Compaq OpenVMS
システム管理者マニュアル


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11.17.2 スタンドアロン BACKUP (VAX のみ)

BACKUP ユーティリティは,オープンされたファイル(会計情報ファイルやオペレータ・ログ・ファイルなど)はコピーしません。したがって,スタンドアロン BACKUP (VAX のみ)または構成が許せば,メニュー・システムを使用してシステム・ディスクのバックアップを取る必要があります。オペレーティング・システムがシャットダウン中でも,メイン・メモリにスタンドアロン BACKUP をブートし, BACKUP コマンド修飾子のサブセットを使用すれば,システム・ディスクのファイルの完全なバックアップをとることができます。スタンドアロン BACKUP は,OpenVMS VAX のみを対象としています。また,インストールおよびシステム・ディスクのバックアップと復元についてサポートしています。スタンドアロン BACKUP で使用できる修飾子の一覧を 表 11-8 に示します。

表 11-8 使用できるスタンドアロン BACKUP 修飾子
タイプ 修飾子 省略時の値
コマンド修飾子 /BRIEF /BRIEF
  /COMPARE なし
  /FULL /BRIEF
  /IMAGE /IMAGE
  /[NO]INITIALIZE 『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照
  /LIST
[=ファイル指定]
『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照
  /[NO]LOG /NOLOG
  /PHYSICAL なし
  /RECORD なし
  /[NO]TRUNCATE /NOTRUNCATE
  /VERIFY なし
  /VOLUME=n なし
入力セーブ
セット修飾子
/[NO]CRC /CRC
  /[NO]REWIND /NOREWIND
  /SAVE_SET なし
出力セーブ
セット修飾子
/BLOCK_SIZE=n 『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照
  /BY_OWNER=uic 『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照
  /COMMENT= 文字列 なし
  /[NO]CRC /CRC
  /DENSITY=n 『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照
  /[NO]EXACT_ORDER /NOEXACT_ORDER
  /GROUP_SIZE=n /GROUP_SIZE=10
  /LABEL=(文字列 [,...]) 『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照
  /PROTECTION
[=(コード)]
『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照
  /[NO]REWIND /NOREWIND
  /SAVE_SET なし
  /TAPE_EXPIRATION Today

スタンドアロン BACKUP コットは OpenVMS ディストリビューション・キットに入っていますが,システム・ディスクあるいはユーザ・ディスクに作成した方がブート時間が短縮できます。各種媒体にスタンドアロン BACKUP を作成し,それらを使用する方法については,使用しているコンピュータのインストールおよびアップグレードの手引書を参照してください。

以降の項では,ディスクまたはテープにスタンドアロン BACKUP を作成し,その BACKUP を使用してシステム・ディスクのバックアップをとる方法を説明します。

11.17.2.1 ディスクへのスタンドアロン BACKUP の作成 (VAX のみ)

スタンドアロン BACKUP は,テープではなく,ディスクに置いたほうが高速に立ち上がるので,ディスクに作成することをおすすめします。

スタンドアロン BACKUP は,システム・ディスクまたはユーザ・ディスクのどちらにでも作成することができます。ユーザ・ディスクに作成した場合,ディスクの占有空間量はシステム・ディスクのときより大きくなります。これは,システムのブートに必要なファイルがユーザ・ディスクにないためです。

スタンドアロン BACKUP の作成には, SYS$UPDATE:STABACKIT.COM コマンド・プロシージャを使用します。このプロシージャは,必要ならばターゲット装置に指定されたディレクトリを新たに作成し,スタンドアロン BACKUP をブートするためのファイルをそのディレクトリにコピーします。コピー先のディレクトリは,システム・ディスクであれば [SYSE],ユーザ・ディスクであれば [SYS0] です。

作業方法

ディスクにスタンドアロン BACKUP を作成する手順は次のとおりです。

  1. SYSTEM アカウントにログインする。

  2. 次のコマンドを入力して,Return を押す。


    $ @SYS$UPDATE:STABACKIT
    Enter the name of the device on which to build the kit:
    

  3. スタンドアロン BACKUP を作成するディスクの装置名を入力する。システム・ディスクに作成する場合は,次の例に示すように装置名として SYS$SYSDEVICE を入力する。


    Enter the name of the device on which to build the kit: SYS$SYSDEVICE:
    

  4. SYS$UPDATE:STABACKIT.COM コマンド・プロシージャが,指定されたディスクの既定のディレクトリにファイルをコピーし,その間,コピー中のファイルの名前を表示する。そして,処理を終えると次のメッセージを表示する。


    The kit is complete. 
    

RF73 ディスクからのイメージ・バックアップの実行

RF73 ディスク(クラスタ・サイズ4ブロックのディスク) から RF74 ディスク(クラスタ・サイズ7ブロックのディスク) へイメージ・バックアップを実行する場合, Backup ユーティリティはコピーして書き込むファイル用の領域を割り当てる際にファイル・サイズを確認しません。したがって,ファイルが初期化時に設定された CLUSTER_SIZE 属性の値よりも大きなサイズの割り当てを持っていた場合,実際のファイル・サイズがクラスタ・サイズより小さい場合にも BACKUP はクラスタ1つ分余計のブロックをファイルに割り当てます。たとえば,イメージ・バックアップ時に,実際のファイル・サイズが6ブロックであるのに, 8ブロックが割り当てられるような場合がこれに相当します (この場合,コピー終了後に DIRECTORY/SIZE=ALL コマンドを実行すると,画面には 6/8 と表示されます)。実際のサイズはクラスタ・サイズよりも小さくなります。

具体的には次のファイルは,イメージ・システム・ディスクに使用ブロック数6ブロック,割り当てブロック数14ブロック(6/14)でコピーされます。

SYS$COMMON:[SYS$LDR]LIDRIVER.EXE
SYS$COMMON:[SYS$LDR]LPDRIVER.EXE

この誤った割り当てサイズにより,スタンドアロン BACKUPはブートされたイメージ・ディスクで障害を発生します。

この問題を解決するには,上記2つのファイルをイメージ・バックアップ後に次のコマンドを使用して同じディレクトリに再びコピーします (このコマンドでは正しい割り当てサイズを指定しています):


$ COPY/ALLOCATION=7 SYS$COMMON:[SYS$LDR]LIDRIVER.EXE
$ COPY/ALLOCATION=7 SYS$COMMON:[SYS$LDR]LPDRIVER.EXE

11.17.2.2 ディスクからのスタンドアロン BACKUP のブート (VAX のみ)

ディスクからスタンドアロン BACKUP をブートする手順を,次に示します。

  1. オペレーティング・システムが停止している場合は,ステップ 2 に進む。
    オペレーティング・システムが停止していない場合は, SYSTEM アカウントにログインし,次のコマンドを入力して Return を押す。


    $ @SYS$SYSTEM:SHUTDOWN
    


    質問に答えていき,自動システム・ブートを行うか質問があったら, Return を押して NO を選択する。処理が終わると,プロシージャは次のメッセージを表示する。


    SYSTEM SHUTDOWN COMPLETE -- USE CONSOLE TO HALT SYSTEM
    

  2. システムを停止させる。

  3. スタンドアロン BACKUP キットが置かれているルートから BACKUP を実行する。スタンドアロン BACKUP をブートするためのコマンドは,コンピュータの機種によって異なる。詳細は,使用しているシステムのインストールおよびアップグレードの手引書を参照すること。
    たとえば,MicroVAX 3100 コンピュータを使用している場合は,次のコマンドを使用してスタンドアロン BACKUP をブートする。


    >>> B/n0000000 device-name
    



    たとえば,ディスクの装置名が DKA400:,スタンドアロン BACKUP を作成したディレクトリが [SYSE] ディレクトリの場合は,次のコマンドを入力します。


    >>> B/E0000000 DKA400
    


    装置名については, 第 8.1 節 を参照すること。

  4. スタンドアロン BACKUP から次のメッセージが表示される。


    VAX/VMS Version Vn.n Major version id = 01 Minor version id = 00 
    

  5. プロシージャから日時の質問があるので,24 時間形式で日時を入力して,Return を押す。


    PLEASE ENTER DATE AND TIME (DD-MMM-YYYY HH:MM) 19-JAN-2000 15:00
    

  6. システムのローカル・デバイスの一覧が表示される。


    Available device MKA500:     device type TK50 
    Available device DKA100:     device type RRD40 
       . 
       . 
       . 
    


    一覧にローカル・デバイスがすべて列挙されているか調べ,すべて列挙されていない場合は,すべての装置がシステムに正しく接続されているか調べる。詳細は,使用しているハードウェアのマニュアルを参照すること。

  7. ブートが終わると,スタンドアロン BACKUP は識別メッセージを表示し,その後,ドル記号プロンプト ($) が表示される。


    %BACKUP-I-IDENT, Standalone BACKUP V7.3; the date is 19-APR-2000 15:00 
    $ 
    


    システム・ディスクのバックアップ・コピーを作成したい場合は, 第 11.17.3 項 を参照すること。
    システム・ディスクの復元については, 第 11.17.4 項 で説明する。

11.17.2.3 テープ・カートリッジへのスタンドアロン BACKUP の作成 (VAX のみ)

テープ・カートリッジ・ディストリビューション・キットを持つ VAX システムの場合は,ディストリビューション・キットで提供されるテープ・カートリッジにスタンドアロン BACKUP が含まれています。この後に紹介する手順は,スタンドアロン BACKUP のコピーが破損した場合,または予備のコピーを作成する必要がある場合に使用してください。

作業方法

テープ・カートリッジにスタンドアロン BACKUP を作成する手順は,次のとおりです

  1. 空の初期化済みテープ・カートリッジを用意し,紙のラベルに S/A BKUP V7.3 と記入して,カートリッジのラベル・スロットにラベルを貼り付ける。

  2. 書き込み禁止スイッチ (ラベル・スロットの横) をスライドさせて,テープ・カートリッジを書き込み可能にする。

  3. 装置に S/A BKUP V7.3 のラベルの付いたテープ・カートリッジを挿入する。

  4. SYSTEM アカウントにログインする。

  5. 次のコマンドを入力する。


    $ @SYS$UPDATE:STABACKIT
    

  6. ターゲット装置名の質問があるので,スタンドアロン BACKUP を作成するテープ・カートリッジ装置名を入力する。


    Enter the name of the device on which to build the kit: MUA0
    

  7. 次のメッセージが表示される。


    Please place the scratch tape cartridge in drive _MUA0: 
    This volume will receive the volume label SYSTEM. 
     
    Enter "YES" when ready: 
    

  8. 準備ができたら,YES と入力する。

  9. ファイルをコピー中である旨のメッセージが表示される。

  10. スタンドアロン BACKUP の作成を終えると,次のようなメッセージが表示される。


    Ending time   19-MAY-2000 16:44:29.90 
    Starting time 19-MAY-2000 16:30:39.05 
     
    The Kit is complete. 
     
     
    $ 
    

  11. テープ・カートリッジ装置から S/A BKUP V7.3のラベルの付いたテープ・カートリッジを取り出す。

  12. 書き込み禁止スイッチ (ラベル・スロットの横) をスライドさせて,テープ・カートリッジを書き込み禁止にする。テープは安全な場所に保管すること。

11.17.2.4 テープ・カートリッジからのスタンドアロン BACKUP のブート (VAX のみ)

テープ・カートリッジにスタンドアロン BACKUP を作成していて,ディスク装置の故障などでスタンドアロン BACKUP の入ったディスクが使用不能になった場合は,代わりにテープ・カートリッジのスタンドアロン BACKUP を使用することができます。テープ・カートリッジからのスタンドアロン BACKUP のブートに要する時間は,約 20 分です。

作業方法

テープ・カートリッジからスタンドアロン BACKUP をブートする手順は,次のとおりです。

  1. オペレーティング・システムが停止している場合は,ステップ 2 に進む。
    オペレーティング・システムが停止していない場合は, SYSTEM アカウントにログインし,次のコマンドを入力して,Return を押す。


    $ @SYS$SYSTEM:SHUTDOWN
    


    質問に答えていき,自動システム・ブートを行うか質問があったら, Return を押して NO を選択する。処理が終わると,プロシージャは次のメッセージを表示する。


    SYSTEM SHUTDOWN COMPLETE -- USE CONSOLE TO HALT SYSTEM
    

  2. システムを停止させる。

  3. スタンドアロン BACKUP キットが収められているテープ・カートリッジをテープ・カートリッジ装置に挿入する。

  4. 次の例に示すように,BOOT と入力してから,テープ・カートリッジ装置の装置名を入力し,Return を押す。


    >>> BOOT MUA0
    

  5. スタンドアロン BACKUP から次のメッセージが表示される。


    VAX/VMS Version V7.3 Major version id = 1 Minor version id = 0 
    

  6. プロシージャから日時の質問があるので,24 時間形式で日時を入力して Return を押す。


    PLEASE ENTER DATE AND TIME (DD-MMM-YYYY HH:MM) 19-MAY-2000 15:00
    

  7. システムのローカル・デバイスの一覧が表示される。HSC と MSCP サービス・デバイスが使用されている場合は,そのデバイスも一覧に表示される。


    Available device DUA0:             device type Generic_DU 
    Available device MUA0:             device type TK50 
    

  8. ブートを終えると,スタンドアロン BACKUP は識別メッセージを表示し,その後,ドル記号プロンプト ($) が表示される。


    %BACKUP-I-IDENT, standalone BACKUP V7.3; the date is 19-MAY-2000 15:50 
    $ 
    

  9. テープ・カートリッジ装置からテープ・カートリッジを取り出す。
    システム・ディスクのバックアップ・コピーを作成したい場合は, 第 11.17.3 項 を参照すること。
    システム・ディスクの復元については, 第 11.17.4 項 を参照すること。

11.17.3 テープへのシステム・ディスクのバックアップ

システム・ディスクのバックアップを行う場合には,BACKUP コマンドの /IMAGE と /PHYSICAL 修飾子の機能について理解してから,スタンドアロン BACKUP を行います。

修飾子 機能
/IMAGE 機能的にはシステム・ディスク全体と等価のコピーを作成する。復元すると,イメージ・バックアップのファイルがシステム・ディスクに連続して書き込まれるので,ディスクのフラグメンテーションの解消にもなる。
/PHYSICAL ファイル構造を無視し,論理ブロック単位でシステム・ディスク全体をコピー,保存,復元,比較する。

BACKUP ユーティリティの修飾子についての詳細は,『Compaq OpenVMS システム管理ユーティリティ・リファレンス・マニュアル』を参照してください。

作業方法

システム・ディスクをテープにイメージ・バックアップする手順は,次のとおりです。

  1. バックアップに使用する空のテープ・カートリッジまたは磁気テープを用意する。

  2. テープを書き込み可能にする。テープ・カートリッジの場合は,書き込み禁止スイッチ (ラベル・スロットの横) をスライドすること。磁気テープの場合は,テープ・リールの背面に書き込み許可リングをセットする。

  3. テープ装置にテープをセットする。

  4. バックアップを行うシステム・ディスクの装置名を確認する。装置名の確認については, 第 8.2 節 を参照すること。ブートを行うシステム・ディスクの装置名を知りたい場合は,DCL の SHOW LOGICAL SYS$SYSDEVICE コマンドを使用する。

  5. システム構成に応じて,スタンドアロン BACKUP をブートするか,メニュー方式のプロシージャを起動する。

  6. 次の形式で BACKUP コマンドを入力する。


    BACKUP/IMAGE/VERIFY   入力指定: - 
       出力指定:セーブ・セット.BCK/REWIND/LABEL=ラベル 
    


    こうした構文規則に従った BACKUP コマンドの例を次に示す。


    $ BACKUP/IMAGE/VERIFY DUA1: MUA0:DEC_31_BACKUP.BCK/REWIND/LABEL=WKY101
    

  7. スタンドアロン BACKUP から,ファイルの転送を終え,バックアップ・コピーの検証中であることを示す次のメッセージが表示される。


    %BACKUP-I-STARTVERIFY, starting verification pass 
    

  8. 一本のテープ・カートリッジまたは磁気テープにバックアップ・コピーが収まらない場合は,次のメッセージとプロンプトが表示される。


    %BACKUP-I-RESUME, Resuming operation on volume 2 
    %BACKUP-I-READYWRITE, Mount volume 2 on _MUA0: for writing 
    Enter "YES" when ready. 
    


    これらのメッセージが出されない場合は,ステップ 9 に進む。これらのメッセージを受け取った場合は,次の操作を行う。

    1. 装置から現在のバックアップ・テープを取り出す。

    2. 取り出したテープに COMPLETE SYSTEM BACKUP というラベルを付け,同時に日付とテープの連続番号を記入する。

    3. バックアップ・テープを書き込み禁止にする。

    4. 別の空のテープを書き込み可能にして,装置にセットする。

    5. 準備ができたら,Y (YES) と入力して,Return を押す。

    6. ファイルの転送を終え,バックアップ・コピーの検証中であることを示す次のメッセージが表示される。


      %BACKUP-I-STARTVERIFY, starting verification pass 
      


      この後,マウント要求が出されたら,その都度,a から e のステップを繰り返す。


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