Compaq OpenVMS
システム管理者マニュアル


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10.8.2 テープ・ボリュームへのファイルのコピー

COPY コマンドは,ディスク・ボリュームからテープ・ボリュームへのファイルのコピーにも使用することができます。手順は,ディスク・ボリューム間のファイルのコピーとほぼ同じです。しかし,テープは順次アクセス装置であり,ディレクトリはありません。 ディスク・ファイルをテープ・ボリュームにコピーするためには,テープ装置の構成,すなわち,テープ装置の初期化およびマウントを行っておく必要があります。テープ・ファイルの属性については, 第 10.7 節 を参照してください。

磁気テープは,Files-11 形式のファイル名に完全対応しています。したがって,たとえば次のファイル名のディスク・ファイルを,ファイル名を変更することなく磁気テープ・ボリュームにコピーすることができます。


   THIS_IS$AN_OPENVMSLONG_FILE.LONG_TYPE 

注意

OpenVMS 以外のオペレーティング・システムの大半は, 17 文字を超える長さのファイル名を使用しません。

OpenVMS システムでは,ストリーム・レコードと固定長制御部付可変長 (VFC) レコードに対応していますが,標準ラベルのボリューム上では,そうしたレコードを可変長形式でコード化します。 OpenVMS 以外のシステムでは,ストリーム・レコードと VFC レコードを可変長レコードと区別せず,両方を可変長レコードと見なします。したがって,OpenVMS 以外のシステムとの情報の相互交換に使用するボリュームにストリーム・レコードや VFC レコードは作成しないでください。

次に,DCL コマンドを使用して,ディスク・ボリュームの省略時のディレクトリに含まれているファイルを,標準ラベルの磁気テープ・ボリュームにコピーする手順を紹介します。ここでは,ディスク・ファイルをコピーする前に,磁気テープを割り当て初期化する例も取り上げています。

作業方法

ディスク・ボリュームの省略時のディレクトリに含まれているファイルを標準ラベルの磁気テープ・ボリュームにコピーする手順は次のとおりです。

  1. 最初に次のコマンドを入力して,磁気テープ装置を割り当てる。


    $ ALLOCATE MT: TAPE_DEVICE
    %DCL-I-ALLOC _MARS$MTA2: allocated
    


    この ALLOCATE コマンドでは,名前が MT から始まるテープ装置の割り当てを要求している。この例では,論理名 TAPE_DEVICE は MARS$MTA2: 装置を意味する。
    システム応答は,コントローラ A のユニット 2 が使用可能であったため,それを割り当てたことを示している。 これで,物理的にテープ装置にテープをセットすることができる。テープに書き込みリングが付いていることを確認する。付いていない場合は,テープに書き込みを行えない。

  2. 次のようなコマンドを入力して,テープを初期化する。


    $ INITIALIZE TAPE_DEVICE: GMB001/PROTECTION=(GROUP:R,WORLD)
    


    この INITIALIZE コマンドは,ボリュームに対して論理名 (この場合, MTA2: を参照する TAPE_DEVICE) と,テープ・ボリューム (この場合,GMB001) を指定している。ラベルは 6 文字に制限されている。 /PROTECTION 修飾子に指定された保護コードは,グループを読み込みアクセス権に制限し,一般ユーザのアクセスは許可しない。

  3. 次に示すように,MOUNT コマンドを入力してボリュームをマウントし,ファイルを書き込む。


    $ MOUNT TAPE_DEVICE: GMB001
    %MOUNT-I-MOUNTED, GMB001 mounted on _MTA2:
    $ COPY *.* TAPE_DEVICE:
    


    MOUNT コマンドには,テープ装置にセットされているテープ・ボリュームの装置名とボリューム・ラベルを指定している。 COPY コマンドは,省略時のディレクトリに含まれるすべてのファイルの最新バージョンをテープにコピーする。省略時の設定では,出力ファイルのファイル名と,ファイル・タイプ,バージョン番号は,入力ファイルのものと同じである。
    /LOG 修飾子を指定した COPY コマンドが入力されると,システムはファイルのコピーを終えるたびに,現在の SYS$OUTPUT 装置にメッセージを出力する。

  4. 次の DIRECTORY コマンドを使用して,ファイルのコピーが正常に行われたか確認することもできる。


    $ DIRECTORY TAPE_DEVICE:
    


    このコマンドが入力されると,システムは,テープにコピーされたすべてのファイルのファイル名とファイル・タイプを表示する。

  5. 磁気テープに対する必要な作業を終えたら,次のコマンドを入力して,ディスマウントと割り当て解除を行う。


    $ DISMOUNT TAPE_DEVICE:
    $ DEALLOCATE TAPE_DEVICE:
    


    ディスマウントと割り当て解除が明示的に行われなかった場合は,ログアウト時にシステムが自動的にそれらの処理を行う。

次に,ディスク・ファイルをテープ・ボリュームにコピーする例をいくつか紹介します。



  1. $ COPY *.* MTA2:
    


    この例では,MTA2: がプロセスに割り当て済みであり,かつ,その装置にセットされているテープ・ボリュームの初期化とマウントが済んでいることが前提になる。COPY コマンドは,ファイルを MTA2: のテープ・ボリュームにコピーする。
    テープ・ボリュームにコピーされるファイルは,省略時のディスク・ディレクトリに含まれるすべてのファイルの最新バージョンである。省略時の設定では,出力ファイルのファイル名と,ファイル・タイプ,バージョン番号は,入力ファイルのものと同じである。


  2. $ COPY/LOG FORTAP.DAT MTA1:"%&*?!SKI! "" "
    %COPY-S-COPIED, WRKD:[MANUAL]FORTAP.DAT;1 
    copied to MTA1:[]"%&*?!SKI! """.;0 (120 records)
    


    ディスクからテープへのコピーを行う,この COPY コマンドでは,出力ファイル指定にテープ・ファイル名を指定している。テープ名では末尾スペースが意味を持たないので,ファイル名 %&*?!SKI!##"# (# はスペース) の末尾のスペースは含まれない。


  3. $ COPY/LOG OPENVMS_LONG$FILE_NAME.LONG_EXT MTA1:
    %COPY-S-COPIED, WRKD:[MANUAL]OPENVMS_LONG$FILE_NAME_EXT;1 
    copied to MTA1:OPENVMS_LONG$FILE_NAME.LONG_EXT;1 (80 records)
    


    この例では,ファイル名も長く,ファイル・タイプも長いディスク・ファイルを,ファイル名もファイル・タイプも変更せずに, MTA1: のテープ・ボリュームにコピーしている。


  4. $ COPY/LOG %%.JOU;* MTA1:*.*
    %COPY-S-COPIED, WRKD:[MANUAL]C6.JOU;1 copied to MTA1:[]C6.JOU;1 (4 records)
    


    この例では,ファイル名が 2 文字の長さで,ファイル・タイプが .JOU のすべてのファイルを,ファイル名もファイル・タイプも変更せずに, MTA1: のテープ・ボリュームにコピーしている。バージョン番号が変更されることはない。

10.8.3 テープの終わり位置でのコピーの継続

テープへの,またはテープからのコピー中にテープの終端に達した場合,システムは処理を中断して,ボリューム・セットの次のテープをマウントするよう要求します。このとき,ターミナルには,オペレータ通信マネージャ (OPCOM) からの次のようなメッセージが表示されます。


%%%%%%%%%%%  OPCOM, 14-MAY-2000 15:23:31.78  %%%%%%%%%%%
request 3, from user PLAW
MOUNT new relative volume 2 (DW0QT2) on MTA1:

注意

テープ・メッセージは受信が有効になっているオペレータのターミナルにしか送られないため,通常,このメッセージがシステム管理者のターミナルに表示されることはありません。読み込みまたは書き込みを終えるのに,別のテープが必要であるかどうかは,担当オペレータが判断することになります。

OPCOM メッセージについては, 第 20.6 節 で詳しく説明しています。

自動ボリューム切り換えが無効であるか,テープ・ファイル・システムがボリュームのマウントを行えない場合は,ボリューム・セットの継続ボリュームをマウントしなければならないことがあります。継続ボリュームのマウントについては, 第 9.8.2 項 を参照してください。

10.8.4 EXCHANGE ユーティリティによるファイルのコピー

EXCHANGE ユーティリティは,異なる構造のボリューム間でファイルをコピーするとき,必要に応じてファイルの形式を変換するユーティリティです。このユーティリティは,OpenVMS 装置のすべての Files-11 や RT-11 ディスク・ボリュームばかりでなく, 9 トラック・テープ装置の DOS-11 や RT-11 形式のボリュームも認識します。

EXCHANGE ユーティリティの使用法と,EXCHANGE ユーティリティのすべてのコマンド,修飾子,パラメータについての詳細は,『OpenVMS Exchange Utility Manual』やオンライン・ヘルプを参照してください。

10.8.5 EXCHANGE/NETWORK コマンドの使用

DCL の EXCHANGE/NETWORK コマンドを使用すると, OpenVMS のファイル編成をサポートしていないオペレーティング・システムとファイルの転送を行うことができます。この転送は,OpenVMS のノードおよび OpenVMS 以外のオペレーティング・システムのノードを接続する DECnet 通信リンク上で行われます。

EXCHANGE/NETWORK コマンドを使用すると,次の操作を実行できます。

EXCHANGE/NETWORK コマンドについての詳細は,オンライン・ヘルプまたは『Compaq OpenVMS DCL ディクショナリ』を参照してください。

作業方法

EXCHANGE/NETWORK コマンドは,次の形式で実行します。


EXCHANGE/NETWORK 入力ファイル指定 [,...]   出力ファイル指定 

入力ファイル指定 転送される既存ファイル名を指定する。ワイルドカード文字も使用できる。
出力ファイル指定 入力ファイルを転送する出力ファイル名を指定する。



$ EXCHANGE/NETWORK MYSYS_FILE.DAT FOO::FOREIGN_SYS.DAT

この例では,現行の省略時の装置およびディレクトリにある MYSYS_FILE.DAT ファイルを OpenVMS 以外のノード FOO の FOREIGN_SYS.DAT ファイルに転送しています。省略時の設定では,ブロックまたはレコード入出力の転送方法を自動的に選択します。


第 11 章
BACKUP の使用法

OpenVMS の BACKUP ユーティリティを使用して,ファイル,ディレクトリ,またはディスクのコピーを作成しておくことによって,データの消失や破損に備えることができます。ディスク・ドライブの障害などの問題が発生した場合は,作成したコピーを復元して,最小限の損失で作業を再開することができます。

本章の内容

本章では,次の作業について説明します。

作業 参照箇所
バックアップ方法の定式化 第 11.3 節
効率的なバックアップのためのプロセス・クォータの設定 第 11.7 節
ディスクとテープの使用 第 11.8 節
BACKUP セーブ・セットの内容の表示 第 11.10 節
ユーザ・ディスクとボリューム・シャドウ・セットのバックアップ 第 11.15 節
ユーザ・ディスクとボリューム・シャドウ・セットの復元 第 11.16 節
システム・ディスクのバックアップと復元 第 11.17 節
データの整合性チェック 第 11.18 節
問題が発生したときの対処 第 11.19 節

さらに,次の項目について説明します。

項目 参照箇所
バックアップのタイプ 第 11.2 節
BACKUP コマンド行 第 11.4.1 項
The Backup Manager 第 11.4.2 項
セーブ・セット 第 11.5 節
BACKUP のファイル形式 第 11.6 節
ボリュームの初期化 第 11.8.1 項
OPCOM とボリューム 第 11.9 節
マルチボリューム BACKUP 処理 第 11.11 節
BACKUP によるテープ・ラベル処理 第 11.12 節
スタンドアロン BACKUP (VAX のみ) 第 11.17.2 項

バックアップ媒体が Fibre Channel インターコネクトに接続されている場合の BACKUP の使用法については,『Compaq OpenVMS Cluster 構成ガイド』を参照してください。

11.1 BUCKUP 作業の概要

BACKUP をデータ消失の防止手段として有効に活用するためには,定期的に大切なデータのバックアップを取り,必要な場合にそのデータを復元する方法を理解しておく必要があります。

システム管理者は,自分のファイル,ディレクトリ,ディスクばかりでなく,システム・ディスクのバックアップも取ってください。スタンドアロン型のワークステーションを使用している場合,自分のシステム・ディスクのバックアップを取るのは,たいていシステム管理者一人の仕事です。使用しているシステムが大規模なクラスタ型コンピュータ・システムのメンバの場合は,たいていオペレータかシステム管理者がシステム・ディスクのバックアップを取ります。

システム・ディスクのバックアップを取る方法には,次の 2 種類があります。

BACKUP でイメージ・バックアップを行うと,ディスクのフラグメンテーションが解消します。このフラグメンテーションは,ディスクにファイルを作成したり,ディスク・ファイルを大きくしたりしていくにつれて,発生する現象です。連続するブロックにファイルを書き込むことが不可能な場合,ファイル・システムはファイルをフラグメンテーションして書き込みます。このため,最終的にディスクのフラグメンテーションはひどくなり,システム性能が低下することになります。

フラグメンテーションを解消したい場合は,ディスクのイメージ・バックアップを取り,そのバックアップ・コピーを復元してください。イメージ・バックアップの復元では,BACKUP はディスク上にファイルを連続して書き込みます。もう 1 つ,/SAVE_SET 修飾子を使わずに,ディスク間でイメージ・バックアップを取る方法もあります。これは,機能的にはシステム・ディスク全体のコピーを作成するのと同じことであり,ファイルが連続して書き込まれます。

注意

レイヤード製品の中には,専用のバックアップ・プロシージャが用意されているものがあります。詳細は,レイヤード製品のマニュアルを参照してください。


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