本書では,OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 オペレーティング・システムの新機能について説明し,本ソフトウェアをサポートするドキュメントの概要も示します。
改訂/更新情報: | 本書は新規マニュアルです。 |
ソフトウェア・バージョン: | OpenVMS Alpha V7.3-1 |
© 2002 Compaq Computer K.K.
本書の著作権はコンパックコンピュータ株式会社が保有しており,本書中の解説および図,表はコンパックの文書による許可なしに,その全体または一部を,いかなる場合にも再版あるいは複製することを禁じます。
また,本書に記載されている事項は,予告なく変更されることがありますので,あらかじめご承知おきください。万一,本書の記述に誤りがあった場合でも,コンパックは一切その責任を負いかねます。
本書で解説するソフトウェア(対象ソフトウェア)は,所定のライセンス契約が締結された場合に限り,その使用あるいは複製が許可されます。
コンパックは,コンパックまたはコンパックの指定する会社から納入された機器以外の機器で対象ソフトウェアを使用した場合,その性能あるいは信頼性について一切責任を負いかねます。
Compaq,Compaq ロゴ,Alpha,OpenVMS,Tru64,VAX,VMS および DIGITAL ロゴは米国およびその他の国の Compaq Information Technologies Group,L.P. の商標です。
Intel,Intel Inside,および Pentium は米国およびその他の国の Intel Corporation の商標です。
Microsoft,MS-DOS,Visual C++,Windows,および Windows NT は米国およびその他の国の Microsoft Corporation の商標です。
Motif,OSF/1,および UNIX は米国およびその他の国の The Open Group の商標です。
Java およびすべての Java ベースのマークは米国およびその他の国の Sun Microsystems,Inc の商標です。
その他のすべての商標および登録商標は,それぞれの所有者が保有しています。
Printed in Singapore.
本書は CD-ROM でも提供しています。
次へ | 目次 | 索引 | DOC HOME |
本書は,OpenVMS オペレーティング・システムを使用する一般ユーザ,システム管理者,プログラマを対象にしています。
本書では,OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 の新機能について説明します。バージョン 7.3-1 のインストールやアップグレードを行う場合や,実際にご使用になる場合は,新機能がシステムにどのような影響を与えるかについて,あらかじめリリース・ノートを参照してください。
本書の構成は次のとおりです。
OpenVMS 製品およびサービスについての追加情報は,OpenVMS World Wide Web サイトにアクセスしてください。URL は次のとおりです。
http://www.openvms.compaq.com/ |
または
http://openvms.compaq.co.jp/ |
VMScluster システムは,OpenVMS Cluster システムを指します。特に明記しない限り,OpenVMS Cluster またはクラスタは,VMScluster と同義です。
DECwindows および DECwindows Motif は,DECwindows Motif for OpenVMS ソフトウェアを指します。
本書では,次の表記法を使用しています。
表記法 | 意味 |
---|---|
Ctrl/x | Ctrl/x という表記は,Ctrl キーを押しながら別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。 |
PF1 x | PF1 x という表記は,PF1 に定義されたキーを押してから,別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。 |
[Return] | 例の中で,キー名が四角で囲まれている場合には,キーボード上でそのキーを押すことを示します。テキストの中では,キー名は四角で囲まれていません。 HTML 形式のドキュメントでは,キー名は四角ではなく,括弧で囲まれています。 |
... | 例の中の水平方向の反復記号は,次のいずれかを示します。
|
. . . |
垂直方向の反復記号は,コードの例やコマンド形式の中の項目が省略されていることを示します。このように項目が省略されるのは,その項目が説明している内容にとって重要ではないからです。 |
() | コマンドの形式の説明において,括弧は,複数のオプションを選択した場合に,選択したオプションを括弧で囲まなければならないことを示しています。 |
[ ] | コマンドの形式の説明において,大括弧で囲まれた要素は任意のオプションです。オプションをすべて選択しても,いずれか1つを選択しても,あるいは1つも選択しなくても構いません。ただし,OpenVMS ファイル指定のディレクトリ名の構文や,割り当て文の部分文字列指定の構文の中では,大括弧に囲まれた要素は省略できません。 |
[|] | コマンド形式の説明では,括弧内の要素を分けている垂直棒線はオプションを 1 つまたは複数選択するか,または何も選択しないことを意味します。 |
{ } | コマンドの形式の説明において,中括弧で囲まれた要素は必須オプションです。いずれか 1 つのオプションを指定しなければなりません。 |
太字 | 太字のテキストは,新しい用語,引数,属性,条件を示しています。 |
italic text | イタリック体のテキストは,重要な情報を示します。また,システム・メッセージ(たとえば内部エラーnumber),コマンド・ライン(たとえば /PRODUCER=name),コマンド・パラメータ(たとえばdevice-name)などの変数を示す場合にも使用されます。 |
UPPERCASE TEXT | 英大文字のテキストは,コマンド,ルーチン名,ファイル名,ファイル保護コード名,システム特権の短縮形を示します。 |
Monospace type | モノスペース・タイプの文字は,コード例および会話型の画面表示を示します。 C プログラミング言語では,テキスト中のモノスペース・タイプの文字は,キーワード,別々にコンパイルされた外部関数およびファイルの名前,構文の要約,または例に示される変数または識別子への参照などを示します。 |
- | コマンド形式の記述の最後,コマンド・ライン,コード・ラインにおいて,ハイフンは,要求に対する引数がその後の行に続くことを示します。 |
数字 | 特に明記しない限り,本文中の数字はすべて10 進数です。10 進数以外(2 進数,8 進数,16 進数)は,その旨を明記してあります。 |
OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,1 年 365 日 24 時間体制で稼動が必要な(24x365)環境で求められる最高レベルの可用性,拡張性,柔軟性,パフォーマンス,セキュリティが提供されます。OpenVMS には,20 年以上にわたって高い信頼性を提供してきた実績があり,さらに新しいテクノロジを基本オペレーティング・システムおよび OpenVMS Cluster ソフトウェア環境に統合することで,可用性とパフォーマンスが向上しています。
OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,OpenVMS SAN(Storage Area Network)の拡張と強化,システム可用性の向上,I/O および SMP パフォーマンスの向上,セキュリティの強化に重点を置いています。また,このリリースでは UNIX アプリケーションから OpenVMS への移植を容易にする拡張機能も提供されます。
1.1 パフォーマンスの向上
OpenVMS バージョン 7.3-1 では,カスタマ・アプリケーションのパフォーマンスを向上することを最終目標に掲げて,システムのパフォーマンス,SMP のパフォーマンス,I/O のパフォーマンス,システムの拡張性を向上するオペレーティング・システムの変更に重点を置いています。OpenVMS Alpha V7.3-1 では,次に示すように,広範囲にわたる分野で多くのパフォーマンス向上機能が盛り込まれています。
アプリケーションのパフォーマンスは,ハードウェア,オペレーティング・システム,ミドルウェア,データベース,およびアプリケーション自体によって決定されます。オペレーティング・システムのパフォーマンスを変更した結果,アプリケーションにどの程度のメリットがあるかは,拡張および強化された機能をアプリケーションで使用しているかどうかに応じて異なりますが,多くのアプリケーションではパフォーマンスの大幅な向上が期待されます。OpenVMS 担当のエンジニアは,パフォーマンスの実質的な向上が示されている拡張機能に関して,多くの OpenVMS ISV およびお客様と直接協力して開発作業を行ってきました。
Fibre Channel ストレージの分野では,分散割り込み,割り込みの一括処理,使用するロックの削減などの新機能により,以前のリリースに比べて最大 100% も Fibre Channel の I/O スループットを向上しました。
OpenVMS Alpha V7.3-1 では,低レベルのカーネルを変更することで,大規模な SMP システムのパフォーマンスを向上しています。アプリケーションのパフォーマンスがどの程度向上するかは,拡張された機能の使い方により異なりますが,多くのアプリケーションでは大幅な向上が期待できます。
ここでは,OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 のパフォーマンス向上機能を中心に説明します。
各プロセスに割り当てられる AST キューは,SCHED スピンロックではなく,プロセス固有のスピンロックによって同期がとられるようになりました。このため,複数の CPU で並列に AST を配布することが可能になり,SCHED スピンロックで大量のスピンロックの競合が発生するのを防止できます。現在も AST をキューに登録するには SCHED が必要です。しかし,キューに登録される AST が現在のプロセスに関連している場合は,SCHED スピンロックを回避できます。
OpenVMS バージョン 7.3-1 より前のバージョンでは,すべてのデバイスで静的 MAILBOX スピンロックを使用していました。バージョン 7.3-1 では,各メールボックス・デバイスは,パフォーマンスを向上するために,メールボックス固有のスピンロックで同期がとられるようになりました。
タイマ・キューはこれまで,タイマ・キュー・エントリ(TQE)のリンク・リストでした。タイマ・キューに登録されている TQE の数が多く,挿入と取り消しの負荷が高い場合,タイマ・キューへのアイテムの挿入や削除に非常に長い時間がかかることがありました。バージョン 7.3-1 ではタイマ・キューはツリー形式になり,リストのサイズが拡大しても,パフォーマンスが低下することはありません。
PEdriver チェックサムを実行するアルゴリズムの効率が向上しました。PEdriver チェックサムは,SYSGEN パラメータ PEX が X に設定されている場合にだけ実行されます。
バージョン 7.3-1 では,RMS はロック・マネージャのフォーク・ロック・インタフェースの変更を利用するようになりました。以前のバージョンでは,このインタフェースを呼び出すときに,IOLOCK8 スピンロックを保持する必要がありました。また,ロック・マネージャからのコールバックはすべて,IOLOCK8 を保持した状態で行われていました。バージョン 7.3-1 以降,このインタフェースを呼び出すプロセスは,コールバック時に IOLOCK8 が保持されていないことと,必要とされないことを示すことができるようになったため,IOLOCK8 の競合とオーバーヘッドを回避できるようになりました。
新しい SYS$GETJPI システム・サービスは,従来よりはるかに効率よく,現在のプロセスに関する一部のデータを取得できるようになりました(場合によっては,カーネル・モードになる必要もありません)。
シャドウイング I/O の I/O 後処理は,プライマリ CPU で常に終了するのではなく,デバイス I/O が完了した CPU と同じ CPU で完了するようになりました。シャドウ・セットに Fast Path デバイスが含まれている場合は,プライマリ CPU が飽和状態になるのを回避するために,I/O 後処理はプライマリ CPU で行われないようになりました。
システム拡張機能(スケーラビリティ)を向上するために,OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では次の機能が強化されました。
V7.3-1 では,あらかじめ割り当てられている FRED ブロックはすべて,S0S1 空間から削除され,必要な場合にだけ割り当てられるようになりました。この結果,S0S1 空間の膨大な領域が解放され,WSMAX(最大ワーキング・セット・サイズ)または BALSETCNT(システム・ページ・テーブル内のバランス・セット・スロットの数)を拡大できるようになりました。解放された S0S1 空間は,非ページング・プールの拡大のためにも使用できます。
OpenVMS の読み取り専用データの一部は NUMA プラットフォームでは複製されるようになりました。たとえば,MMG$GL_PAGESIZE など,静的システム・パラメータやオペレーティング・システム・セルの一部がこの対象になります。
C RTL では,EV6 プロセッサでのバイト/ワード命令をスケジューリングする機能をサポートするために,最適化された DECC$SHR のコピー(DECC$SHR_EV56.EXE)が提供されます。他のタイプの Alpha プロセッサ用に,DECC$SHR の第 2 のバージョンもこれまでどおりに組み込まれて提供されます。OpenVMS インストール・プロシージャは,プロセッサのタイプをチェックし,そのプロセッサのタイプに最適な DECC$SHR に論理名を設定します。このようにして DECC$SHR をカスタマイズすることで,EV6 システムでパフォーマンスを最適化できます。
1.2 セキュリティの強化
OpenVMS Alpha バージョン 7.3-1 では,次のセキュリティ強化機能が提供され,認証と暗号化に関して柔軟性が向上し,簡単な操作でソフトウェアを開発できるオプションが提供されるようになりました。
本書では,各セキュリティ強化機能の概要を示し,詳細情報を説明している参考資料も示します。
次へ | 目次 | 索引 |