OpenVMS
システム管理者マニュアル


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24.1.1.1 イーサネット LAN

イーサネットは,各システムや装置を 1 本の回線で接続するケーブルです。オフィスまたはパーソナル・コンピュータやワークステーションが設置されている場所では,通常, ThinWire イーサネットまたは非シールド・ツイストペア・ケーブル接続が使用されます。

個々のシステムは,イーサネットに直接接続するか,または DELNI などのローカル・エリア相互接続装置を経由してイーサネットにアクセスすることができます。 DELNI は集信装置の働きをして,システムをまとめます。ハブ,リピータ,スイッチなどの同様の装置でも接続ができます。

24.1.1.2 FDDI LAN

FDDI はツリー・トポロジのデュアル・リングを使用します。一方のリングを 1 次リング,他方をバックアップとして使用し,柔軟性,管理の容易さ,可用性を高めるために,ツリー構造を採用しています。

FDDI ネットワークとイーサネット・ネットワークを組み合わせると, 1 つの拡張 LAN を形成できます。こうすることにより,FDDI に接続されたシステム上で実行されるアプリケーションを,イーサネットに接続されたシステムで実行されるアプリケーションに接続できます。

FDDI 集信装置は,VAX や Alpha ノード,または FDDI とイーサネット間のブリッジのような FDDI 装置を,FDDI LAN に接続することができます。

24.1.1.3 トークン・リング LAN (Alpha のみ)

トークン・リング・コントローラは,シールドまたは非シールドのツイストペア・ワイヤを使って,リングにアクセスします。ブリッジで直接接続されたトークン・リング LAN を他のタイプの LAN に接続するのは難しいので,注意してください。ただし,他の LAN へのルーティング・プロトコルは簡単に動作します。

24.1.1.4 ATM LAN (Alpha のみ)

ATM を介した LAN エミュレーションは,接続に基づいた光ファイバ・ネットワークから構成されます。 OpenVMS ATM ネットワークは,データ転送には AAL5 ATM 適応層を使用します。

ATM を介した LAN エミュレーションについては, OpenVMS では LAN エミュレーション・クライアント (LEC) だけをインプリメントしており, LAN エミュレーション・サーバ (LES), Broadcast and Unknown (BUS),または LAN エミュレーション構成サーバ (LECS) はインプリメントしていません。 LES,BUS,および LECS は,ATM スイッチなど他のファシリティにより提供されなければなりません。 OpenVMS がサポートしているのは,ATM アダプタ 1 つにつき 8 つの LAN エミュレーション・クライアントです。

ATM を介した Classical IP (CLIP) は,イーサネット・インタフェース (802.3) と同じ意味を持つデータリンク・レベル装置インプリメントします。このイーサネット・インタフェースは, ATM ネットワークを介して 802.3 (IEEE イーサネット) フレームを送信するときに TCP/IP プロトコルにより使用されます。 OpenVMS が ATM を介して IP データグラムを交換する場合, RFC1577 (ATM を介した Classical IP) に基づいたモデルに従います。

24.1.2 LAN アドレス

LAN 上のノードは,一意のアドレスで識別されます。使用するアドレスによって,メッセージを LAN 上の 1 つ,数個,またはすべてのノードに同時に送信することができます。

適用の際,IEEE はアドレス・ブロックを LAN ノードの製作者に割り当てます。したがって,どのメーカも固有のアドレス・セットを持っています。通常,割り当てられた物理アドレス・ブロックのうちの 1 アドレスが,永久に各コントローラ (通常は読み込み専用メモリ) に対応付けられます。このアドレスは,コントローラのハードウェア・アドレスと呼ばれます。各コントローラには固有のハードウェア・アドレスがあります。

LAN アドレスは長さが 48 ビットです。 LAN アドレスは,6 対の 16 進数字 (6 バイト) をハイフンで区切って表現します (たとえば AA-01-23-45-67-FF)。バイトは転送される順に,左から右に表示されます。各バイト中のビットは右から左に転送されます。この例では,バイト AA が最初に転送され,バイト FF が最後に転送されます。

LAN アドレスは,アドレスの最初のバイトの最下位ビット (このビットが最初に転送される) の値によって,単一ノードの物理アドレス,またはマルチキャスト・アドレスになります。ノード・アドレスの 2 つのタイプは次のとおりです。

24.2 ローカル・エリア・ネットワークの管理

ローカル・エリア・ネットワーク (LAN) ソフトウェアには, OpenVMS LAN ドライバ・システム・ソフトウェアと共に動作する次の 2 つのシステム管理ツールが含まれています。

LAN システム管理ツールは次のことを行います。

表 24-2 は,LAN 管理ソフトウェアと, OpenVMS Alpha および OpenVMS VAX を実行するシステムでサポートされる機能についての説明です。

表 24-2 LAN システム管理の強化
ユーティリティ 説明 OpenVMS のサポート
LANACP (LAN 補助制御プログラム) MOP ダウンライン・ロード・サービスの提供を主な機能とするサーバ・プロセスとして実行される。 LAN 運用時デバイス・データベースおよび LAN 運用時ノード・データベースの保守も行う。 LANACP ユーティリティは,OpenVMS バージョン 7.0 以降と同じ機能を提供する。
LANCP (LAN 制御プログラム) システム管理者が LAN ソフトウェアのパラメータを制御して, LAN ソフトウェアから情報を得られるようにする。 LANCP ユーティリティで次のことができる。

  • LAN 装置のカウンタ,リビジョン,構成情報を取得する。

  • システム上で LAN 装置の操作パラメータを変更する。

  • パーマネントおよび運用時 LAN デバイス・データベースおよびノード・データベースを保守する。

  • LANACP LAN サーバ・プロセス (MOP ダウンライン・ロード・サーバ関連機能を含む) を制御する。

  • MOP コンソール・キャリア接続を開始する。

  • MOP トリガ・ブート要求を他のノードに送信する。

OpenVMS Alpha バージョン 6.1 には初期にインプリメントされた LANCP は含まれるが,MOP 関連機能は含まれない。

OpenVMS バージョン 6.2 (VAX および Alpha) には,MOP 関連機能が含まれ,その機能の一部を VAX システムに対して拡張している。次の表は VAX および Alpha システム上でサポートされている LAN ユーティリティ機能を示す。

機能 OpenVMS Alpha
バージョン 7.3-1
OpenVMS VAX
バージョン 7.3
LAN 装置の操作パラメータの変更 Yes No
LAN 装置情報の表示 Yes 制限あり
MOP 機能のサポート Yes Yes

24.3 LANACP LAN サーバ・プロセス

LANACP LAN サーバ・プロセスを実行して,次の処理を行うことができます。

LANCP ユーティリティを使用すると, LANACP プロセスに対して命令を出すことができます。

LANACP に関連する主な 3 つのファイルは次のとおりです。

さらに,LANACP LAN サーバ・プロセスには関連する 4 つのシステム論理名があり,これについては 表 24-3 で説明します。

表 24-3 LANACP システム論理名
コンポーネント 説明
LAN$DLL ダウンライン・ロード・ファイルの位置を定義する。ファイル位置はロード要求では指定されず, LAN 運用時ノード・データベースにも明示的に提供されていない。省略時には SYS$SYSROOT:[MOM$SYSTEM] と定義される。
LAN$NODE_DATABASE LAN パーマネント・ノード・データベースの位置を定義する。省略時には SYS$COMMON:[SYSEXE]LAN$NODE_DATABASE.DAT と定義される。
LAN$DEVICE_DATABASE LAN パーマネント・デバイス・データベースの位置を定義する。省略時には SYS$SPECIFIC:[SYSEXE]LAN$DEVICE_DATABASE.DAT と定義される。
LAN$ACP LANACP LAN サーバ・プロセスのログ・ファイルの位置を定義する。このログ・ファイルには,LAN パーマネント・デバイス・データベースおよびノード・データベースの変更や,ロード要求,ロード状態情報を記述するエントリが含まれる。省略時には SYS$MANAGER:LAN$ACP.LOG と定義される。

24.3.1 LANACP LAN サーバ・プロセスの実行

LANACP LAN サーバ・プロセスを開始するには, DCL プロンプトに対して @SYS$STARTUP:LAN$STARTUP とタイプします。

24.3.2 LANACP LAN サーバ・プロセスの終了

LANACP LAN サーバ・プロセスを終了するには,LANCP ユーティリティ・プロンプトで SET ACP/STOP コマンドを入力します。

24.4 LANCP ユーティリティ

LANCP ユーティリティでは,LAN パラメータを設定して,表示することができます。 第 24.4.1 項 で LANCP ユーティリティの起動方法について説明します。 表 24-4 は,LAN 機能の説明と,その機能の実行に役立つ LANCP コマンドについての参照箇所を示しています。

表 24-4 LANCP ユーティリティの機能
作業 参照箇所
LAN 装置の管理 第 24.5 節
LAN デバイス・データベースの管理 第 24.6 節
LAN ノード・データベースの管理 第 24.7 節
MOP ダウンライン・ロード・サービスの管理 第 24.9 節
MOP コンソール・キャリア接続の起動 第 24.9.8 項
MOP トリガ・ブート要求の送信 第 24.9.9 項

24.4.1 LANCP の起動と実行

表 24-5 は, LANCP ユーティリティ (SYS$SYSTEM:LANCP.EXE) の起動方法と実行方法について説明しています。

表 24-5 LANCP ユーティリティの起動
コマンド
RUN コマンドの使用 DCL コマンド・プロンプトに対して,次のように入力する。
$ RUN SYS$SYSTEM:LANCP

これで LANCP ユーティリティから LANCP プロンプトが表示されるので, LANCP コマンドを入力できる。

LANCP をフォーリン・
コマンドとして定義
DCL プロンプトに対して,またはスタートアップ・コマンド・ファイルかログイン・コマンド・ファイルに,次のように入力する。
$ LANCP :== $SYS$SYSTEM:LANCP

これで,DCL プロンプトからコマンド LANCP を入力してユーティリティを起動し, LANCP コマンドを入力できるようになる。

LANCP コマンドを入力する場合には,次の点に注意する。

  • コマンド修飾子を指定しなければ, LANCP ユーティリティが LANCP プロンプトを表示するので,それに対してコマンドを入力できる。

  • コマンド修飾子を指定すると,LANCP ユーティリティはコマンドを実行した後に終了し,DCL コマンド・プロンプトが表示される。

MCR コマンドの使用 DCL コマンド・プロンプトに対して,次のように入力する。
$ MCR LANCP

MCR LANCP コマンドを入力する場合には,次の点に注意する。

  • コマンド修飾子を指定しなければ,LANCP ユーティリティがLANCP プロンプトを表示するので,それに対してコマンドを入力できる。

  • コマンド修飾子を指定すると,LANCP ユーティリティはコマンドを実行した後に終了し,DCL コマンド・プロンプトが表示される。

LANCP> プロンプトに対して LANCP コマンドを入力できます。

LANCP ユーティリティについての情報を得るには, LANCP> プロンプトで HELP コマンドを入力します。

LANCP ユーティリティを終了するには, LANCP> プロンプトで EXIT コマンドを入力するか,Ctrl/Z を押します。

24.4.2 LANCP コマンド

表 24-6 に,LANCP コマンドについての要約を示します。

表 24-6 LANCP コマンド
コマンド 機能
@ (実行プロシージャ) コマンド・プロシージャを実行する。
CLEAR DEVICE LAN 運用時デバイス・データベースから装置を削除する。
CLEAR DLL 全ノードおよび装置で,MOP ダウンライン・ロード・カウンタをクリアする。
CLEAR MOPDLL CLEAR DLL コマンドと同じ。
CLEAR NODE LAN 運用時ノード・データベースからノードを削除する。
CONNECT NODE MOP コンソール・キャリア・プロトコルを使用して管理インタフェースをインプリメントする,ターミナル・サーバなどの LAN 装置に接続する。
CONVERT DEVICE_DATABASE デバイス・データベースを LANCP で要求される現在の形式に変換する。
CONVERT NODE_DATABASE ノード・データベースを LANCP で要求される現在の形式に変換する。
DEFINE DEVICE 装置を LAN パーマネント・デバイス・データベースに入力するか,既存のエントリを変更する。
DEFINE NODE ノードを LAN パーマネント・ノード・データベースに入力するか,既存のエントリを変更する。
EXIT LANCP の実行を終了し,制御を DCL コマンド・レベルに戻す。
HELP LANCP ユーティリティに関するオンライン・ヘルプを提供する。
LIST DEVICE LAN パーマネント・デバイス・データベースの情報を表示する。
LIST NODE LAN パーマネント・ノード・データベースの情報を表示する。
PURGE DEVICE 装置を LAN パーマネント・デバイス・データベースから削除する。
PURGE NODE ノードを LAN パーマネント・ノード・データベースから削除する。
SET ACP LANACP LAN サーバ・プロセスの操作を変更する。
SET DEVICE LAN 運用時デバイス・データベースと装置自体にある装置特性を変更する。
SET NODE ノードを LAN 運用時ノード・データベースに入力するか,既存のエントリを変更する。
SHOW CONFIGURATION システム上の LAN 装置の一覧を表示する。
SHOW DEVICE LAN 運用時デバイス・データベースの情報を表示する。
SHOW DLL MOP ダウンライン・ロード・サービスの現在の状態を表示する。
SHOW LOG 最近のダウンライン・ロード・アクティビティを表示する。
SHOW MOPDLL SHOW DLL コマンドと同じ。
SHOW NODE LAN 運用時ノード・データベースの情報を表示する。
SPAWN 現在のプロセスのサブプロセスを作成する。
TRIGGER NODE 遠隔ノードに対して再ブート要求を出す。

LANCP コマンドと修飾子についての詳細は,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル (上巻 ) 』を参照してください。


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