Compaq OpenVMS
システム管理者マニュアル


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第 26 章
LAT ソフトウェアの管理

本章では,LAT ソフトウェアの機能と,システム上に LAT ソフトウェアをインプリメントして,管理するために必要な作業について説明します。

本章の内容

本章では次の作業について説明します。

作業 参照箇所
LAT プロトコルのスタートアップ 第 26.5 節
LAT 特性のカスタマイズ 第 26.6 節
サービスの定義 第 26.6.1 項
ポートの設定 第 26.6.2 項
プリンタの設定 第 26.6.2.1 項
特殊アプリケーション・サービスの設定 第 26.6.2.2 項
キュー登録された外部からの接続要求の許可 第 26.6.3 項
外部への LAT 接続の許可 第 26.6.4 項
LATACP データベースのサイズの管理 第 26.7 節

さらに,次の項目について説明します。

項目 参照箇所
LAT プロトコルについて 第 26.1 節
LAT ネットワークについて 第 26.2 節
LAT 構成について 第 26.3 節
LAT 制御プログラム・ユーティリティについて 第 26.4 節

26.1 LAT プロトコルについて

オペレーティング・システムは,ローカル・エリア・ネットワーク (LAN) 内で ターミナル・サーバおよび他のシステムと通信を行うときに LAT (ローカル・エリア・トランスポート)ソフトウェアを使用します。 ターミナル・サーバは,ターミナル,モデム,またはプリンタの LAN への接続を専門に行う通信装置です。ターミナル・サーバには次の特長があります。

LAT プロトコルをインプリメントする LAT ソフトウェアにより,オペレーティング・システムはターミナル・サーバがアクセスすることができる資源,すなわちサービスを提供することができます。 LAT サービスを提供するシステムをサービス・ノードと呼びます。また,ノードは,LATCP を使って外部への接続を開始し, DCL の SET HOST/LAT コマンドを使用することによって LAT サービスにアクセスすることができます。 本章の以降の説明では,「サーバ」という用語は,専用のターミナル・サーバと他の LAT サービスへの外部アクセスを可能にするノードの両方の意味で使用しています。

LAT サービスは,コンピュータ・システムのすべての資源で構成することも,アプリケーション・プログラムのような特定の資源だけで構成することもできます。 システムを汎用タイムシェアリング・サービスとして設定することにより,システムのすべての資源を LAN 上の各ユーザから使用可能にしたり,システム上の特定のサービス (アプリケーション・プログラム) へのアクセスを制限したりできます。本章および『OpenVMS I/O User's Reference Manual』では,専用のアプリケーション・プログラムへのアクセスを設定するための手順の概要を説明します。

26.1.1 LAT プロトコルの機能

LAT プロトコルは,ターミナル・サーバおよびコンピュータがイーサネットまたは FDDI (Fiber Distributed Data Interconnect) などを利用した LAN 上で相互に通信を行うことを可能にします。 LAT プロトコルは,ターミナルなどの装置と LAN のシステム資源 (サービス) とを照合します。LAT ターミナルはアクセスしようとするコンピュータ (サービス・ノード) に直接接続されていないため,ターミナルから出されるサービス要求を受け付け,要求を出したターミナルと要求されたサービスを提供するコンピュータとを照合する機能がローカル・サーバに必要となります。

LAT プロトコルを使用することにより,オペレーティング・システムは提供可能なサービスを LAN 上に通知します。サーバは,LAN の通知をリッスンして,サービス情報のデータベースを構築します。このデータベースにより,サーバはユーザ・ターミナルからシステム・サービスを要求されたときに,そのサービスを提供するシステムを特定することができます。たとえば,あるユーザ・ターミナルからオペレーティング・システム上の汎用処理サービスまたはデータ・エントリ・プログラムを要求された場合,サーバは LAT プロトコルを使用して要求側のターミナルとオペレーティング・システムとの間の接続を確立して,保持します。

オペレーティング・システムは,ターミナル・サーバに対してサービスを要求できる場合があります。 LAT プロトコルを使用すると,システムは,ターミナル・サーバに直接接続されているプリンタなどの装置への接続を要求することができます。

26.1.2 LAT プログラムの利点

システム上で LAT プロトコルを使用することには,次のような多くの利点があります。

26.2 LAT ネットワークについて

ターミナル・サーバおよびオペレーティング・システムが LAT プロトコルを使用しているローカル・エリア・ネットワークのことを LAT ネットワークと呼びます。LAT ネットワークは,同じ LAN 上で他のプロトコルと共存することができます。 LAT プロトコルはターミナル・サーバおよびオペレーティング・システムの両方で動作し, LAN 上でデータが安全に送信される設計になっています。

LAT ネットワークのコンポーネントは次のとおりです。

コンポーネント 参照箇所
サービス・ノード 第 26.2.1 項
ターミナル・サーバ・ノード 第 26.2.2 項
外部への接続が可能なノード 第 26.2.3 項
LAN ケーブル 第 26.2.4 項

サービス・ノードはローカル・ネットワークのためにシステム資源を提供します。一方,ターミナル・サーバ・ノード (または外部への接続が可能なノード) は,ユーザ・ターミナルまたはアプリケーション・プログラムから要求があると,ターミナル,モデム,またはプリンタをシステム資源に移植します。

LAT ネットワークでは,サービスにアクセスするノードを マスタ・ノードと呼ぶことがよくあるので注意してください。この呼び方によって,このノードをサービスを提供するだけのノードと区別できます。

LAT 制御プログラム (LATCP) を使用して,システムに合わせて LAT 特性を構成することができます。 LATCP を使用すると,システムのサポートする内容を次のように設定することができます。

外部から内部への LAT 接続をサポートするシステムは, サービス・ノードです。 LATCP を使用して,外部からのアクセスと外部へのアクセスをともにサポートしないようにシステムを設定することもできます。

26.2.1 サービス・ノード

サービス・ノードは,LAT ネットワークを構成するノードの種類の 1 つです。 LAT ネットワーク上では,OpenVMS オペレーティング・システムが稼働していないノードも OpenVMS ノードとともに使用することができます。サービス・ノードは,ユーザおよび装置に資源を提供する LAN 上の個々のコンピュータです。 OpenVMS オペレーティング・システムには LAT プロトコルが含まれているため,どの OpenVMS システムでも LAT ネットワーク上でサービス・ノードとして構成することができます。

26.2.1.1 サービスの種類

各ノードはその資源をサービスとして提供します。多くの場合,各ノードからは汎用処理サービスを提供しますが,制限されたサービスや特殊なアプリケーション・サービスを提供することもできます。また,1 つのノードから提供するサービスの一部あるいはすべてを特殊なアプリケーションにすることが可能です。

たとえば,サービス・ノードから提供できるサービスには次のものがあります。

汎用処理サービスでは,汎用のシステム環境を使用することができます。一方,データ・エントリや株式相場のサービスの場合はその環境が制限され,サービス・ノードのアプリケーション・サービスへの接続は行われますが,他の部分への接続は行われません。

各サービスはシステム管理者によって割り当てられた名前によって区別されます。 OpenVMS Cluster では,サービス名はクラスタ名と同じにしてください。独立したノードでは,サービス名はそのノード名と同じにしてください。特殊なサービス・アプリケーションを使用するサービスには,そのアプリケーションの名前を付けるようにします。

26.2.1.2 サービスの通知

サービス・ノードはそのサービスの内容を一定の間隔で LAN 上に通知します。ターミナル・サーバ (および外部への接続が可能な OpenVMS システム) は,それによって各ネットワーク・サービスが利用可能かどうかを知ることができます。通知される内容は,物理ノード名,サービス名,サービスの内容説明,そのサービスの現在の利用量です。サーバは LAN への通知をリッスンして,情報をデータベースに記録します。外部への接続が可能なノードでは,このデータベースは LAT 補助制御プロセス (LATACP) によって保守されます。LATACP データベースの管理についての詳細は, 第 26.7 節 を参照してください。

ユーザ・ターミナルまたはアプリケーション・プログラムからサービスの要求を受け取るたびに,サーバ・ノードは適切なサービス・ノードに接続を行います。

LATCPコマンドSET NODEに/NOANNOUNCEMENTS修飾子を指定して使用することにより,マルチキャスト・サービスからローカル・ノードを無効にすることができます。ただし,遠隔ノードは,ローカル・ノードに接続するためには, LATプロトコル・バージョン5.2 (またはそれ以上)のLATサービス応答機能に依存しなければならないため,新しいモデルのターミナル・サーバおよびホストがあるネットワーク環境(LATホスト,ターミナル・サーバ,およびPCがすべて, LATプロトコルのバージョン5.2以上を実行している)でのみ,この修飾子を使用してください。この環境以外で使用した場合,バージョン5.2より前のLATプロトコルを実行しているシステム(DECserver 100,200,500システムなど)は,LATサービス通知を無効にしているシステムとは接続できません。

26.2.1.3 プリント要求

サービス・ノードがターミナル・サーバにサービスを要求できる場合がいくつかあります。最も一般的なケースは,システムがターミナル・サーバのポートに接続されているプリンタを使用する場合です。システムはプリント要求をターミナル・サーバのプリント・キューに登録します (このプリント・キューは OpenVMS のスタートアップ・プロシージャの中で設定されて,初期化されます)。キューに要求が登録されると, LAT シンビオント (大容量記憶装置との間でデータを転送するプロセス) により,LAT ポート・ドライバに対して遠隔プリンタへの接続の確立と終了が要求されます。

LAT ポートに接続されているプリンタのキューを設定する方法については, 第 14.1.3 項 および 第 14.2.2.4 項 を参照してください。

26.2.2 ターミナル・サーバ・ノード

ターミナル・サーバ・ノードは, LAT ネットワークを構成するノードのもう 1 つの種類です。通常,ターミナル・サーバ・ノードはそれがサポートするターミナルおよびプリンタの近くに存在します。ターミナルおよびプリンタは,ケーブルによってターミナル・サーバに物理的に接続され,LAN ケーブルには直接接続されません。 LAN ケーブルはターミナル・サーバに物理的に接続されます。

26.2.2.1 サービス・ノードの位置の特定

ターミナル・サーバはネットワーク上の各ノードからの通知に基づいてサービスのディレクトリを作成し,それを管理します。ターミナル・サーバはターミナル・ユーザから要求を受け取ると,サービス・データベースを検索し,要求されたサービスを提供するコンピュータの位置を特定します。

ターミナル・サーバは要求されたサービスを提供するノードを探すだけでなく,そのノードのサービスの利用量を調べることがあります。要求されたサービスが複数のノードから提供されている場合,サービスの利用量が最も少ないノードを選択し,そのノードと要求側のユーザ・ターミナルとの間に論理接続を確立します。

26.2.2.2 接続の設定

1 つの論理接続により, 1 つのターミナル・サーバ・ノードからサービス・ノードに向けられたすべてのデータが運ばれます。つまり,サーバは同じノードと通信を行っているすべてのターミナルからのデータを 1 つの接続上に結合します。ターミナル・サーバは,論理接続がまだ存在しない場合にだけサービス・ノードとの論理接続を確立します。

何らかの理由で接続に失敗すると,ターミナル・サーバは同じサービスを提供している別のノードを探し,そのノードとの接続を確立することによって,ユーザがコンピューティング・セッションを続行できるようにします。

ターミナルからの接続は 1 つにまとめられても,個々のターミナルはそのターミナル名によって区別されます。ターミナル名は 2 つの部分から構成されます。最初の部分はターミナル回線が接続されているターミナル・サーバ上のポートの名前を示し, 2 番目の部分はターミナル・サーバ・ノードの名前を示します。

26.2.2.3 サービス提供側のノード

通常,LAT ネットワークにおける要求側ノードはターミナル・サーバですが,サービス・ノードがターミナル・サーバに対してサービスを要求することがあります。最も一般的なケースとして,サービス・ノードがターミナル・サーバに接続されている遠隔プリンタにプリント要求をキュー登録することが挙げられます。


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