本書は,日本語 OpenVMS の概要と基本操作について説明します。
コンパックコンピュータ株式会社
© 2002 Compaq Computer K.K.
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Printed in Singapore.
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本書は,OpenVMS についての概要と,日本語 OpenVMS の基本的な操作方法について説明します。
本書は,日本語 OpenVMS の概要や基本操作を知りたい方を対象にしています。
パーソナル・コンピュータ(PC)や UNIX 等のオペレーションをある程度経験されている方を対象に説明しています。
本書は,3 部と付録から構成されています。各部の内容は次のとおりです。
第 1 部 概要
OpenVMS の特徴について簡単に説明します。
第 1 章 | OpenVMS の現在,過去,未来 |
第 2 部 基本操作
日本語 OpenVMS を使用する際に必ず知らなければならない基本的な操作について説明します。たとえば,日本語 OpenVMS の使用を開始したり終了したりする方法や日本語 OpenVMS に指示を出す方法について具体的に説明します。また,エディタの使用方法やファイルの管理の操作方法についての説明もします。
第 2 章 | ログイン操作 ログアウト操作 |
第 3 章 | DCL コマンドを使用する |
第 4 章 | パスワードを変更する |
第 5 章 | ヘルプとシステム・メッセージ |
第 6 章 | キーボードを使用する |
第 7 章 | エディタを使用する |
第 8 章 | ファイルを指定する |
第 9 章 | ディレクトリを作成する |
第 10 章 | ファイルを操作するためのコマンド |
第 11 章 | ファイルを保護する |
第 3 部 日本語 OpenVMS の便利な機能を使う
日本語 OpenVMS を使用する上で,さらによく使用される便利な機能について説明します。
第 12 章 | ファイルの内容を印刷する |
第 13 章 | バッチ・キューを利用する |
第 14 章 | プロセスについて |
第 15 章 | シンボルを使用する |
第 16 章 | 論理名を使用する |
第 17 章 | コマンド・プロシージャを使用する |
付録
知っておくと便利な日本語 OpenVMS 関連の事柄について説明します。また,クイック・リファレンスとしてご利用いただけるように,よく使用される項目をまとめた表も添付しました。
本書は,最初から順に読み,例を試しながら日本語 OpenVMS の操作を習得していただけるように構成されています。
また,最初から順に読むだけでなく,必要な箇所だけを読んで利用することもできます。必要に応じて,目次または索引を利用して必要な操作の説明を調べてご利用ください。
本書で説明した内容に関連する資料は,次のとおりです。詳しい説明をお知りになりたい場合は,該当する資料を参照してください。
日本語 OpenVMS の基本的な操作について
『OpenVMS DCL ディクショナリ』
『OpenVMS ユーザーズ・マニュアル』
システム管理関連について
『OpenVMS システム管理者マニュアル』
『OpenVMS システム管理ユーテリィティ・リファレンス・マニュアル』
日本語 EVE エディタについて
『日本語 EVE ユーザーズ・ガイド』
『日本語 EVE かな漢字変換入門』
『日本語 EVE リファレンス・マニュアル』
『漢字コード表』
日本語機能について
『日本語 OpenVMS 概説書』
『日本語 OpenVMS 日本語ユーティリティ 利用者の手引き』
『フォント管理ユーティリティ 利用者の手引き』
日本語 OpenVMS(CDE)の操作概要について
『New Desktop 使用概説書』
日本語 DECprint Supervisor for OpenVMS について
『日本語 DECprint Supervisor for OpenVMS ユーザーズ・ガイド』
本書では,次の表記法を使用しています。
表記法 | 意味 |
---|---|
[Ctrl] + [x] | [Ctrl] + [x] という表記は,Ctrl キーを押しながら別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。 |
[PF1] + [x] | [PF1] + [x] という表記は,PF1 に定義されたキーを押してから,別のキーまたはポインティング・デバイス・ボタンを押すことを示します。 |
[Return] | 例の中で,キー名が四角で囲まれている場合には,キーボード上でそのキーを押すことを示します。テキストの中では,キー名は四角で囲まれていません。 HTML 形式のドキュメントでは,キー名は四角ではなく,括弧で囲まれています。 |
... | 例の中の水平方向の反復記号は,次のいずれかを示します。
|
第 1 部では,OpenVMS の概要を説明します。
OpenVMS の現在,過去,未来について見ながら,OpenVMS の特徴がわかります。
項目 | 参照箇所 |
---|---|
OpenVMS の現在 | 第 1.1 節 |
OpenVMS の歴史 | 第 1.2 節 |
OpenVMS の今後 | 第 1.3 節 |
春もうららのある日,新入社員の A さんが,学校の先輩 Z 氏のオフィスへやってきます。
「やあ,Aさん。入社おめでとう。」
「 Z さん,入社にあたっては色々とお世話になりました。おかげさまで配属部署も希望どおりになりました。」
「それはよかった。でも,それにしては少し元気がないね。」
「実は,それで相談にうかがったんですけど,1 つシステムの管理を任せていただけることになったんです。」
「君の実力が評価されたんだね。チャレンジしがいがあるじゃないか。」
「でも,そのシステム,OpenVMS というんです。UNIX なら経験があるんですけど。まったく知らなくて。それで,学生時代,VMS の仙人っていわれてた Z さんからコツを教えていただこうとうかがったんです。」
「ハハ,仙人はまいったな。まあ,OpenVMS といって何も特殊なことはないんだ。UNIX の経験があれば,OpenVMS のオペレーションを理解することはそんなに難しいことじゃない。コマンド体系なんかは,いろんな機能を寄せ集めた UNIX よりも,1 社で開発した OpenVMS の方がずっと体系的だよ。OpenVMS のオペレーションそのものについては,第 2 章 以降で具体的に説明するとして,その前に OpenVMS について概要を紹介しておこう。」
「おねがいします。」
1.1.1 OpenVMS の定義
「まず,OpenVMS とは何だろうか?」
「オペレーティング・システムですよね。UNIX や Windows なんかと同じだと思いますけど。」
「そう,ではオペレーティング・システムとして,OpenVMS の特徴はなんだろう?」
「えーと。」
「第 1 の特徴は,シングル・アーキテクチャということなんだ。」
「シングル・アーキテクチャとは,小規模から大規模まですべてのコンピュータ・システムで,同じ環境を提供するというコンセプトのことなんだ。OpenVMS では,1 CPUから 32 CPU までのシステムを,すべて同じ OpenVMS でサポートしているんだ。これは,ハードウェアとしての Alpha アーキテクチャと Alpha システム,オペレーティング・システムとしての OpenVMS が密接に協力し合うことで初めて実現できていることなんだ。」
「でも,すべてのコンピュータ・システムと言っても,モバイル環境やデスクトップ環境まではサポートできていないと思うんですけど。」
「確かにその通りだね。後でもう少し詳しく説明するけれど,シングル・アーキテクチャというコンセプトは,今から 20 年以上も前,OpenVMS の初期設計の段階から構想されていたことなんだ。そういう意味では,現在の PDA やノート PC,デスクトップ PC などなど,多様なクライアント環境をサポートすることは想定されていなかったんだね。」
「ということは,OpenVMS はシングル・アーキテクチャを実現するオペレーティング・システムということですね。」
「そう,そしてこのことは OpenVMS の第 2 の特徴でもあるんだ。つまり,OpenVMS はサーバ・システム向けのオペレーティング・システムであるということだ。」
「サーバ・システム向けってどういう意味ですか?」
「言い換えると,サーバ・システムとして必要な特性を備えたオペレーティング・システムということだ。サーバ・システムとして必要な特性に関しては,いろんな考え方があるだろうが,僕は 2 つの重要な特性があると思う。
拡張性 信頼性 |
この 2 つだね。」
「それぞれの特性をもう少し詳しく説明してください。」
「まず,拡張性だけれど,サーバ・システムは,より大量のデータをより短時間で処理することを常に目標にしていると考えていいだろう。拡張性は,この目標を実現するための特性なんだ。もちろん,Alpha チップをはじめとして,サーバ・システムで利用される CPU はどれも高速性を競っているし,メモリにしても,ストレージにしても大容量なものがサポートできる。しかしシングル CPU システムではやはり限界があるわけだ。」
「それで対称型マルチプロセッシング SMP が登場するわけですね。」
「 1 CPU よりは 2 CPU,2 CPU よりは 4 CPU と CPU を増やしていけば,処理能力は増加することになる。同時に,メモリ容量や接続できる IO スロット数も増加することになる。たとえば,最も大規模な Alpha サーバ,GS320 は,32 CPU,メモリ容量 256 GB,224 個の PCI スロットまでサポートできる。もちろん OpenVMS は,この大規模な SMP システムが最高の性能を実現できるようにサポートしているわけだ。」
「でも CPU の数が増えてくると,単純な拡張は難しいと聞いたのですが。」
「そう,実際のところ GS320 のシステム・アーキテクチャも,単純な SMP ではなくなっている。しかし,アプリケーションがそれを意識するようでは,シングル・アーキテクチャとは呼べない。このギャップを解消することも OpenVMS の役割なんだ。」
「 32 CPU も搭載できれば,どんなアプリケーションでも対応できますね。」
「ところがそうはいかない。実際,GS320 でも処理しきれないほどの処理量を抱えたシステムがいくつも存在するんだ。また,アプリケーションの性質によっては,SMP が有効でない場合もある。」
「最近,クラスタリングやクラスタ・システムという言葉をよく聞くだろう。これは,単一システムを超えた拡張性を実現するために,OpenVMS がはじめて提供した機能なんだ。クラスタリングとは,複数のマシンを接続して,全体を 1 つのシステムに見せる技術だ。クラスタリングによって,ほとんど制約なしに,無限の拡張性を実現することが可能になるんだ。」
「でも,最近話題になるクラスタリングは,UNIX や Windows のものですけれど。」
「OpenVMS は既に 15 年以上も前からクラスタリング機能を提供している。UNIX や Windows はこれに追いつこうとしているわけだ。けれど,クラスタリングの機能はオペレーティング・システムの核の部分と密接に関わっている。クラスタリング・ソフトウェアをオペレーティング・システムの上にかぶせただけのやり方では,十分な拡張性が提供できないだけでなく,システムとしての品質を維持できなくなる。」
「つまり,OpenVMS のような完成されたクラスタリング機能でなければならないということですね。」
「だんだん,わかってきたじゃないか。次に,信頼性についても簡単に説明しておこう。信頼性の定義も議論のあるところだが,サーバ・システムとして一番重要な信頼性の目標がサービスを停止させないこと,もし一時的に停止したとしてもできるだけ短期間でサービスを再開できることにあるということは誰でも合意できるだろう。」
「当然,ハードウェアやソフトウェアの品質や信頼性が問題になるわけですね。」
「 Alpha システムでは,ハードウェアとしての信頼性を高めるさまざまな機能を提供している。同時に,OpenVMS もソフトウェアとしての品質を維持しながら,信頼性を高める機能を提供している。しかし...」
「しかし 1 台のシステムでは,信頼性の向上は限界がある。それでクラスタリングというわけですね。」
「うむ,クラスタを構成する複数のマシンは接続しているとはいえ,それぞれが独立したシステムだ。1 台に障害が発生したとしても,他のマシンに直接影響するわけではない。このことを利用して,1 台のシステムで実現できない信頼性を提供することもクラスタリングの重要な機能なんだ。」
「具体的にはどうするんですか?」
「単純に言えば,クラスタ・システムの1台のマシンが障害を起こしたとき,そのマシンでサービスを提供していたアプリケーションを他のマシンが引き継いで実行し,サービスを継続させる。これをフェールオーバと一般的に呼んでいる。」
「それは,UNIX や Windows のクラスタ・システムでも提供していますよね。」
「重要な点は,特別なプログラミングや特別な操作を必要とせず,できるだけ制約事項なしに,フェールオーバを実現することだ。OpenVMS のクラスタリング機能は,クラスタ・システムの各マシンから,システム全体がまったく同じように見えるシングル・システム・イメージを完全に実現している。このため,OpenVMS では,ほとんどのアプリケーションで,手を加える必要なしにフェールオーバが可能なんだ。」
「なるほど。OpenVMS の第 3 の特徴は,完全なクラスタリング機能を提供するオペレーティング・システムということですね。」
「そして,これが僕の説明したかった最後の特徴になるわけだ。」
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