻すと,バックアップ日付が書き換えられます。

  1. すべてのシャドウ・セット・メンバが完全なメンバであり,結合状態やコピー状態になっていないことを確認する。

  2. シャドウ・セット全体をディスマウントする。

  3. メンバを 1 つ除いてシャドウ・セットを再作成する。除外したメンバの日付が,他のすべてのシャドウ・セット・メンバの日付に反映される。

  4. 前のシャドウ・セット・メンバをマウントする。

  5. 前のシャドウ・セット・メンバのイメージ・バックアップを行う。

  6. バックアップが終了したら,前のシャドウ・セット・メンバをディスマウントする。

  7. バックアップしたシャドウ・セット・メンバを追加する。

11.15.8.1 ホスト・ベースのシャドウ・セットへのディスクのマウント

ホスト・ベースのシャドウ・セットで, StorageWorks RAID Array 110 Subsystem にディスクをマウントするには, MOUNT コマンドに /OVERRIDE=NO_FORCED_ERROR 修飾子を指定します。

StorageWorks RAID Array 110 Subsystem は,SCSI で FORCED ERROR 機能を実現するのに必要なREAD/WRITE LONG SCSI コマンドをサポートしません。 FORCED ERROR 機能がなければ,シャドウイング・ドライバでチェック内容を上書きしなければなりません。

11.15.8.2 混合アーキテクチャ・クラスタでの支援型マージ

支援型マージはミニマージとも呼ばれ,シャドウ・セットが OpenVMS Alpha ノードや同じクラスタ内の他のタイプのノードにマウントされると,使用禁止になります。支援型マージを再び使用可能にするには,シャドウ・セットをマウントする全 OpenVMS Cluster ノードに,CSCPAT (TIMA) キットをインストールします。

ミニマージが使用禁止になっても,シャドウイングは正常に機能し続けます。ただし,マージ処理が必要な場合は,常に完全なマージが行われます。完全なマージは,ミニマージよりかなり時間がかかります。 CSCPAT (TIMA) キットのインストールをおすすめします。

11.16 ユーザ・ディスクの復元

ディスク装置が故障して,ディスクの内容が壊れた場合などは,バックアップ・コピーを使用してディスク全体を復元することができます。ときどき保存したイメージ・バックアップを復元することにより,ディスクのフラグメンテーションを防ぐこともできます。

ディスクを復元する方法は,最後に行ったバックアップがイメージ・バックアップ (完全バックアップ) か,追加型バックアップのどちらであるかによって異なります。次の 第 11.16.1 項 では,イメージ・バックアップの場合のディスクの復元方法について,また 第 11.16.2 項 では,追加型バックアップの場合のディスクの復元方法について説明します。

11.16.1 イメージ・バックアップの復元

この節では,最後に行ったバックアップが /IMAGE 修飾子を使用したイメージ・バックアップの場合の,ディスクのすべての内容の復元手順を紹介します ( 第 11.15.2 項 参照) 。

作業方法

イメージ・バックアップを復元する手順は次のとおりです。

重要

復元で /IMAGE 修飾子を使用すると,復元先のディスクが初期化され,既存のファイルのリンクが削除されることになります。ディスク全体ではなく,ファイルやディレクトリを個々に復元する場合は, 第 11.14 節 を参照してください。

  1. 第 11.8.2 項 で説明したように, MOUNT/FOREIGN コマンドを使用してファイルの復元先のディスクをマウントする。

  2. イメージ・バックアップ・コピーを含むボリュームをセットして,マウントする。バックアップ・コピーが Files-11 セーブ・セットの場合は,Files-11 形式でボリュームをマウントすること。順編成ディスク・セーブ・セットの場合は,ボリュームをセットしてから,MOUNT/FOREIGN コマンドでマウントする。また,テープ・セーブ・セットの場合は,最初のテープをセットする。

  3. セーブ・セット名が分からない場合は,次のいずれかの操作を行う。

  4. 次の形式で /IMAGE 修飾子を指定して BACKUP コマンドを入力して,セーブ・セットを復元する。


    BACKUP/IMAGE   装置:セーブ・セット指定 [/SAVE_SET] - 
       出力装置 
    


    ディスクまたはディスケット・セーブ・セットの場合は,セーブ・セット指定 (装置: セーブ・セット指定) の直後に/SAVE_SET 修飾子を指定する必要がある。

  5. セーブ・セットが複数のテープかディスク,ディスケットにまたがっている場合,BACKUP は最初のボリュームをディスマウントして,アンロードする。これを終えると BACKUP からプロンプトが表示されるので,その時点で次のボリュームをセットすること。

  6. /NOUNLOAD 修飾子を使用して,ファイルを復元したばかりのディスクをディスマウントする。


ここでは,次のことを前提にイメージ・バックアップを復元する例を紹介します。


$ MOUNT/FOREIGN DRA2:(1)
%MOUNT-I-MOUNTED, DISK1 mounted on _DRA2:
$ BACKUP/IMAGE  MIA1:FULL_BACKUP.SAV/REWIND  DRA2:(2)
$ DISMOUNT/NOUNLOAD  DRA2:(3)

この例の番号を振ったコマンドはそれぞれ次のことを行います。


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