OpenVMS
OpenVMS Cluster 構成ガイド


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1.3 ソフトウェア構成要素

OpenVMS Cluster システム・ソフトウェアのタイプは,次のように分類できます。

1.3.1 OpenVMS オペレーティング・システム構成要素

オペレーティング・システムは,ハードウェア構成要素とソフトウェア構成要素,および資源が適切に動作するように管理します。

表 1-3 は,OpenVMS Cluster の動作に必要なシステム構成要素です。これらの構成要素は,すべて OpenVMS オペレーティング・システム・ライセンスまたは OpenVMS Cluster ライセンスがないと使用できません。

表 1-3 オペレーティング・システム構成要素
構成要素 機能
レコード管理サービス (RMS) と OpenVMS ファイル・システム OpenVMS Cluster 環境のディスクやテープ上の共用読み込みアクセスと書き込みアクセスを提供します。
クラスタ全体のプロセス・サービス クラスタ全体でプロセスを作成, 削除するだけなく,SHOW SYSTEM や SHOW USERS などの OpenVMS コマンドのクラスタ規模による操作を可能にします。
分散ロック・マネージャ 多数のユーザによる共用資源へのアクセスを同期します。
分散ジョブ・コントローラ バッチやプリント・キューをクラスタ全体で共用可能にし,資源を最適化します。
接続マネージャ OpenVMS Cluster メンバのメンバシップとクォーラムを制御します。
SCS (システム通信サービス) System Communications Architecture (SCA) により,ノード間の OpenVMS Cluster 通信を可能にします。
MSCP サーバ 直接アクセスできるローカル接続ディスクを, OpenVMS Cluster 内の他のシステムにも開放します。
TMSCP サーバ 直接アクセスできるローカル接続テープを, OpenVMS Cluster 内の他のシステムにも開放します。

図 1-1 は,代表的な OpenVMS Cluster システムにおけるハードウェアとオペレーティング・システム構成要素の組み合わせを示したものです。

図 1-1 ハードウェアとオペレーティング・システム構成要素


1.3.2 ネットワーキング構成要素

表 1-4 は,1 つのOpenVMS Cluster システム・ノードと他の OpenVMS Cluster ノード間の通信と資源を共用するためのオプション・ネットワーキング・ソフトウェアを説明したものです。

表 1-4 OpenVMS ネットワーキング構成要素
オプション・ソフトウェア 機能
DECnet-Plus DECnet-Plus や TCP/IP Services for OpenVMS ソフトウェアはノード間通信に必要です。
DECnet-Plus System Services (DSS) 製品 遠距離にあるシステム間で通信と資源共用をするためのソフトウェアです。これらの製品には, VAX Distributed File Service (DFS),VAX Distributed Name Service (DNS), VAX Distributed Queuing Service (DQS) があります。
LAT ソフトウェア ターミナル・サーバ・ハードウェアで,Ethernet ベースのキャラクタ・セル・ターミナルをサポートするために使用します。システムに障害が発生すると,LAT ソフトウェアは残った他のシステムのどれかに自動的に接続します。
Advanced Server for OpenVMS および PATHWORKS for OpenVMS (Advanced Server) PC システムを OpenVMS Cluster システムにリンクするクライアント・サーバ・ネットワーキング・ソフトウェアです。
TCP/IP Services for OpenVMS ソフトウェア OpenVMS 用の Network File System (NFS) サーバであり,Internet ネットワーキング・プロトコルをサポートします。

1.3.3 ストレージ拡張ソフトウェア

オプションのストレージ拡張ソフトウェアは,ストレージ・サブシステムのパフォーマンスや可用性を改善します。

たとえば,次のようなものがあります。

OpenVMS ストレージ管理製品に関する最新情報については,次の OpenVMS ウェブ・サイトにある OpenVMS 製品のページを参照してください。


http://www.hp.com/go/openvms 

または


http://openvms.compaq.co.jp/ 

1.3.4 システム管理ソフトウェア

システム管理ソフトウェアは,OpenVMS Cluster システムを管理します。

たとえば,次のようなものがあります。

1.3.5 ビジネス・アプリケーション

ビジネス・アプリケーションは,ビジネス機能を実行するためのオプションのソフトウェア・パッケージです。

たとえば,次のようなものがあります。

1.4 OpenVMS Cluster システムの構成

OpenVMS Cluster の特徴や利点を活用するには,正しく構成することが重要です。 OpenVMS Cluster の理想的な構成では,次の基準を満たすことができます。

OpenVMS Cluster システムの構成は,さまざまな要因を考慮する必要があるため,慎重に行う必要があります。新しい要因が発生するたびに計画は変更する必要があるかもしれません。設計内容の更新時には,トレードオフに対する利点を評価し,ニーズに最適な決定を下します。

1.4.1 一般的な構成規則

以下の一般規則は,OpenVMS Cluster システムに適用します。

以上の一般的な規則以外に,構成によりさらに詳細なガイドラインが適用されます。本書ではこの後,構成ごとのコンテキストでそれらのガイドラインについて説明します。


第 2 章
ビジネス要件とアプリケーション要件の決定

この章では,OpenVMS Cluster のビジネス要件とアプリケーション要件の決定方法について説明します。

2.1 ビジネス要件の決定

ビジネス要件の種類は,OpenVMS Cluster の構成に関係します。 OpenVMS Cluster システムに関する代表的なビジネス要件には以下のものがあります。

これらの要件には,スケーラビリティと物理的な位置といったように互いに競合するものがあります。たとえば,OpenVMS Cluster のシステムを拡張したくても設置場所の広さや位置という制約があります。このような状況では,何を最優先し,何を妥協するかを決める必要があります。

2.1.1 予算

ビジネス上の多くの決定事項と同じく,多くの選択肢がコストで決まります。要件の優先順位が決まれば,ビジネス上で最大のニーズがある分野に予算を振り向ける判断ができます。

予算の決定にあたっては,購入コストの他,以下のような初期システム・コストを計画に入れてください。

2.1.2 可用性

コンピューティング・システムがどのような可用性であるかを決めます。通常の組織には, 表 2-1 に示すように, 3 つ (場合によってはそれらは重複します) の大きなカテゴリのいずれかが当てはまります。

表 2-1 可用性の要件
可用性の要件 説明
一般の用途 システムやアプリケーションを利用できずに待機していても,ほとんど,あるいはまったく影響がないビジネスの機能向けです。
24 × 365 年間を通して主要期間または業務時間帯のほとんどにおいて,連続したコンピューティング・サービスを必要とするビジネス機能向けです。最小限のダウン・タイムのみ許容可能です。
耐障害性 可用性の要件が最も厳しく要求されるビジネス機能向けです。このようなビジネスには,地震,洪水,停電などの災害への対策が要求されます。

関連項目: 可用性についての説明は,本書の 第 8 章 を参照してください。

2.1.3 スケーラビリティと将来の成長率

スケーラビリティとは,任意のシステム,ストレージ,インターコネクト・ディメンションにおいて OpenVMS Cluster を拡張できる一方で,当初の構成機器をフルに活用できる能力です。ノード・レベルのスケーラビリティは,ノードのハードウェアとソフトウェアをアップグレードしたり,追加できる能力を指します。OpenVMS Cluster レベルのスケーラビリティとは,処理能力,インターコネクト,ストレージを,ノード全般に渡って強化することで OpenVMS Cluster システム全体のキャパシティを強化できる能力を指します。

弊社では,ローエンド PC とワークステーション,ミッドレンジの部門システム,ハイエンドのデータ・センタ・システムに対し,レベルごとに異なる処理特性,ストレージ特性,インターコネクト特性を用意しています。適切なレベルにおける投資とは,現在のビジネス要件に対してある程度の余裕を持って対応できるキャパシティを伴った投資を指します。キャパシティの余地は将来の成長率に対応するためですが,現在のニーズに対して余裕がない設計では, OpenVMS Cluster のスケーラビリティに制限が生じるだけでなく,場合によっては縮小しなければならないこともあります。

将来の成長率を考慮して設計すれば,ほとんどの初期投資を活用できるだけでなく,当初の機器を再利用でき,後で無駄なアップグレードを実施しなくてすみます。

関連項目: スケーラビリティの要件の解析については, 第 10 章 を参照してください。

2.1.4 物理的な位置の要件

物理的な制約は OpenVMS Cluster の構成方法を考える上で重要です。狭いコンピュータ室やオフィス向けのクラスタの設計は,建物全体や数マイルに渡って展開されるクラスタの設計とはまったく異なります。電源や空調の要件も設計を構成する上で影響を及ぼす問題です。

クラスタを設計するときは,将来の物理的な拡張,電源や冷却要件の強化を考慮に入れておきます。

関連項目: 複数の拡張ローカル・エリア・ネットワーク (LAN) の構成については, 第 8.6 節第 10.7.7 項 を参照してください。

2.1.5 セキュリティ

安全な環境とは,権限がないユーザによるシステム・アクセスを物理的または電子的に制限できる環境を指します。通常のビジネスでは,パフォーマンスの低下がほとんど,あるいはまったくない状態で環境を安全化できます。ただし,セキュリティを最優先すると,利便性,コスト,パフォーマンス面で妥協が必要になることがあります。

関連項目: 詳細については,『OpenVMS Guide to System Security』を参照してください。

2.2 アプリケーション要件の決定

アプリケーションには処理パワー,メモリ,ストレージ,I/O リソースが必要です。アプリケーション要件の決定により,アプリケーションのニーズに合った OpenVMS Cluster システムを設計できます。アプリケーション要件を決定するには, 表 2-2 の手順に従ってください。

表 2-2 アプリケーション要件の決定
手順 説明
1 現在実行している,または実行しようとするアプリケーションのリストを作成します。
2 アプリケーションごとに,プロセッサ要件,メモリ要件,I/O 要件を記述します (詳細については,各アプリケーションのマニュアルを参照してください。)

プロセッサ・パワーは,アプリケーションが実行する計算の数に比例します。またノード間やノードとストレージ間のデータ転送に備えて十分なプロセッサ・パワーが必要です。

アプリケーションとその他の OpenVMS Cluster 機能に十分なメモリ容量が必要です。メモリ容量に余裕があればすぐれたシステム・パフォーマンスを実現できます。最初はメモリにコストをかけることをお勧めします。

I/O パフォーマンス要件は,アプリケーションによって異なります。ノード,インターコネクト,アダプタなどのコンポーネントを選択するときは,各コンポーネント固有の速度をよく検討して最速のコンポーネントを選択し,ボトルネックの発生を防ぎます。

3 すべてのアプリケーションの CPU 要件,メモリ要件,I/O 要件を合算します。この合計値にさらにユーザ要件や周辺機器などの特別要件を加えます。
4 すべてのアプリケーション要件が決まったら,CPU リソース,メモリ・リソース,I/O リソースによる要件が,上記の要件を 20% 上回っていることを確認します。


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