OpenVMS

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OpenVMS Cluster 構成ガイド

AA-RNJ9B-TE


2004 年 2 月

OpenVMS Cluster の可用性,スケーラビリティ,システム管理の利便性は,構成,アプリケーション,およびオペレーティング環境に大きく依存しています。本書では,これらの利便性を最大限に生かせるような提案とガイドラインを提供します。

改訂/更新情報: 本書は『OpenVMS Cluster 構成ガイド』V7.3-1 の改訂版です。
ソフトウェア・バージョン: OpenVMS Alpha V7.3--2

OpenVMS VAX V7.3



日本ヒューレット・パッカード株式会社


© 2004 Hewlett-Packard Development Company, L.P.

本書の著作権は日本ヒューレット・パッカード株式会社が保有しており,本書中の解説および図,表は日本ヒューレット・パッカードの文書による許可なしに,その全体または一部を,いかなる場合にも再版あるいは複製することを禁じます。

また,本書に記載されている事項は,予告なく変更されることがありますので,あらかじめご承知おきください。万一,本書の記述に誤りがあった場合でも,日本ヒューレット・パッカードは一切その責任を負いかねます。

本書で解説するソフトウェア ( 対象ソフトウェア ) は,所定のライセンス契約が締結された場合に限り,その使用あるいは複製が許可されます。

日本ヒューレット・パッカードは,日本ヒューレット・パッカードまたは日本ヒューレット・パッカードの指定する会社から納入された機器以外の機器で対象ソフトウェアを使用した場合,その性能あるいは信頼性について一切責任を負いかねます。

Compaq,Compaq のロゴ,Alpha,AlphaServer,HSC,HSJ,HSZ,OpenVMS,VAX,VMS,および DIGITAL のロゴは,米国およびその他の国における Compaq Information Technologies Group, L.P. の商標です。

Motif,および OSF/1 は,米国およびその他の国における The Open Group の商標です。

その他のすべての商標および登録商標は,それぞれの所有者が保有しています。

原典:Guidelines for OpenVMS Cluster Configurations
© 2003 Hewlett-Packard Development Company, L.P.

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まえがき

本書は,ビジネス,アプリケーション,コンピューティングのさまざまなニーズに応じた OpenVMS Cluster 構成を設計するための解説書です。

システム,インターコネクト,ストレージ・デバイス,およびソフトウェアの選択に必要な情報をまとめています。また,上記の構成要素を組み合わせることで,可用性,スケーラビリティ,パフォーマンス,およびシステム管理の利便性を実現するのにも役立ちます。

対象読者

本書の対象は,OpenVMS Cluster 製品のユーザや販売代理店,および,OpenVMSクラスタ・システムを構成する管理者であり,コンピュータと OpenVMS Cluster の基本的概念を理解していることが前提です。

本書について

図 1 に示すように OpenVMS Cluster システムには,多くの構成要素と機能がありますが,実質的には 1 つのシステムとして機能します。

図 1 OpenVMS Cluster システムの構成要素と機能


クラスタをフルに活用するには, OpenVMS Cluster 構成の構成要素と機能を理解する必要があります。本書では, 表 1 の構成に従い,クラスタの概念について説明します。

表 1 本書の構成
参照先 章タイトル 目的
第1章 OpenVMS Cluster システム構成の概要 OpenVMS Cluster のハードウェア,ソフトウェア,および全体的な概念について説明します。
第2章 ビジネス要件とアプリケーション要件の決定 ビジネスとアプリケーションのニーズの解析と,そのニーズをどのようにクラスタに適用できるかを説明します。
第3章 OpenVMS Cluster システムの選択 コンピュータの要件を紹介し,選択肢の選び方について説明します。
第4章 OpenVMS Cluster インターコネクトの選択 クラスタ・インターコネクトを紹介し,選択肢の選び方について説明します。
第5章 OpenVMS Cluster ストレージ・サブシステムの選択 ストレージの要件を紹介し,選択肢の選び方について説明します。
第6章 SCSI と Fibre Channel ストレージに対するマルチパスの構成 Parallel SCSI インターコネクトや Fibre Channel インターコネクトでストレージまでの複数のパスを構成し,可用性を高める方法について説明します。
第7章 OpenVMS Cluster ストレージ・インターコネクトとしての Fibre Channel の構成 ストレージ・インターコネクトとしてファイバ・チャンネルを備えた OpenVMS Cluster の構成方法について説明します。
第8章 可用性を目的とした OpenVMS Cluster の構成 クラスタ・システムの可用性の改善方法について説明します。
第9章 可用性とパフォーマンスを目的とした CI OpenVMS Cluster の構成 複数の構成要素と高度な手法で,高可用性および高度なパフォーマンスを達成する方法について説明します。
第10章 スケーラビリティを目的とした OpenVMS Cluster の構成 OpenVMS Cluster システムのさまざまな次元で OpenVMS Cluster システムを拡張する方法と,その拡張に伴う交換要件について説明します。
第11章 OpenVMS Cluster システム管理の手法 OpenVMS Cluster システムの管理に関係のある項目とその扱い方について説明します。
付録 A OpenVMS Cluster インターコネクトとしての SCSI 複数の VAX ホストと Alpha ホストが SCSI デバイスとのアクセスを直接共用できるよう,シングル SCSI バスに複数のホストとストレージを構成する方法について説明します。
付録 B MEMORY CHANNEL 技術概要 MEMORY CHANNEL インターコネクト使用の理由,タイミング,方法について説明します。
付録 C CI-to-PCI アダプタ (CIPCA) サポート アダプタ使用の理由,タイミング,および方法について説明します。
付録 D マルチサイト OpenVMS Cluster マルチサイト OpenVMS Cluster システムの長所,構成オプション,要件,および管理について説明します。

関連資料

本書で説明されているトピックについての詳しい情報は,下記のドキュメントを参照してください。

OpenVMS の製品およびサービスについての付加情報は,以下の URL の OpenVMS の Web サイトをご覧ください。


    http://www.hp.com/go/openvms    

または


    http://www.hp.com/jp/openvms 

本書で使用する表記法

VMScluster システムは,現在,OpenVMS Cluster システムを指します。本書では,特に指定のないかぎり, OpenVMS Cluster またはクラスタは VMScluster と同意語です。

本書では,DECwindows および DECwindows Motif はすべて DECwindows Motif for OpenVMS ソフトウェアを意味します。

また,本書では次の表記法も使用しています。

表記法 意味
Ctrl/ x Ctrl/ x という表記は,Ctrl キーを押しながら別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。
PF1 x PF1 x という表記は,PF1 に定義されたキーを押してから,別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。
[Return] 例の中で,キー名が四角で囲まれている場合には,キーボード上でそのキーを押すことを示します。テキストの中では,キー名は四角で囲まれていません。

HTML 形式のドキュメントでは,キー名は四角ではなく,括弧で囲まれています。

... 例の中の水平方向の反復記号は,次のいずれかを示します。

  • 文中のオプションの引数が省略されている。

  • 前出の 1 つまたは複数の項目を繰り返すことができる。

  • パラメータや値などの情報をさらに入力できる。

.
.
.
垂直方向の反復記号は,コードの例やコマンド形式の中の項目が省略されていることを示します。このように項目が省略されるのは,その項目が説明している内容にとって重要ではないからです。
( ) コマンドの形式の説明において,括弧は,複数のオプションを選択した場合に,選択したオプションを括弧で囲まなければならないことを示しています。
[ ] コマンドの形式の説明において,大括弧で囲まれた要素は任意のオプションです。オプションは1つまたは複数を選択しても,あるいは1つも選択しなくても構いません ( ただし,OpenVMS ファイル指定のディレクトリ名の構文や,割り当て文の部分文字列指定の構文の中では,大括弧に囲まれた要素は省略できません)。
[|] コマンド形式の説明では,括弧内の要素を分けている垂直棒線はオプションを 1 つまたは複数選択するか,または何も選択しないことを意味します。
{ } コマンドの形式の説明において,中括弧で囲まれた要素は必須オプションです。いずれか 1 つのオプションを指定しなければなりません。
太字 太字のテキストは,新しい用語,引数,属性,要件を示しています。また,変数を示す場合にも使用されています。
italic text イタリック体のテキストは,重要な情報を示します。また,システム・メッセージ (たとえば内部エラー number),コマンド・ライン(たとえば /PRODUCER= name),コマンド・パラメータ ( たとえば device-name)などの変数を示す場合にも使用されます。
UPPERCASE TEXT 英大文字のテキストは,コマンド,ルーチン名,ファイル名,ファイル保護コード名,システム特権の短縮形を示します。
Monospace type モノスペース・タイプの文字は,コード例および会話型の画面表示を示します。

C プログラミング言語では,テキスト中のモノスペース・タイプの文字は,キーワード,別々にコンパイルされた外部関数およびファイルの名前,構文の要約,または例に示される変数または識別子への参照などを示します。

- コマンド形式の記述の最後,コマンド・ライン,コード・ラインにおいて,ハイフンは,要求に対する引数がその後の行に続くことを示します。
数字 特に明記しない限り,本文中の数字はすべて10 進数です。 10 進数以外 (2 進数,8 進数,16 進数) は,その旨を明記してあります。


第 1 章
OpenVMS Cluster システム構成の概要

この章では,OpenVMS Cluster の一般的な構成規則とともに,ハードウェア構成要素とソフトウェア構成要素について説明します。

1.1 Alpha クラスタと VAX クラスタの組み合わせ

OpenVMS Cluster は,OpenVMS Alpha システム,OpenVMS VAX システム,ストレージ・サブシステム,インターコネクト,ソフトウェアが 1 つのグループとしてまとまって働く仮想システムです。

OpenVMS Cluster システムでは,各 Alpha ノードと VAX ノードが次のことを行います。

また OpenVMS Cluster システムは,1 つのエンティティとして管理されます。

注意

バージョン混在クラスタ環境では,システム・ディスクおよびシステム・ブート・ブロックごとに 1 つのアーキテクチャのみサポートします。詳細は, 第 11.8 節 を参照してください。

表 1-1 は,OpenVMS Cluster システムの利点を述べたものです。

表 1-1 OpenVMS Cluster システムの利点
利点 説明
資源の共用 複数のシステムが同じストレージ・デバイスにアクセスできます。これはクラスタ全体でユーザがファイルを共用するためです。アプリケーション,バッチ,およびプリントジョブ処理も複数のシステムに配布できます。共用資源にアクセスするジョブは,どのシステムでも実行できます。
可用性 個々のシステムがシャットダウンしても (ダウンが予定されたものであるかどうかに関係なく),データやアプリケーションは引き続き利用できます。さまざまな構成により,ディザスタ・トレラントな操作にも対応できるさまざまなレベルの可用性を設定できます。
柔軟性 OpenVMS Cluster コンピューティング環境は,幅広い価格帯とパフォーマンス域にまたがる互換ハードウェアとソフトウェアを提供します。
スケーラビリティ その他のシステムに影響を与えることなく処理資源とストレージ・リソースを追加できます。 ハイエンド対称型多重処理 (SMP) システムから小型ワークステーションまで,各種システムを相互接続でき,ニーズの増大に合わせて簡単に構成できます。パフォーマンスと可用性のレベルは拡張に応じて制御できます。
管理の容易さ OpenVMS Cluster 管理は,効率的で安全です。OpenVMS クラスタは単独のシステムとして管理されるため,さまざまなタスクも 1 回実行するだけですみます。OpenVMS Cluster では,ユーザ,バッチ,印刷作業の各負荷のバランスが自動的に調整されます。
オープン・システム IEEE,POSIX,OSF/1,Motif,OSF DCE, ANSI SQL,および TCP/IP の各標準に準拠しているので,OpenVMS Cluster システムはアプリケーションの移植性と相互運用性を提供できます。

1.2 ハードウェアの構成要素

OpenVMS Cluster システムは,システム,インターコネクト,アダプタ,ストレージ・サブシステム,周辺機器など,さまざまなハードウェア構成要素からなります。 表 1-2 は,これらの構成要素と例をまとめたものです。

表 1-2 OpenVMS Cluster システムのハードウェア構成要素
構成要素 説明
システム 1 つの処理体として機能する 1 つ以上のプロセッサ,メモリ,入出力 (I/O) アダプタを組み込んだキャビネット。

関連項目: OpenVMS システムの詳細については, 第 3 章 を参照してください。

OpenVMS Cluster システムには,SMP システムをはじめ,サポートされている Alpha, VAX,または MicroVAX の各システムを組み込むことができます。
インターコネクト OpenVMS Cluster ノード間のハードウェア接続であり,これを通じてノード通信を行います。

関連項目: OpenVMS Cluster インターコネクトの詳細については, 第 4 章 を参照してください。

OpenVMS Cluster システムには,次に示す相互接続を 1 つ以上使用します。

  • CI

  • Digital Storage Systems Interconnect (DSSI)

  • Fiber Distributed Data Interface (FDDI)

  • MEMORY CHANNEL

  • Small Computer Systems Interface (SCSI)

  • Fibre Channel

  • Ethernet,Fast Ethernet,Gigabit Ethernet

  • ATM (非同期転送モード)

ストレージ・サブシステム データを保存するデバイスとデバイスを管理するオプション・コントローラ

関連項目: OpenVMS ストレージ・サブシステムの詳細については, 第 5 章 を参照してください。

ストレージ・サブシステムには,次のものがあります。

  • SCSI ディスクとテープ

  • SDI,STI ディスクとテープ

  • ストレージ・アレイ・キャビネット

  • SDI/STI ストレージ・コントローラと SCSI ストレージ・コントローラ

  • InfoServer システム

アダプタ OpenVMS Cluster 内のノードをインターコネクトとストレージに接続するデバイス。

関連項目: アダプタの詳細については, 第 4 章 を参照してください。

Peripheral Component Interconnect (PCI) システムで使用されるアダプタは,次のとおりです。

  • CIPCA (CI)

  • KFPSA (DSSI)

  • KZPSA (SCSI)

  • DEFPA (FDDI)

  • DE435 (Ethernet)

  • KGPSA (Fibre Channel)

  • DEGPA (Gigabit Ethernet)

周辺機器 システムへの出力を提供し,システムからの出力を生成するデバイス。 周辺機器には,次のものがあります。

  • ターミナル,ターミナル・サーバ,モデム

  • プリンタ,プロッタ


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